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慶弔の意味や読み方【今さら聞けない】慶弔休暇や慶弔見舞金、マナーを解説

慶弔とは、喜ぶべきことと悲しむべきことの両方を指します。

企業においては、従業員やその家族の慶弔に対する支援策として、慶弔休暇や慶弔見舞金制度を導入している企業も多いです。しかし一方で「慶弔休暇の日数はどのくらい定めればよいのか」「慶弔見舞金はどのようなケースで支給すればよいのか」と悩む人事担当者も少なくありません。

本記事は、慶弔の意味や読み方をはじめ、慶弔休暇や慶弔見舞金のなどの基礎知識、慶弔におけるマナーを解説します。慶弔についての基礎知識を身につけたい方、福利厚生を見直したい方はぜひ参考にしてみてください。

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    慶弔とは

    慶弔とは、人生におけるお祝いごとや弔いごとの両方をいいます。そこから転じて、祝福や弔いの気持ちをあらわすこともあるでしょう。日本は、結婚式や葬儀などで気持ちを示すためにご祝儀や香典を包む慣習があり、社会的な儀礼として根づいています。

    頻度は多くありませんが、ビジネスパーソンとして知っておくべきマナーはもちろん、人事担当者としての対応についても把握しておくとよいでしょう。

    ここでは、慶弔に関する基礎知識をご紹介します。

    意味と読み方

    ​​「慶弔」は「けいちょう」と読み「慶」と「弔」を組み合わせた言葉です。

    「慶」は、喜びや祝いごとをあらわし、結婚や出産などの慶事を「弔」は、誰かの逝去などの弔事をあらわします。慶弔は慶事と弔事、両方を指す言葉として使われています。

    冠婚葬祭との違い

    「慶弔」と「冠婚葬祭」は、似たような意味合いを持つ言葉であるため、混同されるかもしれません。しかし、厳密には違いがあります。

    慶弔は、お祝いやお悔やみの気持ちをあらわすべきできごと、冠婚葬祭は慶弔に際して執り行われる儀式全般で、結婚式や葬儀などが該当します。

    慶弔の種類

    慶弔にはさまざまな種類があるため、プライベートやビジネスにおける慶弔について、どのようなものがあるか、理解しておきましょう。

    仕事における慶弔の種類

    ビジネスにおける慶弔は、次のようなものが挙げられます。

    ・落成・開店・開業祝い
    ・上場祝い
    ・創立記念祝い
    ・昇進・就任祝い
    ・叙勲・褒章祝い

    ビジネスにおける慶弔には、会社や職場におけるマナーや作法があるため注意が必要です。また、慶弔に際し個人的な感情や人間関係がかかわることも多く、心のこもった対応が求められるでしょう。

    プライベートにおける慶弔の種類

    プライベートにおける慶弔には、次のようなものが挙げられます。

    ・結婚祝い
    ・出産祝い
    ・成人祝い
    ・傷病見舞い
    ・災害見舞い
    ・香典

    プライベートの慶弔には個人的な感情や人間関係がより強くかかわってくる場合が多いです。また、プライベートにおける慶弔の場では、会社や職場におけるマナーや作法とは異なる独自のマナーがある場合もあります。

    社内外に対する慶弔対応

    企業において社内外に対し慶弔の対応を求められたとき、どのように進めればよいのか悩む方もいるかもしれません。

    社内へは「社内関係者への連絡」、社外へは「お祝いや香典をの準備」などがあります。慶弔に対応しなければならないときは、4W1Hを意識するとスムーズです。

    ここでは慶事・弔事における、それぞれの対応について解説します。

    慶事対応

    社内への慶事対応では、社内関係者に次の5つを共有します。

    誰がWho
    いつWhen
    どのような慶事があり、祝典はWhat
    どこで行うのかWhere
    どのように対応するのかHow

    そして社外への慶事対応では、祝典への出席の可否にはじまり、祝儀や祝い状、祝電、贈答などを準備します。手配はできるだけ素早く行うといいでしょう。

    弔事対応

    社内への弔事対応では、社内関係者に次の5つを共有します。

    誰がWho
    いつWhen
    どのような弔事があり、通夜や告別式はWhat
    どこで執り行われるのかWhere
    宗派などを踏まえてどのように対応するのかHow

    弔事の場合の社外への対応は、供物や供花、弔電、香典の手配などがあります。宗派によって対応が異なるケースもあるため、確認のうえ準備することが大切です。

    慶弔休暇とは

    慶弔休暇とは、従業員の家族や親族の結婚や出産、逝去に際し休暇を与える制度です。企業が福利厚生の一環として独自に定めています。

    年次有給休暇や産前産後休暇のような法定休暇とは異なるため、企業によっては慶弔休暇制度を設けていないこともあります。

    慶弔休暇の日数

    慶弔休暇の日数は法律で定められているわけではなく、企業ごとの就業規則に準じるため、各社で異なります。

    通常は3日から7日程度、与えられることが多いです。ただし、相手が遠方にいる場合や式場の手配に時間を要する場合、長期休暇を許可する企業もあります。

    一般的な慶弔休暇の日数は、以下のように設定されていることが多いです。

    従業員本人の結婚3〜5日
    従業員の子どもの結婚1〜2日
    従業員の配偶者の出産1~3日
    従業員の配偶者(0親等)の逝去10日
    従業員の1親等の親族(父母、子ども、義父母)の逝去5~7日
    従業員の2親等の親族(祖父母、兄弟姉妹)の逝去1~3日
    上記以外の親族の逝去1日

    慶弔休暇は無給?

    慶弔休暇は、法律で定められた年次有給休暇とは異なるため、無給となるケースも珍しくありません。

    ただし、企業によっては有給で慶弔休暇を取得できる制度を設けていたり、無給であっても慶弔見舞金を支給したりすることもあります。

    慶弔休暇を設ける際のポイント

    慶弔休暇を設けることは、福利厚生の充実につながります。

    自社で慶弔休暇制度を設ける場合、次のポイントを押さえて決めるのがよいでしょう。

    ・慶弔休暇を取得するための条件(結婚や出産、近親者の逝去など)
    ・誰が慶弔休暇を取得できるのか(正社員のみなのかアルバイトも取得できるのか)
    ・休暇日数
    ・申請方法や申請のタイミング

    慶弔休暇制度を設ける際は、明確なルールを設定し、就業規則に盛り込むようにしましょう。

    慶弔見舞金とは

    慶弔見舞金とは、慶事や弔事に際して、会社から該当する従業員へ支給される祝い金や見舞金のことです。企業によっては「慶弔費」「慶弔金」と呼びます。

    ある調査では現在約8割の企業が、慶弔見舞金制度を福利厚生として導入していると報告されています。慶弔見舞金に法的な規制はなく、必ずしも制度を定める必要はありません。

    また、対象となる慶事や弔事の種類、支給金額についても企業ごとに規定が異なります。

    参照:『企業における福利厚生施策の実態に関する調査』独立行政法人 労働政策研究・研修機構

    慶弔見舞金と弔慰金、香典との違い

    慶弔見舞金とよく混同されがちなものに、弔慰金や香典があります。これら3つはそれぞれ異なる意味を持つため、整理しましょう。

    慶弔見舞金

    該当する従業員本人やその家族の慶事や弔事に対して、企業が支給する祝い金・見舞金などです。多くの企業では一定の金額を設定しています。

    弔慰金

    従業員が亡くなった場合、その家族に対して、慰めや励ましの意を込めて企業が支給するものです。従業員の家族が亡くなった際も支給することがあります。

    弔慰金の有無も、企業によって異なりますが、一定の金額を設定していることが多いようです。

    香典

    従業員やその親族の葬儀の際、会社から香典を出す場合もあります。慶弔見舞金は福利厚生の一部として支給するものですが、香典は葬儀の際に霊前に供えるものです。

    また、慶弔見舞金は従業員が落ち着いた頃や、後日給与として支給されることが多く、香典は基本的に葬儀に参列する際に直接渡します。

    慶弔見舞金の種類と金額相場

    慶弔見舞金は法的な定めがなく、企業によって規定が異なるため、金額にも差があります。

    ここでは目安として慶弔見舞金の相場を、種類ごとにご紹介します。

    慶弔見舞金の種類金額相場
    結婚祝い金1~3万円
    ※再婚の場合変更あり
    従業員本人または配偶者の出産祝い金1~3万円
    ※第2子以降変更あり
    災害見舞金2~5万円
    ※被災状況による、家屋全損失で10万円以上の場合も
    傷病見舞金1~3万円
    ※業務上・業務外による
    従業員の家族の死亡弔慰金1~5万円
    ※従業員との近さによる
    従業員本人の死亡弔慰金5〜100万円
    ※業務上・業務外、役職、勤続年数により
     大きく変動あり

    これらはあくまでも目安です。上記を参考に、自社に適した金額を設定しましょう。

    慶弔見舞金は課税対象?

    慶弔見舞金は給与と同様に振り込む企業が多く、所得税の課税対象となるか、気になるかもしれません。基本的に、慶弔見舞金には所得税がかかりません。

    祝い金と弔慰金や香典、災害見舞金は、それぞれ所得税法基本通達において、社会的に相当と認められる場合は、課税しなくても差し支えないと規定されているためです。

    よって、よほど高額でない限り源泉徴収は不要と考えられます。ただし、あまりにも高額な場合は従業員への給与と見なされ、課税されることもあります。

    さらに、お祝いの品や花など物品を渡すときは、購入費用として当然ながら消費税がかかります。

    参照:『法第28条《給与所得》関係』国税庁|法令解釈通達
    参照:『法第9条《非課税所得》関係』国税庁|法令解釈通達

    慶弔見舞金制度のメリット

    慶弔見舞金制度の導入は、従業員はもちろん、企業側にもメリットがあります。

    負担を軽減しながら福利厚生を充実できる

    慶弔見舞金は、社会通念上相当と認められるものについて所得税がかからないため、会計上は損金に参入できます。

    そのため、企業の負担を軽減しながら、従業員の福利厚生を充実できるといえます。

    従業員のエンゲージメントを高められる

    被災のような大きな損害があったとしても、慶弔見舞金制度で安定した収入を確保できれば、従業員は安心して仕事に取り組めるでしょう。

    よって慶弔見舞金制度は、エンゲージメントの向上に寄与するといえます。自社で長く働きたいと考えるきっかけにもなり、離職率の低下・定着率の向上にもつながるかもしれません。

    人材採用によい影響を与える

    慶弔見舞金制度などの福利厚生が充実している企業は、従業員を大切にしているという世間的なイメージを与えます。

    昨今は求職者は、福利厚生の充実度も重視している傾向にあります。慶弔見舞金制度などの福利厚生が整っていると、自社への就職希望者が増える可能性も高まるでしょう。

    社会的イメージの向上が望める

    企業が従業員に対して慶弔見舞金を支給することで、社会的なイメージにもよい影響を与えるかもしれません。世間から従業員を大切にしている企業という印象を持ってもらえれば、社会的な地位向上にもつながるはずです。

    慶弔見舞金を設ける際のポイント

    慶弔見舞金制度を設ける際は、以下のようなポイントに気をつけるといいでしょう。

    目的を明確にして従業員に周知する

    慶弔見舞金を設ける目的を明確にし、従業員にも伝えることが重要です。制度の趣旨や対象となる慶事や弔事の内容、慶弔見舞金の種類、支給額や支給方法などを説明しましょう。

    なお、支給金額を役職ごとに差をつけている企業もあります。場合によっては、会計上の損金に算入できなくなったり、弔事に格差をつけられたと感じられたりするなどトラブルにつながることも考えられます。

    なぜ慶弔見舞金を設けるのかをあらためて考え、全従業員に一律の金額を支給するなど、慎重に検討しましょう。

    運用ルールを設ける

    慶弔見舞金制度の運用ルールを明確に定めましょう。慶弔見舞金の支給対象となる慶事と弔事の種類や支給額だけでなく、申請方法や締め切り、支払い時期などを就業規則に規定します。

    また、正社員だけに適用するのか、アルバイトにも適用されるのか、支給対象者の範囲も決めておきましょう。

    管理体制を整える

    制度を運用するための管理体制を整えることも大切です。たとえば、制度の運用担当者を明確にする、申請書類や支給金額の管理方法を決める、情報の秘匿やプライバシー保護など、細かな点への配慮が必要です。

    財源の確保・無理のない支給額を心がける

    慶弔見舞金の支給には費用がかかるため、財源を確保することが重要です。

    たとえば、大規模な災害が発生した場合、多くの従業員に災害見舞金を支給しなければならなくなります。このときに「見舞金を支給できない」「経営に影響を与えてしまう」という事態にならないように無理のない支給額を設定しておくことが大切です。

    慶弔見舞金制度は、従業員にとっても企業にとってもメリットがある制度です。しかし、適切な運用が行われない場合はトラブルや負担が増えてしまうため、慎重な検討と運用が求められます。

    また、従業員にも定期的に周知し、積極的に制度を利用してもらうように努めることも大切です。

    慶弔におけるルールとマナー

    自社の従業員や取引先などの慶弔で、冠婚葬祭に参列することもあるでしょう。そのようなときに、ルールやマナーを理解していないと、個人としての評価はもちろん自社の印象にも悪影響を与えかねません。慶弔においては、その場にふさわしいマナーを守ることが大切です。

    最後に冠婚葬祭におけるルールとマナーを紹介します。

    慶事(結婚式)のマナー

    慶事(結婚式)には、次のようなマナーがあります。

    招待状に返信する

    結婚式では招待状をもらうことが一般的です。受け取ったら、招待状に記載されている返信期限までに、出欠を返信しましょう。

    出席する場合は返信用のハガキの余白にお祝いのメッセージを添えると好印象です。欠席でもその理由を一言記載しておくとよいでしょう。ただし、欠席の理由が弔事の場合は「仕事の都合」などと記すのがマナーです。

    遅刻しない

    慶事に限らず、遅刻はビジネスパーソンとしての品位を疑われかねません。式典の開始前に会場に到着するように、余裕を持ったスケジュールを設定しましょう。

    服装に気を配る

    式場や披露宴会場によっては、ドレスコードが決められている場合があります。そのため、服装には注意が必要です。

    男性であれば黒のスーツに白やシルバーのネクタイ、女性は振袖やドレスを着用します。ただし、白いドレスは新婦への失礼にあたるため避けましょう。

    ご祝儀を用意する

    披露宴に招待された場合、ご祝儀を用意するのがマナーです。ご祝儀の相場は同僚であれば3万円、部下であれば3〜5万円といわれています。

    なお、親族の披露宴であれば5〜10万円と多めに包むのがマナーという考え方もあります。

    挨拶をする

    新郎新婦や両家の方々への挨拶も、ビジネスパーソンのマナーです。特に取引先など社外の人の結婚式で、このような対応ができれば、個人のみならず自社の評価にもよい影響を与えるでしょう。

    弔事(お通夜・葬儀・告別式)のマナー

    弔事(お通夜・葬儀・告別式)には、次のようなマナーがあります。

    名刺を渡す

    特に故人の家族と面識がない場合に受付で香典を渡す際は、自分と故人の関係性を伝えるために名刺を渡しましょう。このとき右上に「弔」と記すのがマナーです。記入し忘れた場合は、名刺の左下を少し折った状態で渡します。

    会社の代表者が葬儀に参列できず代わりに参列する場合は、代表者や上司の名刺も持参し、右上に「弔」の文字を記入します。自身の名刺には代理できたことをあらわす「代」を記しましょう。

    服装に気を配る

    特に故人の家族と面識がない場合に受付で香典を渡す際は、自分と故人の関係性を伝えるために名刺を渡しましょう。このとき右上に「弔」と記すのがマナーです。記入し忘れた場合は、名刺の左下を少し折った状態で渡します。

    突然の訃報を受け、急遽通夜に参列しなければならない場合、喪服を用意できないこともあるかもしれません。そのときは、できる限り黒い服装を心掛けましょう。

    香典を用意する

    香典の相場は故人との関係性によって変わります。故人が上司の場合は5,000〜1万円、上司の家族なら5,000円前後、部下や同僚、元上司であれば5,000円前後が相場といわれています。

    社内における自分の役職や立場も考慮しなければなりません。一緒に参列する上司よりも大きな金額を包むのは、上司の顔を潰してしまうかもしれないので注意が必要です。

    ご祝儀を用意する

    披露宴に招待された場合、ご祝儀を用意するのがマナーです。ご祝儀の相場は同僚であれば3万円、部下であれば3〜5万円といわれています。

    なお、親族の披露宴であれば5〜10万円と多めに包むのがマナーという考え方もあります。

    喪主にあいさつする

    喪主や遺族に挨拶することもマナーといえます。ただし、弔事の場合は長々とした挨拶は避け、お悔やみの言葉を伝えるだけにとどめましょう。

    一般的に知られる「ご冥福をお祈りします」という言葉は、故人に向けた言葉であり、遺族にかける言葉ではありません。遺族には「お悔やみ申し上げます」という言葉を選ぶなどの配慮も必要です。

    弔事を欠席する場合も弔意は伝える

    どうしても予定が合わず、葬儀や告別式に参列できない場合でも、弔意を伝えるのがマナーです。

    告別式に合わせて弔電を打つか、後日お悔やみの言葉を電話や手紙で伝えるようにしましょう。手紙に香典を添える場合は、現金書留を利用しなければなりません。

    慶事と弔事が重なったときのマナー

    慶事と弔事の日程が重なってしまった場合、日本では弔事を優先させるのが一般的です。慶事はあとで埋め合わせの対応ができるためです。

    ただし、近親者の結婚式においては慶事を優先してもよいという考え方もあります。

    まとめ

    慶弔とは、人生の節目や喜び・悲しみを共有することで、人と人とのつながりを深めるための風習です。現在およそ約8割の企業が、従業員の慶弔に対する配慮として、慶弔休暇や慶弔見舞金制度などを導入しています。こうした制度は、従業員の心理的なサポートやエンゲージメント向上につながるとされています。

    まだ慶弔休暇や慶弔見舞金制度を導入していない企業は、ぜひ当記事を参考に自社の制度を見直してみるとよいでしょう。

    また、いざというときに慌てることのないよう、ビジネスパーソンとして慶弔ごとにおけるルールやマナーについても理解しておくことをおすすめします。