メンタルブレイク(メンブレ)とは? 意味や症状・前兆と会社が取り組みたいサポート

メンタルブレイク(メンブレ)とは? 意味や症状・前兆と会社が取り組みたいサポート

メンタルブレイクとは、過度のストレスや精神的負荷により、心の健康が著しく損なわれた状態をあらわす言葉です。仕事や職場の人間関係で無理をしすぎて、従業員が心の健康を損なってしまうケースは少なくありません。従業員のメンタルブレイクを防ぐことは、企業の生産性維持と人材確保の観点から重要な経営課題の一つといえます。

本記事では、メンタルブレイクの主な症状や原因、会社が従業員を守るために実施すべき具体的な施策やサポート方法などを解説します。

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    メンタルブレイク(メンブレ)とは?

    メンタルブレイクとは、「mental(=精神)」と「break(=破損、崩壊)」を合わせた造語です。ストレスを過剰に抱え込んでいたり、精神的に追い込まれていたりと、従業員の心理的安全性がおびやかされ、業務遂行能力が著しく低下した状態を指します。

    ビジネス用語としては「メンタルヘルス不調」や「心理的問題」などの表現がより一般的でしょう。しかしSNSでは「メンブレ」と略されることもあり、若者言葉の一種として広く浸透しています。

    日本人はメンタルブレイクしてしまう人が多い?

    メンタルブレイクの状態を放置すると、代表的な心の病である「うつ病」につながりかねません。

    日本では、うつ症状がある人の割合が増加傾向にあります。経済協力開発機構(OECD)の調査によると、うつ症状のある日本人の割合は2013年時点では7.9%でしたが、2020年には17.3%と約2倍にまで増加しました。

    参照:『Tackling the mental health impact of the COVID-19 crisis: An integrated, whole-of-society response』経済協力開発機構(OECD)

    17.3%という数字は、他国と比べて飛び抜けて高い数値ではありません。

    しかし、アクサ生命保険株式会社が2023年に公表した調査では、心の状態について「やや不調」「不調」と答えた人の割合は45%と、イギリス(47%)に次いで2番目に高い割合でした。

    一方で、同調査ではうつ病や不安障害などのメンタルヘルスの不調をみずから表明する人の割合は、調査国の中でもっとも低い結果が出てました。

    参照:『職場でのメンタルヘルス支援体制:日本が世界16の国と地域の中で最下位』アクサ生命保険株式会社

    つまり、日本人の多くは心の不調を感じているものの、みずから助けを求める人は少ないといえます。そのため、適切な治療やサポートを受けられないケースが多いと考えられます。

    従業員のメンタルブレイクを発生させないためには、企業が主導する積極的な心の健康サポートが重要です。

    メンタルブレイクの主な症状・前兆

    従業員の様子を注意深く観察し、メンタルブレイクの兆候が見られた場合は早期に支援しましょう。特に、次のような兆候がある従業員には配慮が必要です。

    • 気持ちが落ち着かず、仕事に集中できない
    • ささいなことで落ち込む
    • 遅刻や欠勤が増えた
    • 同僚や上司とのトラブルが増えた
    • 独り言が増えた
    • 以前より怒りっぽくなった 

    また、精神的な負担がかかり続けた結果、次のような身体的不調があらわれることもあります。

    • 頭痛やめまい
    • 腹痛
    • 息苦しさ
    • 下痢や便秘
    • 食欲不振または増進
    • 倦怠感
    • 寝つきが悪い、よく眠れた気がしない 

    メンタルブレイクのサインは個人差があり、さまざまな形であられます。重要なのは、従業員の普段の様子から、変化を察知することであり、前兆が見られる場合は、休息や信頼できる人への相談、医療機関の受診などをすすめましょう。

    従業員がメンタルブレイクに陥るストレス要因

    メンタルブレイクに陥る要因はさまざまありますが、職場でのストレスが引き金になることもあります。たとえば、次のようなストレス要因が考えられるでしょう。

    • 長時間労働
    • 職場の人間関係
    • 周囲のサポートが不十分
    • 評価基準が不明確

    長時間労働

    時間外労働や休日出勤などが多い環境では、仕事の疲労を十分に回復できず、メンタルブレイクにつながりかねません。体と心はつながっているものなので、肉体的な疲労を回復できないと、心の健康にも悪影響を及ぼします。

    また、肉体的な負担だけでなく、「労働時間の長さに給与が見合っていない」「残業が多く、趣味や家族との時間を確保できない」といった不満もストレスの増大につながります。

    特に、過度な長時間労働やサービス残業があるようないわゆるブラック企業では、従業員のストレスが高まり、メンタルブレイクを引き起こしかねません。

    従業員の心の健康を守るためには、労働環境を見直し、誰もが無理なく働ける職場づくりに取り組むことが大切です。

    職場の人間関係

    上司や同僚、部下との対人関係によるストレスも、メンタルブレイクを引き起こす要因になります。たとえば「上司からセクハラやパワハラを受けている」「職場に怖い上司や苦手な人がいる」といった状況では、日々の業務の中でストレスが蓄積されてしまうでしょう。

    また、人間関係が悪くギスギスしている職場では、従業員同士のコミュニケーションも取りにくくなります。すると、必要な情報共有ができずに業務に支障をきたし、ますますストレスが高まる悪循環にはまってしまうでしょう。

    状況を改善するためには、従業員同士のコミュニケーションを促進する施策が必要です。日報のように、日頃のちょっとしたできごとや、不安を報告できる場を設けるのも一案でしょう。

    周囲のサポートが不十分

    新しい業務内容に取り組む際は誰しも不安を感じ、メンタルブレイクの引き金となることもあります。不安が高まっているにもかかわらず、周囲からのサポートが不十分だと、さらに不安が増大してしまいます。

    また、業務のやり方や進め方について十分な指導がない中、ミスをすると叱責される環境では、従業員が大きなストレスやプレッシャーを抱えてしまうでしょう。

    メンタルブレイクを防ぐためには、メンター制度や1on1ミーティングなどの導入により、相談しやすい環境をつくることが大切です。コミュニケーションの促進にもつながり、従業員同士の信頼関係を構築しやすくなります。

    評価基準が不明確

    人事評価の基準が不明確なことも、メンタルブレイクをにつながるストレス要因の一つです。頑張っても評価されず昇給や昇進につながらない環境だと、仕事に対するモチベーションが下がり、不満もたまってしまいます。

    評価されないことで自信を喪失し、本来のパフォーマンスを発揮できなくなってしまうこともあるでしょう。

    人事評価に対する不満を軽減するためには、上司から部下への適切なフィードバックを促すとともに、評価の妥当性を判断する取り組みが求められます。

    従業員のメンタルブレイクを回避する3段階での予防策

    従業員のメンタルブレイクを回避するためには、次のような3段階での予防策が必要です。

    1.ストレスチェックを実施する

    従業員のメンタルブレイクを回避するためには、心の状態の把握が大切です。

    メンタルブレイクの1次予防として挙げられるのが、ストレスチェックです。労働安全衛生法により、従業員数が50人以上の企業に対しては年に一度のストレスチェックが義務づけられています。

    規模が50人未満の企業は努力義務とされていますが、従業員のコンディションを把握するため定期的に実施することをおすすめします。

    参考:『2015年12月からストレスチェック制度が義務化されました』厚生労働省滋賀労働局

    2.心の不調を早期に発見する

    メンタルブレイクの2次予防では、心の不調の早期発見・早期対応が肝心です。日頃から従業員の様子に気を配り、ストレスチェックの結果も踏まえて、メンタルブレイクの兆候を見逃さないようにしましょう。

    なお上司からのハラスメントが原因の場合は、従業員のプライバシーへの配慮も大切です。

    3.職場復帰をサポートする

    従業員の中には、心の不調によって休職をする人もいるでしょう。3次予防では、休職者の職場復帰サポートが重要です。

    ただし、まずは十分な休息をとることが大切なので、月に1回程度連絡を取りながら、つながりを維持し、従業員の様子を見守っていきましょう。

    しばらくして回復の兆しが見られるようになったら、職場復帰に向けた具体的な計画を立てます。また、職場復帰後もこまめに面談を実施し、無理なく働けるようサポートしましょう。

    メンタルブレイクの従業員をサポートする方法

    厚生労働省のガイドラインでは、従業員の心の健康を守るためには以下の実施が大切としています。

    • セルフケア
    • ラインによるケア
    • 産業保健スタッフによるケア
    • 事業所外資源によるケア

    参照:『職場における心の健康づくり』厚生労働省 独立行政法人労働者健康安全機構

    セルフケア

    ストレスケアやメンタルヘルスに関する情報提供・研修や、ストレスチェックなどを通じて、従業員がそれぞれ自分の心をケアできるよう支援しましょう。

    メンタルヘルスのセルフケアは管理監督者にとっても重要です。企業側はセルフケアの対象として、従業員だけでなく管理監督者も含めて支援を行いましょう。

    ラインによるケア

    ラインによるケアとは、管理監督者が従業員の様子に気を配り、小さな異変を見逃さず適切なケアを行うことを指します。ラインによるケアを実現するためには、普段から上司が部下の心身の健康状態に関心を持ち、よく観察することが大切です。

    産業保健スタッフによるケア

    セルフケアやラインによるケアの効果を高めるためには、産業医や保健師などの産業保健スタッフによる支援が欠かせません。

    産業保健スタッフが中心となって、メンタルヘルスケアの具体的な取り組みや、職場復帰の支援プランなどを立案するとよいでしょう。

    事業所外資源によるケア

    社内に産業保健スタッフを配置するのが困難な場合は、事業所外の資源を活用しましょう。たとえば、次のような機関と連携します。

    • 健康保険組合
    • 都道府県産業保健総合支援センター
    • 医療機関の精神科や心療内科
    • 地域保健機関

    心の病で休職する人が利用できる制度

    病気やケガで働けなくなった従業員に支給される健康保険の傷病手当金は、心の病気も対象です。

    一定の条件を満たす必要がありますが、休職前の給与の3分の2に相当する額が最長1年半支給されるので、休職中の従業員の助けとなります。

    心の病気を理由に傷病手当を申請する人は多く、企業としても従業員が必要なときに必要な制度を利用できるサポートが大切です。

    業務中のできごとが原因でうつ病を発症した場合は、労災として認定されることもあります。企業としては発生する前に事態は避けたいところですが、制度としてうつ病が対象になることは理解しておきましょう。

    参考:『傷病手当金』全国健康保険協会

    従業員のメンタルブレイクを防止に向けて適切な支援を

    メンタルブレイクとは、精神的につらい状態のことです。仕事上のストレスや不安、プレッシャーなどにより、メンタルブレイクの状態になる人は少なくありません。

    企業は、ストレスチェックの実施や産業保健スタッフによるケアなど、従業員のメンタルヘルスを守るために適切な支援を行う必要があります。また、従業員の心の状態を把握するためには、日頃から労働時間を適切に管理し、長時間労働の是正も重要です。

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