雇用管理とは? 意味や目的と種類、労務管理との違い、システムを解説

雇用管理とは? 意味や目的と種類、労務管理との違い、システムを解説

雇用管理とは採用から退職まで、一連の管理活動を体系的に進める取り組みです。

少子高齢化や働き方改革の影響で、企業が適切な雇用管理を行うことの重要性が高まっています。しかし、雇用管理と労務管理の違いが区別できていなかったり、実務で具体的にどう対応すべきかわからなかったりする人事担当者もいるでしょう。

本記事では、雇用管理の基本的な意味や労務管理との違い、実務でおさえたいポイント、システムを活用するメリットまで、わかりやすく解説します。


雇用管理を1つに|統合型人事労務システム「One人事」資料を見てみる

目次アイコン目次

    雇用管理とは|意味や目的

    雇用管理とは、従業員の入社から退職に至るまでを企業が計画的に管理・実行する仕組みを指します。

    単に人材を管理するだけでなく、企業戦略を考慮しながら、組織の成長や従業員のパフォーマンスにも直結する業務です。

    具体的には以下のように幅広い領域が該当し、主に人事部が主導します。

    • 採用活動
    • 適正な配置
    • 教育研修/キャリア形成支援
    • パフォーマンス評価
    • 昇進・昇格制度の設計
    • 退職/定年対応

    雇用管理の目的は、従業員が健康的で効率的に働ける環境を整えたうえで、企業全体の生産性向上をはかることです。

    雇用管理が不十分だと、採用ミスマッチですぐに人が辞めたり、評価・昇進の不透明さで従業員のモチベーションが低下したりといった問題が発生します。そのため計画的に長期にわたって取り組み続けることが重要です。

    ▼雇用管理を1つに
    統合型人事労務システム「One人事」資料を見てみる

    雇用管理と労務管理の違い

    雇用管理と労務管理は、どちらも企業の人材マネジメントにおいて重要な役割を担いますが、それぞれ目的と役割が異なります。

    雇用管理は 企業が従業員をどのように活用するかを決める活動です。採用・配置・評価・育成を通じてパフォーマンスを最大化することを目的としています。

    一方で、労務管理は労働環境を適正に維持し、労働条件を守るための活動です。法令を遵守しながら従業員が安心して働ける環境を整えることが主な役割です。

    目的管理内容
    雇用管理従業員の適切な採用・配置、教育・育成、モチベーション向上採用、配置、昇進・昇格、評価、教育・研修、退職など
    労務管理働きやすい環境整備、労働条件の維持・改善労働時間、給与、福利厚生、就業環境、安全衛生、労働条件など

    このように雇用管理は「人材の活用」、労務管理は「働く環境の維持・改善」 に重点を置くという違いがあります。どちらも企業にとって欠かせない要素であり、適切な雇用管理を実践するためには、まず適正な労務管理が前提となります。

    ▼労務管理を詳しく知るには

    雇用管理に含まれるもの・種類

    雇用管理には、企業が従業員を適切に管理するための多岐にわたるプロセスが含まれます。

    各プロセスは「採用」から「配置・育成」「評価」「退職管理」 に至るまで、人材の最適な活用に向けて重要な役割を果たすものです。

    以下に、代表的な雇用管理の種類と役割について詳しく解説します。

    • 採用管理|適切な人材確保が企業の未来を決める
    • 配置・昇進・昇格管理|適材適所で従業員の成長を支援する
    • 評価・処遇の管理|公正な評価が組織の活力を生む
    • 教育・研修の管理|スキルアップで企業と従業員の成長を加速
    • 退職・解雇管理|離職率を改善し、人材流出を防ぐ

    採用・選考・募集管理

    雇用管理において、採用は最初のプロセスであり、その後の雇用管理全体を左右する要素です。

    企業の成長には、優秀な人材の確保が欠かせません。求めるスキルや価値観に合った人材を採用するために計画と実行を管理する必要があります。

    具体的な戦略や管理領域は以下のとおりです。

    • 採用計画の策定
    • 求人広告の選定
    • 面接や適性検査の実施

    近年はリファラル採用やダイレクトリクルーティングなど、多様な戦略的採用手法が取り入れられています。

    配置・昇進・昇格管理

    雇用管理における配置・昇進の適正化は、従業員の成長と組織のパフォーマンス最大化につながります。適切な人員配置を行うことで、従業員のモチベーション向上や能力の発揮が期待できるでしょう。

    また、ジョブローテーションやキャリアパスの整備も、長期的な雇用管理の視点で重要なポイントとなります。

    ▼配置を適正化するにはどうすればいいのか、以下の記事でも詳しく解説しています。

    配置を最適化するにはシミュレーションが大切です。
    配置シミュレーションのやり方については【こちら】を見るとイメージしていただけます。

    評価・処遇の管理

    雇用管理の一環として、公正な評価と適正な処遇は、従業員の納得感を高め、組織全体の成長を支えるうえで欠かせません。

    成果や能力が適切に評価され、報酬や昇給に反映されると、本人のキャリア形成を促し、組織へのエンゲージメントも高まります。

    また、評価プロセスの透明性を確保し、適切にフィードバックすることで、個人の成長を後押しし、結果として組織の競争力向上にもつながるでしょう。

    ▼公平な評価のために評価基準に悩んでいる方は以下の記事をヒントにしてください。

    ▼評価設計に悩んでいる方は、エクセルで自社用にカスタマイズできる以下のシートもご活用ください。

    教育・研修の管理

    雇用管理のなかで教育・研修は、企業の成長に欠かせない個々の人材育成を担うプロセスです。

    新入社員研修やOJT、リスキリングなど従業員のスキルアップを支援することで、組織全体の生産性向上につながります。

    近年は、デジタルスキルやリモートワークに対応したトレーニングが重要視されており、変化に対応する研修プログラムを導入するケースが増えています。

    ▼研修管理を効率化する方法を知るには以下の記事もご確認ください。

    退職・解雇の管理

    雇用管理では、退職や解雇の管理も欠かせません。「なぜ従業員が辞めるのか?」を正しく把握し、離職を防ぐ仕組みを整えることが、企業の安定経営につながります。

    適切な退職面談を行い、「本音の退職理由」を分析することで、評価制度や職場環境を改善に活かしていきます。

    また、退職者との関係を維持することも大切です。再雇用制度や退職者ネットワークを整備しておくと、貴重な人材を取り戻す機会が生まれます。退職者の声が企業の評判や採用活動に影響を与えるため、最後まで誠実に対応しましょう。

    ▼本当の退職の前に防ぎたい、静かな退職とは?

    雇用管理情報とは

    雇用管理情報とは、企業が従業員の雇用管理のために収集・管理する個人データのことです。

    雇用管理情報に含まれるもの
    基本的な個人情報(病歴、収入、扶養情報を含む)
    就労状況過去の評価配置履歴賃金の変化福利厚生の利用

    これらの情報は、適切な人材マネジメントや評価プロセスを確保するために不可欠です。

    厚生労働省は、雇用管理情報の取り扱いに関するガイドラインを定めており、企業は個人情報保護法に基づいて厳重に管理しなければなりません。とくに給与や評価に関する情報は従業員のプライバシーとなるため、セキュリティの高い管理方法を採用する必要があります。

    多くの企業では、専用のシステムを利用して雇用管理情報を一元管理し、情報漏えいや不正利用を防止しています。

    参考:『雇用管理に関する個人情報の適正な取扱いを確保するために事業者が講ずべき措置に関する指針』厚生労働省

    ▼勤怠や採用など業務ごとに分けて情報を管理している企業も少なくありません。しかし、雇用管理情報は一元管理することで、運用工数を削減できます。一元化のメリットについて詳しく知るには以下の資料もご活用ください。

    雇用管理システムとは

    雇用管理システムとは、企業が従業員の採用から退職までのプロセスを一元管理し、効率化をはかるためのツールです。近年は、クラウド型やAIを活用した高度なシステムが登場し、人材マネジメントのデジタル化が進んできました。

    雇用管理システムには、以下のような多機能が含まれています。

    採用管理応募から選考までを一元管理し、効率的に採用活動を進める
    配置・評価管理従業員の適材適所な配置や、昇進候補者の選定を支援する
    教育・研修管理従業員のスキルアップや資格取得支援をサポートし、成長を促す
    退職手続きの支援退職で発生する公的手続きを効率化する

    クラウド型のタレントマネジメントシステムや人事労務システムは、AIを活用してデータ分析や予測をする高度な機能も特徴です。とくに社員の離職リスクを分析し、事前に対策を講じることで、人材定着と労働生産性の向上に役立っています。

    雇用管理システムは、とくに以下のような課題を抱える企業に適しています。

    • 採用・評価が属人的になっている
    • 人事業務が煩雑で負担が大きい
    • 従業員のデータ管理が不十分

    システムの導入により、人事業務の負担を減らし、より戦略的な人材管理が可能 です。

    雇用管理システム「One人事」資料を見てみる

    雇用管理制度助成コース(人材確保等支援助成金)とは

    人材確保等支援助成金とは、企業が雇用管理を改善するために新たな制度を導入し、離職率の低下や人材の定着に成功した場合に、助成金を受け取れる制度です。とくに人手不足が深刻な介護業界や建設業では、従業員の定着を支援するためのコースが充実しています。

    雇用管理体制の改善は、企業にとって働きやすい環境を整える手段の一つです。メンタルヘルス対策の強化や、リモートワーク環境の整備を目的とした制度の導入も、助成金の支給対象とされています。

    同助成金のうち、雇用管理制度助成コースの新規計画の受付は一時休止中(2025年3月現在)ですが、今後再開される可能性もあるため、利用を検討している企業は、最新情報を確認するようにしましょう。

    参照:『人材確保等支援助成金(雇用管理制度助成コース)』厚生労働省

    雇用管理の相談窓口とは

    改正パートタイム労働法 に基づき、パートタイム労働者や短時間労働者の労働条件の改善を目的として、企業には相談窓口の設置が義務づけられました。

    相談窓口では、労働者が職場環境や待遇についての問題や不安を相談できます。窓口に寄せられた案件に対し、企業は適切な対応を検討しなければなりません。

    パートタイム労働者の増加にともない、企業は相談者が安心して話せる環境を整える必要があるのです。

    また、労働条件通知書には相談窓口の存在を明示することも義務化されているため、漏れなく記載しましょう。

    参考:『労働条件通知書』厚生労働省

    建設業や介護における雇用管理責任者・研修とは

    建設業では、雇用管理の体制強化を目的に「雇用管理責任者」の選任が義務化され、介護分野においても選任が推奨されています。

    雇用管理責任者は、事業者が労働者の労働条件や職場環境を適切に管理するために必要な役割を担います。

    建設業

    建設業では、雇用管理責任者が労働者の募集・配置、安全衛生管理、技能向上の研修などを担当します。雇用管理責任者向けの研修が定期的に開催され、助成金の給付対象にもなっています。 労働者が厳しい環境で働く建設業では、労働条件の改善や適切な労働管理が、従業員の定着にとって大切です。

    参考:『雇用管理研修』厚生労働委託事業

    介護

    介護業界でも、雇用管理責任者が、従業員の負担軽減や離職率の低減に貢献しています。メンタルヘルスケアやICTツールの活用を学ぶ講習が提供されるなど、職場の定着率向上が目指されています。助成金による支援もあり、雇用管理責任者を中心に職場の安定化がはかられているのです。

    参考:『介護労働者の雇用』厚生労働省

    まとめ

    雇用管理は、企業が従業員の採用から退職までを通じて適切に管理し、長期的な職場環境の維持と向上を図るための重要な要素です。

    雇用管理は、採用から退職までのプロセスを適切に管理し、長期的に成長と職場環境の向上を支える重要な要素です。

    適切に運用することで、優秀な人材の確保と定着、公正な評価などにつながり、従業員エンゲージメントや生産性を高めます。また、雇用管理と労務管理を両立させることで、働きやすい職場環境を実現できます。

    最近は雇用管理システム活用によるデータ管理や運用効率化が進み、戦略的な人材マネジメントが求められる時代です。自社に最適な雇用管理を構築し、企業の成長につなげていきましょう。

    入社から退社まで一連の雇用管理に「One人事」

    One人事」は入社から退社まで、幅広く雇用管理を助ける人事労務システムです。

    社内に散在している雇用管理情報を集約することで、組織の現状を可視化し、将来に向けた雇用の改善にお役立ていただけます。

    「One人事」の活用例は、【こちら 】よりご確認いただけます。「One人事」で実現できることや活用方法を詳しく知るには、当サイトよりお気軽にお問い合わせください。貴社の課題にあわせて、部分導入も可能です。

    当サイトではサービス紹介資料のほか、人事労務のノウハウに関するお役立ち資料を無料でダウンロードしていただけます。こちらもご利用ください。