所定労働日数とは? 実労働日数との違いや計算方法も解説

所定労働日数とは、企業側が就業規則や労働契約に定めた従業員が就労する日数です。実労働日数との違いを整理できていない方もいるのではないでしょうか。
所定労働日数の設定は、法令を遵守した勤怠管理において重要です。
本記事では、所定労働日数の基本的な知識と、実労働日数との違いを整理して紹介します。また所定労働日数の数え方や計算ポイントも解説します。
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所定労働日数とは
勤怠管理で「所定労働日数」を正しく理解することは、給与計算や労働時間の管理、有給休暇の付与などにおいて大切です。所定労働日数は実労働日数と混合しやすい概念ともいえます。
所定労働日数の基本的な定義から、実労働日数と所定労働時間との違いを整理し、給与計算にかかわるポイントも解説します。
所定労働日数とは? わかりやすく解説
所定労働日数とは、企業側が就業規則や雇用契約であらかじめ定めた従業員の労働日数のことです。
所定労働日数には、年間の日数を定めた「年間所定労働日数」と、月ごとに定めた「月間所定労働日数」、年間の所定労働日数を月平均として算出した「月平均所定労働日数」があります。
3つ所定労働日数 |
---|
・年間所定労働日数 ・月間所定労働日数 ・月平均所定労働日数 |
従業員の働き方に関して、労働基準法で定められているのは、「原則1日8時間、週40時間」という法定労働時間のみです。所定労働日数についての法的な定義はありません。
所定労働日数は、割増賃金を計算する際や、年次有給休暇の付与日数を決定する際にも使用します。企業は適切な所定労働日数を設定することが重要です。

実労働日数との違い
所定労働日数と似た言葉に「実労働日数」があります。
実労働日数とは、従業員が実際に働いた日数のことです。従業員が欠勤したり、有給休暇を取得したりした場合は、所定労働日数よりも実労働日数のほうが少なくなります。
一方で、所定休日や法定休日など、本来の休日に出勤した場合は、実労働実数が所定労働日数よりも多くなるでしょう。
所定労働時間との違い
所定労働時間とは、労働基準法で定められている「原則1日8時間、週40時間」という法定労働時間の範囲内において、企業が独自に設定できる労働時間のことです。
所定労働時間は、休憩時間を除いた始業から終業までの時間を指します。
所定労働時間について詳しくは以下の記事もご確認ください。
労働基準法では、労働時間の長さによって休憩時間を以下のように定めています。
1日の労働時間 | 休憩時間 |
---|---|
6時間以下 | 0分以上 |
6時間超〜8時間以下 | 45分以上 |
8時間超〜 | 1時間以上 |
万が一、上記の休憩時間の規定に違反すると、企業は「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金」を科されるおそれがあるため注意しましょう。
法律上の休憩について詳しくは以下の記事もご確認ください。
給与と所定労働時間との関係性について
月の所定労働日数は、月間の所定労働時間を求めるときに必要な情報です。
月給を所定労働時間で割り算して時給を計算し、時給をもとに残業手当や休日出勤手当といった時間外労働の割増賃金を算出します。
各種手当と割増率について
時間外労働や休日労働、深夜労働に対しては、基本給に上乗せして割増賃金が発生します。法律上で定められている各種手当と割増率を以下で確認しておきましょう。
残業の種類 | 割増賃金が発生する条件 | 割増率 | |
---|---|---|---|
時間外労働 | 1日8時間・週40時間のいずれかを 超えて労働した場合 (法定休日の労働時間は含まず) | 時間外労働が 月60時間までの部分 | 25%以上 |
時間外労働が 月60時間を超えた部分 | 50%以上 | ||
深夜労働 | 22〜翌5時まで労働した場合 | 25%以上 | |
休日労働 | 法定休日に労働した場合 | 35%以上 |
割増率は、あくまでも最低限度のものであり、企業が増加して設定するのは問題ありません。
割増率について詳しくは、以下の記事もご確認ください。
月平均所定労働日数を設ける理由
勤怠や労務管理の中で「月平均所定労働日数」は、給与計算や勤怠管理、休暇管理に直接かかわる重要な項目です。
とくに「割増賃金の計算」と「有給休暇の付与条件」に影響するため、適切に設定する必要があります。具体的な関連性について確認していきましょう。
割増賃金の計算に用いるため
月平均所定労働日数は、割増賃金を計算する基礎となる1時間あたりの賃金を算出するために使います。
労働基準法第37条では、企業が従業員に法定労働時間を超えて労働させた場合、企業に対し、基礎賃金に一定の割増率をかけた分の賃金を支払うように義務づけています。
残業代を計算する式は以下のとおりです。
月平均所定労働時間 | (365日-年間休日数)×1日の所定労働時間÷12 |
1時間あたりの賃金 | 基本給÷月平均所定労働時間 |
残業代 | 1時間あたりの賃金×残業時間×割増率 |
時給3,000円の従業員が18時から20時まで2時間残業した場合の残業代は、「3,000円(時給)×2時間(残業時間)×1.25(割増率)=7,500円」です。
割増賃金の具体的な計算方法は、以下の記事もご確認ください。
有給休暇の付与条件や日数を確認するため
2019年に「働き方改革関連法」が施行されて以来、企業には10日以上の年次有給休暇が付与された従業員に対して、1年以内に5日の年次有給休暇を取得させることが義務づけられました。
従業員に対して年次有給休暇を付与する条件は以下のとおりです。
- 雇用した日から6か月が経過している
- 雇用されている期間のうち、全労働日の8割以上出勤している
年次有給休暇の付与条件や日数を確認するために、所定労働日数をあらかじめ設定しておく必要があります。
年次有給休暇は正社員だけでなく、条件を満たしていればパートやアルバイト従業員も付与の対象となることもあわせて理解しておきましょう。
有給休暇の付与日数の数え方は、以下の記事で詳しく解説しています。
人事労務担当者として知っておきたい有給休暇に関するルールは以下の資料でぜひご確認ください。

年次有給休暇も所定労働日数に含まれる?
従業員の就労日数である所定労働日数を計算するうえでは、休日と休暇の理解も大切です。
休日とは労働契約で決められた労働義務がない日を指します。原則として週に1回の法律上の休日である「法定休日」と、企業が任意で定める「法定外休日」の2種類があります。
休日は所定労働日数の中に含まれません。
一方で休暇は、種類に関係なく、働く義務のある日が休みになることです。法律で定められた法定休暇と、企業が独自に定める特別休暇があります。
「休日」とは異なり「休暇」は所定労働日数の中に含まれます。つまり、有給休暇日も所定労働日数の一部なのです。
年次所定労働日数は、1年間の暦日数から休日を差し引くことで算出が可能です。
所定労働日数に含む「休暇」と、含まれない「休日」を区別してから、所定労働日数を計算するようにしましょう。
各種休暇制度の概要は以下の記事で詳しくご確認ください。
所定労働日数の計算方法
月平均所定労働日数は、先に年間所定労働日数を求め、12か月で割って計算できます。計算式は以下のとおりです。
月平均所定労働日数=年間所定労働日数÷12か月 |
年間所定労働日数は、次の式により、法定休日と法定外休日を合計した年間休日数を差し引くことで算出します。
年間所定労働日数=365日-年間休日の日数 |
年間休日の日数は企業によって異なり、就業規則や労働契約書に記載されている内容を確認してみましょう。
1年間の所定日数を数える起算日は法律上定められていないため、1月1日から起算しても、4月1日から起算しても問題ありません。
年間所定労働日数と年間休日数を算出できたら、式にあてはめて、月平均所定労働日数を割り出します。
たとえば、1年間の暦日数が365日、年間休日が125日の場合は、以下のように計算します。
計算例 | |
---|---|
年間所定労働日数 | 365日-125日=240日 |
月平均所定労働日数 | 240日÷12=20日 |
とくに年間休日数を何も参照せずに把握している方は少なくないでしょう。所定労働日数の計算では、各指標の正確性が重要であるため、就業規則や労働契約書を再確認しましょう。
所定労働日数を設定する際の注意点
所定労働日数は、給与計算や労働時間管理、有給休暇の付与基準を正確に決定するための基礎となる重要な項目です。
所定労働日数を設定する際に注意したいポイントとして、以下の3つが挙げられます。
- 就業規則や労働条件通知書への規定
- 現実的な所定労働日数の設定
- 実労働日数が超過・不足した場合の対応
適切な労務管理を実現し、働きやすい環境を整備するためにも、それぞれのポイントを解説していきます。
就業規則や労働条件通知書に休日について記載する
所定労働日数は、年間の暦日数から年間休日を差し引いて計算します。
年間休日は毎年変動するため、所定労働日数も、年によって変動する可能性を考慮しましょう。
しかし、割増賃金や有休暇の計算基礎となる所定労働日数が毎年違うと、対応が煩雑になり、手間が増えてしまいます。
基準となる年の日数を算出したら、所定労働日数が毎年同じになるように年間休日を設定すると担当者の負担が軽減できるでしょう。
労働基準法では、就業規則や労働条件通知書に、休日を記載するように義務づけています。記載例は、以下のとおりです。
- 毎週土・日曜日
- 祝日および振替休日
- 年末年始休日(12月28日~1月4日)
- 夏季休日(8月13~16日)
- そのほか企業が指定する日
参照:『労働基準法』e-Gov法令検索
参照:『以下の労働条件を明示しなければなりません』厚生労働省
具体的に記載することで、従業員との労務トラブルを防げます。
現実的な所定労働日数を設定する
所定労働日数には法的上限が定められておらず、企業が独自に設定できるものの、法的ルールを踏まえながら現実的な日数を設定するのがポイントです。
労働基準法では、週労働時間を40時間以内、法定休日を最低でも週に1日以上と義務づけています。
年間日数を365日とした場合、所定労働日数の上限は313日と計算が可能です。
年間の週数 | 52週 |
法定休日 | 52日 |
所定労働日数の上限 | 365日−52日=313日 |
週労働時間を40時間以内にする必要があるため、年間所定労働時間の上限は2080時間です。
年間所定労働時間の上限 | 52週×40時間=2080時間 |
したがって、年間所定労働日数の上限は、1日の所定労働時間に応じて、以下のとおり計算できます。
年間所定労働日数の上限 | |
---|---|
1日の所定労働時間6時間30分 | 313日 |
1日の所定労働時間8時間 | 260日 |
ただし、例に挙げた日数は、あくまでも理論上の数値です。実際に従業員を上限日数分、働かせてしまうと心身に大きな負担がかかります。
従業員がワークライフバランスを保てないと、体調不良になる従業員が増えてしまいます。離職者の増加や最悪の場合過労死につながるような事態になることも否定できません。
従業員が無理なく働ける環境を整えるためにも、適度な年間休日を設定しましょう。
実労働日数が所定労働日数を超過・不足した場合の対処法を確認する
実労働日数が所定労働日数を超過したら、休日手当の支払いが必要です。反対に実労働日数が所定労働日数を下回ったら、欠勤控除を適用します。
超過した場合
年度末や繁忙期などで休日出勤を依頼し、実際に勤務した日数が、所定労働日数を超えてしまうケースもあるでしょう。
休日出勤した日が法定休日なら、割増率35%以上の休日労働割増を加算して支払わなければなりません。法定休日ではなく所定休日なら、休日労働割増の手当支払いは不要です。
不足した場合
欠勤によって実際の労働日数が所定労働日数に満たない場合は、欠勤した日を控除できるか、控除する場合はどのように控除するかを検討します。
「ノーワーク・ノーペイの原則」によって、原則として欠勤した日数分をそのまま控除できます。ただし勤務形態に応じて対応が異なるケースもあるため注意しましょう。
欠勤控除の対象となる勤務形態の一覧は以下のとおりです。
項目 | 欠勤控除 | 対応方法 |
---|---|---|
通常勤務 | ⚪︎ | 欠勤した日時分を控除する |
フレックスタイム制 | ⚪︎ | 清算期間の総労働時間に満たない部分のみ控除する |
変形労働時間制 | ⚪︎ | 欠勤した日の所定労働時間分だけを控除する |
シフト制 | ⚪︎ | 欠勤した日の所定労働時間分だけを控除する |
年俸制 | ⚪︎ | 1日換算分を控除する |
完全月給制 | × | 控除できない |
日給制・時給制 | × | 実際に勤務した日・時間分の給与を支払う |
歩合制 | 基本給のみ | 基本給の部分のみ控除する |
通常勤務以外の勤務形態を採用している企業は、それぞれの勤務形態別の対応方法を確認しましょう。
欠勤控除についてさらに詳しく知るには以下の記事もご確認ください。
所定労働日数を設定して適切な労務管理を(まとめ)
適切な労務管理をするためには、所定労働日数と所定労働時間を正確に設定することが重要です。
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