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年次有給休暇の計画的付与とは? 活用方法や注意点をわかりやすく解説

年次有給休暇の計画的付与とは? 活用方法や注意点をわかりやすく解説

年次有給休暇の計画的付与とは、労使間の合意に基づいて、年次有給休暇の付与を計画的に行うこと(計画的付与制度)です。ただし計画的付与を実施するためには、就業規則の変更や労使協定の締結をしなければなりません。

経営層や労務管理担当者の中には、計画的付与に興味はあるものの、詳しい内容はわからないという場合も少なくありません。

そこで本記事では、年次有給休暇の計画的付与制度について解説しながら、計画的付与制度を導入する流れや活用方法、注意点もご紹介します。

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    年次有給休暇の計画的付与とは

    年次有給休暇の計画的付与とは、労使間の合意に基づき計画的に有給休暇を割り振ることを指します。ただし計画的付与を実施するためには、労使協定を締結したうえで行わなければなりません。

    計画的付与を理解するためにも、まずは年次有給休暇を含めた全体の概要について確認してみましょう。

    年次有給休暇とは

    年次有給休暇とは、労働者に有給の休暇を与える制度です。

    年次有給休暇の取得条件は、

    • 雇用開始の日から6か月が経過していること
    • 全労働日の8割以上の出勤がなされていること

    とされており、最初の有給付与日(基準日)から1年が経過した以降、勤続年数によって付与される有休日数が増えていきます。

    勤続年数6か月1年
    6か月
    2年
    6か月
    3年
    6か月
    4年
    6か月
    5年
    6か月
    6年
    6か月
    有休付与日数10日11日12日14日16日18日20日

    また、2019年4月から有給休暇の取得が義務化されましたが、年次有給休暇を取得することは労働者の権利でもあります。

    義務化された内容は「年10日以上の年次有給休暇を付与している従業員には、1年以内に5日以上取得させなければならない」というものです。そのため企業としては、年次有給休暇の管理強化がますます必要とされています。

    年次有給休暇には法定上のルールとして労働期間と出勤日数の条件が設けられており、これらを満たしている従業員なら雇用形態にかかわらず取得できます。

    参照:『しっかりマスター労働基準法ー有給休暇編ー』厚生労働省
    参照:『年5日の年次有給休暇の確実な取得』厚生労働省

    年次有給休暇の計画的付与制度とは

    年次有給休暇の計画的付与制度とは、労働者が付与される年次有給休暇日数の5日を除いたぶんについて、取得する日にちをあらかじめ決める制度です。

    計画的付与制度を採用する場合、年5日は従業員の自由な意思で取得できるようにしておかなくてはなりません。たとえば10日付与される労働者に対しては5日、16日付与される労働者に対しては11日までが計画的付与の対象です。

    また、週の所定労働時間が30時間未満で、週の所定労働日数が4日以下であるパートタイマーなどの従業員は、労働日数に応じて年次有給休暇が比例付与されます。これらの従業員も年次有給休暇のうち、5日を超える部分が計画的付与の対象とされるため、理解しておきましょう。

    計画的付与制度を実施する場合、企業全体(もしくはグループ別・個人別など)として指定日に年次有給休暇を取得させることになるため、管理の手間も省けるでしょう。

    ただし、計画年休で年次有給休暇を取得させるためには、就業規則への明記と労使協定の締結が必要です。

    参照:『年次有給休暇の計画的付与制度』厚生労働省
    参照:『年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています』厚生労働省

    年次有給休暇の計画的付与制度を導入するメリット

    年次有給休暇の計画的付与制度を導入するメリットには以下のような点が挙げられます。

    • 労働者の有給休暇の取得促進
    • 採用活動におけるイメージ向上
    • 有給休暇の取得時季を分散

    労働者の有給休暇の取得促進

    計画的付与を行うことで、労働者の有給休暇取得を促進できる点はメリットの一つです。

    とくに有給休暇の取得が義務化された5日分については、取得させないことで罰則を受ける可能性もあるため、企業としては確実に取得させなければなりません。

    また、労働者側も、会社の状況や業務進捗などを考えると有給休暇取得の申し出をしにくい場合もあるでしょう。このような場合に、計画的に有給休暇を付与することで、確実に取得させられ、労働者の心情的にも取得しやすくなるでしょう。

    採用活動におけるイメージ向上

    計画的付与を行うことで、労働者に対して積極的に有給休暇を取得させていることを採用活動においてアピールできます。休日が多いことが求職者にとってメリットとなれば、人材の確保にもつながるでしょう。

    有給休暇の取得時季を分散

    計画的付与を実施すれば、有給休暇の取得時季を分散させられる点もメリットの一つでしょう。企業の繁忙期や特定の日に多くの労働者が有給休暇を取る可能性も少なくありません。

    本来有給休暇の取得は拒否できませんが、計画的付与を行うことで、あらかじめ有給休暇の取得日を分散させやすくなるはずです。

    年次有給休暇の計画的付与を行う流れ

    年次有給休暇の計画的付与とは? 活用方法や注意点をわかりやすく解説

    年次有給休暇の計画的付与を行う際、どのような流れで行うのでしょうか。具体的な流れを方法をご紹介します。

    労使協定の締結と就業規則の変更

    年次有給休暇の計画的付与を行うためには、まずは就業規則に「年次有給休暇の計画的付与を実施する場合は労使協定の合意のもと、あらかじめ時季を指定して計画的に取得させる場合がある」という内容を明記しましょう。

    そのうえで、労使間での合意をとり、労使協定を締結する必要があります。労使協定を締結するには、労働者の過半数で組織する労働組合または労働者の過半数を代表する者との間で書面による協定を締結します。

    労使協定そのものの届け出は必要ありませんが、就業規則を変更した場合は、所轄の労働基準監督署長へ届け出が必要(※)なため、注意しましょう。

    ※常時10人以上の従業員を使用する事業場の場合

    参照:『就業規則の作成・変更・届出』厚生労働省高知労働局

    労使協定で定める内容

    労使協定に定める内容としては以下の項目が挙げられます。

    • 計画的付与の対象者
    • 計画的付与の対象となる日数
    • 計画的付与の方式
    • 対象外とされる労働者への扱い
    • 計画的付与日の時季変更に関する扱い

    計画的付与の対象者

    計画的付与の対象者は、雇用形態にかかわらず年次有給休暇が6日以上付与される労働者です。ただし、産前産後や育児休業に入ることがわかっている労働者、定年退職する予定がある労働者は対象外とされます。

    計画的付与の対象となる日数

    計画的付与の対象とされる年次有給休暇の日数は、付与される年次有給休暇のうち5日を超える部分です。5日分については労働者の自由な意思で取得することが認められているためです。

    また、前年度分の繰り越しがある場合は、繰り越し分を含めて5日を超える部分が対象とされます。

    計画的付与の方式

    計画的付与では、実施方式にいくつかの種類があります。

    たとえば交代制付与方式の場合は、グループ別に具体的な付与日を定め、一斉方式では企業全体もしくは事業場全体の休業日として付与日を決めます。個人別付与方式の場合は、計画表を作成する時季と手続きについて定めます。

    対象外とされる労働者への扱い

    計画的付与では、一斉付与方式などの場合、対象外となる労働者も出てくるでしょう。

    そこで、対象外とされる労働者への扱いも定めておく必要があります。企業によって扱いは異なりますが、特別休暇の付与や休業手当の支払いなどの対応が挙げられます。

    計画的付与日の時季変更に関する扱い

    計画的付与を導入する場合、労働者の時季指定権や企業側の時季変更権は行使できません。

    また、やむを得ない理由で計画的付与の日にちを変更する可能性がある場合は、労使協定にその旨と変更の際の手続きについても定めておく必要があります。

    年次有給休暇の計画的付与における活用方法

    年次有給休暇の計画的付与ではいくつかの付与方式があります。それぞれどのような特徴があるのか、具体的な内容をご紹介します。

    交替制付与方式

    計画的付与における交替制付与方式とは、班やグループごとに交代制で年次有給休暇を付与する方式です。この方式は、定休日が少ないサービス業や流通業に適しています。現場の状況を踏まえて休む日を設定できるメリットがあります。

    一斉付与方式

    計画的付与における一斉付与方式とは、会社や事業場全体として有給の休みを設定する方式です。一斉に休むほうが企業運営がしやすい場合や大型連休に合わせて設定したい場合などにメリットがあります。

    個人別付与方式

    計画的付与における個人別付与方式とは、計画表などを用いて労働者個人別に付与する方式です。

    企業では、あらかじめ日付が決まっている誕生日や記念日などをメモリアル休暇として推奨するケースも少なくありません。個人別付与方式は、計画や見通しが立てやすいというメリットがあるでしょう。

    年次有給休暇の計画的付与を行う際の注意点

    年次有給休暇の計画的付与を行う場合には、注意点もあります。労使間での認識相違やトラブルを防止するためにも、あらかじめ注意すべき点を抑えておきましょう。

    労使協定を締結せずに計画的付与を実施した場合

    計画的付与を実施する場合は、就業規則の変更と労使協定の締結が不可欠です。労使協定を締結せずに計画的付与を実施した場合、無効となるだけでなく、有給休暇取得が義務化された5日分から控除できなくなります。

    義務化された5日分を取得させていない場合、労働基準法違反として30万円以下の罰金を科せられる可能性があるため注意しましょう。

    参照:『労働基準法 第120条』e-GOV法令検索

    付与時季を変更する可能性を明記しておく

    計画的付与制度では、事前の準備や計画が重要となりますが、やむを得ない理由で付与時季を変更しなければならない場合もあるかもしれません。

    基本的には付与時季の変更はできませんが正当な理由がある場合には、手続きを行ったうえで変更を行います。

    また、あらかじめ労使協定には「付与時季の変更がある可能性もある」という旨を記載しておくことで変更となった際に労働者の理解も得られやすくなるでしょう。

    最低限の有給休暇日数を保証する

    計画的付与制度では、労働者が自分の意思で有給休暇を取得できるよう最低限の日数を確保しておかなければなりません。

    計画的付与制度で対象となるのは、労働者が保有する有給休暇のうち5日を超過した分としているため、すべての日数を対象としてしまわないよう注意しましょう。

    対象外の労働者に休業手当が必要になる場合がある

    計画的付与制度の一斉方式では、会社や事業場全体で休みを取得することになります。しかし、入社したばかりで有給休暇の対象外となる労働者がいる場合、働きたいのに働けないと感じる方もいるかもしれません。

    そこで、対象外となる労働者も休ませることに配慮し、休業手当や特別休暇などで対応することを検討しましょう。

    まとめ

    年次有給休暇の計画的付与制度とは、労使協定を締結したうえで計画的に有給休暇を取得させる制度です。

    計画的付与制度を導入することで、取得が義務化された5日分を確実に取得させやすくなったり、企業の状況に合わせた付与方式で行うことができたりするだけでなく、年次有給休暇の管理の手間も軽減させることができるでしょう。

    年次有給休暇の取得や管理においては、労使間で合意した計画的付与を行うことで、よりスムーズに進めやすくなるかもしれません。労働者とのトラブル回避のためにも、計画的付与制度の導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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