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フレックスタイム制での就業規則のルールをわかりやすく|変更なしでもよい? 規定例や注意点も

フレックスタイム制での就業規則のルールをわかりやすく|変更なしでもよい? 規定例や注意点も

フレックスタイム制を導入するには、ルールを明確に定め、就業規則にその内容と必要事項を明記しなければなりません。そして作成した就業規則は、労働基準監督署長に届け出たうえで、従業員に周知する必要があります。

本記事では、フレックスタイム制の導入において必要なしかるべき手順を解説します。フレックスタイム制の導入条件をはじめ、就業規則に明記すべき内容や注意点、規定の例文まで紹介しますので、人事労務担当者は参考にしてください。

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    フレックスタイム制の導入条件

    フレックスタイム制を導入するためには、以下の2つの条件を満たす必要があります。

    • 就業規則に規定すること
    • 労使協定に所定事項を定めること

    就業規則や労使協定で規定せずに、フレックスタイム制を導入するのは違法であり、制度の効力は認められません。条件を満たしていても、満18歳未満の年少者には適用できない決まりとされているので注意しましょう。

    就業規則に規定すること

    フレックスタイム制を導入するためには、就業規則(またはそれに準ずるもの)に、ルールを明記する必要があります。その際は「始業時間・終業時間の決定を従業員の判断に委ねる」という内容を、必ず明記しなければなりません。

    作成・変更した就業規則は、労働基準監督署に届け出て、従業員に漏れなく周知します。届け出を怠ってしまうと、罰則が科される可能性もあるため、確実に行いましょう。

    労使協定に所定事項を定めること

    フレックスタイム制を導入するためには、労使協定の締結も不可欠です。

    労使協定とは、労働者側と使用者側の間で合意した労働条件に関するルールを、書面契約した協定です。フレックスタイム制の導入にあたり、次の4つの事項について労使間で約束ごとを取り決め、協定を結ばなければなりません。

    • 対象となる労働者の範囲
    • 清算期間と起算日
    • 清算期間内の総労働時間
    • 1日の標準労働時間

    フレックスタイム制でコアタイムやフレキシブルタイムを採用する場合は、それぞれの時間帯を定める必要があります。また、清算期間が1か月を超える場合には、労使協定を労働基準監督署長へ届け出ることが必要です。

    フレックスタイム制における就業規則の注意点

    就業規則にフレックスタイム制のルールを明記する際は、以下のポイントに注意しましょう。

    • 始業・終業時間について明記する
    • 遅刻や早退の取り扱いについて規定しておく
    • 労働日を規定している場合は出勤しなければならない
    • 就業規則を変更したら労働基準監督署長に届け出る
    • 就業規則の変更について社内周知を徹底する

    始業・終業時間について明記する

    フレックスタイム制を導入するためには、就業規則に「始業時間・終業時間の決定を従業員の判断に委ねる」という内容を明記しなければなりません。始業時間・終業時間のうち片方だけでなく、両方を従業員が決定できる旨を記載する必要があります。

    たとえば「始業時間の決まりはないが、1日8時間働くこと」という書き方では、終業時間を従業員の判断に委ねていないことになるため、フレックスタイム制とは認められません。

    就業規則に明記しておけば、フレックスタイム制でも始業時間や終業時間を記した勤務予定表を提出してもらうことも可能です。従業員が予定通りに労働しなかったとしても、企業側から指導や不当な取り扱いをすることは禁じられています。

    コアタイムやフレキシブルタイムを設定する場合は、その時間帯もあわせて明記しておきましょう。

    遅刻や早退の取り扱いについて規定しておく

    フレックスタイム制では始業と終業の時刻を従業員が決定するため、基本的に遅刻や早退という概念はありません。

    ただし、コアタイムを設けている場合は、コアタイムの開始に遅れると遅刻、コアタイムの途中で退社すると早退とされます。遅刻や早退があっても、清算期間内における総労働時間に達していれば、給与支給額を減額することはありません。

    しかし、それではフレックスタイム制におけるコアタイムを設定する意味がなくなってしまうため、なかには遅刻や早退にペナルティを科したり、人事評価に反映させたりする企業もあります。ペナルティを科す場合は、就業規則に明記する必要があります。

    労働日を規定している場合は出勤しなければならない

    フレックスタイム制でコアタイムを導入していなくても、就業規則で労働日に設定されている日については、出勤する義務があります。清算期間内の総労働時間を満たしている場合も同様です。

    たとえば、月曜日から金曜日を労働日としていると、従業員から「月曜日~木曜日に多く働いたので、金曜日は出勤しない」という申し出を受けたときは、欠勤と扱います。ただし、実労働時間が清算期間内の総労働時間に達している場合は、給与支給額を減額することは認められません。

    就業規則を変更したら労働基準監督署長に届け出る

    フレックスタイム制の導入にともない、就業規則を変更したら、管轄の労働基準監督署長に届け出る必要があります。

    変更後の就業規則を2部用意し、郵送または窓口持参のいずれかの方法で提出しましょう。1部は労働基準監督署内で保管され、もう1部は企業控えとして返却されます。

    また、就業規則変更の届け出は電子申請によることも可能です。ただし、従業員が10人未満の企業は、就業規則を変更しても届け出は必要ありません。

    就業規則の変更について社内周知を徹底する

    就業規則は、従業員に周知することで初めて効力を持ちます。

    就業規則を制定したときと同様に、フレックスタイム制の導入により変更した際も、内容を従業員に周知しなければなりません。特に、フレックスタイム制の考え方は少し複雑なので、わかりやすい説明を心がけることが大切です。

    労使間トラブルを防ぐためにも、フレックスタイム制の仕組みや始業・終業時間の決定方法などを従業員が理解できるように対応しましょう。

    フレックスタイム制における就業規則の規定例

    フレックスタイム制における就業規則の規定例を紹介します。フレックスタイム制を導入する際は、次のような内容を就業規則に盛り込みましょう。

    (適用範囲)
    第○条
    システム開発部門および営業部門に所属する従業員に対して、フレックスタイム制を適用する。

    (清算期間)
    第○条
    清算期間は1か月間とし、毎月21日を起算日とする。

    (清算期間における総労働時間)
    第○条
    清算期間における総労働時間は、月の日数に応じて次の通りとする。
    ・1月・3月・5月・7月・8月・10月・12月:177時間
    ・4月・6月・9月・11月:171時間2月:160時間(うるう年は165時間)

    (標準労働時間)
    1日の標準労働時間は、8時間とする。

    (始業および終業時刻)
    第○条
    始業および終業時刻は、各従業員が自由に決定できるものとする。

    (コアタイム)
    第○条
    コアタイムは10時から15時までとする。なお、12時から1時までの休憩時間は除く。

    (フレキシブルタイム)
    第○条
    フレックスタイム制が適用される従業員については、始業・終業時刻を従業員の決定に委ねる。なお、フレキシブルタイム(従業員の決定に委ねる時間帯)は、次の通りとする。
    ・始業時間帯:7時から10時
    ・終業時間帯:15時から20時

    (時間外労働)
    第○条
    清算期間における実労働時間が総労働時間を超えた場合は、賃金規程に定めるところにより割増賃金を支給する。

    (遅刻・欠勤)
    第○条
    フレックスタイム制が適用される従業員の遅刻・欠勤については、以下の通りとする。
    ・コアタイムの開始時刻に遅れて出社した場合は遅刻とする
    ・コアタイムの終了時刻より早く退社した場合は早退とする
    ・コアタイム中に勤務しなかった場合は欠勤とする

    (その他)
    第○条
    その他の事項については、労使間の協議に従うものとする。

    ※就業規則に明記すべき内容は、制度設計により異なります。

    労使協定を就業規則の一部とする場合

    労使協定を就業規則の一部とする場合は「詳細は労使協定に記載の通り」といった旨を明記することにより、フレックスタイム制を規定する就業規則を簡潔にまとめられます。

    第○条
    労使協定の締結により、フレックスタイム制を適用する従業員については、労使協定で定める範囲において、始業・終業時刻を自由に決定できる。

    フレックスタイム制におけるその他の事項については、別添の労使協定の定める内容に準ずる。

    フレックスタイム制における就業規則のポイント

    フレックスタイム制について就業規則に明記する際は、次のポイントに注意しましょう。

    • コアタイムやフレキシブルタイムは企業によって異なる
    • 労働時間は就業規則による
    • 就業が必須となる時間帯の有無はコアタイムによる

    コアタイムやフレキシブルタイムは企業によって異なる

    1日のうち就業が必須となる時間帯であるコアタイムと、業務の開始・終了が従業員の判断に委ねられるフレキシブルタイムは、企業が自由に設定できます。

    コアタイムが長すぎると、フレックスタイム制と見なされない可能性があるため注意しましょう。

    コアタイムは必須ではないため、すべての時間をフレキシブルタイムとする「スーパーフレックス制」を採用することもできます。

    労働時間は就業規則による

    フレックスタイム制における1日の標準労働時間は、企業の就業規則により異なります。標準労働時間に下限の決まりはないものの、上限については、労働基準法で定められた「1日8時間・週40時間」の範囲におさまるように設定しなければなりません。

    ただし、労働時間が「1日8時間・週40時間」を超えたからといって、ただちに残業代は発生しません。清算期間内における総労働時間を超えたか否かで判断します。

    フレックスタイム制において1日10時間労働する日があったとしても、別日の労働時間を減らせば、残業代が発生しないケースもあるでしょう。

    就業が必須となる時間帯の有無はコアタイムによる

    コアタイムが設定されている場合、フレックスタイム制の対象者であっても、設定された時間帯における就業が義務づけられます。

    一方、コアタイム以外のフレキシブルタイムは、基本的に従業員が開始・終了を決定できます。企業によっては、フレキシブルタイムの時間帯をある程度制限していることもあるでしょう。

    フレックスタイム制の導入時は、就業規則の作成を忘れずに

    フレックスタイム制を導入するためには、労使協定に所定事項を定めたうえで、就業規則に「フレックスタイム制を適用する従業員については、始業・終業時間を本人の判断に委ねる」という旨を記載しなければなりません。

    ほかにも、標準労働時間や清算期間、コアタイムやフレキシブルタイムなど、明記すべき事項があります。

    作成した就業規則は労働基準監督署長に提出し、その内容を従業員に周知することで初めて効力を持つため注意が必要です。従業員とのトラブルを防ぐためにも、制度の仕組みやポイントなどをわかりやすく説明しましょう。

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