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変形労働時間制とは? 採用するメリットや残業の場合の対応についても解説!

変形労働時間制とは、1週間や1か月などの一定期間ごとに従業員の労働時間を調整する制度です。多様な働き方に対応可能な労働制度の一種として、近年ますます注目を集めています。

本記事では、変形労働時間制の詳しい仕組みや採用するメリットについて解説します。導入フローや残業の場合の対応、注意点なども紹介するので、ぜひ参考にしてください。

※本記事の内容は作成日現在のものであり、法令の改正等により、紹介内容が変更されている場合がございます。

変形労働時間制とは? 採用するメリットや残業の場合の対応についても解説!
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    変形労働時間制とは

    変形労働時間制とは、1週間、1か月、1年など、一定期間内で労働時間をフレキシブルに調整できる制度です。

    たとえば、ホテルや旅館などの宿泊業界は、繁忙期と閑散期がはっきりと分かれています。変形労働時間制を採用すれば、繁忙期には1日10時間働くことが可能です。一方、利用者数が減る時期には、1日の労働時間を6時間に減らすこともできます。繁忙期には業務に集中することが可能です。一方、閑散期は早めに退社して、プライベートを確保できます。

    労働時間の総量は変えずに、そのときどきの業務量に合わせたワークスタイルを実現することが可能です。

    変形労働時間制の種類

    変形労働時間制では、「1か月単位」「1年単位」「1週間単位」で労働時間を調整するケースが一般的です。それぞれの特徴や、主に適用される業種について解説しましょう。

    1か月単位

    1か月単位の変形労働時間制を採用する場合は、1か月の所定労働時間内で労働時間を調整します。1か月の所定労働時間は「1日8時間、週40時間以内」というルールのもと、月ごとの暦日数に応じて設定されます。

    たとえば、月の暦日数が30日の場合、月の法定労働時間の上限は171.4時間です。1か月の間で労働時間を調整すればよいため、1日の労働時間や休日にはあまり制約がありません。そのため、警備スタッフや長距離トラックの運転手など、長時間労働を避けられない業種で多く用いられています。

    1年単位

    1年単位の変形労働時間制は、1年間という長いスパンで労働時間を調整できます。そのため、この制度は繁忙期と閑散期が明確に分かれている業種に特に適しています。たとえば、年末年始やゴールデンウィークなど大型連休に客足が集中しやすいレジャー・宿泊関連の企業におすすめの制度です。

    繁忙期には労働時間を増やすことが可能です。一方、落ち着いている時期には労働時間を減らせます。これにより、年間の所定労働時間を遵守しながらも、フレキシブルな働き方を実現できます。

    ただし、ほかの制度と比べて自由度が高いぶん、使用者の制度乱用を防ぐための細かなルールが特徴です。1年単位の変形労働時間制を採用する場合、以下のような制限が設けられます。

    • 年間休日最低85日以上
    • 1日の労働時間の上限は原則10時間
    • 1週間単位での労働時間の上限は原則52時間

    1週間単位

    1週間単位の変形労働時間制は、1週間という比較的短い間隔で労働時間を調整します。この制度により、トータルの労働時間を所定労働時間内に収めることが可能です。曜日によって忙しさの偏りがあり、計画的なシフト配置や代理の人員確保が困難な業種に適しています。

    このような背景から、1週間単位の変形労働時間制を採用できるのは「従業員が30人未満」の事業者です。また、この制度は「小売業、旅館、料理・飲食店」の業種に限定されています。

    変形労働時間制のメリット

    変形労働時間制の最大のメリットは、そのときどきの業務量に合わせたメリハリのある働き方を実現できるところです。時期ごと、曜日ごとの忙しさに応じて労働時間を調整できるため、労働時間を無駄なく配分できます。また、あらかじめ定めた労働時間内であれば残業扱いとならないため、残業代の削減にもつながります。

    従業員の健康維持のため、適切な休息時間を確保できる点もポイントです。通常であれば、残業が続いたあとも所定の労働時間(8時間や7時間など)は勤務してもらわなければなりません。変形労働時間制を採用すれば、「この日は1日10時間働く」という働き方が可能です。その代わりに、「別の日は1日6時間で帰宅してもらう」といった調整も可能になります。

    変形労働時間制のデメリット

    変形労働時間制を導入するためには、労使協定の締結や就業規則の制定・変更などが必要です。さらに、導入後も残業時間の計算が複雑化し、労務担当者に大きな負担がかかる恐れもあります。

    「残業代を削減できる」ことは企業側から見ればメリットです。従業員側からすると、「長時間働いても残業代(割増賃金)が支給されない」と感じることがあります。それでは、モチベーションが下がるリスクも存在します。これには注意が必要です。

    変形労働時間制における残業の扱い方

    変形労働時間制は、残業時間の削減を目的とした制度です。しかし、「期間内で調整すればすべて残業代にならない」とすると、従業員にとっては不当な労働条件となってしまいます。そこで変形労働時間制における残業は、それぞれ以下のように扱われます。

    1年単位

    1年単位の変形労働時間制では、1年間を365日(閏年は366日)として計算します。この日数を7で割った値に40(時間)をかけることで、法定労働時間が設定されます。たとえば、1年365日の場合、年間の法定労働時間の計算結果は以下のとおりです。

    365(日)÷7×40(時間)=2085.7時間=2085時間42分

    同様に、うるう年の法定労働時間は2091時間24分と計算できます。ただし、1年単位の変形労働時間制は、「年ごと」「週ごと」「日ごと」という3種類の観点から残業時間を捉えます。日ごと、週ごとの所定労働時間を超過して残業扱いとなった時間は、1年間の基準における計算には含まれません。この点については、特に注意が必要です。

    1か月単位

    1か月単位の変形労働時間制では、月ごとの法定労働時間を超えて働いた分が残業時間として扱われます。ただし、ここでも「日ごと」「週ごと」の観点で残業時間を捉える必要があります。年単位の変形労働時間制と同じように、日ごと、週ごとの基準で残業した分については、1か月単位の基準では計算に含みません。

    この制度により、残業時間や残業代の計算が複雑化しやすくなります。その結果、労務担当者の業務負担が増したり、管理コストが増大したりするリスクがあります。

    1週間単位

    1週間単位の変形労働時間制では、通常は法定労働時間の40時間を超えた分が残業です。その週の所定労働時間の設定が40時間を超える場合があります。40時間を超えた分は時間外労働として扱われます。

    ただし、日ごとの基準で残業となった時間は、期間全体の基準では計算から除外される点に注意しましょう。たとえば、所定労働時間の設定が8時間を超えている日があると仮定します。その場合、所定労働時間を超えた分は残業となり、全体の計算からは除外されます。

    変形労働時間制の導入フロー

    変形労働時間制の導入フローを解説します。

    1.現状の調査や把握

    自社に適した制度設計を行うためには、現状把握が欠かせません。まずは従業員の勤務実態を調査し、繁忙期と閑散期の時期や、それぞれの適切な労働時間を洗い出しましょう。

    現状を把握することは重要です。「12月は繁忙期だから所定労働時間を増やす」といった労働時間の配分が可能になります。「6月は閑散期だから所定労働時間を減らす」といった配分も実施できます。これにより、労働時間の最適化が可能になるでしょう。このときの調査結果は労働基準監督署への提出書類にも記載するため、正確な内容が必要です。

    2.対象者と労働時間の決定

    現在の労働実態を把握できたら、変形労働時間制の対象者と労働時間を決定します。

    残業が多い時期や残業の多い部署などを把握し、効果的な制度を設計しましょう。具体的には、以下のような内容を検討します。

    • 対象とする部署
    • 対象とする従業員
    • 実施する期間
    • 1日の労働時間

    3.就業規則のチェック

    変形労働時間制を導入するためには、就業規則の内容を整備しなければなりません。新しい働き方を受け入れると、既存の労働条件と異なる記載が必要です。

    制度設計が完了したら、就業規則の見直しをはかりましょう。具体的には、以下の項目を見直します。

    • 対象労働者の範囲
    • 対象期間および起算日
    • 労働日および労働日ごとの労働時間
    • 有効期限

    4.労使協定の締結

    1週間単位または1年単位の変形労働時間制を導入する場合は、労使協定を結ぶ必要があります。労使協定とは、使用者と労働者が取り交わしたルールを書面にしたものです。

    変形労働時間制に関する労使協定を締結する場合は、以下の事項を定めます。

    • 対象労働者の範囲
    • 対象期間(1箇付きを超え1年以内の機関に限ります。)及び起算日
    • 特定期間
    • 労働日および労働日ごとの労働時間
    • 労使協定の有効期間

    なお、1か月単位の変形労働時間制を導入する場合、労使協定の締結義務はありません。その場合は就業規則または就業規則に準ずるものの中で上記の事項を定めておけば、問題なく制度を運用できます。もちろん、義務がないだけで、従業員との間で協定を結ぶことは可能です。

    5.労働基準監督署への届け出

    作成した就業規則や労使協定は、管轄の労働基準監督署へ提出する必要があります。手続きには、厚生労働省指定の『1年単位の変形労働時間制に関する協定届様式第4号(第12条の4第6項関係)』を使用します。書類は下記のページからダウンロード可能です。

    参照:『主要様式ダウンロードコーナー (労働基準法等関係主要様式)』厚生労働省

    このとき、残業や休日出勤が発生する可能性もあります。そのような場合は、『36協定』も締結・提出しておくとよいでしょう。なお、就業規則は内容に変更がない限り、一度提出すれば再提出の必要はありません。労使協定には有効期限があります。そのため、期限を過ぎないうちに再提出が必要です。

    6.社内への制度伝達と運用

    ここまでのフローを終えたら、いよいよ新しい労働時間制度の運用開始です。すべての従業員に対して、変形労働時間制の概要や導入背景を説明しましょう。

    現場に混乱を生む恐れもあるため、少なくとも1か月前には社内へ伝達することをおすすめします。特に変形労働時間制は制度そのものが複雑なので、従業員からの質問受付期間を十分設けるようにしましょう。

    変形労働時間制の注意点

    変形労働時間制を設計する際は、そもそも就業規則で法定労働時間を超えていないかどうかをチェックすることが大切です。

    会社の規則では残業でなくても、法定労働時間を超えている時間分は、法的には残業扱いです。変形労働時間制は労働時間の規定があやふやになりやすいため、労働時間の設定には十分注意しましょう。

    変形労働時間制で、柔軟な働き方を実現しましょう

    変形労働時間制は、1週間や1か月、1年といった単位で労働時間を柔軟に変更できる制度です。そのときどきの業務量に合わせた労働時間を設定することで、より効率的な働き方を実現できます。

    変形労働時間制は残業代の削減につながるだけでなく、従業員に十分な休息時間を与えられるなどさまざまなメリットがあります。時期や曜日によって忙しさの偏りがある会社は、ぜひ導入を検討してみましょう。

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