目標管理制度(MBO)は時代遅れ?失敗する理由と成功ポイント、向いている企業を解説
「目標管理制度(MBO)」は、多くの企業で採用されているもの、時代遅れだと感じる声も少なくありません。目標管理制度(MBO)を適切に運用するには、いくつかのポイントがあります。
本記事では、MBOが失敗する理由や、成功に導くためのポイント、特にMBOが向いている企業の特徴について詳しく解説します。MBOの現代的な活用方法を知りたい人や、効率的な運用を目指す人は、ぜひ参考にしてください。
目標管理制度(MBO)とは
目標管理制度(MBO)の概要についておさらいします。
目標管理制度(MBO)とは
目標管理制度(MBO)とは、Management By Objectivesの略称であり、1950年代に経営学者であるピーター・ドラッガーが提唱した目標管理制度です。目標の達成度に応じて従業員を評価する制度で、日本にも広く根づいています。
特徴は「従業員自身が目標を設定すること」と「従業員の目標が組織目標と関連していること」です。
目標管理制度(MBO)の目的
目標管理制度(MBO)を実施すると、従業員のスキルアップやモチベーション向上が期待できます。従業員自身が自分の目標を設定し、その達成に向かって努力するからです。また、客観的で透明性の高い人事評価が実施できるところも、大きなポイントとなります。
目標管理制度(MBO)のメリット
目標管理制度(MBO)のメリットは、従業員の人材育成が進むことです。企業側が求めるスキルを着実に身につけ、社内で活躍できる人材へと成長を促します。従業員が「会社に貢献したい」と強く感じるようになり、エンゲージメントが高まり離職率の低下が期待できるでしょう。
目標管理制度(MBO)のデメリット
目標管理制度(MBO)のデメリットは、目標設定が形骸化してしまうことです。目標管理そのものが目的となり、形式的な業務になる危険性もあります。さらに、評価を行う上司の業務負担増大も考えられるでしょう。適切に運用しないと、時間の無駄になってしまう恐れがあります。
目標管理制度(MBO)が時代遅れと言われる理由
目標管理制度(MBO)は「時代遅れ」と評価されることもあります。その理由について考えてみましょう。現在の日本社会と目標管理制度(MBO)がマッチしないとされる理由について解説します。
組織と個人の目標が一致しなくなったから
働き方改革が進んだ今、組織や企業の成長と従業員個人の成長は、必ずしも一致しなくなりました。組織の目標を達成するために自分の業務をまっとうする、という目標管理制度(MBO)の考え方が時代の潮流に合わなくなったのです。組織がフラットになり、縦の関係性を強調するよりも、それぞれの環境に合った目標を立てた方が効果的だという声もあります。
従業員が抑圧されなくなったから
目標管理制度(MBO)が浸透した理由の一つに、「目標を自ら設定してもらうことで、抑圧されている従業員を解放させることができる」というものがあります。しかし、現在の従業員は、もともとそこまで抑圧されていないという意見が目立ってきました。
目標管理制度(MBO)が失敗する理由
目標管理制度(MBO)がうまくいかない理由を2つ取り上げて解説します。
個人のキャリアアップが見込めない目標
目標管理制度(MBO)で、従業員個人のキャリアアップを考えていない目標や、企業が掲げる目標をなぞっただけのような目標を設定してはいけません。従業員自身に「目標を達成したい」という強い気持ちがなければ、失敗してしまうためです。
万一、従業員自身がそのような目標を提示したとしたら、上司側が内容を修正するようフィードバックした方がいいでしょう。ただし、上司から部下への目標の押しつけはいけません。
目標の振り返り面談を行わない
目標管理制度(MBO)の運用において目標を設定するだけで、定期的な面談を行っていない場合は失敗する可能性があります。振り返りを行わなければ、今後の業務に反省を活かせられないためです。
進捗確認のための面談と、今後の振り返りを行う面談の2種類を行わなければ、目標管理制度(MBO)による効果は見込めないでしょう。
目標管理制度(MBO)の課題
ここまで目標管理制度(MBO)が時代遅れと言われるようになった理由や失敗する理由を解説してきました。目標管理制度(MBO)が抱える課題点を3つご紹介します。
目標の評価頻度が少ない
目標管理制度(MBO)は半年から1年に一度を目安に評価を行います。しかし、現在のビジネスシーンは変化が激しく、せっかく立てた目標も振り返る頃には適切でないことがあります。
さらに業務が立て込んでいると、目標の修正を行う時間もありません。結果的に、意味のない目標をもとに人事評価が行われることになりかねません。このような状況では目標管理制度(MBO)に価値が見出せないでしょう。
不公平な目標設定
目標管理制度(MBO)では、目標の達成レベルにおいて不公平な対応が行われることもあります。たとえば同じ目標なのに、従業員Aには「ここまで達成できると思うから頑張ってほしい」と伝える一方で、従業員Bには「最低でもここまでできるようにならないとダメ」と伝えるということです。実際の達成度が同じ場合にもかかわらず、人によって評価の基準が変わることは、避けた方がいいでしょう。
目標達成の手抜き
目標管理制度(MBO)では、本来ならもっと高いレベルまでスキルアップできる従業員が、手抜きをするといった事態も見受けられます。100%の力で頑張らなくても一定の評価をもらえる場合、次回の評価まで手を抜く社員も中にはいるかもしれません。企業の発展や成長のためには、従業員に最大限の能力を発揮してもらうことが必要です。目標達成においてチャンレンジする姿勢がなければ、企業も人材も成長が見込めません。
目標管理制度(MBO)の成功ポイント
目標管理制度(MBO)を成功させるには、陥りがちな失敗や課題を乗り越えなければなりません。目標管理制度(MBO)の成功ポイントをご紹介します。
目標内容を明確にする
目標管理制度(MBO)で設定する目標は、具体的かつ明確な内容にするといいでしょう。あいまいな目標だと、目標が陳腐化し、社員のモチベーションの低下につながることもあります。数値で定量化できる目標内容を意識してみましょう。
適切な難易度を設定する
目標管理制度(MBO)で、あまりに難易度が高すぎる目標を設定してしまうと、計画倒れが懸念されます。個人のスキルレベルに合った目標にしましょう。また、今抱えている業務をこなすのに精一杯な従業員に、目標設定を無理に促すこともおすすめできません。
目標に期限をつける
目標管理制度(MBO)に限らず、目標には期限を設定することが大事です。短期・中期・長期という区分を目標ごとに設け、さらに具体的な期日を決めてください。
目標管理制度(MBO)の向き・不向き
ここまで目標管理制度(MBO)を成功するためのポイントを解説してきました。それでは目標管理制度(MBO)の導入が向いている企業や向いていない企業の特徴などはあるのでしょうか。
目標管理制度(MBO)が向いている企業
目標管理制度(MBO)が向いているのは、「すでに従業員の主体性が確立されている」「従業員が自律的に取り組む」企業です。経営者や役員の意見のみで会社の方針が決定されるようなトップダウンの社風で、従業員の意志があまり吸い上げられない企業には、目標管理制度(MBO)を行ってもあまり意味がないといえるでしょう。
目標管理制度(MBO)が向いていない企業
目標管理制度(MBO)に不向きな企業には、「組織目標や経営方針が頻繁に変更される」という特徴があります。組織目標が変わるたびに、個人の目標も変更しなければならないからです。このような企業は、別の目標管理制度を選択する方がいいでしょう。
MBO以外の目標管理制度
MBOが自社に不向きだと考えた場合、ほかにどのような目標管理制度を選べばいいのでしょうか。代表的なものを2つご紹介します。
OKR
OKRとは、Objectives Key Resultsの略称です。2010年代から広まった新しい目標管理の考え方です。「達成するべき目的」と「その目的を達成するための数値目標」を決めます。特徴は「定性的な目的」と「定量的な数値目標」を両方決めること。目指すべきゴールを提示しながら、明確化された指標を同時に定義することで、組織全体が同じ方向を目指せるとされています。
ノーレイティング
ノーレイティングとは、MBOのように従来の年次評価を廃止した評価制度です。それぞれが設定した目標について上司と面談を実施し、頻繁に評価が行われます。リアルタイムで目標達成についてフィードバックがもらえるため、すぐに業務へ反映できる点が特徴です。
まとめ
目標管理制度(MBO)は、時代遅れだという意見も確かに存在します。しかし、自社に向いている方法を厳選したり、成功ポイントに気をつければ、効果を発揮することもできます。自社に最適な運用を試行錯誤することが、よりよい組織づくりにつながるでしょう。
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MBOやOKRのテンプレートがあらかじめ用意されており、自社用にカスタマイズすることもできます。評価の自動集計や目標の到達度に応じて人事評価に反映させることも簡単。人材育成につながる目標管理の運用が目指せるでしょう。
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