持ち帰り残業に残業代は発生する? リスクや対処法を詳しく解説

持ち帰り残業に残業代は発生する? リスクや対処法を詳しく解説

持ち帰り残業とは、勤務時間中に終わらなかった仕事を自宅やカフェに持ち帰って進める残業のことです。働き方改革の影響で残業の削減に取り組む一方で、「表向きは残業ゼロ、実態は持ち帰り残業が常態化している」といった状況に心当たりはありませんか。企業として持ち帰り残業を放置すると、さまざまなリスクがあり、社会問題となりつつあります。

本記事では、持ち帰り残業に残業代が発生するのか、どのようなリスクがあるのか、企業としてどのように対処すべきかを詳しく解説します。持ち帰り残業の対応策を検討するため、ぜひ参考にしてください。

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持ち帰り残業とは?

持ち帰り残業とは、勤務時間内に終わらなかった仕事を、自宅に持ち帰って行う残業のことです。

会社支給のパソコン・タブレットや資料を持ち帰り、カフェや公共施設で業務を続ける——そんな光景はもはやめずらしくないでしょう。

リモートワークの普及により社外で仕事がしやすくなった一方で、「職場での残業は減ったが、持ち帰り残業は増えた」という声も少なくありません。

実態が見えない持ち帰り残業は、適切に勤怠管理をしなければならない企業からすると、見逃せない課題の一つです。

持ち帰り残業は業務遂行を目的としているものの、使用者の指揮命令下にない従業員のプライベートな時間で行われています。そのため管理が難しく、法的リスクをともなう点が特徴です。

持ち帰り残業と似た言葉に「サービス残業」「隠れ残業」などがあります。関連用語の意味を確認するには以下の記事もご確認ください。

持ち帰り残業に残業代は発生する?

持ち帰り残業には、原則として残業代は発生しません。

以下の理由から、持ち帰り残業は指揮命令下の労働とみなされず、労働時間にカウントされないためです。

  • 会社からの場所的・規律的な拘束を受けない
  • プライベートな空間や時間帯に業務が遂行される
  • 職場から離れるため、就業の延長活動とはいえない

ただし、上司が持ち帰り残業をするように指示した場合や、業務を余儀なくされる状況にある場合は、残業代が発生することもあります。

持ち帰り残業が違法となるケース

「実質的に上司の指示があった」ケースでは、持ち帰り残業も労働時間として扱われ、企業側の対応次第では違法と判断されます。

では、どのような状況が違法に該当するのでしょうか。具体的に確認していきましょう。

上司から持ち帰り残業をするように指示された

従業員が会社や上司から持ち帰り残業をするように指示された場合は、使用者の指揮命令下に置かれていることになり、持ち帰り残業の時間も労働時間とみなされます。

使用者は労働基準法第37条の定めにより、労働時間と判断された時間分の持ち帰り残業に対して賃金を支払わなければなりません。

会社都合で持ち帰り残業をさせたにもかかわらず、賃金を支払わない場合は、違法となります。

参照:『労働基準法』e-Gov法令検索

残業をしないと不利益に評価されてしまう

会社や上司からの具体的な指示はなくても、従業員が仕事を持ち帰って進めないと、不当な扱いを受け、不利益な評価をされてしまう場合は、違法性を問われる可能性があります。

とくに、業務時間内に終わるはずのないほど業務量が多く、仕事を押しつけられている状況であれば、黙示の指示が認められるでしょう。たとえ口頭での指示がなくても、持ち帰り残業について暗黙のルールがあったとみなされるのです。

持ち帰り残業をしなければ人事評価が下がるような状況も問題です。公正な評価制度とはいえず、人事権の濫用に該当します。

不当な扱いが続くと、民法上の不法行為が成立し、使用者が損害賠償責任を負うリスクがあります。

従業員が自主的に持ち帰り残業をしているように見えても、実態として「やらざるを得ない環境」になっていないか慎重に見極める必要があるでしょう。

残業代が支払われていない

ここまで解説してきたような持ち帰り残業が正式な労働時間とみなされる状況では、残業代を支払う義務が生じます。

それにもかかわらず、企業が適正な残業代を支払っていないと、賃金未払いで違法行為に該当し、罰則の対象となります。

持ち帰り残業が労働時間に含まれる場合、企業は残業した時間を把握したうえで、残業代を支払わなければなりません。

参照:『労働基準法』e-Gov法令検索

残業時間の上限を超えている

持ち帰り残業を労働時間として数えた結果、労働基準法が定める時間外労働の上限を超えてしまうと、違法な長時間労働とみなされます。

労働者を保護するため、36協定を締結していても、原則として「月45時間・年360時間」の時間外労働の上限を超えられません。

長時間労働が常態化すると、うつ病や適応障害などの精神疾患を発症するリスクや過労死リスクが高まると考えられています。

仕事を持ち帰らないといけない状況であれば、その残業時間も適切に管理しましょう。

参照:『労働基準法』e-Gov法令検索

持ち帰り残業が違法とならないケース

ここまで持ち帰り残業が違法となるケース を解説してきました。しかし、すべての持ち帰り残業がすべて違法となるわけではありません。

従業員が完全に自主的に行っている場合や、会社の指揮命令下にない働き方とみなされる場合など、違法とならないケースもあります。

どのような条件のもとで持ち帰り残業が合法とされるのか、詳しく見ていきましょう。

自主的に仕事を持ち帰っている

違法な要素の強い持ち帰り残業は、従業員がみずからの判断で仕事を持ち帰った場合は、使用者の指揮命令下にあるとはみなされません。

労働時間にはカウントされないため、残業代の支払いや残業時間の管理の対象から外れます。

自主的に仕事を持ち帰る状況としては、次のような例が挙げられます。

  • 業務の期限まで余裕はあるものの、キリのよいところまで終わらせたい
  • 自宅で落ち着いて作業したい 

ただし、本来は勤務時間内に業務を完結すべきであり、自主的な持ち帰り残業も推奨されるものではないと理解しておきましょう。

管理職が仕事を持ち帰る

管理職の持ち帰り残業も、違法とならないケースがあります。

労働基準法上の「管理監督者」に該当する管理職は、残業代を支払わなくてよいとされています。そのため持ち帰り残業に対して賃金を支払わなくても違法性は問われません。

管理職と残業の関係は以下の記事もご確認ください。

ただし、違法にならないからといって同僚や部下の業務を引き受けてしまったり、オーバーワークの状態が慢性化したりするのは問題です。

健康を害さないよう、管理職についても一般の従業員と同様に、長時間労働が常態化しないよう注意深くチェックしていきましょう。

労働時間の管理方法を見直す際は以下の資料もご活用ください。

持ち帰り残業が違法でなくてもリスクはある

ここまで持ち帰り残業の残業代支払いや違法性について解説してきました。

しかし、自社の持ち帰り残業が「違法ではないから問題ない」と考えるのは少し危険です。

たとえ、持ち帰り残業が法的に認められても、あるいは持ち帰り残業に適切な残業代を支払っていても、さまざまなリスクをはらんでいます。

持ち帰り残業がもたらす幅広いリスクについて、4つの観点から詳しく解説していきます。

セキュリティリスクが高くなる

持ち帰り残業は、社外へデバイスや資料を持ち出すことで、セキュリティトラブルを引き起こすリスクの高い行為です。具体的には以下のようなトラブルが懸念されます。

  • デバイスや資料の紛失・盗難
  • セキュリティレベルの低いWi-Fiの使用
  • ネットワークウイルスへの感染

仕事を持ち帰らなければならない場合は、情報漏えいを防ぐ徹底したセキュリティ管理が求められるでしょう。

従業員の疲労やストレスがたまりやすい

持ち帰り残業が常態化してしまうと、従業員の疲労やストレスがたまりやすくなります。

実質的な労働時間が長くなり、精神的な苦痛や睡眠不足による体調不調を引き起こす原因となるでしょう。

とくに、オフの時間を使って仕事をしてしまうと、休息時間を確保できず十分にリフレッシュできません。

従業員にとって大きな負担となる持ち帰り残業が当たり前になっている場合は、状況を改善する必要があります。

従業員のモチベーションが低下する

持ち帰り残業が常態化してしまうと、従業員の仕事に対するモチベーションも低下しやすくなります。

肉体的・精神的な疲労に加え、仕事とプライベートの切り替えが難しい状況が続くことで、労働意欲が下がってしまうでしょう。

結果として集中力が落ちて業務効率が低下し、さらなる持ち帰り残業を招くという悪循環にはまってしまうおそれもあります。

労務トラブルに発展するおそれがある

持ち帰り残業は、労働問題に発展するリスクをはらむものです。

過去には、長時間にわたる持ち帰り残業が過労死の原因の一つであるとして労災認定されたケースもあります。

安全配慮義務違反によって、損害賠償を請求されるケースも考えられるでしょう。

従業員を守りながら事業を運営していくためにも、持ち帰り残業をさせないような労働環境を整備することが重要です。

労務トラブルの具体例を知るには以下の記事もご確認ください。

持ち帰り残業をなくすには? 対処法を解説

持ち帰り残業が引き起こすさまざまなリスクを回避し、健全な労働環境を維持するにはどのように対処したらよいでしょうか。

まずは持ち帰り残業を前提としない働き方を整備することが不可欠 です。

さらに企業としてどのように持ち帰り残業を減らしていくべきか、具体的な対処法を紹介します。

持ち帰り残業についてのルールを整備する

持ち帰り残業をさせないためのルールを明確にし、社内で統一して運用しましょう。

具体的なルール例
社用デバイス以外の使用を禁止する私物PCやスマホでの業務を制限し、情報漏えいリスクを防ぐ
書類やデータの持ち帰りを禁止するUSBや印刷資料の持ち出しを制限し、管理を強化
持ち帰り残業を申告制にする事前申請・承認制を導入し、会社が状況を把握

自社の業務内容や量に合わせて、持ち帰り残業についてのルールを策定することが重要です。

ルールが形式化してしまわないよう、従業員に周知徹底していきましょう。管理職が率先して模範を示したり、定期的に実態を調査したりするのも一案です。

従業員ごとの業務量を見える化する

持ち帰り残業が発生する要因の一つに、業務の偏りがあります。上司が部下に適切な量の業務を割り振っていないケースも少なくありません。負担を分散して業務を最適化することが重要です。

方法
タスク管理ツール活用誰がどの業務を担当しているのか、リアルタイムで可視化
業務棚卸しルーティン業務や定型作業の負担を洗い出す
優先順位のとらえ直し「今やるべき仕事」と「後回しにできる仕事」を整理

「ただ頑張ればなんとかなる」ではなく、無理なく終わらせられる仕組みをつくりましょう。

業務全体の効率化をはかる

従業員ごとの業務量が把握できたら、業務の進め方を見直し、持ち帰り残業が発生しない職場環境を整えましょう。ペーパーレス化や各種システムを導入するのも一案です。

効率化のための施策
ペーパーレス化の推進紙ベースの業務を削減し、無駄な作業を減らす
業務棚卸し申請・承認業務を電子化し、タイムロスをなくす
業務分担の最適化1人に仕事が偏らないよう、チームでフォローする体制を整える

不要な業務をなくし、重要な業務に集中できる環境整備がポイントです。

コミュニケーションを充実させる

仕事を抱え込み、持ち帰り残業してしまう状況を防ぐために、日頃から従業員同士のコミュニケーションが活発になるように工夫しましょう。

施策
「報・連・相」の徹底
業務の相談しやすい環境をつくる
コミュニケーションツールの活用 

仕事の遅れを相談できない環境は組織として課題が残り、いずれどこかにしわ寄せが出てきます。チームで支え合う文化をつくることが大切です。

持ち帰り残業をなくすには業務量の把握から(まとめ)

持ち帰り残業についても、会社や上司から指示された場合や残業せざるを得ない状況であった場合は、労働時間とみなされるため残業代が発生します。

たとえ違法でない持ち帰り残業にも、従業員の健康被害や情報漏えいなどのリスクがあります。

まずは業務量の見える化から始め、業務全体の効率化やコミュニケーションの活性化など、持ち帰り残業を防止する対策を少しずつ講じていきましょう。

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