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退職時の雇用保険手続きの方法【事業主向け】いつまで? 必要書類と注意点を解説

退職時の雇用保険手続きの方法【事業主向け】いつまで? 必要書類と注意点を解説

従業員が退職する際の雇用保険手続きを適切に行うことは、法的要件を満たすために重要です。

本記事では、退職時の雇用保険手続きの方法について、事業主が知っておくべき情報を詳しく解説します。手続きに必要な書類や期限、注意点、手続きが遅れた場合の対応なども紹介するので、ぜひ参考にしてください。

 

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    従業員の退職により雇用保険の脱退手続きが必要

    従業員が離職する際、会社側は雇用保険や社会保険などの各種手続きをしなければなりません。特に、雇用保険の資格喪失手続きは、失業保険の受給のために欠かせないものです。従業員の退職後の生活に直結するため、迅速な対応が求められます。

    退職時に従業員へ渡すべき書類の発行を怠った場合は、雇用保険法違反となる恐れもあるため、必要な手続きを一つひとつ着実にこなさなければなりません。

    退職時の雇用保険脱退手続きに必要な書類

    雇用保険の資格喪失手続きをする際は、事業所を管轄するハローワークへ下記の書類を期限内に提出する必要があります。

    提出期限退職日の翌々日から10日以内(土日祝日の場合はその翌日)
    提出先管轄のハローワーク
    必要書類・雇用保険被保険者資格喪失届
    ・雇用保険被保険者離職証明書
    ※離職票を発行する場合のみ

    退職時の雇用保険脱退手続きに必要な書類について詳しく解説します。

    参照:『届出の添付書類(設置、得喪)【加工用】.xlsx』厚生労働省

    雇用保険被保険者資格喪失届

    雇用保険被保険者資格喪失届は、雇用保険の被保険者でなくなったことを示す書類です。従業員の退職や死亡、役員への昇格などがあった場合に提出が求められます。

    雇用保険被保険者資格喪失届には、被保険者番号や事業者番号、資格取得年月日、資格喪失原因などを記載します。

    雇用保険被保険者資格喪失届は、ハローワークのホームページよりダウンロードが可能です。

    離職証明書

    離職証明書は、退職者が離職票の交付を受けられるようにする目的で、会社が作成する書類です。

    離職証明書は、以下3枚の書類が複写となっています。

    • 事業主控
    • ハローワーク提出用
    • 雇用保険被保険者離職票‐2

    雇用保険被保険者離職票‐2には離職理由、離職前の賃金支払状況などが記載されています。

    離職証明書の提出が必要な場面は、以下の2つのケースです。

    • 退職者が離職票の交付を希望した
    • 59歳以上の従業員が退職した

    退職後の転職先がすでに決まっている場合や従業員が死亡した場合は、離職証明書の提出は必要ありません。

    離職証明書と似た書類に「離職票」があります。両者の違いは以下の通りです。

    書類の名称発行場所発行する目的
    離職証明書会社ハローワークから離職票を受け取るため
    離職票ハローワーク退職者が失業保険を受給するため

    離職証明書はハローワークで入手できます。郵送で取り寄せできるケースもあるため、管轄のハローワークに事前に問い合わせて確認しましょう。

    離職証明書には離職理由を記載する欄が設けられており、従業員に記載内容を確認したうえで署名してもらう必要があります。諸事情により署名が得られない場合は、その理由を記載し、事業主が代わりに署名しましょう。

    参照:『雇用保険被保険者離職証明書についての注意』厚生労働省

    それぞれの添付書類

    雇用保険の資格喪失手続きを行うときは、雇用保険被保険者資格喪失届のほかにも添付しなければならない書類があります。

    さらに、離職票を発行するかどうかによって、必要な添付書類が異なるため注意が必要です。

    添付書類
    離職票を交付する場合・離職証明書(3枚複写)
    ・記載した期間すべての出勤簿またはタイムカード
    ・記載した期間すべての賃金台帳または給与明細
    ・辞令やほかの社会保険の届出(控)
    ※必要に応じて
    ・離職理由を確認できる書類のコピー
    離職票を交付しない場合・労働者名簿
    ・出勤簿またはタイムカード
    ・賃金台帳または給与明細

    離職票を交付する場合、コピーの提出が必要な「離職理由を確認できる書類」は、退職理由によって以下の通り種類が異なります。

    退職理由離職理由を確認できる書類
    自己都合の場合退職願や労働者名簿など
    解雇の場合解雇通知書や労働者名簿など
    退職勧奨の場合退職願、労働者名簿など
    定年の場合就業規則、再雇用に関する労使協定書など
    契約期間満了の場合契約書

    退職時の雇用保険脱退手続きの流れ・期限・提出先

    従業員が退職する際の雇用保険手続きの流れは、以下の通りです。

    1.雇用保険被保険者資格喪失届を提出する
    2.(離職票を発行する場合)離職証明書を提出する
    3.手続きが完了したら、必要書類を従業員に交付する

    企業の人事・労務担当者は、離職者の退職日の翌々日から10日以内に「雇用保険被保険者資格喪失届」を提出します。また、従業員から離職票の発行を求められた場合は「離職証明書」も提出しましょう。

    手続きが完了したら、従業員に対して、以下の書類を発行します。

    • 離職票‐1、2
    • 退職証明書(従業員から発行を求められた場合)
    • 雇用保険被保険者証(会社が保管している、もしくは従業員が紛失した場合)
    • 源泉徴収票

    離職票は、離職証明書をハローワークに提出すると発行される書類です。離職票‐1には退職者の氏名やマイナンバー、失業給付の振込先などの基本的な情報が、離職票‐2には退職者への賃金支払い状況や離職理由などが記載されています。

    参照:『雇用保険被保険者離職票‐1』
    参照:『雇用保険被保険者離職票‐2』

    雇用保険被保険者証は、従業員を雇用した際にハローワークへ提出する雇用保険被保険者資格取得届が受理されると発行される書類です。雇用保険被保険者証は原則として従業員が保管しますが、紛失防止のために企業が保管し、退職時に返却するケースもあります。会社で保管している場合は、退職時に従業員へ渡しましょう。

    万が一、従業員が雇用保険被保険者証を紛失した場合、再発行の手続きをしたうえで従業員に交付する必要があります。

    従業員が退職する際の雇用保険手続きは、以下の3つの方法から選択できます。

    • ハローワークの窓口に持参する
    • 郵送で提出する
    • 電子申請をする

    退職時の雇用保険脱退手続きの注意点

    退職時に雇用保険脱退手続きをするうえでの注意点を詳しく解説します。

    離職票を交付する場合としない場合で提出書類が異なる

    雇用保険の脱退手続きにおいては、離職票を交付する場合とそうでない場合で、提出すべき書類は大きく異なります。離職票を交付する場合に必要な添付書類は多岐にわたるため、期限内に提出できるよう、すみやかに準備することが大切です。

    離職票の交付が必要なケースは、以下の通りです。

    • 従業員が離職票の交付を希望したとき
    • 59歳以上の従業員が退職したとき

    離職票がなければ、従業員は失業給付を受けられません。従業員から求められたにもかかわらず離職票を交付しないと、違法と判断されるため注意しましょう。

    また、59歳以上の従業員が退職する際は、本人が希望する・しないにかかわらず離職票の交付が必要です。

    参照:『雇用保険事務手続きの手引き』厚生労働省

    退職以外でも脱退手続きが必要な場合がある

    雇用保険の脱退手続きは、従業員が退職により雇用保険の被保険者でなくなる場合に必要な手続きです。しかし、ほかにも以下のようなケースで必要です。

    • 死亡した場合
    • 役員になった場合
    • ほかの事業所へ出向した場合
    • ​​週の所定労働時間が20時間未満に変更された場合

    従業員が死亡した場合は、死亡した当日を離職年月日とします。また、従業員が昇進して役員に就任したときも、従業員ではなくなり雇用保険の適用範囲から外れるため、脱退手続きを行わなければなりません。

    従業員が出向してほかの会社に籍を移したときや、働き方が変わって週の所定労働時間が20時間未満になったときにも、脱退手続きが必要です。

    手続きが遅れると罰則の可能性もある

    雇用保険被保険者資格喪失届の提出は、企業に課された義務です。提出期限は、従業員が雇用保険の被保険者でなくなった日の翌日(退職日の翌々日)から10日以内と定められています。

    期限内に必要な手続きを行わなかったり、虚偽の申告をしたりすると、雇用保険法違反とみなされます。6か月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金を科される恐れがあると覚えておきましょう。

    万が一、提出期限を過ぎてからハローワークに提出しても、届出は受理されます。ただし、提出するタイミングが遅れてしまうと、失業給付の手続きや就職先での雇用保険の資格取得手続きができないなどトラブルに発展しかねません。期限内に手続きするよう心がけましょう。

    参照:『雇用保険法』e-Gov法令検索

    退職時に必要なその他の手続き

    従業員が退職する際は、雇用保険の脱退以外にも以下の手続きが必要です。

    • 健康保険証の回収
    • 社会保険の資格喪失手続き
    • 所得税や住民税など税金の手続き
    • 源泉徴収票の発行・郵送

    社会保険の資格喪失手続きをする際は、従業員が退職した日の翌日から5日以内に、健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届を管轄の年金事務所に提出しなければなりません。

    届け出では本人のほか、扶養親族がいる場合は、親族分の健康保険証を添付する必要があるため、忘れずに回収しましょう。

    また、所得税や住民税など税金関連の手続きも必要です。退職するタイミングや転職先が決まっているか否かにより方法が異なるため、不明点があれば従業員が居住する市区町村に確認しながら進めましょう。

    さらに、企業には、従業員の退職後1か月以内に源泉徴収票を交付する義務が課されています。違反した場合は罰則の対象となるため、注意しましょう。

    参照:『所得税法』e-Gov法令検索

    退職時の雇用保険脱退手続きは電子申請ができる

    雇用保険被保険者資格喪失届の提出方法は、以下の通りです。

    • ハローワークの窓口に提出する
    • ハローワークに必要書類を郵送する
    • 電子申請する

    窓口や郵送で提出する場合は、ハローワークインターネットサービスより書式をダウンロードして使用できます。

    また、雇用保険被保険者資格喪失届は、電子政府の総合窓口『e-Gov』から電子申請により提出できます。詳しい手続き方法については、e-Gov電子申請のホームページを確認しましょう。

    参照:『雇用保険被保険者資格喪失届』ハローワークインターネットサービス
    参照:『電子申請について』e-Gov電子申請

    雇用保険の脱退手続きは便利な電子申請がおすすめ

    従業員が退職する際、企業はさまざまな準備や手続きを進めなければなりません。なかでも、雇用保険の脱退手続きは従業員の今後の生活に大きく影響するため、期限内にもれなく対応することが求められます。

    近年では、電子申請で雇用保険の手続きを進める企業も増えています。手続きの簡略化だけでなく、記入の間違いを減らすためにも、積極的に電子申請を活用していきましょう。

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