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社会保険の随時改定はいつから適用?【具体例】変更時期と注意点も解説

社会保険の随時改定はいつから給料に反映される?【具体例】変更時期と注意点も解説

社会保険の随時改定は、給与の変動に応じて保険料を適正に反映させるための重要な手続きです。しかし、改定がいつから給料に反映されるのか、具体的な変更時期や注意点については、理解が難しい部分もあります。

本記事では、社会保険の随時改定が給与に反映されるタイミングを具体例を交えて解説し、改定時の注意点についても紹介します。改定手続きの流れを把握し、適切に対応するためのポイントを確認するためにお役立てください。

 

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    社会保険の随時改定とは

    社会保険の随時改定とは、被保険者の給与額が大きく変動したときに、標準報酬月額を変更する手続きです。

    標準報酬月額とは、労働者の給与をいくつかの等級に分けたものです。社会保険料は従業員の給与額によって左右され、「標準報酬月額×保険料率」の計算式で算出します。

    例として、2023年3月以降の東京都における標準報酬月額を一部確認してみましょう。

    標準報酬報酬月額
    等級月額
    20(17)26万円25万円以上~27万円未満
    21(18)28万円27万円以上~29万円未満
    22(19)30万円29万円以上~31万円未満

    ※()内は厚生年金保険の等級

    参照:『令和5年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表』全国健康保険協会

    東京都では、従業員の報酬月額が25万円以上27万円未満の間に収まる場合は、すべて26万円として保険料を計算します。

    通常、標準報酬月額は毎年4~6月の給与額をもとにした定時決定により算定されます。しかし、昇給や雇用形態の変更などにより給与額が大きく変動すると、納める社会保険料が実態とはかけ離れたものになりかねません。

    そこで、年に一度の定時決定を待たずに標準報酬月額を見直すことを随時改定といいます。随時改定を行うと新たな標準報酬月額が適用され、正しい社会保険料を納めることにつながります。

    参照:『随時改定(月額変更届)』日本年金機構

    対象の従業員

    随時改定の対象範囲は、以下の3つの条件すべてに当てはまる場合です。

    • 昇給や降格などにより、毎月決まって支払われる給与が変動した
    • 給与に変動があって以降、3か月間の給与の平均額に基づく標準報酬月額と、変動前の標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じた
    • 給与が変動した月以降、3か月間連続で支払基礎日数が一定基準を越えている

    たとえば、昇給により給与が25万円から30万円に上がると、標準報酬月額における等級が20から22に2等級上がります。

    昇給月以降の3か月間、給与の支払い対象の労働日数である支払基礎日数が一定基準を越えたら、随時改定の手続きが必要です。

    反対に、昇給があっても、標準報酬月額における等級の変動が1等級以内に収まるのであれば随時改定の手続きは不要です。

    社会保険の随時改定はいつから給料に反映される?【具体例】

    随時改定が反映されるのは、変動後の給与が支払われた月から数えて4か月目です。

    そのため、給与の支払いが当月払いと翌月払いでは、新しい標準報酬月額が用いられるタイミングが異なります。

    また、社会保険料は随時改定の反映月の翌月に納付するため、実際に従業員の給与から差し引かれるのは、変動後の給与が支払われた月を含めて5か月目です。

    給与が当月払いの場合

    給与が当月払いの場合は、給与が変動した月から起算します。

    たとえば、25日締め当月払いの会社で8月に昇給または減給があると、8月・9月・10月の給与の平均月額を標準報酬月額の等級に当てはめ、以前のの等級からどれくらい変動したかによって、随時改定の必要性を判断します。

    当月払いの会社で8月の賃金変動により随時改定の手続きをしたとすると、新しい標準報酬月額が反映されるのは8月から数えて4か月目、つまり11月からです。

    給与が翌月払いの場合

    給与が翌月払いの場合、給与が変動した月の翌月から起算します。

    たとえば、月末締め翌月20日払いの会社で8月に昇給または減給があると、9月・10月・11月の給与の平均月額を標準報酬月額の等級に当てはめ、以前の等級からどれくらい変動したかによって随時改定の必要性を判断します。

    翌月払いの会社で8月の賃金変動により、随時改定の手続きをしたとすると、新しい標準報酬月額が反映されるのは9月から数えて4か月目、つまり12月からです。

    社会保険料を確定(改定)手続きのタイミング

    従業員の社会保険料の変更は、主に以下の3つのタイミングで実施されます。

    1. 入社時(資格取得のタイミング)
    2. 毎年(定時決定)
    3. 賃金に変動があったとき(随時改定)

    それぞれの概要や必要な手続きについて、以下で詳しく解説します。

    1.入社時(資格取得のタイミング)

    最初に社会保険料が確定するのは、従業員が被保険者資格を取得したタイミングです。たとえば正社員は、入社した時点で被保険者資格を取得します。

    企業は、該当する従業員を雇用してから5日以内に「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届」を提出しなければなりません。

    また、新卒社員のように3か月分の給与実績がない労働者については、一定のルールに従って報酬月額を算出します。直近4〜6月の給与実績が得られたら、その年の9月分の社会保険料から標準報酬月額を適用します。

    2.毎年(定時決定)

    従業員の社会保険料は、直近の給与実績に合わせて毎年見直さなければなりません。これを定時決定といいます。企業は雇用する労働者について、それぞれ4~6月の平均報酬月額を算出して申請する義務があります。定時決定の実施時期は毎年7月以降です。

    定時決定の対象は、その年の7月1日時点で在職している従業員のみです。ただし、6月日から7月1日までに入社した従業員や、7月から9月までのいずれかの月に随時改定される(またはされる予定)の従業員は、定時決定の対象から除外されます。

    定時決定で確定した社会保険料は、その年の9月から翌年8月まで適用されます。

    3.賃金に変動があったとき(随時改定)

    従業員の賃金が変動した場合は、随時改定が必要なケースがあります。大幅な昇給や減給があった従業員については、随時改定の対象になるか担当者として正確に把握しておきましょう。

    社会保険の随時改定はいつ、どこへ、どうやって届け出る?

    随時改定の条件に該当する従業員がいる企業の担当者は、企業は社会保険の月額変更届を作成し、管轄の年金事務所や社会保険事務センターへ速やかに提出する必要があります。

    様式は日本年金機構のホームページからダウンロードでき、1枚の月額変更届で5人分の報酬月額を届け出が可能です。

    主な記載項目は、以下の通りです。

    • 事業所整理番号
    • 被保険者整理番号
    • 被保険者の氏名
    • 生年月日
    • 改定年月(変動後の給与が支払われた月から4か月目)
    • 変動前の標準報酬月額
    • 変動前の標準報酬月額が適用された年月
    • 昇給または降給の区分と支払い月
    • 遡及支払い額
    • 給与支払い月(給与の変動が発生した月から3か月分)
    • 給与計算の基礎日数

    給与の変動は健康保険料の計算にも関係しますが、加入する健康保険が「全国健康保険協会(以下、協会けんぽ)」の場合は、日本年金機構にのみ提出すれば問題ありません。

    組合健保や共済組合など、協会けんぽ以外の健康保険に加入している場合は、各組合にも届け出が必要です。

    月額変更届の提出方法としては、窓口持参・郵送・電子申請の3つがあります。資本金が1億円を超えているなど一定の条件を満たす特定の法人は、電子申請が義務づけられているため要件を確認し、該当企業は注意しましょう。

    参照:『随時改定(月額変更届)』日本年金機構

    社会保険の随時改定の反映に関する注意点

    社会保険の随時改定を行う際は、以下のポイントに注意しましょう。

    • 通勤手当・住宅手当は固定的賃金に含まれる
    • 残業代だけが変動しても随時改定の対象にならない
    • 固定的賃金の変動後、残業が増えた場合は注意する
    • 固定的賃金が変動しても欠勤があると対象から外れる場合がある
    • 社会保険料が改定されたら従業員に周知する

    それぞれのポイントについて、以下で詳しく解説します。

    通勤手当・住宅手当は固定的賃金に含まれる

    社会保険における標準報酬月額は、従業員に毎月決まって支払われる「固定的賃金」をもとに算出します。

    注意したいのが、固定的賃金に含まれる範囲です。固定的賃金には基本給だけでなく、毎月同じ金額が支払われる手当も含まれます。

    たとえば、通勤にかかる費用を支給する通勤手当や、月々の賃料や住宅ローン返済の一部を補助する住宅手当は、どちらも固定的賃金の一種です。

    固定的賃金を計算する際は、対象手当を除外しないように注意しましょう。

    残業代だけが変動しても随時改定の対象にならない

    社会保険の随時改定は、昇給・降給などによる「固定的賃金の変動」を起点とします。固定賃金が変動していないのに、残業代だけに変動があっても原則として随時改定の必要はありません。

    標準報酬月額が毎年4~6月に「実際に支払われた給与(残業代含む)」をもとに算出されるため、勘違いされやすいですが、随時改定はあくまでも固定的賃金の変動により実施するものです。

    固定的賃金の変動後、残業が増えた場合は注意する

    随時改定は固定的賃金の変動を起点とします。しかし、変動後に残業が急激に増えた場合は計算に注意しましょう。

    新しい標準報酬月額の算出には、固定的賃金の変動月から数えて3か月間の実支給額が必要です。

    随時改定が必要な要件はあくまでも固定的賃金が変動したタイミングですが、標準報酬月額の計算には、従業員に実際に支給した金額を用います。そのため、基本給や固定手当だけでなく残業代も含まれます。

    固定的賃金の変動月以降に、従業員の残業時間が長くなった場合は、残業代を含む合計支給額を届け出るため、社会保険料が高額になることがあります。

    固定的賃金が変動しても欠勤があると対象から外れる場合がある

    随時改定には「給与が変動した月以降、3か月間連続で支払基礎日数が一定基準を超えている」という要件があります。

    たとえば、フルタイムで働く従業員は、固定的賃金の変動月以降3か月間で支払基礎日数が17日未満の月がひと月でもあれば、随時改定は不要です。

    そのため、固定的賃金の変動後に欠勤が続いた場合は、随時改定の対象外になる可能性があります。

    社会保険料が改定されたら従業員に周知する

    随時改定の手続きを終え、標準報酬月額が改定された際には、従業員に速やかに通知する必要があります。通知義務を怠たると、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金を科せられる恐れもあるため注意しましょう。

    随時改定の反映タイミングを理解して従業員に周知を

    社会保険の随時改定とは、従業員の給与が大幅に変動したときに、新たな報酬月額を申請することです。

    改定後の標準報酬月額は、変動後の給与を支給した月から4か月目に反映されます。給与の支給方法が当月払いか翌月払いかによってタイミングが異なるため、自社の規則に合わせて適切に対応しましょう。

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