夜勤手当はなくても問題ない? 相場は? 深夜手当との違いや割増賃金の計算方法もわかりやすく解説

夜勤手当はなくても問題ない? 相場は? 深夜手当との違いや割増賃金の計算方法もわかりやすく解説

夜勤手当とは、夜間に働く従業員に支給する手当であり、企業が任意で導入する制度です。

夜勤は日勤より精神的にも肉体的にも負担がかかりやすく、必要な人材を確保しにくくなっています。そのため、人材確保などを目的として、法律で義務づけられた深夜手当とは別に夜勤手当を支給する企業が存在します。

本記事では、夜勤手当の概要や深夜手当との違い、夜勤手当の相場などを解説します。夜勤の勤務形態を採用する企業の方は、ぜひ参考にしてください。

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    夜勤手当とは? 

    夜勤手当とは、特定の夜間に働く従業員に対して企業が任意で支給する、自主的な報酬制度の一つです。夜勤手当の金額や対象となる時間帯は、法律で具体的に定められていないため、支給の条件や金額はそれぞれの企業が独自に決定します。

    1回の夜勤につき、一定額を支払う企業もあれば、夜勤帯1時間あたりの支給額を設定している企業もあります。

    夜勤手当の相場

    夜勤手当の相場は、数千円から2万円以内に設定していることが一般的なようです。ただし、業種や会社によって大きく変動し、一律に明確な金額を断定できません。数千円から2万円以内に設定していることが一般的なようです。

    たとえば、看護師の現場では、交替時間によって夜勤手当の金額が異なります。3交替制では4,000円から5,000円程度、2交替制では11,000円程度と、勤務時間の長さによって変動する場合が多く見られます。

    また、介護業界の夜勤手当の相場は、施設ごとにばらつきがあるものの、4,000~8,000円と報告されています。

    参照:『2020年介護施設夜勤実態調査結果』日本医療労働組合連合会
    参照:『2020年 病院看護実態調査 報告書』日本看護協会

    夜勤手当と深夜手当との違い

    同じ深夜労働に対して追加で支給される手当として、夜勤手当と深夜手当を混同してしまう方もいるかもしれません。夜勤手当と深夜手当は、法的に定義されているか否かという点で大きな違いがあります。

    夜勤手当深夜手当
    法律規定なし労働基準法による規定あり
    金額任意基本給の25%以上
    課税対象対象
    時間企業によって異なる22〜翌5時

    深夜手当とは

    深夜手当とは、深夜労働に対して支給することが、労働基準法により義務づけられている法定手当です。正式名称を「深夜割増賃金」といいます。

    雇用形態に関係なく支給されるものであるため、パートタイムやアルバイトなどの非正規雇用も支給対象です。

    法律での扱い

    深夜手当は、夜勤手当を制度として採用していない企業であっても、条件を満たすと必ず支給しなければならない手当です。

    従業員を深夜の時間帯(22時〜翌5時)に働かせた場合は、基本給に25%の深夜手当を上乗せした額を支払わなければなりません。

    深夜手当は労働基準法第37条で定められており、深夜労働があるにもかかわらず基本給しか支払わない企業は、罰則が課されるため注意しましょう。

    また、深夜手当は給与の一部として見なされるため、所得税や住民税の課税対象です。

    一方で、夜勤手当は法律で明確に定められておらず、企業が任意で自主的に支給する追加の報酬です。

    対象となる時間帯

    深夜手当の支給対象となる時間帯は、労働基準法において以下の通り定められています。

    深夜労働時間22〜翌5時

    上記の時間帯に働くことは深夜労働となり、企業は従業員に対して深夜手当を支給しなければなりません。

    夜勤手当の支給対象時間も、同様に22〜翌5時としている企業が多くあります。

    支給金額

    深夜手当の割増率は、労働基準法により基本給の25%以上と定められ、下回ることは認められていません。ただし、企業独自の規定として25%を超える手当を支給することは問題ありません。

    また、「深夜手当」という名称を使用していなくても、「夜勤手当」として25%以上の割増率を適用した賃金を支給していれば、「深夜手当」を支給していると見なされます。

    深夜手当(割増賃金)の計算方法

    深夜手当の支給額は基本給の25%以上と定められています。会社や業種、職種を問わず、労働基準法の規定に沿って同じ計算式で算出して支給されます。

    ここでは、3つの給与形態に分けて深夜手当の計算方法を紹介します。

    時給制

    時給制における深夜手当の計算方法は以下の通りです。

    1時間あたりの基本時給×割増率(1.25)×深夜労働時間

    日給制

    日給制の深夜手当は、1時間あたりの賃金額に深夜割増率と深夜労働時間をかけて算出します。たとえば、所定労働時間が8時間の場合は「日給÷8時間」で1時間あたりの賃金を求めます。

    計算式は以下の通りです。

    1時間あたりの賃金(日給÷所定労働時間)×割増率(1.25)×深夜労働時間

    月給制

    月給制の深夜手当も、日給制や時給制と考え方は同じです。まずは1時間あたりの賃金を算出し、深夜割増率と深夜労働時間をかけ算します。

    月給制の場合、1時間あたりの賃金は、月給の金額(所定内給与額)を1か月の所定労働時間数で割って求めます。しかし、暦の日数や祝日に応じて1か月の所定労働時間数は変動するため、まずは以下次の計算式で「平均」所定労働時間数を算出します。

    平均所定労働時間・・・(A) =(365日-年間休日)×1日の所定労働時間÷12か月

    平均所定労働時間を算出できたら、1時間あたりの賃金を求めて割増料金を計算します。

    1時間あたりの賃金(月給÷平均所定労働時間・・・(A))×割増率(1.25)×深夜労働時間

    夜勤のメリット

    一般的に「つらい」「きつい」と思われている夜勤は、従業員にどのようなメリットが考えられるでしょうか。代表的な3つのメリットを解説します。

    • 日勤より給料が高い
    • 日中の時間を活用できる
    • 通勤ラッシュを避けられる

    日勤より給料が高い

    夜勤をすると労働基準法で定められた深夜手当が基本給の25%以上支給されるほか、企業によっては独自の夜勤手当も加算される可能性があるため、日勤よりも高い給与で働けます。さらに、残業や休日出勤が発生した場合は、時間外手当や休日手当も加算されます。

    効率よく働きたい人や高収入を目指す人にとって、夜勤で働くメリットはあるといえるでしょう。

    また、夜勤は日勤に比べて働く従業員数が少なく静かなので、業務に集中しやすいという点も挙げられます。

    日中の時間を活用できる

    夜勤明けは昼間に余裕が生まれることが多いため、日中の時間を有効活用できる点もメリットです。通院や銀行・役所手続きなど、日中にしかできない用事を有給休暇を使わずに済ませられるでしょう。

    通勤ラッシュを避けられる

    朝夕の通勤ラッシュの時間帯を避けて職場を往復できる点も、夜勤のメリットです。電車やバスといった公共機関を使わずに車で通勤する場合も、比較的道路が空いている時間帯に運転できます。

    通勤に余計な体力を消耗しないことは、ストレスを軽減し、仕事中の集中力の維持につながります。これにより、業務の効率化と生産性の向上が期待できるため、従業員だけでなく企業にとってもメリットがあるといえるでしょう。

    夜勤のデメリット

    製造業や医療・福祉分野など、業務の特性から必要とされる夜勤ですが、デメリットや注意点もあります。夜勤が従業員に与える影響に配慮したうえで、夜勤手当を含めた運用を検討することが大切です。

    夜勤の主なデメリットは以下の通りです。

    • 体に負担がかかりやすい
    • 家族や友人と予定を合わせにくい

    体に負担がかかりやすい

    夜勤が続くと、食生活や睡眠時間が乱れてしまったり、体調管理に気をつけていたとしても体内時計が狂ってしまったりすることが想定されます。

    特に24時間稼働する工場や運輸会社、病院、介護施設、宿泊施設などでは、日勤と夜勤を繰り返す交替制勤務を採用する職場が少なくありません。

    昼夜逆転の生活が原因で、なかには睡眠不足や体調不良に悩まされる従業員もあらわれるでしょう。

    従業員が夜勤の働き方に慣れるまでは、体調管理に十分に注意する必要があります。

    また、日勤に比べて従業員数が少ない夜勤では、管理職が常駐していない職場もあります。

    万が一、トラブルが発生したときは、その場にいる人が初期対応をしなければならず、心理的な負担が大きいという点も考慮しなければなりません。

    家族や友人と予定を合わせにくい

    夜勤のデメリットに、家族や友人との予定を合わせにくいという点も挙げられます。

    昼間に自由な時間があっても、日中に仕事をしている友人が多ければ1人で過ごす機会が増え、孤独を感じてしまうかもしれません。職場で飲み会が開催されても参加しにくくなるでしょう。

    家族と一緒に暮らしている人も同様に、夜勤によりすれ違いが生じ、家族間のコミュニケーションが希薄になってしまう可能性があります。

    夜勤手当と深夜手当の違いを正しく理解

    夜勤手当とは、夜間に働く従業員を対象に支給する、企業が任意で設けている手当です。夜勤手当の支給額や支給対象となる条件について、法律上の規定はなく、企業が自由に定められます。

    一方、深夜手当は労働基準法に定められた制度で、22時から翌5時の時間帯に働いた従業員に対して支払われる割増賃金です。割増率は基本給の25%以上とされています。

    夜勤手当の支給は必須ではないものの、支給することで人材採用に好影響をもたらす可能性があります。夜勤の勤務形態がある企業は、夜勤手当の導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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