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労働保険の保険関係成立届とは? 添付書類と提出先、事業別の手続き方法

労働保険の保険関係成立届とは? 添付書類と提出先、事業別の手続き方法

労働保険の保険関係成立届とは、従業員を雇用した際に必要な手続きの一つで、労働保険に加入するために最初に提出する書類です。労働保険への加入手続きを進めるためには、保険関係成立届を提出する必要があります。

本記事では、労働保険や保険関係成立届の概要や記入例、提出方法などを詳しく解説します。記事後半に「よくある疑問・質問」もまとめているので、手続き方法に悩んだときに、お役立てください。

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    労働保険の保険関係成立届とは

    労働保険の保険関係成立届とは、保険関係が成立した事業の事業主がその内容を届け出るものです。『保険関係成立届(様式第1号)』を用いて、適切なタイミングで手続きをします。

    そもそも労働保険とは、労災保険と雇用保険の総称です。

    労災保険雇用保険
    保険制度の目的業務中のできごとに起因するケガや病気に備える労働者の雇用安定や就労促進
    補足従業員を1人でも雇用している企業に加入義務がある失業手当(失業保険)や育児休業給付などの給付金が受けられる

    労働保険は原則として事業所ごとに手続きしますが、一定の要件を満たす継続事業はまとめて処理することが認められています。

    記入例

    労働保険の保険関係成立届とは? 添付書類と提出先、事業別の手続き方法

    出典:『保険関係成立届及び概算保険料申告書の記入方法』厚生労働省北海道労働局

    厚生労働省のサイトでは、保険関係成立届の記入見本が掲載されています。項目ごとの記入例が紹介されているので、届け出をする際の参考にしていただけます。

    参考:『保険関係成立届の記入見本』厚生労働省
    参考:『第3章 適用事業所についての諸手続き(P7)』厚生労働省

    添付書類

    労働保険の保険関係成立届を提出する際に必要な添付書類は、以下の2つです。

    • 事業所の実在を証明する書類
    • 労働保険概算保険料申告書

    事業所の実在を証明する書類は、法人であれば法人登記簿謄本を提出します。提出するのはコピーでもよいです。

    個人事業主の場合は、代表者の住民票を提出すれば問題ありません。また、営業許可証などの事業実態を証明できる書類が求められることもあります。

    労働保険概算保険料申告書は、概算保険料の申告と納付がセットです。申告書を提出するとともに、金融機関で保険料の納付を済ませましょう。

    提出期限と提出先

    保険関係成立届の提出期限は、保険関係が成立した日の翌日から10日以内です。労働保険は従業員を雇用する企業に加入義務が課せられるため、初めて従業員を雇用するときが保険関係が成立した日となります。

    ※雇用保険については、従業員の働き方によって加入条件を満たさないこともあります。

    たとえば、法人の設立時からすでに人を雇っている場合は、設立日の翌日から10日以内に手続きをします。労働保険には2つの事業区分があり、それぞれ提出先が異なるため注意が必要です。

    労働保険の保険関係成立届は事業別に提出方法が異なる

    労働保険の適用事業には「一元適用事業」と「二元適用事業」の2種類があり、それぞれ保険関係成立届の提出先が異なります。

    一元適用事業とは

    労働保険における一元適用事業とは、労災保険と雇用保険の保険料の申告・納付を一括で処理する事業です。

    一元適用事業の保険関係成立届は、所轄の労働基準監督署に提出します。

    二元適用事業とは

    労働保険における二元適用事業とは、労災保険と雇用保険の保険料の申告・納付を別々にする事業です。事業の実態を踏まえて、労災保険と雇用保険を区別して運用する必要のある事業を指します。

    具体的には、以下の事業のことです。

    • 建設の事業
    • 農林水産の事業
    • 都道府県や市町村の事業
    • 都道府県に準ずるものおよび市町村に準ずるものの事業
    • 六大港湾(東京港・横浜港・名古屋港・大阪港・神戸港・関門港)における港湾運送の事業

    二元適用事業の場合、労災保険の保険関係成立届は、所轄の労働基準監督署に、雇用保険の保険関係成立届は所轄のハローワークに提出します。

    労働保険の保険関係成立届などの提出方法

    続いて、労働保険の保険関係成立届を提出する方法など、労働保険関係の手続きについてさらに詳しく解説します。

    一元適用事業における手順

    一元適用事業の場合、手続きの手順は以下の通りです。

    1. 保険関係成立届の提出
    2. 概算保険料申告書の提出
    3. 雇用保険適用事業所設置届の提出
    4. 雇用保険被保険者資格取得届の提出
    書類の提出手順提出期限提出先
    保険関係成立届の提出保険関係の成立の翌日から10日以内所轄の労働基準監督署
    概算保険料申告書の提出保険関係の成立の翌日から50日以内(保険関係成立届と一緒に提出する場合)提出先は所轄の労働基準監督署

    (別々に手続きする場合)労働局や金融機関でも受付が可能
    雇用保険適用事業所設置届の提出事業所の設置の翌日から10日以内
    ※保険関係成立届が提出されていれば、概算保険料申告書の提出前でも手続が可能
    所轄のハローワーク
    雇用保険被保険者資格取得届の提出雇用保険の被保険者資格を取得した日の翌月10日まで
    ※保険関係成立届が提出されていれば、概算保険料申告書や設置届の提出前でも手続が可能
    所轄のハローワーク

    二元適用事業における手順

    二元適用事業所の場合は、労災保険と雇用保険の手続きを別々に進めます。それぞれの手続きの手順を解説します。

    労災保険の手順

    労災保険の手続きの手順は、以下の通りです。

    1.保険関係成立届の提出

    保険関係の成立の翌日から10日以内に、所轄の労働基準監督署に提出します。

    2.概算保険料申告書の提出

    保険関係の成立の翌日から50日以内に提出します。保険関係成立届と一緒に提出する場合、提出先は所轄の労働基準監督署です。別々に手続きする場合は、労働局や金融機関でも受け付けています。

    雇用保険の手順

    雇用保険の手続きの手順は、以下の通りです。

    1.保険関係成立届の提出

    保険関係の成立の翌日から10日以内に、所轄のハローワークに提出します。

    2.概算保険料申告書の提出

    保険関係の成立の翌日から50日以内に、所轄の都道府県労働局や金融機関に提出します。保険関係成立届と同時に提出することも可能です。

    3.雇用保険適用事業所設置届の提出

    事業所の設置の翌日から10日以内に、所轄のハローワークに提出します。保険関係成立届と同時に提出することも可能です。

    4.雇用保険被保険者資格取得届の提出

    雇用保険の被保険者資格を取得した日の翌月10日までに、所轄のハローワークに提出します。保険関係成立届と同時に提出することも可能です。

    保険関係成立届以外に用意する書類

    労働保険の手続きには、保険関係成立届以外にも、概算保険料申告書や雇用保険適用事業所設置届などさまざまな書類が必要です。それぞれの書類がどのような意味を持つのか、概要を解説します。

    概算保険料申告書

    概算保険料申告書とは、労災保険や雇用保険の保険料を納付するための書類です。

    労働保険は、1年分の保険料を前払いで支払います。しかし、労働保険料は従業員への賃金総額に基づいて算定されるため、概算の金額を計算して納付します。年間の賃金総額が確定してから、本来の保険料との過不足を精算するという仕組みです。

    つまり、概算保険料申告書は、従業員の見込みの賃金総額をもとに、前払いの保険料を計算して申告するための書類です。

    雇用保険適用事業所設置届

    雇用保険適用事業所設置届とは、雇用保険の被保険者資格を持つ従業員を初めて雇用したときに、ハローワークに提出する書類です。

    企業には、以下の条件を満たす従業員を雇用保険に加入させる義務があります。

    • 所定労働時間が週20時間以上
    • 雇用見込みが31日以上
    • 学生ではない(例外規定あり)

    該当する従業員は、雇用保険の被保険者資格を取得します。

    つまり、雇用保険適用事業所設置届は、「事業所が雇用保険の加入要件を満たしたこと」を届け出るための書類といえるでしょう。

    参考:『雇用保険適用事業所設置届|記入例 』厚生労働省

    雇用保険被保険者資格取得届

    雇用保険被保険者資格取得届は、従業員を雇用保険に加入させるのに必要な書類です。所定労働時間と雇用見込み期間の要件を満たす従業員を雇用した場合に、個別に作成します。

    雇用保険適用事業所設置届が「事業所が加入要件を満たしたこと」を届け出る書類であるのに対し、雇用保険被保険者資格取得届は「従業員が加入要件を満たしたこと」を届け出る書類といえます。

    労働保険の保険関係成立届に関する疑問

    最後に、労働保険の保険関係成立届に関するよくある疑問・質問に回答します。

    どこでもらえる? ダウンロードできる?

    労働保険の保険関係成立届は、労働基準監督署やハローワークの窓口で受け取れるほか、郵送してもらうことも可能です。

    紙の保険関係成立届には特殊な用紙が使われており、インターネットでダウンロードした様式を印刷しても使用できないので注意しましょう。

    提出が遅れた場合・もれた場合はどうなる?

    労働保険の手続きを怠っていた場合、まずは行政庁から手続きをするように指導を受けます。それでも手続きをしない場合は、行政庁の職権による手続きと保険料の徴収が実施されます。最大2年分の保険料をさかのぼって請求されるほか、10%の追徴金の納付も必要です。

    また、故意または過失により手続きを放置し、労働保険に未加入の状態で、従業員が労災による傷病を負った場合は、「従業員に支給される給付金の40%または100%を企業が負担する」という罰則が科せられます。

    参照:『成立届を怠っていた場合は』厚生労働省

    保険関係が成立するのはいつ?

    労災保険は従業員を1人でも雇ったときに、雇用保険は被保険者資格を持つ従業員を雇ったときに保険関係が成立します。届け出をしていなくても保険関係自体は成立しているので、すみやかに手続きをすることが大切です。

    届け出は電子申請できる?

    労働保険の保険関係成立届は、電子申請することも可能です。インターネットでダウンロードした申請用紙は使えませんが、行政手続きの電子申請サービス『e-Gov』や、市販の労務管理サービスからオンラインで申請できます。

    2020年4月からは、一定の条件を満たす法人について、一部手続きの電子申請が義務化されました。保険関係成立届は義務化の対象に含まれていませんが、毎年の概算保険料申告書や、雇用保険被保険者資格取得届などは電子化が義務づけられています。

    参照:『2020年4月から特定の法人について電子申請が義務化されます。』厚生労働省
    参照:『労働保険は電子申請』厚生労働省
    参照:『労働保険 保険関係成立(継続)届 電子申請操作マニュアル』厚生労働省

    労働保険の手続きは、保険関係成立届の提出から

    保険関係成立届は、労働保険に加入する際にまず提出しなければならない書類です。ほとんどの事業は一元適用事業にあたりますが、二元適用事業は、手続きのやり方が異なるので注意しましょう。

    保険関係成立届の提出を怠ると、従業員が労災保険や雇用保険に加入できず、必要な給付を受けられなくなってしまいます。企業に罰則が科せられることもあるため、保険関係が成立したらすみやかに提出しましょう。

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