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源泉徴収票にマイナンバーの記載は必要か|法定調書の種類や提供を拒否された場合の対処法

源泉徴収票にマイナンバーの記載は必要か|法定調書の種類や提供を拒否された場合の対処法

源泉徴収票とは、法定調書の一つであり、給与・退職手当・公的年金などの支払いをする人が、その支払い額や源泉徴収した所得税額を証明する書面のことをいいます。国税庁から配布されている源泉徴収票のフォーマットにはマイナンバーを記入する欄がありますが、すべての源泉徴収票に記載する必要はありません。本記事では、マイナンバーの記載が必要な源泉徴収票と法定調書の種類や注意点まで解説します。

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    源泉徴収票にマイナンバーは記載すべきか

    源泉徴収票にマイナンバーを記載すべきかは、源泉徴収票の提出先によって異なります。マイナンバーの記載が必要な書類は以下を参考にしてみてください。

    従業員へ交付する源泉徴収票にはマイナンバーを記載しない

    平成27年10月2日に所得税法施行規則などの改正が行われたことにより、従業員へ交付する源泉徴収票へのマイナンバーの記載は不要となりました。マイナンバー制度導入時は源泉徴収票へマイナンバーの記載が必要でしたが、郵便事故による情報漏えいや企業の情報管理コストの削減などといった問題点から改正が行われました。なお、マイナンバーの記載の有無は提出先によって異なるため、年末調整時に混乱しないよう整理しておきましょう。

    参考:『法定調書に関するFAQ』国税庁

    税務署や市区町村へ提出する源泉徴収票にはマイナンバーを記載する

    企業が用意する源泉徴収票は、市区町村へ提出用2部と税務署へ提出用、従業員本人に交付する用の計4部を用意します。このうち所得税法施行規則などの法改正を受けてマイナンバーの記載が不要になったのは、従業員本人に交付するものだけです。市区町村と税務署に提出する源泉徴収票には、マイナンバーの記載が必要です。なお、国税庁が配布している税務署提出用の源泉徴収票にはマイナンバーの記載欄があるので、記載漏れに注意しましょう。

    法定調書の種類

    法定調書とは、税務署への提出が義務づけられている書類のことを指します。マイナンバーの記載が必要か否か、法定調書の種類とあわせてみていきましょう。

    記載すべき法定調書

    法定調書のうち、以下の書類には原則としてマイナンバーを記載しなければなりません。

    • 退職所得の源泉徴収票
    • 報酬、料金、契約金および賞金の支払調書
    • 給与所得の源泉徴収票などの法定調書合計表
    • 不動産の使用料などの支払調書

    上記の書類は年末調整の際に使用するもので、給与所得者の扶養控除等申告書を作成するために必要です。また給与所得の源泉徴収票の法定調書合計表には、身分証明書のコピーの添付が必要になります。マイナンバーカードをコピーして添付するか、マイナンバーの記載とあわせて運転免許証やパスポートのコピーを添付する方法で対処しましょう。

    マイナンバーを記載する必要のない法定調書

    マイナンバーを記載する必要がない法定調書は以下の通りです。

    • 配当金とみなす金額に関する支払通知書
    • オープン型証券投資信託収益の分配の支払通知書
    • 上場株式配当等の支払いに関する通知書
    • 特定口座年間取引報告書
    • 未成年者口座年間取引報告書
    • 特定割引債の償還金の支払通知書

    従業員本人に交付する源泉徴収票には、マイナンバーの記載は不要です。加えて以上のような報酬、料金、契約金および賞金の支払調書は、法律上本人に交付する義務はないためマイナンバーを記載する必要はありません。ただし、以上は給与などの支払いを受ける方に交付するものに限ります。

    参考:『法定調書提出義務者・源泉徴収義務者の方へのお知らせ』国税庁

    従業員からマイナンバーの提供を受けられなかった場合の対処法

    マイナンバーは大切な個人情報のため、提出に抵抗を感じる人も少なくありません。マイナンバーの提供を受けられなかった場合の対処法をご紹介します。

    繰り返しマイナンバーの提供を要求する

    従業員からマイナンバーの提供を拒否された場合は、源泉徴収票へのマイナンバーの記載が法律で義務づけられていることを伝えましょう。従業員に対してマイナンバーを何に利用するのかを明らかにし、提供してもらえるよう説得します。また、今回マイナンバーの提供を受けられなかった場合は、今後の法定調書の作成のために繰り返しマイナンバーの提供を要求しましょう。

    提供を求めた経過を記録する

    何度お願いしてもマイナンバーの提供を受けられない場合は、提供を求めたことを証明できるよう経過を記録しておきましょう。経過を記録して保存しておけば、記載がなくても会社側のミスや義務違反ではないことを証明できます。なお、マイナンバーを記載することは義務記載となっていますが、記載がないからといって一律で義務違反になることはありません。

    マイナンバーを記載しないとどうなるのか

    マイナンバーを記載しなくても、書類が受理されなかったり、罰則が科されなかったりすることはないでしょう。ただしマイナンバーの記載が法律で定められている書類の手配などは、担当者として理解しておく必要があります。

    原則として再提出

    マイナンバーは住所や氏名と同じように、法律で記載するよう定められた事項です。そのためマイナンバーが記載されていない法定調書を提出したあとに、従業員からマイナンバーを提出されたら、原則として調書を再提出する必要があります。再提出をしないと、税務署から記載がない理由について確認される可能性があるため、提供を受け次第確実に再提出しましょう。

    マイナンバー以外の事項が正しく記載されていれば再提出は不要

    マイナンバーの記載がなくても、マイナンバー以外の事項が正しく記載されていれば再提出をする必要はありません。税務署は法定調書の提出義務がある人の事務負担を考慮し、再提出しなくても差し支えないと公表しています。ただし、マイナンバーの記載がない理由を指摘欄に記載する必要はないが、マイナンバーを記載していない理由を税務署に確認される場合があります。

    マイナンバー記載がないことで受理しないことはない

    番号法整備法や税法の改正により、税務署に提出する法定調書などの税務関係書類にはマイナンバーの記載が義務づけられています。しかし、ミスによって記載漏れが発生することもあるでしょう。そういった場合でも「マイナンバーの記載がないからといって、税務署が書類を受理しないことはない」と国税庁が公式にアナウンスしています。

    参考:『番号制度概要に関するFAQ』国税庁

    罰則規定はない

    国税通則法第124条や所得税法などにより、国税庁は法定調書などの税務関係書類へのマイナンバーの記入を義務としています。しかし、マイナンバーの記載がなかった場合の罰則規定は現時点で設けられていません。ただし故意にマイナンバーを記載していないケースが増えた場合、将来的に罰則規定が導入される可能性はあります。

    源泉徴収票にマイナンバーを記載するときの5つの注意点

    マイナンバーは重要な個人情報の一つであるため、源泉徴収票を扱うときは以下の5つの注意点に気をつけましょう。

    事前にマイナンバーを提出してもらっておく

    マイナンバーが必要になるケースは源泉徴収票だけでなく、雇用保険の加入手続きや住民税の計算のために必要となる書類にもマイナンバーの記載が必要です。しかし、マイナンバーが必要になった時点で従業員に提出してもらうのでは、書類作成に余計な時間がかかってしまいます。そのため、従業員にマイナンバーを利用する目的を伝え、採用した時点で提出してもらうのがよいでしょう。

    マイナンバーの提供時は本人確認をする

    マイナンバーの提供時は、なりすましを防ぐために本人確認が求められます。マイナンバーカードはすでに本人確認をしたうえで発行されるものなので、新たに本人確認をする必要はありません。ただし、マイナンバーの記載がある住民票の写しやマイナンバー通知カードを提出してもらう際は、身元確認ができる運転免許証や保険証などの書類が必要となります。

    従業員から拒否された場合は経緯を記録する

    何らかの理由で従業員にマイナンバーの提供を拒否された場合は、源泉徴収票にマイナンバーを記載することが法的な義務であることを伝えましょう。それでも提供してもらえない場合は、会社側からマイナンバーの提供を求めた経緯や、従業員が提供を拒否したことなどを記録しておくことが大切です。経緯を記録しておけば会社側の義務違反ではないことが明確になります。また税務署で状況を説明すれば、マイナンバーの記載がなくても書類を受け取ってもらえます。

    マイナンバーは適切な方法で管理する

    マイナンバーは源泉徴収票以外にもさまざまな書類に記載が必要になるため、会社側で保管し続けても問題ありません。ただし、情報漏えいなどが発生しないよう鍵のかかるキャビネットで保管をしたり、適切な方法で管理する必要があります。また管理にかかわる従業員に対して、保管方法の指導や監督をすることも重要です。

    不要になったマイナンバーは削除する

    従業員が退職した場合など、不要になったマイナンバーはできるだけ早くデータを削除しましょう。ただし、保存期間が定められている書類については、マイナンバーが記載されていてもすぐに削除してはなりません。たとえば扶養控除等申告書においては、7年間保存するよう決められています。このような場合は保存期間が過ぎ次第、速やかに書類を破棄しましょう。

    まとめ

    源泉徴収票へのマイナンバーの記載は、税務署に提出する必要のある源泉徴収票のみ記載が必要です。一方で、従業員本人に渡す源泉徴収票にはマイナンバーの記載は不要ですので、区別して理解しておきましょう。マイナンバーの記載は法律で義務づけられているものの、個人情報のため提供を拒否する人もいます。そういった場合はマイナンバーの提出が義務づけられていることを説明し、理解してもらうことが大切です。また、マイナンバーを管理する際は管理方法に注意しなければなりません。手続きのとき以外はデータを開かないなど、適切な方法で管理しましょう。

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