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勤務間インターバル制度の勤怠管理における扱い方|制度の概要や導入方法、目安時間も解説

勤務間インターバル制度とは? 概要を解説

「勤務間インターバル制度」は、働き方改革の一環として近年注目を集めており、従業員のワークライフバランス向上のために導入を検討している企業は多くみられます。しかし、導入方法や勤怠管理上の扱いについて不明確な人もいるでしょう。

本記事では、勤務間インターバル制度の概要や導入時に管理者が注意したいポイント、勤怠管理上の取り扱い方法について解説します。


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    勤務間インターバル制度とは? 概要を解説

    はじめに、制度の概要について解説します。

    次の勤務までの間に「一定の休息時間」を設ける制度

    勤務間インターバル制度とは、当日の退勤時刻から翌日の出勤時刻の間に、一定時間以上の休息時間(インターバル)を確保する制度です。その日の終業時間に関係なく、従業員が生活時間や睡眠時間を確保できるようにする目的で、一部の企業で導入されています。

    残業が発生した場合には、従業員のワークライフバランスを維持するために、翌日の始業時間を適宜繰り下げるなどの柔軟な対応が行われています。

    参照:『働き方・休み方改善ポータルサイト』厚生労働省

    2019年から企業の努力義務に

    働き方改革関連法の制定により、労働時間等設定改善法が改正され、勤務間インターバル制度の導入は企業の努力義務とされています。

    厚生労働省が主導となって勤務間インターバル制度の導入を推奨しており、2025年までに導入企業を15%以上とすることを目標に普及を進めています。

    しかしこれはあくまで努力義務であって、導入するかどうかは、事業主の判断に任されています。そのため、導入しなくても罰則を科されることはありません。

    参照:『勤務間インターバル制度をご活用ください』厚生労働省

    勤務間インターバル制度が注目されている背景

    働き方改革の一環として、勤務間インターバル制度が注目されている背景には、長時間労働が深刻化し、過労死の問題が大きく取り沙汰されたことがあります。

    長時間労働や過重労働によって、心身のバランスを崩してしまう従業員も少なくなく、従業員の健康維持が企業にとって大きな課題となりました。

    厚生労働省は過労死の要因として「勤務間インターバルがおおむね11時間未満」という内容を挙げています。具体的には、残業により21時に退勤し、翌朝は7時半出社の場合が該当します。

    インターバル時間の確保目安

    勤務間インターバル制度を導入する際、具体的にどのくらいの時間のインターバルを設けたらよいのか気になる企業は多いでしょう。厚生労働省は「9時間以上11時間未満」または「11時間以上」を成果目標として掲げています。

    また、すでに制度が導入されているEU加盟国でも、11時間のインターバル時間を基準としています。

    実際の運用上11時間以上の確保が難しい場合は、自動車運転者に適用されている「9時間」を目安とし、実現可能な時間を設定するとよいでしょう。

    参照:『働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)』厚生労働省

    勤務間インターバル制度を導入する4つのメリット

    勤務間インターバル制度を導入することで期待できるメリットを4つご紹介します。

    従業員の健康リスク低減

    勤務間インターバル制度を導入することにより、十分な休息時間を与えられるため、従業員の健康リスクが低減されます。一方、勤務間のインターバル時間が十分でないと、休息時間が短くなるため、睡眠時間が不足し、従業員の健康の確保が難しくなるでしょう。

    また、インターバル時間が短くなるにつれて、ストレス反応が高くなり、起床時に疲労感が残りやすいという研究結果もあります。勤務間に十分なインターバルを設けることは、近年深刻な社会問題となった長時間労働による過労死の防止策としても有効であるといえるでしょう。

    ワークライフバランスの充実

    勤務間に十分な休息時間を設けることにより、従業員がプライベートな時間を確保しやすくなるのも大きなメリットです。趣味の時間や家族との時間を確保しやすくなるため、ワークライフバランスの向上が期待できます。

    優秀な人材の確保・離職率の低下

    勤務間インターバル制度を導入すると、職場環境の改善が期待できます。

    無理なく働ける職場環境は、採用活動において企業の魅力としてアピールできるため、優秀な人材の確保や定着につながるでしょう。また、職場環境の改善により従業員満足度が向上し、離職率が低下する効果も期待できます。

    従業員の生産性向上

    十分な休息時間を確保できるため、仕事のオンオフを切り替えやすくなり、仕事とプライベートにメリハリをつけられるのもメリットの一つです。その結果、従業員の集中度が高まり、職場全体の生産性向上が期待できるでしょう。

    勤務間インターバル制度の導入事例・企業の取り組み

    厚生労働省の『働き方・休み方改善ポータルサイト』では、勤務間インターバル制度の導入事例が紹介されています。本記事では導入事例を2つご紹介します。勤務間インターバル制度の導入を検討している担当者は、参考にしてみてください。

    参照:『勤務間インターバル制度導入事例一覧』

    畜産食料品製造業者Aの取り組み

    畜産食料品製造業者Aは、全国各地に事業所があり、事業所ごとに労使協定を結んでいるため、インターバル時間を全事業所で統一するのではなく、8〜10時間と幅をもたせて設定をしました。インターバル時間が始業時間に及ぶ場合は、繰り下げた終業時間が遅くならないように配慮しています。

    また、従業員向けのルールブックを作成し、年に2回は労働組合との話し合いの場を設けたり、課題や問題を抱える部署へ人事労務担当者が個別にヒアリングしたりなどの取り組みも実施しています。

    製造業者Bの取り組み

    製造業者Bでは、勤怠管理システムを導入し、当日の終業時刻から次の出勤時刻までのインターバル時間を自動で算出する仕組みを整えました。

    設定したインターバル時間を確保できているかどうか判別でき、インターバル時間が確保されていないと、本人にアラートがいく仕様になっています。実際の運用を円滑に進めるためには、事業形態に即した適切なインターバル時間を設定することが重要です。

    同社では、厚生労働省の運用マニュアルを参考にしつつ、繁忙期に時間外労働が発生しやすい部門に対し、ヒアリングを実施したうえで適切なインターバル時間を設定しており、その点でも好事例であるといえます。

    勤務間インターバル制度を導入する際のポイント

    勤務間インターバル制度を導入するにあたり、労働の実態に合ったルールづくりと円滑な運用のため、労使間の話し合いをベースとして、PDCAを回しながら制度を運用していくことが大切です。

    そこで、制度導入の際のポイントについて解説します。

    参照:『勤務間インターバル制度導入・運用マニュアル』厚生労働省

    まずは現状把握と課題抽出から

    制度内容を検討する前に、まずは労働状況の現状把握と、課題を抽出することから始めましょう。先にルールを策定するのではなく、労働時間に関する現状を現場へのヒアリングなどを通して把握しつつ、制度導入の意義を確認したうえで、インターバル制度を導入するか検討することが重要です。

    検討すべき7つの項目

    制度を設計する際、以下の7つの項目を検討しましょう。

    1. 適用対象の設定
    2. インターバル時間数の設定
    3. インターバル時間の確保によって、翌日の所定勤務開始時刻を超える場合の取り扱いの設定
    4. インターバル時間を確保できないことが認められるケースの設定
    5. インターバル時間の確保に関する手続きの検討
    6. インターバル時間を確保できなかった場合の対応方法の検討
    7. 労働時間管理方法の見直し

    労働実態の現状や課題を踏まえ、労使間でよく話し合って制度内容を策定することが重要です。

    制度の根拠規定を整える

    制度を形骸化させることなく確実に機能させるためには、就業規則などに明文化することが望ましいです。具体的な制度内容を設計したあとは、制度を導入するための根拠規定(就業規則や労働協約など)の整備を進めましょう。

    社内への周知を徹底する

    制度が整ったあとは、制度を機能させるために管理者や従業員に対して、制度内容を周知する必要があります。制度を促進するためだけでなく「制度の意義やルールがわからない」と悩む管理者や従業員たちの不安を解消するためにも、周知の徹底は重要です。

    また、勤務間インターバル制度によって、従業員の勤務時間などに変化が生じる場合があるため、必要に応じて顧客や取引先にも説明しておくことが望ましいでしょう。

    勤怠管理における勤務間インターバル制度の取り扱い

    勤務間インターバルの導入は勤務時間に影響するため、給与計算や勤怠管理に注意する必要があります。休息時間が通常の勤務時間に及ぶことがあるため、インターバル時間の確保によって始業時間が遅れた場合、終業時間も遅らせるのか、定時のままとするかによって給与計算に差が生じます。

    所定もしくは法定労働時間より少なくなったぶんに関しては、働いたとみなして給与を支払う方法と、給与から減額する方法の2通りがあります。

    これらの取り扱いについても、トラブルを防ぐために事前に労使間でしっかり話し合い、会社としてのルールを決めておくことが重要です。制度を導入すると勤怠管理が複雑になると予想されるため、勤怠管理の方法についても検討することが望ましいでしょう。

    勤務間インターバル制度を導入するなら、勤怠管理システム

    勤務間インターバル制度の導入によって、勤怠管理が複雑になる可能性があります。制度を円滑に運用するためには、各従業員の始業時間と終業時間を確実に把握しなければならず、紙やエクセルのタイムカードでは管理が困難になるかもしれません。

    しかし、勤怠管理システムを導入すれば、すべての従業員の勤怠管理を一括で管理できるようになり、制度の導入にともなう勤怠管理の課題解決が期待できます。

    導入支援の助成金を有効活用

    制度の導入にあたっては、導入支援の助成金の有効活用を検討してみるとよいでしょう。厚生労働省の「働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)」では、労務管理用ソフトウェアの導入や更新にともなう経費の一部が支給対象となっています。

    勤務間インターバル制度を新規に導入する中小企業が対象です。詳細については、厚生労働省のホームページやリーフレットをご参照ください。

    参照:『働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)』厚生労働省
    参照:『令和6年度「働き方改革推進支援助成金」勤務間インターバル導入コースのご案内』厚生労働省

    まとめ

    勤務間インターバル制度とは、当日の退勤時刻から翌日の出勤時刻の間に、一定時間以上の休息時間(インターバル)を確保する制度です。従業員の健康に配慮し、生活時間や睡眠時間を確保できるようにする目的で、2019年から企業の努力義務とされています。

    従業員の健康維持のために、勤務間インターバル制度の導入を検討する企業は多いものの、制度の導入には、勤怠管理や給与計算の複雑化がともないます。

    制度の策定と同時に、勤怠管理システムの導入や見直しを検討してみてはいかがでしょうか。

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