目的志向とは? ビジネスにおけるメリットや人材育成のポイントを解説
目的志向とは、目的や目標を設定してモチベーションを高め、達成に向けて自律的に行動する姿勢・態度のことです。
本記事では、目的志向がビジネスで重要視される理由やメリットを詳しく解説します。目的志向の人材を育成する方法も紹介するため、人材開発の担当者は参考にしてください。
目的志向とは
目的志向は、特定の目的の達成に向けて行動する姿勢のことです。達成したい目的や目標、理想とする姿を思い描くことで、強いモチベーションが生まれています。
「業務を通して何を達成したいか」を具体化し、目的に沿った考えや行動により、ビジネスの持続性を高められ、成果も最大化されると考えられています。
目的思考との違い
目的志向と目的思考は、焦点が当たっているものが違います。
目的思考とは、実際に取り組んでいる業務に対して「どのような目的でやっているか」という問いを常に意識する思考法です。
目的を考えず機械的に業務にあたっていると、意図していた目的から自然と離れてしまうおそれがあります。目的思考を持って業務にあたると、改善や工夫が生まれ、生産性の向上につながります。
目的志向は、目的の達成を最優先に、具体的なゴールに向けた行動姿勢を重視します。一方、目的思考は「なぜその行動をとるのか」という目的への意識に対して使われます。
問題回避型との違い
問題回避型とは、問題発生やリスクを避けようとする考え方です。
目的志向では「達成する喜び」が仕事に対する原動力となりますが、問題回避型では「トラブルを避けたい」思いがモチベーションの源となって、行動を促していきます。
目的志向が重要とされる理由
目的志向がビジネスで重要とされる3つの理由を詳しく紹介しましょう。
- 目標を達成するために必要なスキルを育成するため
- 環境変化に適応するため
- 結果や成果を出すため
目標を達成するために必要なスキルを育成するため
組織全体が目的志向を持って行動すれば、組織が掲げる目標を実現するために必要なスキルがおのずと育成されていきます。
組織として目標を達成するためには、何が必要かを従業員自身で考えて行動するようになるため、労働生産性も自然と高まっていくでしょう。
環境変化に適応するため
昨今は、VUCA(ブーカ)の時代といわれています。
VUCA |
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・Volatility(変動性) ・Uncertainty(不確実性) ・Complexity(複雑性) ・Ambiguity(曖昧性(あいまいせい)) |
以上の頭文字からVUCAとは、社会やビジネスで目まぐるしく変転する予測困難な状況をあらわしています
企業は、どのような状況に置かれても、その時々の環境に適応しながら目的を達成するよう求められます。
社内に目的志向が定着していれば、自然と目標達成に向けて協力し合う意識が生まれるでしょう。
結果や成果を出すため
ビジネスの世界では、プロセスよりも結果が重要視される傾向にあり、目的志向が重視されます。
従業員一人ひとりにも、結果や成果を出すための思考や行動が必要です。目的志向の浸透で、従業員が目標達成を常に考えて行動し続け、結果や成果に重点を置くようになると期待されています。
目的志向がもたらす6つのメリット
組織内に目的志向が定着することで、さまざまなメリットが得られます。目的志向の6つのメリットを紹介します。
- 自主性のある社員の育成につながる
- 組織やチームとしての生産性が高まる
- 自主学習や学び直しの機会にもつながる
- 顧客の信頼を獲得しやすい
- 事前にリスク回避ができる
- 行動や成果の判断基準が明確になる
自主性のある社員の育成につながる
目的志向が社内に浸透すれば、自主性のある従業員の育成につながります。
達成すべき目標を社内で共有すれば、従業員は自主的にやるべきタスクを見つけ、課題を解決するための方法を粘り強く探り続けるようになるでしょう。
上司からの指示がなくても自走できる人材、高いモチベーションを保持したまま行動できる人材への成長が見込めます。
組織やチームとしての生産性が高まる
組織全体として目標を達成する共通の意識があると、従業員同士の信頼感や連帯感が生まれ、チームワークや結束力が高まります。
ゴールに最短距離で近づこうとする意欲も高まり、組織やチーム全体の生産性や業務効率性が向上します。
目的志向を持つリーダーを育成できれば、チーム内のメンバーを巻き込んで、さらなる成長を遂げるでしょう。
自主学習や学び直しの機会にもつながる
チームとして高い目標を掲げている場合、従業員の持つ知識やスキルだけでは達成できないおそれもあります。しかし、目的志向があれば、目標達成のために必要な知識やスキルを従業員みずから習得しようと心がけるでしょう。
それぞれの従業員が、課題意識を持って常に学び続けることが、組織全体の成長につながるのです。
顧客の信頼を獲得しやすい
組織全体に目的志向が定着すると、目的や役割を果たすための行動や言動にブレが生じにくくなります。
従業員一人ひとりが商品やサービスの品質を維持し、誠実かつ迅速に対応できるようになるため、結果として顧客からの信頼も得やすくなります。
事前にリスク回避ができる
組織全体に目的志向が定着していると、事前にリスク回避ができます。自分たちの掲げるゴールが明確であれば、ゴールに向かう途中で、どのようなリスクが生じるかも事前に想定しやすいためです。
リスク回避も含めた企業としての方針や戦略を立てられるので、これから起こるおそれのある問題に対して先手を打てるでしょう。
行動や成果の判断基準が明確になる
目的志向を持って行動すれば、判断基準が明確になると考えられています。「取りかかっている業務が目的達成へどのようにつながるか」「どれだけ取り組めば達成できるのか」と考えることで、組織全体の意思決定や判断スピードが速くなります。
以上のように目的志向は、組織全体をゴールへと向かわせる役割を果たしています。
目的志向のデメリット
目的志向にはメリットがある一方で、デメリットもあります。3つのデメリットを詳しく解説します。
- 目指すべきゴールがないとモチベーションが低下しやすい
- 予期せぬ事態に弱く、自分の計画に固執しやすい
- ストイックになりすぎて周囲への配慮に欠ける
目指すべきゴールがないとモチベーションが低下しやすい
目的志向のある従業員は、目標やゴールを掲げることでモチベーションを保ちますが、具体的な目標がないと意欲が下がりやすい傾向があります。
目的を重視するタイプの従業員を管理するには、上層部が一方的に目標を設定して強制するのは望ましくありません。
本人の意見や考えを取り入れながら、ゴールを設定しないと、期待される成果が得られなくなります。
目的志向タイプの人材には、トップダウンで目標を押しつけるのではなく、協働して目標を掲げるアプローチが効果的です。
予期せぬ事態に弱く、自分の計画に固執しやすい
目的志向が強すぎると、従業員の中には自分の計画に固執し、予期せぬ事態に柔軟に対応できなくなる人もいるかもしれません。
組織として目的志向を取り入れる際には、全体やチームの目標達成が重要です。
企業としては、個人の計画に固執するのではなく、場合によっては他者の計画や意見を取り入れたほうが有効なことを伝え、柔軟な対応を促しましょう。
ストイックになりすぎて周囲への配慮に欠ける
目的志向が強すぎると、計画の遅れや他者のミスに、過剰に反応してしまう従業員もあらわれます。
企業としては、他者を責めるのではなく伝え方を工夫したり、状況にあわせて業務の段取りを変更したりする風土をつくることが大切です。
従業員一人ひとりが周囲に配慮できるよう、意識を変えていきましょう。
目的志向を組織に取り入れる方法
目的志向を組織に取り入れるための具体的な方法を紹介します。
- 目的を明確にして可視化する
- 組織全体で目的を共有する
- アクションプランを設計して評価する
- 目的に沿った意思決定をする
- 目的を組織全体で意識し続ける
目的を明確にして可視化する
まずは、組織として目的の明確化から始めます。
「○年○月時点で○○万人の顧客にサービスを提供し、営業利益○○○万円を達成する」のように、具体的な目的を掲げるのがポイントです。
明確にした目的は、ビジョンやミッション、戦略などに反映させて可視化しましょう。
組織全体で目的を共有する
設定した目的を、組織全体で共有します。一度伝えたら終わりではなく、何度も伝え続けることが大切です。
目的の共有を繰り返すことで、ようやく組織全体に浸透し、組織全体の一体感や協力体制の構築にもつながります。
アクションプランを設計して評価する
目的に基づいたアクションプランを設計し、進捗を評価しながら、組織全体が目的に向けて業務に取り組んでいるかを把握しましょう。
アクションプランを設計する際は、「誰が担当するのか」に加え、「いつまでに」「どの程度達成するのか」具体的な計画まで落とし込むことが重要です。明確に設定しておくと、従業員を適切評価できます。
目的に沿った意思決定をする
目的を達成するために業務を進めていく中で、予期せぬ状況やイレギュラーなできごとに直面することもあります。
緊急事態においても目的を意識して意思決定をすることで、状況に適した行動を選択できるでしょう。
目的を組織全体で意識し続ける
目的は単に設定するだけでは不十分であり、組織全体で継続的に意識し続けることが重要です。
定例会や報告会など、従業員が集まる機会を活用し、目的や達成に向けた具体的な行動について共有し、議論しましょう。
目的志向が組織全体に浸透し、共通の目標に向かって一体感を持って取り組む体制を築く必要があります。
目的志向の人材を育成する方法
目的志向が強い人材を育成する具体的な方法を3つ取り上げて紹介します。
- メンター制度を導入する
- 1on1を実施する
- コーチングを取り入れる
メンター制度を導入する
メンター制度を導入し、従業員のロールモデルとなるような人材が若手育成をサポートする仕組みをつくりましょう。
メンターとは、「相談者」「助言者」の意味を持つ言葉です。ビジネスシーンでは、新入社員に対して助言や相談への対応を行う役割を指します。
メンターが行動の指針を示しながら、現場に即したアドバイスをすれば、目的志向の考えが定着しやすくなります。
1on1を実施する
定期的に1on1ミーティングの機会を設け、従業員一人ひとりの目標設定や業務の進捗状況をヒアリングします。
上司から適切なフィードバックを受けることで、従業員は自発的に目的志向を高めていくことが期待できます。
ただし、上司が目標達成を一方的に強制するのは望ましくありません。
あくまでもみずからの意思で目標達成に向けて前向きに取り組めるよう、上司はサポートに徹し、従業員の自主性を引き出すことを意識しましょう。
コーチングを取り入れる
目的志向の人材を育成するために、コーチングを取り入れるのもおすすめです。
コーチングとは、自発的な行動を促進するコミュニケーションで、質問と傾聴を通して従業員本人の意思や答えを導き出す手法です。指導や教育とは異なり、従業員自身に考えさせて思考を導きます。
目的の設定から達成に向けたアクションプランまで、従業員一人ひとりに寄り添いながら、自走できるようになるまで支援していきましょう。
目的志向を計画的に育成
目的志向を持つことで、従業員は自身が設定した目標に対して意欲的に取り組むようになります。その結果、目標達成に向けて、粘り強く努力し続ける姿勢が培われます。
従業員が「目標を達成した際の喜びを感じたい」という思いを持ちながら働けると、職場全体に活気が生まれ、生産性の向上にもつながるでしょう。
組織の状況に応じて、柔軟に目的志向を取り入れ、目的志向の従業員を計画的に育成していきましょう。
目的志向の社員を可視化|One人事[タレントマネジメント]
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組織と個人の目的(ゴール)の達成状況をグラフで見える化し、定期的に評価する目標管理機能もあり、人材の成長促進にもお役立ていただけます。
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