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雇用保険の喪失手続きが遅れた場合は離職者にも影響|企業責任は万全に

雇用する従業員が雇用保険の被保険者でなくなった際、事業主は速やかに必要な手続きを行う必要があります。手続きを行わない企業は罰則の対象となり、手続きについて正しく理解をしていなければ再発するリスクもあるでしょう。

本記事では、雇用保険喪失手続きの流れをはじめ、雇用保険被保険者資格喪失届の概要や提出が必要なケース、さらには手続きを怠った場合の罰則について解説します。

※本記事の内容は作成日現在のものであり、法令の改正等により、紹介内容が変更されている場合がございます。

雇用保険の喪失手続きが遅れた場合は離職者にも影響|企業責任は万全に
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    雇用保険被保険者資格喪失届とは

    雇用保険被保険者資格喪失届とは、従業員が雇用保険の被保険者でなくなった際に、雇用保険の資格喪失手続きとして届け出る書類です。

    雇用保険被保険者資格喪失届は、雇用する事業者が作成したうえで所轄のハローワークに提出しなければなりません。従業員は、退職した翌日から雇用保険被保険者資格を喪失します。

    なお、雇用保険の適用事業所に雇用された従業員は、雇用形態に関係なく、一定の条件を満たせば雇用保険の被保険者の対象です。

    雇用保険喪失手続きが必要になるケース

    雇用保険喪失手続きとは、退職や死亡などにより雇用保険被保険者資格を喪失した従業員を届け出るための手続きのことです。

    雇用保険喪失手続きが必要となるケースについてくわしく見ていきましょう。

    従業員の退職

    雇用保険被保険者資格喪失届は、雇用保険加入者の従業員が退職した場合に必要です。

    原則、従業員が被保険者でなくなった日の翌日(退職日の翌々日)から10日以内に雇用保険喪失手続きをしなければなりません。退職した従業員は、退職日の翌日から被保険者資格を喪失します。

    雇用保険被保険者資格喪失届と一緒に、雇用保険被保険者離職証明書の提出を求められる場合もあります。さらに、出勤簿や退職辞令発令書類、労働者名簿、賃金台帳などが必要なケースもあるため、事前に準備しておきましょう。

    従業員の死亡

    従業員が退職する場合に限らず、従業員が亡くなった場合も雇用保険喪失手続きが必要です。

    退職時と同様、被保険者でなくなった日の翌日から10日以内に手続きをします。離職年月日には、死亡した当日を記載します。また、資格喪失の理由として「被保険者でなくなったことの原因」の欄に死亡のためと記載しましょう。

    従業員の役員への昇進

    従業員が昇進や昇格により会社の役員や管理者となった場合にも、雇用保険被保険者資格喪失届を提出しなければなりません。ただし、管理者になっても一般の従業員と同様の仕事を行っている場合は、雇用保険への加入が認められているため手続きは不要です。

    つまり、一般の従業員と働き方が異なり、役員の業務にのみ従事する場合に、雇用保険喪失手続きが必要です。雇用保険被保険者資格喪失届に記載する喪失日には、役員就任の前日を設定します。役員就任日やその翌日の日付ではないため、間違えないようにしましょう。

    雇用保険喪失手続きは企業の義務

    企業が雇用保険喪失手続きを実施しなければならない理由についてくわしく解説します。

    雇用保険法によって定められている

    雇用保険喪失手続きは、雇用保険法の第7条により企業が行うべきものとして定められています。

    参照:『雇用保険法』厚生労働省

    企業は、必要事項を記載した雇用保険被保険者資格喪失届を、管轄のハローワークに対して変更事由が発生した日の翌日から10日以内に提出しなければなりません。なお、この届け出は従業員の出向の際にも提出が必要となるケースがある旨を理解しておきましょう。

    電子申請が義務化されている法人である

    雇用保険喪失手続きについては、2020年4月より特定の法人を対象に電子申請が義務化されています。電子申請が義務化されている特定法人は次の通りです。

    • 資本金、出資金または銀行等保有株式取得機構に納付する拠出金の額が1億円を超える法人
    • 相互会社
    • 投資法人
    • 特定目的会社

    対象法人には、雇用保険被保険者資格喪失届以外にも、雇用保険に関連する下記の手続きに関して電子申請が義務づけられています。

    • 被保険者資格取得届
    • 被保険者転勤届
    • 高年齢雇用継続給付支給申請
    • 育児休業給付支給申請

    電子申請の義務化は、行政手続きにかかるコスト削減を目的としたものです。申請側にとっても時間や労力の削減が期待できるでしょう。2023年9月現在、電子申請義務化に違反したとしても、法律上罰則は特段定められていません。

    しかし、罰則を受けないにせよ、手続きが受理されないケースも考えられます。電子申請が義務化されている事業所は、電子申請システム「e-Gov」を利用して対応してください。

    参照:『2020年4⽉から特定の法人について電子申請が義務化されます。』厚生労働省

    雇用保険喪失手続きの期限と方法

    雇用保険喪失手続きの期限や、具体的な手続き方法についてくわしく解説します。

    退職日の翌々日から10日以内

    雇用保険被保険者資格喪失届は、退職日の翌々日から10日以内にハローワークに提出する必要があります。提出期限は、離職票交付の希望の有無に関係なく守らなければなりません。

    提出期限を過ぎても受理されますが、退職者にとって不利益となるケースがあり、最終的にトラブルに発展してしまうことも考えられます。提出期限を守るようにしましょう。

    従業員の無断欠勤によって連絡が取れない場合や無断欠勤期間をさかのぼって退職扱いにする場合など、従業員側の都合で書類の提出が遅れた際には、その旨をハローワークに伝える必要があります。無断欠勤の場合には、自己都合と解釈されるケースがほとんどです。

    しかし、退職理由によって失業保険が出るまでの期間に違いがあることから、解雇とみなされないケースも存在します。自社で判断できないときにはハローワークに相談しましょう。

    ハローワークに直接提出

    電子申請が義務化されている法人以外は、雇用保険被保険者資格喪失届をハローワークの窓口に直接提出できます。ハローワークに直接提出すれば、書類の記載漏れや訂正の必要があってもその場で対応できるのが大きなメリットです。

    ただし、雇用保険被保険者資格喪失届については「離職票交付あり」「離職票交付なし」のどちらの場合でも電子申請が可能です。事前に準備をして手続きをスムーズに済ませましょう。

    ハローワークに郵送で提出

    雇用保険喪失手続きは、直接窓口へ出向かずにハローワークに郵送することも可能です。直接出向く時間を確保できない場合に有効な方法といえます。

    ただし、雇用保険被保険者資格喪失届は、マイナンバーが記載された書類のため、特定記録や簡易書留など、受け取りを確認できる方法で郵送しましょう。また、料金分の切手を貼付した返信用封筒の同封が必要です。返送された離職票は、速やかに退職者本人に渡してください。

    e-Govの電子申請システムを利用して提出

    電子申請が義務化されている法人は、電子申請システム「e-Gov」を利用して雇用保険喪失手続きを行わなければなりません。もちろん、電子申請が義務化されていない企業であっても、電子申請によって業務効率が向上するでしょう。

    e-Govの電子申請システムを利用する際は、事前にIDやパスワード、電子証明を取得する必要があります。一度登録をすれば、いつでも都合のよいタイミングで必要書類を作成し提出できるので、非常に便利なシステムといえるでしょう。

    雇用保険喪失手続きの書類について

    雇用保険喪失手続きを行う際に必要な書類について解説します。

    雇用保険被保険者資格喪失届提出時の添付書類

    雇用保険喪失手続きで求められる書類は次の6つです。

    1. 出勤簿
    2. 退職辞令発令書類
    3. 労働者名簿
    4. 賃金台帳
    5. 離職証明書
    6. 退職理由が確認できる書類

    原則、上記6つの書類を添付したうえで、事業所所轄のハローワークに提出します。ただし、離職者本人が離職票の交付を希望しない場合などは、離職証明書の提出は不要です。

    離職証明書の発行

    離職証明書は、基本的に退職者が離職票を必要とするときにのみ発行し、ハローワークに提出します。ただし、離職者の年齢が59歳以上の場合は、離職者が交付を希望していなくても離職証明書を発行する義務があります。

    発行した離職証明書をハローワークに提出しなければならないため注意してください。離職証明書の発行が必要であれば、出勤簿や賃金台帳も準備しなければなりません。

    ほかに照会が求められる書類

    退職辞令証明書が必要となる場合には、通常提出が求められる6種類の書類に加えて退職願などの写しが求められるケースもあります。

    従業員の退職日の翌々日から10日以内と提出期限が短く設定されていることから、ハローワークへ直接出向く際には、関連する書類をすべてそろえておくことが重要です。

    雇用保険喪失手続きが遅れた場合と手続きしなかった場合

    雇用保険喪失手続きが期限内に行われなかった場合、または雇用保険喪失手続きをすべき事業所が意図的に手続きを行わなかった場合に、どのような処罰があるか解説します。

    提出が遅れた場合

    雇用保険喪失手続きは、従業員の退職日の翌々日から10日以内に行う必要があります。提出期限を過ぎてから提出をしたとしても、事業者側に科せられるペナルティは基本的にありません。

    ただし、書類の提出が遅れることによって退職者の失業給付の受け取りが遅延してしまい、退職者にとって大きな不利益が生じる恐れがあります。さらに、新しく雇用された企業での手続きが滞ってしまうことも考えられます。

    雇用保険喪失手続きは、企業に課せられた義務です。企業に対する悪い評判があがったり、ハローワークから指導が入ったりするリスクも高まるため、遅滞なく手続きを行うことが大切です。

    提出しなかった場合

    雇用保険喪失手続きが必要であるにもかかわらず手続きをしなかった場合は、より深刻な問題に発展する恐れがあります。離職者が失業給付を受けられないのはもちろん、雇用保険法第83条により6か月以下の懲役または30万円以下の罰金に科せられてしまうでしょう。

    さらに、離職者からの離職票の請求に応じなかった場合も罰則の対象です。雇用保険法第76条第3項違反の対象となり「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金」が科されてしまいます。ペナルティを受けることがないよう、正しく対処していきましょう。

    参照:『雇用保険法』e-Gov法令検索

    雇用保険喪失手続きを正しく理解し、企業責任を万全に

    雇用保険被保険者資格喪失届は、退職者が失業給付を受給するために必要な書類です。何かしらの理由で書類を提出しなかった場合は「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金」の罰則が科されるため注意しましょう。

    また、雇用保険被保険者資格喪失届の記載内容や申請方法に誤りがあると、失業給付の受け取り時期が遅延するだけでなく、最悪の場合受け取れなくなってしまうことも考えられます。退職者とのトラブルに発展する恐れもあるため、期限内に必要な手続きを行いましょう。

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