有期雇用契約とは? 雇用期間や注意点、改正労働契約法にも注目

有期雇用契約とは? 雇用期間や注意点、改正労働契約法にも注目

有期雇用契約とは、企業と労働者が期間を定めて結ぶ雇用契約のことです。有期雇用契約は原則として最長3年の期間が定められています。企業では、臨時的な理由による人材確保や人材不足を一時的に解消する手段として、有期雇用契約を結ぶケースも少なくありません。

本記事では、有期雇用契約の内容について解説します。無期雇用契約との違いや、企業が注意すべき点、改正労働契約法についても紹介しますので、企業の人事担当者はぜひ参考にしてください。

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    有期雇用契約とは

    有期雇用契約とは、企業と労働者が雇用契約を締結する際に、あらかじめ期間を定めて契約を結ぶことです。有期雇用契約の期間は最長3年です。

    ただし、契約期間の例外として「高度な専門知識を持つ労働者」や「満60歳以上の労働者」の場合は、1回の契約期間を最長5年に設定できます。

    有期雇用契約を行う雇用形態は、以下のような種類が挙げられます。

    • パートやアルバイト
    • 契約社員
    • 嘱託社員
    • 派遣社員

    有期雇用契約の場合、契約期間が満了した際に更新の手続きが行われなければ、契約を終了します。引き続き自社で働いてもらいたいという場合は契約更新の手続きを行う必要があります。そのため、有期雇用契約で働く場合は、契約更新に対する不安を抱えるケースも少なくありません。

    正社員の試用期間との違い

    有期雇用契約と混同しがちな言葉に「正社員の試用期間」があります。

    一般的に、正社員を採用する際は、一定の契約期間を設けます。正社員の試用期間を設けていても、雇用することが前提となっているため、企業側の都合や判断では解雇できません。

    解雇する場合は、客観的・合理的理由や社会通念上相当とするような、やむを得ない理由が必要とされます。

    有期雇用契約と改正労働契約法

    有期雇用契約は、改正労働契約法によって、ルールが大きく変わりました。改正のポイントは以下の3点です。

    内容目的
    無期雇用契約への転換有期雇用契約の更新において、労働期間が通算5年を超えた場合、労働者の申し出によって、期間の定めのない無期雇用契約に転換できる制度有期雇用契約労働者の雇用安定
    「雇止め」法理の法定化一定の場合において、企業側による雇止めができない制度(最高裁の判決により確立)

    以下のいずれかを対象
    ・過去に反復更新された有期雇用契約で、その雇止めが無期雇用契約の解雇と社会通念上同じと認められるもの
    ・労働者において、有期雇用契約の契約期間満了時に、契約更新されると期待する合理的な理由があると認められるもの
    有期雇用契約労働者の保護やトラブル防止
    不合理な労働条件の禁止雇用期間の定めの有無によって、正当な理由なく異なる労働条件は設定できない制度有期雇用契約労働者の保護やトラブル防止

    参照:『有期労働契約の新しいルールができました 労働契約法改正のあらまし』厚生労働省

    企業の担当者は、有期雇用契約の労働者を守るために設定されたこれらの内容を正しく理解しましょう。

    有期雇用契約の期間

    有期雇用契約は、最長で3年(例外に該当する場合は5年)としていますが、最長期間の範囲内であれば、特別な決まりはありません。ただし、一般的には以下のような目安で考えます。

    短期間の有期雇用契約

    有期雇用契約を1日や3日などの短期で行うこともできます。短期で行うケースは、特定のプロジェクトや季節や臨時のイベントスタッフなどが挙げられます。一時的に多くの人員が必要な場合などに、短期間の有期雇用契約が結ばれます。

    長期間の有期雇用契約

    有期雇用契約を長期で結ぶ場合は、6か月から1年程度の期間で行うことが一般的です。ただし、企業によっては3年契約とする場合もあります。慢性的な人手不足に陥っている場合の人員補充や、労働者のスキルなどによって、長期的な契約を結ぶケースが挙げられます。

    有期雇用契約と無期雇用契約の違い

    無期雇用契約とは、期間を定めない雇用契約です。有期雇用契約と無期雇用契約の違いは、雇用形態にかかわらず、雇用される期間があらかじめ決まっているかどうかという点にあります。

    有期雇用契約の場合は期間を決めて契約し、無期雇用契約では契約期間を定めずに契約を行います。無期雇用契約の場合、企業側はやむを得ない理由がない限り、労働者を解雇できません。一方で労働者はいつでも退職できるとされています。

    退職に関する違い

    有期雇用契約の場合、契約期間中はやむを得ない理由がない限り、労働者が一方的な都合で退職できません。やむを得ない理由は、労働者の心身に危険が及ぶような業務を強いられたり、賃金未払いなどです。

    ただし、1年を超える契約において、1年が経過した場合や、あらかじめ契約した労働条件と異なる状況を強いられた場合などは、退職の自由が認められています。

    一方の無期雇用契約の場合は、労働者は退職の自由が認められています。法律上では退職の意思表示から2週間後には雇用関係を終了できます。

    実際には、企業側が就業規則について退職に関する内容を明記している場合が多く、一般的には「退職の申し出は1か月前までに行うこと」などといったルールを設けています。

    解雇に関する違い

    有期雇用契約の解雇について、やむを得ない理由がない限り、契約期間中の解雇は認められません。

    これは無期雇用契約においても同様で、一方的な理由では解雇できず、社会常識に応じて認められるような理由がなければなりません。特に、有期雇用契約の場合は、労働期間を定めているため、期間中の解雇は厳しく判断されます。

    また、有期雇用契約を3回以上繰り返し更新している場合や1年以上継続的に勤務する労働者との契約を終了する(更新しない)場合、企業は30日前までに事前予告しなければなりません。

    そのほか、契約を反復更新をしていたり、労働実態が無期雇用契約と変わらないなど一定の場合は、客観的・合理的理由などがなく、社会通念上相当とされない場合は雇止めが認められません。

    参照:『労働契約の終了に関するルール』厚生労働省

    有期雇用契約で企業が注意すべきポイント

    有期雇用契約を行ううえで、企業側が注意すべきポイントを紹介します。

    • 雇用契約における明示事項の記載
    • 必要に応じて雇止め理由を明示
    • 契約実態や労働者の希望に配慮
    • 明確な労働条件の提示
    • 社会保険への加入手続き

    雇用契約における明示事項の記載

    雇用契約を結ぶ際は、明示事項として「契約期間」と「契約更新の有無」を必ず記載しなければなりません。

    契約期間と更新の有無

    雇用契約では、契約期間と更新の有無を明示しましょう。更新の有無については「自動更新」「更新する場合がある」「更新なし」といった方法でわかりやすく記載するのがよいでしょう。契約期間や更新有無の明示がされていないと、労働者側との認識相違などにより、トラブルに発展する場合もあります。

    判断基準

    雇用契約の更新を行う可能性がある場合、更新の基準についても明示しておかなければなりません。判断基準としては、契約期間満了時の状況や勤怠、勤務態度、労働者のスキルレベル、会社の経営状況などが挙げられます。

    契約更新の基準についても、労働者とのトラブルに発展しやすいため、どのような基準で判断がされるのかは必ず明示しておきましょう。

    必要に応じて雇止め理由を明示

    企業が雇止めを行う際、労働者側から求められた場合は、雇止めの理由について明示しなければなりません。厚生労働省では、雇止めの理由として以下のような一例を紹介しています。

    • 前回の契約更新時に、本契約を更新しないことで合意されていたため
    • 契約締結時から更新回数上限を明示しており、その上限に該当するため
    • 労働者が担当する業務が終了・中止したため
    • 事業を縮小するため
    • 業務遂行能力が十分ではないと認められるため
    • 職務命令に対する違反や無断欠勤など、勤務態度に問題があったため

    雇止めは、有期雇用契約においてもトラブルになりやすい点なので、必ず理由を説明できるようにしておきましょう。

    参照:『有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準について』厚生労働省

    契約実態や労働者の希望に配慮

    企業側は、契約更新を1回以上行い、かつ1年を超えて働いている労働者の有期雇用契約を更新する場合、契約実態や労働者の希望に配慮して契約期間を長く設定する努力義務があります。有期雇用契約は原則最長3年という点をふまえ、契約期間を設定しましょう。

    明確な労働条件の提示

    有期雇用契約を締結する場合は、労働条件も明確にしておきましょう。労働条件には、以下のような項目が該当します。

    • 労働契約期間
    • 就業場所
    • 賃金
    • 労働時間
    • 休暇や休日
    • 業務内容 など

    労働契約の締結において、労働条件を明示する際は、書面などに記録して交付する必要があります。口頭で伝えるだけで終わりにするのではなく、根拠として記録を残すようにしましょう。

    社会保険への加入手続き

    有期雇用契約の場合も、企業側は一部の例外を除いた労働者を社会保険に加入させなければなりません。例外とは、週の所定労働時間もしくは月の所定労働日数が常時雇用の4分の3未満となる場合です。

    雇用保険は週の所定労働時間が20時間以上であり、雇用期間が31日以上になる見込みがあれば、加入させなければなりません。万が一、加入対象であるのに未加入だった場合は、罰則対象になってしまうため、注意しなければなりません。

    参照:『有期契約労働者を雇用する事業主の皆様へ~有期契約労働者の雇用管理の改善に関するガイドライン~』厚生労働省

    まとめ

    有期雇用契約とは、企業と労働者が期間を定めて結ぶ雇用契約です。有期雇用契約を行う場合は、ルールや無期雇用契約との違いも正しく理解しておかなければなりません。

    また、有期雇用契約では、改正労働法における無期転換ルールや雇止め、不合理な労働条件の禁止についても把握し、法令順守を徹底しましょう。