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時短勤務(短時間勤務制度)とは? メリットや導入時のポイントを解説

時短勤務(短時間勤務制度)とは? メリットや導入時のポイントを解説

時短勤務制度(短時間勤務制度)とは、従業員が通常の労働時間よりも短い時間で働く制度です。2009年に導入が義務づけられて以降、労働者の柔軟な働き方が求められる現代社会において注目度が高まっています。

一方で、当制度を利用することにより「仕事の効率が下がるのではないか」「キャリアに悪影響があるのではないか」といった懸念を抱く人もいるでしょう。

そこで本記事では、時短勤務制度の具体的な効果や導入時に注意すべきポイント、柔軟な働き方がもたらす企業や従業員へのメリットを解説します。時短勤務制度の導入を検討している企業の担当者は、ぜひ参考にしてください。

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    時短勤務(短時間勤務制度)とは?

    時短勤務制度(短時間勤務制度)とは、仕事と育児や介護との両立をはかるため、一日の所定労働時間を原則6時間までとすることを定めた制度です。

    2009年の育児・介護休業法の改定により導入され、2012年7月からは当初導入が猶予されていた従業員100人以下の事業主にも義務づけられました。

    そして現在では、すべての事業主に対してこの制度の導入が義務づけられています。

    参考:『就業規則の作成のポイント』厚生労働省

    時短勤務の制度が生まれた背景

    時短勤務制度が生まれた背景には、2000年代初頭の日本の社会経済的な状況が大きく影響しています。

    この時期、日本は高度成長期を経て経済の停滞が続き、社会全体で働き方改革が求められるようになりました。とくに、長時間労働は深刻な社会問題化し、働き過ぎによる健康被害やワークライフバランスの悪化が報告されています。

    また、少子化問題も同様に深刻化しました。出生率の低下や高齢化による働き手の減少が、将来の経済成長の鈍化につながると大きな不安が広がります。

    このような時代背景があり、女性や中高年層の活用が求められ、働く人々が柔軟な働き方を選択できる仕組みが必要とされたのです。

    目的

    時短勤務制度の導入の主な目的は、育児や介護を担う労働者に柔軟な働き方の選択肢を提供し、ワークライフバランスの向上をはかることです。これにより、出産後も働きやすい環境づくりと、介護や育児を担う労働者の仕事と家庭の両立の実現が期待されました。

    当制度の制定により、3歳未満の子どもを抱える従業員や家族の介護に従事する従業員に対して、柔軟な働き方を認めるための措置を講じることが企業に義務づけられました。

    改正以降も制度の内容はたびたび見直されており、産後パパ育休制度の制定や育児休業の分割取得が可能となるなど、制度の内容は拡充しています。

    参照:『育児・介護休業法について』厚生労働省

    時短勤務のメリット

    時短勤務の導入によってもたらされる主なメリットを3つ紹介します。

    • 従業員のワークライフバランスの向上
    • 従業員のモチベーション向上
    • 企業のブランドイメージの向上

    従業員のワークライフバランスの向上

    時短勤務のメリットの一つは、従業員のワークライフバランスの向上です。週の所定労働時間を短縮すると、従業員は家庭やプライベートの時間を確保しやすくなります。

    従業員のワークライフバランスの改善は、従業員満足度に直結します。そのため、時短勤務制度を職場に取り入れることで、離職率が低下し、優秀な人材の確保や人材採用のコスト削減につながるでしょう。

    従業員のモチベーション向上

    時短勤務の導入により、従業員の満足度やモチベーションの向上も期待できます。制度の利用で、従業員は育児や介護を理由にキャリアを諦める必要がなくなり、その結果、モチベーションを保ったまま働けるでしょう。

    企業のブランドイメージの向上

    時短勤務を適切に運用していれば、社会的な責任を果たす企業としての評価が高まり、採用活動や顧客からの信頼が増す可能性があります。

    時短制度の導入が企業のCSR(企業の社会的責任)への取り組みの一環として捉えられ、企業のブランドイメージの向上につながるでしょう。顧客からの信頼を獲得できて、業績の向上にも好影響が期待されます。

    時短勤務のデメリット

    時短勤務の導入にメリットがある一方で、デメリットも存在します。その代表的なデメリット3つとその対処法を解説します。

    • 業務の遅延
    • コミュニケーションの希薄化
    • キャリアアップの難しさ

    業務の遅延

    時短勤務の導入により、業務の進行が遅れる可能性があります。たとえば、担当者が週の労働時間を減らすと、プロジェクトの進行が鈍化することが考えられます。

    時短勤務の導入にともなう業務の遅延を防ぐためには、適切な業務管理やタスクの優先順位づけが必要です。プロジェクト管理ツールを導入したり、業務の進捗状況を透明化したりする仕組みが有効でしょう。

    コミュニケーションの希薄化

    従業員同士でコミュニケーションが取りにくくなることも、時短勤務のデメリットの一つです。特に、同じ時間帯に稼働している従業員が減ると、情報共有や連携が難しくなります。

    時短勤務の導入にともなうコミュニケーションの希薄化を防ぐためには、コミュニケーションツールやスケジュール調整ツール活用が挙げられます。

    また、定期的に1on1ミーティングを行うなど、共有の機会を意識的に設けましょう。

    キャリアアップの難しさ

    時短勤務を利用する従業員が、昇進やキャリアアップのチャンスを逃すというデメリットもあります。通常よりも労働時間が短いために、プロジェクトに深く関与しづらくなることが原因です。

    対策としては、評価基準の見直しや、柔軟なキャリアパスの構築が挙げられます。時短勤務者にも昇進の機会を提供し、成果主義を重視する人事制度の整備が必要といえるでしょう。

    時短勤務の対象となる従業員|いつまで?

    時短勤務の対象となる従業員と対象期間について、育児と介護のケース別に解説します。

    育児による時短勤務の場合

    時短勤務の対象となる従業員は、以下の要件すべてに該当する従業員です。

    • 3歳未満の子を養育する従業員であって、短時間勤務をする期間に育児休業をしていない
    • 日々雇用される労働者でない
    • 1日の所定労働時間が6時間以下でない
    • 労使協定により適用除外とされた従業員でない

    育児による時短勤務が利用できる期間は、子どもが3歳に達する誕生日の前日までです。

    出典:『改正育児・介護休業法が全面施行されます!』厚生労働省

    介護による時短勤務の場合

    介護による時短勤務を利用できる従業員は、対象家族を介護する男女の労働者です。対象家族は、配偶者 (事実婚を含む) や両親、子ども、配偶者の両親、祖父母、兄弟姉妹、孫が該当します。

    介護による時短勤務が利用できる期間は、対象家族1人につき、利用開始の日から連続する3年以上の期間で2回以上と定められています。

    参照:『短時間勤務等の措置について|介護休業法』厚生労働省 

    労使協定の定めにより時短勤務の対象外となる従業員

    以下の条件を満たす人は、労使協定に定めにより、時短勤務の対象外とすることが可能です。

    労使協定により対象外となる条件
    1.雇用期間が1年未満の者
    2.1週間の所定労働日数が2日以下の者
    3.短時間勤務制度の適用が困難な業務に携わっている者

    「3.短時間勤務制度の適用が困難な業務に従事している」ことにより適用除外となる場合、事業主は以下の4つの代替措置のいずれかを実施する必要があります。

    1. 育児休業に準じた措置
    2. フレックスタイム制度
    3. 時差出勤制度
    4. 事業所内保育施設の設置運営その他これに準ずる便宜の供与
      (介護の場合:労働者が利用する介護サービスの費用の助成その他これに準ずる制度)

    時短勤務中の給与と待遇について

    時短勤務中の従業員に対しては、短縮した労働時間分の給与は減額できますが、基本的な考え方として以下2つの原則を押さえる必要があります。

    • ノーワーク・ノーペイの原則
    • 不利益取り扱いの禁止

    ノーワーク・ノーペイの原則とは、労働者が仕事をしていない場合に給与を支給しないというルールです。

    不利益取り扱いの禁止は、労働者に対して不当な差別や不利益をもたらす行為を禁止する法的な原則を指します。育児・介護休業法第10条により、時短勤務および休業中の従業員の不利益取り扱いは禁止されています。

    したがって、時短勤務中の従業員の給与は、労働時間の減少に比例して基本給を減額することが基本です。

    給与の計算方法

    時短勤務中の従業員の給与の計算式は以下の通りです。

    時短勤務中の基本給=基本給×時短勤務時の所定労働時間÷所定労働時間

    時短勤務中の従業員であっても、深夜労働や週40時間以上の時間外労働が発生した場合は割増賃金が発生するため、注意しましょう。

    時短勤務導入のポイント・注意点

    時短勤務制度を導入する際のポイントと注意点を解説します。

    • 法的な制約と要件
    • 従業員の理解とコミュニケーション
    • 業務の効率化と再編
    • 給与・待遇の調整
    • チームの連携と協力体制の構築

    法的な制約と要件

    時短勤務中の従業員に対する不利益な取り扱いは育児・休業法第10条により禁止されています。たとえば、時短勤務を理由に解雇や不当な減給、昇進や昇給の機会を不当に与えないことは法的に認められません。

    従業員が時短勤務制度を安心して活用できるようにするには、就業規則に「時短勤務の利用者に対する不利益取り扱いの禁止」を明確に規定することが重要です。

    従業員の理解とコミュニケーション

    従業員に対して、時短勤務の導入がなぜ必要か、どのような目的があるのかをていねいに説明するようにしましょう。ワークライフバランスの向上や生産性の向上を目指している旨を伝えます。

    また、個々の従業員の状況やニーズは異なるため、制度を運用するうえで、個別の調整や配慮ができるような体制を整えましょう。

    業務の効率化と再編

    時短勤務が導入されると、業務の進行に遅延が発生したり、業務負担の偏りが生じたりすることがあります。そこで業務の効率化と再編が必要不可欠です。

    業務の効率化のためには、ワークフローシステムやタスク管理ツールの導入も一案です。

    とくにクラウドサービスを活用すると、従業員がオフィス外からでも業務の進捗を把握できるため、柔軟な働き方の実現に貢献するでしょう。チーム内での業務の偏りを可視化し、業務分担の再編に役立てられます。

    給与・待遇の調整

    時短勤務において、給与の計算方法は従業員の労働時間に基づいて調整されます。通常の労働時間から短縮された時間に応じて、給与を減額することが原則です。ただし、時短勤務中の従業員にも深夜労働や、時間外労働による賃金の割り増しなどは適用されるため、注意しましょう。

    また、業績評価や昇進の際に時短勤務を利用することが評価に影響しないよう、就業規則などに明記します。すべての従業員に同等の研修やスキル向上の機会を提供できると、従業員のモチベーションを維持できるでしょう。

    チームの連携と協力体制の構築

    時短勤務導入においてはチーム全体が協力し合い、連携を強化することが重要です。チーム全体で共有する目標を確立し、それに向けての戦略や計画を立てましょう。時短勤務の導入による業務変更や負荷分担について、メンバーと同意し、協力体制を築く必要があります。

    時短勤務の導入事例

    時短勤務制度を導入し、上手に運用している企業の例を3社紹介します。

    株式会社みずほフィナンシャルグループ

    みずほフィナンシャルグループは「ワーク・ライフ・バランス支援制度」を導入し、出産や育児に関わる支援制度を整備しました。

    育児支援のための短時間勤務制度では、生後から小学校3年生までの子を持つ従業員が、本人の申請により、就業時間の短縮や時差出勤を選択できます。また、ホームヘルプやベビーシッター費用の全部、または一部を補助する制度もあります。

    参照:『​​ワーク・ライフ・バランス推進への取り組み』株式会社みずほフィナンシャルグループ

    東レ株式会社

    東レは、男女問わず多様なライフスタイルを構築できるよう、ワークライフバランスの実現に向けた制度を整備しています。

    とくに、育児や介護に関連する制度は、従業員が利用しやすいよう、法定基準以上に充実しています。これらの取り組みにより、2007年度には、次世代育成支援対策推進法の行動計画基準適合事業主として認定を受けました。

    育児短時間勤務制度では、子どもが小学3年生の年度末に達するまでの間、15分単位で最大2時間/日の短縮を可能とし、フレックスタイム制度との併用も認められています。

    参照:『社員が働きやすい企業風土づくり』東レ株式会社

    ハウス食品グループ本社株式会社

    ハウス食品グループは、キャリア・ステージとライフ・ステージの両方が充実してこそ、社員が自己実現できる魅力的な職場になると考え、その実現に向けた施策に取り組んでいます。

    たとえば、育児にともなう時短勤務制度として、子どもが小学校3年生の3月末日まで、短時間勤務を認めています。短縮時間の変更は、年2回まで可能で制限を設けていません。

    また、時短勤務制度を利用後にフルタイム勤務に復帰した場合、再び短時間で働くことが認められています。

    参照:『ワークライフバランスへの取り組み』ハウス食品グループ本社株式会社

    まとめ

    時短勤務(短時間勤務制度)は、従業員がフルタイム勤務よりも短い時間で働くことを可能にする制度です。働きながら育児や介護に従事する従業員のニーズに対応するため、2019年の法改正により制度化されました。

    導入には、法的な要件を理解し、対象の従業員に不利益な扱いとならないように注意しましょう。本記事の紹介内容を参考にしつつ、ワークライフバランスや従業員満足度の向上を実現できる制度設計を行い、働き方の多様化を推進しましょう。

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