直行直帰における労働時間とは? ルールの決め方や移動時間の考え方を解説
直行直帰とは、会社に立ち寄らずに自宅から直接取引先や作業現場へ出向き、業務が終了したらそのまま自宅に帰る働き方です。外回り営業や現場仕事が多い職種において、直行直帰制度を導入している企業もあるでしょう。
直行直帰により従業員の時間を有効活用できる一方で、労働時間の管理が複雑になるため、労務トラブルに発展するケースも少なくありません。
本記事では、直行直帰における労働時間の捉え方や管理方法を詳しく解説します。直行直帰について正しく理解し、適切に従業員の労働時間を管理していきましょう。
直行直帰とは
直行直帰とは、本社や支社など通常の就業場所には出社せず、自宅から直接取引先や作業現場へ出向き、業務が終了しても会社に立ち寄らず自宅へ戻ることです。
特に、会社に立ち寄ると約束の時間に遅れてしまう外回り営業や、現場が自宅の近くにある作業員などの職種で導入されています。
直行直帰制度を導入していることが多い職種や業種は、以下の通りです。
- 営業職
- ホームヘルパーや在宅介護スタッフ
- ベビーシッター
- 家庭教師
- 建設業の従業員
顧客を訪問する外回りの多い営業職をはじめ、利用者の自宅を訪問するホームヘルパーや在宅介護スタッフ、ベビーシッター、家庭教師、現場での作業に携わる建設業などが挙げられます。
直行直帰制度を導入することによるメリットとデメリットは以下の通りです。
メリット | デメリット |
---|---|
・時間を有効活用できる ・従業員の裁量でスケジュールを組める ・従業員が主体的に働ける | ・労働時間を把握しづらい ・業務プロセスが不透明 ・自己管理能力が試される |
直行直帰することで出退勤にかかる時間を短縮し、限られた業務時間を有効活用できます。一方で、従業員の正確な労働時間を把握、管理しづらいというデメリットがあります。
直行直帰における労働時間について
直行直帰すると会社で打刻ができないため、タイムカードやICカードを用いた労働時間の記録はできません。しかし、企業には従業員の労働時間を正確に管理する義務があります。
直行直帰においても労働時間を正しく把握するために、担当者に求められる事前知識を解説します。
労働時間の定義
労働基準局のガイドラインによると、労働時間は以下の通り定義されています。
労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間のことをいい、使用者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たる
引用:『労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドラインについて』厚生労働省
定義を踏まえると、労働時間には以下の2点が該当すると考えられるでしょう。
- 使用者の指揮命令下に置かれている時間
- 使用者の指示によって労働者が業務にあたる時間
労働者が企業や上司の指揮命令下に置かれているか否かが、労働時間を判別するポイントです。つまり、出社や帰宅のための移動時間は労働時間に含まれません。
直行直帰における移動時間は労働時間に含まれる?
従業員が直行直帰すると、企業は何時に出勤して何時に業務を終えたのかを把握しにくいという課題があります。特に、移動時間を労働時間として扱えるのか、判断が難しい場合もあるでしょう。
直行直帰時における移動時間を、労働時間に含むか否かの基準は以下の通りです。
移動時間が労働時間に含まれる | 移動時間が労働時間に含まれない |
---|---|
・移動中も業務を進めている ・会社の指示にしたがっている | ・移動時間を自由に使っている ・会社や上司による指示でない |
それぞれのケースについて詳しく解説します。
含まれる場合
直行直帰の移動時間を労働時間に含む場合は、主に以下の2つです。
- 移動中も業務を進めている
- 会社の指示にしたがっている
移動中に業務を進めている典型的な例には、電話やメールの対応、または顧客とともに移動するケースがあります。
移動しながら機密書類を管理したり、取引先との会食後に直帰したりする場合も、会社の指示にしたがっていると考えられ、業務の一環とされる可能性が高いです。
たとえば、所定労働時間が9時から17時の従業員を例に考えてみましょう。従業員が上司の指示により、8時から現場に直行し、19時まで接待をして直帰したとします。この場合、労働時間は8時から19時までとされ、3時間分の残業手当が発生します。
会食後に顧客とともに移動した時間も労働時間に含まれ、残業手当の対象となることが一般的です。
含まれない場合
直行直帰の移動時間が、労働時間に含まれない場合は、主に以下の2つです。
- 移動時間を自由に使っている
- 会社や上司による指示でない
移動中に仮眠をとったり、読書をしたりして自由に過ごしていると、移動時間を自由に使えていると判断します。
会社や上司による指示でないとは、従業員みずから判断したり、同僚と相談したりしながら現場へ直行するケースです。
直行直帰できるのにもかかわらず、従業員自身の判断でどこかに立ち寄るなど、移動が会社の指示によるものではない場合も、労働時間に含まれません。具体的には、移動中に私用でショッピングをしたり、カフェで休憩したりする時間が該当します。
通常の通勤時と同様、移動時間に私的な事情で寄り道してしまうと賃金は発生しません。
直行直帰における労働時間の数え方
労働時間は、原則として移動時間を含まず、業務の開始時刻から終了時刻までを数えるものです。しかし、労働時間が所定労働時間に満たないと、実務上は所定の時間分働いたものとして集計することがあります。
直行直帰における労働時間の基本的な考え方は以下の通りです。
平日に直行した場合 | 最初の取引先に訪れた時間=始業時間 ※所定の始業時間の方が早い場合は、所定の始業時間 |
平日に直帰した場合 | 最後の訪問先を出た時間=終業時間 ※所定の終業時間よりも早く出た場合は、所定の終業時間 |
休日に直行直帰した場合 | 労働時間=客先での対応時間のみ ※移動時間は労働時間に含まない |
一般的に、平日に取引先や訪問先へ直行したら、最初に訪れた時間を始業時間とします。しかし、就業規則に定められた始業時間よりもあとに訪問した場合は、所定の始業時間をそのまま用いることが多いでしょう。
また、平日に取引先や訪問先から直帰したら、最後に訪れた取引先を出た時刻を終業時間とします。ただし、就業規則が定める終業時間よりも早く出た場合は、所定の終業時間を用いるのが一般的です。
休日出勤で取引先へ直行直帰した場合は、平日と同様に原則として移動時間は労働時間に含めず、取引先で業務にあたった時間のみを数えます。ただし、長時間の移動に対して労働時間が極端に短い場合には、手当を出す企業も見られます。
直行直帰における労働時間の管理ルール
続いて、直行直帰における労働時間を正しく管理するためのポイントを解説します。
始業時間・終業時間を明確にする
従業員に直行直帰させる場合は、労働時間が曖昧(あいまい)になりがちなので、あらかじめ始業時間と終業時間を明確に定めることが大切です。
どこからどこまでが労働時間であるかをわかりやすく提示するためにも「平日に直行直帰するケース」「休日出勤として直行直帰するケース」など、想定される事例を踏まえて就業規則を定めましょう。
事業場外みなし労働時間制を採用する
事業場外みなし労働時間制とは、会社の外で仕事をした際に、所定の時間分労働したものと考える制度です。
事業場外みなし労働時間制が認められる条件は、以下の2つです。
- 労働時間の算定が困難である
- 会社以外の場所で働いている
たとえば、所定労働時間が9時から18時(休憩1時間を含む)である従業員に対して、以下の場合、どちらも8時間働いたものとします。
- 9時から15時までしか働かず、実働5時間であった
- 9時から21時まで計11時間働いた
このように、実際に働いた時間が所定労働時間の8時間より短くても長くても、8時間労働したと考えます。
事業場外みなし労働時間制のメリットは、実際の労働時間を把握しにくい環境でも、労働時間を一定として算出できることです。一方で、実働時間が反映されないため、従業員の働きすぎに注意する必要があります。
ただし、以下の2つの条件を満たせば、事業場外みなし労働時間制でも、残業手当が支払われます。
- 事業場内で労働に従事していた
- 事業場内で把握した労働時間とみなし労働時間の合計が法定労働時間を超える
みなし労働時間が9時間や10時間など、あらかじめ設定されている法定労働時間を超えている場合も、超過分の残業手当の支払いが必要です。
直行直帰届出書を提出してもらう
直行直帰を認める際に、多くの企業では「直行直帰届出書(申請書)」を事前に提出し、承認を得るルールを設けています。
営業のように頻繁に外回りがある職種では、口頭での承認が許されることもあります。しかし、日常的に直行直帰を採用していない職場では、効率的な管理のためにも、事前申請のルールを明確にしておくとよいでしょう。
クラウド型勤怠管理システムで打刻してもらう
従業員の直行直帰を適切に管理するなら、勤怠管理システムの導入も一案です。
クラウド型システムなら、スマートフォンやタブレットなどのデバイスを通じて、いつでもどこからでも勤怠の記録や管理ができるのが特徴です。
インターネットにつながる環境であれば、簡単に始業時間と終業時間を打刻できるため、外出先や出張先でも正確な時間の管理に役立ちます。
直行直帰を含めた勤怠管理の効率化や、不正打刻などに課題を抱えている企業は、導入を検討されてはいかがでしょうか。
直行直帰における労働時間管理はルールの徹底を
直行直帰を導入している企業は、始業時間と終業時間を明確にし、就業規則で定めたルールに沿って適切に労働時間を管理しなければなりません。
直行直帰する従業員のスケジュールを共有したり、日報を提出させたりして、各従業員の労働時間を見える化することも大切です。
紙やタイムカードなどのアナログな手法で勤怠管理をしている企業は、クラウド型勤怠管理システムの導入も視野に入れてみましょう。
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勤怠管理は従業員を雇う企業の義務といえます。集計ミスによる給与の支払い間違いや労務コンプライアンス違反などのトラブルを避けるためにも、ぜひご検討ください。
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