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有給休暇の時季変更権とは? 行使の条件や認められないケース、注意点も解説

有給休暇の時季変更権とは? 行使の条件や認められないケース、注意点も解説

有給休暇の時季変更権とは、企業側が労働者に対して有給休暇取得希望の日にちを変更してもらう権利です。

ただし有給休暇の時季変更権はいつでも行使できるというわけではありません。そのため、合理的な理由がない状況で時季変更権は行使できず、行使した場合トラブルの原因になる可能性があります。

そこで本記事では、時季変更権とは何かを解説し、行使できる条件や注意点についてもご紹介します。企業の経営層や有給休暇の管理担当者はぜひ参考にしてください。

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    有給休暇の時季変更権とは?

    有給休暇の時季変更権とは、企業側が有給休暇の日にちを変更してもらうために行使できる権利ですが、具体的にどのような内容なのでしょうか。

    まずは混同しやすい言葉を整理し、理解を深めましょう。

    有給休暇とは?

    有給休暇とは、条件を満たした労働者に対して付与する休日です。

    具体的な条件は

    • 雇用開始の日から6か月が経過していること
    • 全労働日の8割以上の出勤がなされていること

    とされており、最初の有給付与日(基準日)から1年が経過した以降、勤続年数によって付与される有給日数が増えていきます。有給休暇は、正社員かアルバイトかなどの雇用形態による違いはありません。

    しかし、所定労働時間や所定労働日数に応じて付与する日数が異なるという点においては「比例付与」を理解しておく必要があります。

    また、一般的に有給休暇は1日単位で取得するイメージを持つ方も少なくありませんが、企業と労働者の合意のもとであれば半日単位での取得ができたり、労使協定を締結していれば時間単位で取得したりすることも可能です。

    参照:『時間単位の年次有給休暇制度を導入しましょう!』厚生労働省

    さらに、有給休暇は雇用契約で定められている休日に取得することはできません。たとえば、土日を休日としている場合、有給休暇は土日以外の本来出勤する日に取得しなければならないということです。

    参照:『年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています』厚生労働省
    参照:『時間単位の年次有給休暇制度を導入しましょう!』厚生労働省

    有給休暇の時季変更権とは

    有給休暇の時季変更権とは、企業が従業員の希望する取得日に対して、変更してほしいと要請する権利です。

    本来、有給休暇の取得については労働者の希望を尊重する必要がありますが、企業運営に支障が生じる場合などにおいては「時季変更権」の行使ができます。

    ただし、時季変更権が行使できるのは、会社運営に支障をきたす場合のみであり、合理的な理由がなければ行使できません。

    参照:『しっかりマスター 有給休暇編』厚生労働省)

    使用者の時季指定による付与との違いとは

    使用者の時季指定による付与は、企業側があらかじめ有給休暇の取得日を指定することです。

    対象は有給休暇が年10日以上付与される従業員(管理者含む)で、付与した日から1年以内に5日を指定して取得させなければなりません。有給休暇をすでに5日以上取得している労働者に対しては時季指定は不要という点も理解しておく必要があるでしょう。

    ただし、有給は原則労働者の希望日に取得するものであるため、時季指定を行う場合は労働者の希望や意見を尊重しましょう。

    参照:『年次有給休暇の時季指定義務』厚生労働省

    時季変更権を行使するための条件

    時季変更権を行使できるのは「事業の正常な運営を妨げる場合」とされています。具体的にどのような内容が該当するのか、確認してみましょう。

    代替人員を確保できない場合

    時季変更権を行使する際は、労働者本人の代わりに同様業務をできる人材がいるかどうかという点が挙げられます。

    本人しかできないような業務があるうえに、繁忙期や期限の迫った状況で有給休暇を取得されることは、事業の正常な運営を妨げる可能性があると判断できます。

    有給休暇取得者が同時季に重なっている場合

    時季変更権を行使できるのは、同時季に有給休暇取得者が多くいるような状況も挙げられます。

    この場合においても、単純に有給休暇取得者がほかにもいることだけを理由にすることはできず、繁忙期や代替人員確保が困難な状況である必要があります。

    本人不在では支障がある場合

    時季変更権を行使できるのは、有給休暇取得を希望する本人が不在だと支障があるような場合も該当します。代替人員を確保しても意味がないような場合です。

    たとえば、労働者本人が受講すべき研修や会議、重要な商談などが挙げられるでしょう。ただ、代替人員でも問題がない場合やそもそも欠席しても差し支えないような場合は認められないため、注意が必要です。

    長期間連続で有給休暇を取得する場合

    時季変更権を行使できるのは、長期間連続で有給休暇を取得しようとしている場合も挙げられます。そもそも長期間休むことで業務に支障が出る可能性が高く、その結果、成果や目標にも影響するはずです。

    さらに連続して不在となった場合、正常な事業運営を妨げる恐れもあるでしょう。

    ただし有給休暇の取得自体は労働者の権利であるため拒否することはできません。労働者の希望に耳を傾けながら、お互いが納得できるような有給休暇の取得を目指しましょう。

    有給休暇の時季変更権を行使する場合

    有給休暇の時季変更権とは? 行使の条件や認められないケース、注意点も解説

    時季変更権を行使する場合には、労働者に対して、書面などを通じて有給休暇を希望日に取得させられないことの通知を行ったうえで行使することになります。

    文面例は以下のような内容が挙げられます。

    ○○部○○課○○さん

    有給休暇の取得申請を行っていただきましたが、
    以下の理由に基づき、年次有給休暇の取得を承認できません。
    そのため、別の日に取得していただくようお願い致します。

    対象日:令和○年○月
    理由:役職者研修を予定しており、年次有給休暇の取得を認めるとその実施に支障が生じるため。

    時季変更権を行使する際は、正常な事業運営を妨げる場合のみでしか行使できないため、申請を承認できない理由は必ず伝える必要があります。

    また、時季変更権の行使は申請があった日から迅速に判断し、できるだけ速やかに労働者に伝え、行使しましょう。

    有給休暇の時季変更権行使における注意点

    時季変更権の行使について、企業側があらかじめ認識しておくべき注意点についてご紹介します。

    時季変更権を行使する際は、有給休暇の希望時季を変更してもらうことになるため、トラブルにつながる可能性も少なくありません。あらかじめリスクを把握しておくことが大切です。

    時季変更権の行使は正当な理由が必要

    時季変更権を行使できるのは、正常な事業運営を妨げる場合のみであるため、繁忙期だからという理由のみで行使することはできません。

    繁忙期かつ代替人員の確保ができない、繁忙期かつ期限の迫っている重要業務を任せているような場合に行使できると考えておきましょう。

    時季変更権を行使できないケースがある

    時季変更権は、いつでも行使できるというわけではありません。会社の倒産時や労働者の退職時、産前産後休業や育児休業の期間などが挙げられます。

    また、有給休暇の申請を余裕を持って行っていたにもかかわらず、直前になって時季変更権を行使するようなケースも違法とされる可能性があるため、注意しなければなりません。

    時季変更権を行使する理由や状況を伝える

    時季変更権を行使する際は、理由を伝える必要があります。書面などを通じて通知する方法でも問題ありませんが、できるだけていねいに説明するよう努めましょう。

    時季変更権の濫用は罰則を受ける可能性がある

    時季変更権は正常な事業運営を妨げる場合のみであるため、正当な理由がないにもかかわらず行使するのは違法とされる場合もあります。その場合、罰則を受ける可能性があります。

    以下のような理由では時季変更権の濫用ともいえ、行使することはできないと理解しておきましょう。

    • 時季変更権を何度も行使している場合
    • 慢性的な人手不足による理由や繁忙期のみを理由とする場合
    • 代替人員確保の努力をしていない場合
    • 有給休暇を取得したい理由から行使する場合

    参照:『労働基準法 第119条』e-GOV法令検索

    有給休暇の時季変更権における強制力

    時季変更権を正当な理由によって行使する場合、どれくらいの強制力があるのでしょうか。具体的な強制力について確認してみましょう。

    時季変更権の行使を無視した場合は無断欠勤として扱える

    時季変更権は企業側の権利であるため、正当な理由から行使した場合にもかかわらず労働者が当日欠勤をした場合には、無断欠勤として扱うことができます。

    時季変更権の行使を無視した場合は懲戒処分も下せる

    時季変更権の行使を無視した場合において、就業規則などによってルールを定めている場合は懲戒処分を下せます。

    しかし、懲戒処分を検討する場合は、その重さに注意しなければなりません。実際の状況や支障の程度、これまでの労働者の勤務態度などを鑑み、慎重に行うようにしましょう。

    まとめ

    有給休暇の時季変更権は企業側が正常な事業運営を行ううえで重要な権利です。

    しかし、本来労働者は有給休暇取得の権利を持っているため、有給休暇の取得そのものを拒否したり、正当な理由がない状態で時季変更権を行使したりすることはできません。

    トラブルにもつながりかねない内容であるため、時季変更権の行使を検討する場合は、慎重に行うようにしましょう。

    また、やむを得ず時季変更権を行使することになった場合は、労働者にはできるだけ理由や企業としての考えをていねいに伝えることが大切です。

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