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フレックスタイム制の清算期間とは? 最長3か月まで延長するメリット・デメリットや残業代の計算方法をわかりやすく解説

フレックスタイム制の清算期間とは? 最長3か月まで延長するメリット・デメリットや残業代の計算方法をわかりやすく解説

フレックスタイム制における清算期間とは、従業員の労働時間を管理するために、あらかじめ設定する期間のことです。2019年の法改正により、フレックスタイム制の清算期間は最長3か月まで設定できるようになりました。

フレックスタイム制の仕組みは少し複雑なので、清算期間を延長するメリットについて、いまいち理解しきれないという方もいるでしょう。

そこで本記事では、フレックスタイム制の清算期間の仕組みや、期間を延長する際のルールを解説します。フレックスタイム制における残業代の計算方法も紹介するので、労務や給与計算を担当する方は、ぜひお役立てください。

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    フレックスタイム制の清算期間とは

    フレックスタイム制の清算期間とは、実際の労働時間と、あらかじめ設定された総所定労働時間とを調整するための期間です。

    フレックスタイム制では、従業員は1日の労働時間を自由に決定できます。ただし、仕事が終わればあとは労働しなくてよいわけではなく、あらかじめ決められた期間内における総労働時間分は働かなければなりません。

    従業員が働くべき総労働時間と実際の労働時間の清算を行うための期間が清算期間です。

    【2019年4月改正】清算期間が最長3か月まで延長

    フレックスタイム制の清算期間は、もともと最長1か月までと定められていましたが、2019年4月の法改正以降は、最長3か月までの延長が認められるようになりました。

    これにより、企業や個人の都合に合わせた柔軟な制度設計ができ、フレックスタイム制をより有効活用しやすくなったといえるでしょう。

    清算期間が1か月を超える場合は労使協定の届け出が必要

    そもそもフレックスタイム制を導入するには、以下の2つの条件を満たさなければなりません。

    • 就業規則に規定すること
    • 労使協定で所定の事項を定めること

    清算期間が1か月を超える場合は、上記に加えて、労使協定の「届け出」も必要です。労使協定に所定の事項を定めたうえで、管轄する労働基準監督署長に届け出をします。

    届け出を怠ると30万円以下の罰金を科せられる恐れがあります。清算期間を2か月や3か月などに設定する場合は注意しましょう。

    フレックスタイム制の清算期間を最長3か月まで延長するメリット

    清算期間を長めに設定すると、以下のメリットが期待できます。

    • 働き方の自由度が高まる
    • 採用活動で求職者にアピールできる
    • 残業代の削減につながる

    期間を2か月や3か月に設定すると、従来のフレックスタイム制と比べて、働き方の自由度がさらに高まります。

    たとえば、7月から8月が繁忙期の業界なら、繁忙期中は長く働き、その分9月は比較的余裕を持って働いてリフレッシュにあてることも可能です。子どもがいる家庭なら、春休みや夏休みの間は、いつもより早めに仕事を終えるように調整し、家族で過ごす時間を増やすこともできるでしょう。

    仕事とプライベートを両立できる働き方は、求職者へのアピールポイントとして有効です。他社との差別化として導入すれば、より優秀な人材の確保につながります。

    清算期間を延長することで、残業代の支払いが不要になるケースも考えられます。月ごとの労働時間が大きく変動する業界では、特にメリットを感じやすいでしょう。

    フレックスタイム制の清算期間を最長3か月まで延長するデメリット

    フレックスタイム制における清算期間の延長にはメリットがある一方、以下のようなデメリットも存在します。

    • 勤怠管理が複雑になる
    • 自己管理できないと業務効率が低下する可能性がある

    フレックスタイム制の清算期間が1か月を超えても、労働時間を月ごとに極端に偏らせることはできません。

    清算期間を2か月や3か月とするには、以下の2つの条件を満たす必要があります。

    • 清算期間における総労働時間が法定労働時間を超えないこと
    • 1か月ごとの労働時間が週平均50時間を超えないこと

    基準となる時間を超えた場合は時間外労働と見なされ、企業には割増賃金の支払い義務が生じます。

    フレックスタイム制で働く従業員であっても「休日出勤」に対しては、法定の割増率による割増賃金の支払いが必要です。「月60時間を超える時間外労働」に対しても、通常の労働者と同様に50%以上で計算した割増賃金を支払う必要があります。

    そのため、1か月を超えた清算期間を設定すると、従来と比べて勤怠管理が複雑になってしまいます。勤怠情報を正確かつ効率的に管理するなら、勤怠管理システムの導入がおすすめです。

    フレックスタイム制の清算期間が延長されると、従業員は従来よりも長いスパンで自身の仕事や労働時間を管理しなければなりません。自己管理が苦手な人だと、労働時間が特定の月に偏ってしまったり、業務効率が低下したりする恐れもあるでしょう。

    清算期間における法定労働時間の計算方法・仕組み

    フレックスタイム制の清算期間における所定労働時間は、法定労働時間の総枠を超えないように設定する必要があります。

    総枠とは、清算期間内における法定労働時間の上限のことです。たとえば、暦日数が31日の月における法定労働時間の総枠は177.1時間となり、所定労働時間はこの範囲におさまるように設定しなければなりません。

    所定労働時間は、次の手順で決定します。

    1. 清算期間の法定労働時間の総枠を計算する
    2. 法定労働時間の総枠をもとに総労働時間を決める

    清算期間が最長1か月の場合

    労働基準法により、1週間あたりの法定労働時間は、週40時間までと定められています。フレックスタイム制における清算期間の法定労働時間の総枠は、以下の式で計算します。

    (清算期間の暦日数÷7)×40時間

    清算期間が1か月の場合、その月の暦日数に応じた計算結果は以下の通りです。

    暦日数法定労総時間の総枠
    31日177.1時間
    30日171.4時間
    29日165.7時間
    28日160.0時間

    たとえば、8月(暦日数31日)の実労働時間が180時間である場合「180時間-177.1時間=2.9時間分」が時間外労働として扱われます。

    清算期間が最長3か月の場合

    フレックスタイム制の清算期間が2か月や3か月の場合は、その期間における暦日数を7で割り、40時間(法定労働時間)を乗じて所定労働時間を計算します。

    清算期間が2か月の場合
    暦日数法定労総時間の総枠
    62日354.2時間
    61日348.5時間
    60日342.8時間
    59日337.1時間
    清算期間が3か月の場合
    暦日数法定労総時間の総枠
    92日525.7時間
    91日520.0時間
    90日514.2時間
    89日508.5時間

    フレックスタイム制の清算期間が1か月超の場合は、期間内の最後の月に清算します。たとえば、1か月あたりの法定労働時間の総枠を超える月があっても、期間全体の総枠を超えなければ基本的には問題ありません。

    ただし「1か月ごとの労働時間が週平均50時間を超えない」という制限もあるため、特定の月に労働時間が偏りすぎないように注意が必要です。

    清算期間において実労働時間に過不足があった場合

    フレックスタイム制における清算期間内の実労働時間に過不足があったら、法的なルールにしたがって処理します。

    清算期間が1か月の場合と、1か月を超える場合で、それぞれの対処法を確認してみましょう。

    清算期間が1か月以内の場合

    清算期間が1か月以内で、実労働時間が総労働時間を超過した場合は、その月の賃金に上乗せして支給します。翌月分への繰り越しは認められていないため注意しましょう。

    一方、実労働時間が総労働時間を下回った場合は、次のいずれかの方法で処理します。

    • 不足分の賃金を差し引く
    • 不足分の時間を、翌月の総労働時間に加算する

    清算期間が1か月を超える場合

    清算期間が1か月を超える場合は、月単位ではなく、2か月や3か月といった期間単位で過不足を清算します。ただし、清算期間内で労働時間を相殺するためには、次の2つの条件を満たさなければなりません。

    • 清算期間内の総労働時間が週平均40時間以内であること
    • 1か月あたりの労働時間が週平均50時間以内であること

    たとえば、1か月と2か月目の労働時間が週平均34時間、3か月目の労働時間が週平均51時間のケースを考えてみましょう。

    清算期間内の総労働時間の週平均は40時間以内におさまっていますが、3か月目については週平均が50時間を超えているため、残業代を支払わなければなりません。

    1か月の実労働時間が総労働時間より短いと、期間内での相殺が可能です。

    フレックスタイム制の時間外労働の計算方法

    フレックスタイム制における時間外労働は、次の3つのステップで計算します。

    1. 清算期間の実労働時間を確認する
    2. 実労働時間が法定労働時間を超えているか確認する
    3. 1と2で算出した残業時間を合算する

    1.清算期間の実労働時間を確認する

    まずは、清算期間における実労働時間を計算し、週平均50時間を超えていないか確認します。実労働時間が週平均50時間となる労働時間は、以下の式で計算が可能です。

    50時間×(月の暦日数÷7)

    たとえば、8月は暦日数が31日なので、実労働時間が週平均50時間となるのは「50時間×(31÷7)=221.4時間」と計算できます。

    もしも8月の実労働時間が225時間だった場合、残業時間は以下の通りです。

    225-221.4=3.6(時間)

    2.実労働時間が法定労働時間を超えているか確認する

    次に、フレックスタイム制の清算期間における実労働時間が法定労働時間を超えていないか確認します。法定労働時間を超えた分の残業時間は、以下の式で計算が可能です。

    清算期間内の実労働時間-週平均50時間を超えた労働時間-清算期間内の法定労働時間の総枠

    7月から9月までの法定労働時間の総枠は「92日÷7日×40時間=525.7時間」です。7〜9月の実労働時間が540時間だったとすると、残業時間は次のように計算します。

    540-3.6-525.7=10.7(時間)

    3.1と2で算出した残業時間を合算する

    最後に、ここまでに計算した残業時間を合算します。

    3.6+10.7=14.3(時間)

    清算期間の仕組みを理解し、残業代を正しく計算

    フレックスタイム制における清算期間とは、従業員が働くべき労働時間を定めるための期間です。

    2019年の法改正により、清算期間は最長3か月までとすることが認められました。月をまたいだ労働時間の相殺が可能であるため、より自由な働き方の実現につながります。

    ただし、場合によって月ごとに残業代が発生することもあるため、フレックスタイム制における清算期間の延長は、管理が複雑になる可能性もあります。

    フレックスタイム制も含めた労働時間の管理では、勤怠管理システムを導入するのも一案です。簡単な設定により、残業時間や残業代を自動計算できるため、業務効率化につながります。働きやすい環境づくりと効率的な勤怠管理の両立に向けて、システムの導入も検討してみてはいかがでしょうか。

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