社内公募制度のメリット・デメリット|事例や管理方法も紹介

社内公募制度は、限られた人的リソースを有効に活用し、適材適所の配置や従業員の自律的なキャリア形成につなげる制度として注目されています。大手企業を中心に導入が進む一方で、「どのような効果があるのか」「自社で導入する際に何を注意すべきか」と疑問を持つ方もいるでしょう。
そこで本記事では、社内公募制度の基本的な仕組みをはじめ、メリット・デメリット、導入時の注意点を解説します。実際に導入している企業の事例も紹介しますので、制度設計や運用の参考にしてください。

目次[表示]
社内公募制度とは
社内公募制度とは、人事異動制度の一種です。人材を募集している部署への異動を、従業員が自発的に応募する制度を指します。
社内公募制度の仕組み
社内公募制度では、新卒や中途採用と同じように、各部署で書類選考や面接を行うのが一般的です。そこで採用したい従業員がいた場合は、本人との交渉を行います。交渉が成立すればその従業員は異動となり、みずから希望する部署で働ける仕組みです。
社内公募制度が注目される背景・理由
社内公募制度が注目される背景・理由には、適材適所の人材配置や従業員のモチベーション向上が挙げられます。また、部署にとっては新たに採用するよりも、自社に馴染みのある既存の従業員から、求めるスキルや経験を持った優秀な人材を確保できることも同制度が注目される理由といえるでしょう。

社内公募制度に似た制度
社内公募制度とよく混同されがちな制度に「社内FA制度」「自己申告制度」があります。また、社内公募制度は人事異動制度の一つですが、通常の人事異動とは特徴が異なるため、こちらも間違われやすいです。ここでは上記3つを簡単に説明します。
社内FA制度との違い
「社内FA制度」も人事異動制度の一つです。従業員が自分の経歴やスキル、これまでの実績などを希望の部署にアピールし、異動や転籍を希望する仕組みです。社内公募制度は部署側が求人するのに対し、社内FA制度は従業員本人が求職するという違いがあります。
自己申告制度との違い
「自己申告制度」は、従業員みずからが業績や職務進捗を評価し、希望する部署に異動や転籍願を提出する制度です。社内FA制度と似ていますが、自己申告制度は従業員の職務状況や適正、課題点などを洗い出す情報収集の意味合いが強く、人材管理の手法の一つとして活用されています。そのため、自己申告制度は人事異動を判断するためのデータ収集が主な目的です。
通常の人事異動との違い
社内公募制度が従業員みずからの希望で異動や転籍するのに対し、通常の人事異動は会社の指示で部署の異動・転籍が行われます。辞令が出た場合、従業員は基本的にはそれに従う必要があります。つまり、社内公募制度と通常の人事異動の違いは「従業員の意思の有無」です。
社内公募制度のメリット・導入効果
社内公募制度を導入すると、主に以下のようなメリット・効果を得ることができます。
人材の流出を防止できる
社内公募制度を導入すると、従業員が自分の仕事をポジティブに捉えたり、よりよい労働環境を手に入れたりする機会を提供できます。現在所属する部署では、自分のスキルを最大限に活かしきれていないと感じている従業員も、社内公募制度を利用して力を発揮できる環境に異動できれば他社へ転職する必要はありません。社内公募制度は、優秀な人材が社外へ流出してしまうことを抑えられる可能性があります。
従業員のモチベーションが向上する
社内公募制度では、従業員みずからが望んだポジションで働けます。希望する職種に就くことができれば、従業員はより仕事に対しての充実感・責任感を覚えるでしょう。そのような状況は、仕事へのやりがいにもつながるため、おのずと従業員のモチベーションが向上していきます。
採用コストを軽減できる
社内公募制度を導入することで、部署に必要な人材を社内から募集できます。社外から新たに人材を採用しなくてもいいため、求人広告の製作費や人件費など採用にかかるさまざまなコストの軽減が期待できるでしょう。

管理職が部署の環境改善に取り組むようになる
社内公募制度を利用したいと考える従業員は、異動先の職務内容だけでなく、該当部署の雰囲気や職場環境、管理職のマネジメントスキルも重視する傾向にあります。いくら興味のある業務でも、職場環境が悪く、マネージャー層のスキルが不足している部署への異動は控えられてしまうでしょう。応募の少ない部署の管理職には、環境改善やスキルの向上に努めるよう促すことができるため、社内公募制度の導入はメリットといえます。
企業の生産性向上が期待できる
社内公募制度により、従業員が自発的に行動してスキルアップすれば、企業にイノベーションを起こす可能性が高まります。同じ部署にとどまっていては気づけなかった適性を把握できたり、思いも寄らないアイデアが浮かんだりという効果が得られるかもしれません。積極的に社内公募制度を活用する従業員が増えれば、社内の人材活用が促進され、ゆくゆくは企業の生産性や業績の向上が期待できるでしょう。
社内公募制度のデメリット
社内公募制度の導入にはデメリットもあります。デメリットを理解しないまま社内公募制度を導入すると、期待どおりの効果が得られにくくなってしまいます。
人事担当者の負担が増える
社内公募制度を導入することで、人事担当者の負担が増えるのは避けられません。異動を希望する従業員があらわれた場合、人事担当者は現部署と異動希望先部署との話し合いや業務調整などを担う必要があります。さらに現部署に欠員が出た場合は、人材の補充なども行わなければなりません。社内公募制度の利用を希望する従業員が増えれば、そのぶん人事担当者の業務負担も増えてしまいます。
人事評価制度や育成計画に影響する
社内公募制度を導入することで、人事評価制度や育成計画にも影響を与える可能性があります。従業員の希望する異動先は、人事部で予見できるものではありません。従業員Aさんに対し、ゆくゆくは現在の部署で管理職昇進を想定していたとしても、Aさんがまったく別部署への異動を希望した場合、評価の見直しや育成計画の仕切り直しが必要になります。
企業全体の人材配置が最適化しないおそれがある
社内公募制度によって、ある従業員が希望の部署に異動できた場合、ほかの従業員の人事異動が適切に行われない可能性もあります。みずから申し出た従業員の希望をかなえることで、企業全体の人材配置のバランスを欠いてしまうかもしれません。
組織内の人間関係が悪化する可能性がある
社内公募制度を導入することで組織内の人間関係が悪化する可能性が生まれます。社内公募制度で異動を希望した従業員がいる場合、現部署の上司や同僚からはよく思われないこともあるかもしれません。仮に選考から外れてしまった場合、異動は実現せず、よく思っていない上司や同僚と再び仕事を続けなければならなくなります。
選考から外れた場合モチベーションが低下する
社内公募制度で異動を希望しても、必ずその希望が通るわけではありません。残念ながら選考から外れてしまうこともあるでしょう。そのような場合、従業員はやりたい仕事に就けなかった失望感や、選考外となったことによる自信喪失により、モチベーションが低下するとおそれがあります。
社内公募制度の導入事例
現在は大手を中心に社内公募制度を導入する企業が増えています。ここでは実際に社内公募制度を導入している企業の事例を3つご紹介します。
ソニー株式会社
ソニー株式会社は、50年以上前から社内公募制度を導入している企業です。同社では、新しい挑戦をしたいという個人の意思を尊重し、希望する部署やポストに応募できる制度を導入しています。
上司の許可なしで自由に応募できることから、これまでに7,000名以上の従業員が社内公募制度を利用して異動をかなえています。自分のやりたいことにチャレンジできる環境は、主体的なキャリア形成を実現するうえで重要な制度といえるでしょう。
エン・ジャパン株式会社
エン・ジャパン株式会社も、ソニーと同様に上司の許可なくみずから手を挙げて社内公募制度を利用できる企業です。企業としても活躍人材の発掘や組織の強化というメリットが得られており、キャリア開発の一環で同制度を運用しています。
たとえば、2019年7月には、新規事業から主幹事業まで、10の部署の20のポジションで社内公募を実施しました。「スキルは、配属後でも本人の努力次第でいくらでも修得可能」という考えで社内公募を実施しているため、職種未経験者でも応募できるのが特徴です。
参考:enグループのダイバーシティ推進|エン・ジャパン株式会社
参考:社内公募制度の裏側★7月は20ポジション募集中!
積水ハウス株式会社
積水ハウス株式会社では、意欲ある従業員に挑戦の機会を提供したり、適材適所の人材配置を実施したりすることを目的に、2004年度に『人材公募制度』を導入しました。公募案件は社内ホームページや通知文書で告知し、異動を希望する従業員は直接人事部に応募します。公募元と人事部が書類審査や面談などで選考し、応募者に直接結果を通知する仕組みで、応募から結果通知までの過程は秘匿されています。
さらに同社では、従業員のステップアップの機会として2006年度から『キャリアアップ・チャレンジ制度』も設けています。「生産技能職群」「一般事務職群」「地域勤務社員」を対象として「営業技術職群」への職群転換を支援する制度です。応募者は研修に参加して、これまでの職務経験を振り返るとともに、今後のキャリアについて熟考する機会を持つことができます。そして面談などによる選考を経て、職群転換が行われます。

社内公募制度を導入する流れ
実際に自社で社内公募制度を導入する場合、一般的に以下のようなステップで進めるとよいでしょう。
| 1.導入目的や必要性を言語化して明確にする 2.対象となる職種、募集者、応募者、応募方法などの規定を設計する 3.想定される問題・課題点を洗い出し、対処方法を決定する 4.各部門の公募業務担当者に制度の概要や詳細を説明する 5.応募者対象の従業員に、制度概要や応募方法を周知する |
社内公募制度を導入する際の注意点
社内公募制度を導入する際は、注意点を押さえておく必要があります。
社内公募制度の目的に合った規定を設定する
社内公募制度は、従業員のキャリアアップや組織全体の生産性向上を目指す制度です。そのため、応募条件が緩いと効果的な結果を得にくくなってしまいます。応募条件はある程度厳密に決める必要があるでしょう。応募に際し必須となるスキルや条件などの規定をきちんと設定しておきましょう。
また、現在所属している部署の拒否権について決めておくことも大切です。優秀な人材を他部署に引き抜かれることをおそれ、社内公募制度に抵抗を示す管理職もいるかもしれません。「交渉の余地あり」なのか「拒否権は認めない」のか、いずれかのルールを定めておきましょう。
周知を徹底する
社内公募制度を円滑に進めるためには、従業員の理解も必要です。全従業員を対象とした説明会を実施するなどして、社内公募制度を導入する背景や目的、応募方法などの周知を徹底しましょう。従業員が積極的に同制度を活用できるような仕組みをつくることも大切です。
情報管理に注意する
従業員が社内公募制度を利用して異動を希望していることが、現部署の上司や同僚に知られてしまうと、人間関係の悪化につながるおそれもあります。そのようなトラブルを防ぐためにも、人事部は応募に関する情報管理に細心の注意を払う必要があります。また人事担当者は、応募先の部署にも情報漏れが起きないよう注意喚起をしなければなりません。従業員が社内公募制度を積極的に利用できるよう、応募者のプライバシー厳守は重要なポイントです。
社内公募制度における人事の役割
社内公募制度における人事の役割は主に3つ挙げられます。まずは、応募者に対するフォローです。選考を通過し異動が決定した場合は、従業員が新しい部署で人間関係を円滑に構築できるようサポートするといいでしょう。もし選考外となってしまった場合でも、フォロー面談を実施し、将来のキャリア形成に関する相談を受けたり、選考のフィードバックを共有したりして、モチベーションが下がらないようにフォローすることも大切です。
次に、異動先の部署に対するフォローも人事の大切な役割です。新たに配属となる従業員について、これまでの実績や人柄などを異動先部署に伝えておきましょう。異動してきた従業員と異動先の部署のメンバー間で、早期に良好な人間関係を構築できるようサポートすることが重要です。
最後に、元所属部署に対するフォローも忘れずに実施しましょう。従業員が異動してしまうということは、もともと所属していた部署に欠員が発生することになります。このときに、何もフォローがなければ、優秀な人材を1人失った元所属部署のメンバーは社内公募制度に対してネガティブな印象を持ってしまうかもしれません。人事担当者には人員調整を行ったり、異動のタイミングを調整したりするなどのフォローが求められます。
社内公募の管理を効率化するには
先述したように、社内公募制度を導入することで、応募者の管理や選考・面談の調整、各種フォローアップなど人事担当者の負担は増えてしまいます。社内公募制度をより円滑に運用するには、システムを導入するのも一案です。
たとえば、タレントマネジメントシステムなどには、必要な人材情報をすぐに検索できる機能や選考に関する進捗管理機能、分析・集計機能などが搭載されています。それらを活用することで、社内公募制度に応募した従業員の情報管理をスムーズに行えるでしょう。
また、アンケート機能を使えば人材を募集するポジションに合わせた応募フォームの作成も可能で、応募管理をより円滑に進められるでしょう。
社内公募の管理も支援するタレントマネジメントシステム
One人事[タレントマネジメント]は、従業員情報を一元管理して、社内公募管理にもお役立ていただけるタレントマネジメントシステムです。
応募管理や選考結果の通知、フィードバック面談の記録管理などもシステム上に情報を集約できるため、人事担当者の負担を軽減して業務効率化も促進できるでしょう。
アンケート機能を活用した応募フォームの作成や、集計・分析機能を活用して効果測定などにも役立ちます。
目的に応じて欲しい機能だけ選べるプランもありますので、多機能過ぎて使いこなせないという無駄はありません。
当サイトでは、サービス紹介資料はもちろん、人事労務のノウハウに関する資料を無料でダウンロードしていただけます。また、無料トライアルもご利用いただけますので、まずはお気軽にお問い合わせください。
まとめ
社内公募制度は、従業員の挑戦を後押ししながら、適材適所の配置や人材流出の防止につなげられる制度です。一方で、運用ルールが曖昧だったり、応募情報の管理が不十分だったりすると、不公平感や人間関係の悪化、選考に漏れた従業員のモチベーション低下を招くおそれもあります。
社内公募制度の導入時は、目的や応募条件、選考基準を明確にし、応募者・異動先・現部署へのフォローまで含めて設計することが大切です。運用負担を抑えながら制度を定着させるには、人材情報や選考状況を一元管理できる仕組みづくりも検討するとよいでしょう。

