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社会保険料の定時決定とは【いつから】随時改定との違いと重なる場合の対応を解説

社会保険料の定時決定とは【いつから】随時改定との違いと重なる場合の対応を解説

社会保険料の定時決定とは、標準報酬月額を新たに算出して見直す手続きのことです。毎年対応が必要ですが、手続きやタイミングは複雑なうえ、随時改定との違いなどで戸惑う方もいるでしょう。

本記事では、定時決定の概要について、随時改定との違いを踏まえて解説します。また、定時決定と随時改定が重なる場合の対応などについても紹介します。

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    社会保険料における定時決定とは

    社会保険制度において「定時決定」は年一度行われる重要な手続きです。

    4月から6月までの3か月間の給与情報から新たな標準報酬月額の算定が行われ、この算定結果に基づいて、健康保険や厚生年金保険などの社会保険料が調整されます。

    標準報酬月額とは

    「標準報酬月額」とは、社会保険料を計算する際の基礎となる金額です。

    定期的な給与や手当が算定対象となり、臨時報酬や年3回以下の賞与は含まれません。算出された額は保険料表の等級に当てはめられ、健康保険・介護保険は50等級、厚生年金は32等級に分類されます。

    標準報酬月額を改定する手続きが、社会保険の定時決定です。

    定時決定が行われる理由

    社会保険の定時決定は、実際の収入と保険料負担のバランスを保つために実施します。

    従業員の給与は昇給や減給により年々変動するため、社会保険料の算出基準である標準報酬月額を調整する必要があります。

    ただし、給与が大幅に変動した場合は、別途「随時改定」という手続きで対応しなければなりません。

    定時決定の対象者・対象外

    社会保険の定時決定の対象者と対象外の従業員についてそれぞれ解説します。

    対象者

    定時決定の対象となるのは、7月1日時点で社会保険に加入しているすべての従業員です。通常勤務の社員だけでなく、休職中の人員や海外出張中の社員も含まれます。

    つまり、健康保険と厚生年金保険の被保険者資格を持つすべての従業員が、勤務状況にかかわらず定時決定の対象です。

    対象外

    定時決定の対象外となるのは、3つのケースが考えられます。

    まず、6月1日から7月1日の間に社会保険に加入した従業員は、加入時にすでに標準報酬月額が決定されているため対象外です。

    次に、6月30日以前に退職した従業員も、7月1日時点で被保険者資格を喪失しており対象外です。

    最後に、7月から9月の間に随時改定や育児休業等終了時改定を予定している従業員も定時決定の対象とはなりません。

    定時決定はいつからいつまで反映される?

    社会保険の定時決定で見直された標準報酬月額は、その年の9月から翌年8月までの1年間適用されます。事業者が7月上旬に4〜6月の給与をもとに算定基礎届を提出し、9月から新しい標準報酬月額が適用開始となります。

    たとえば、月末締め翌月末払いの場合、10月末支給の給与から新しい金額が反映される流れです。

    定時決定後の標準報酬月額は原則として1年間が適用期間です。期間中に大幅な給与変動がある場合、随時改定により変更される可能性もあります。

    定時決定と随時改定の違い

    社会保険の随時改定は、給与に大きな変動があった場合や給与体系が変更になったときなど、一定の条件を満たす際に不定期に標準報酬月額を見直す手続きです。

    定時決定と随時改定は、どちらも標準報酬月額を見直す手続きですが、実施方法や対象者、タイミングなどに違いがあります。主な相違点は以下の通りです。

    定時決定随時改定
    実施時期毎年7月1日条件満たせば随時
    対象者7月1日時点の全被保険者固定給変動で条件満たす者
    算定期間4〜6月の3か月間固定給変動後の3か月間
    適用期間9月~翌年8月4か月目から次の改定まで
    条件なし(全員対象)2等級以上の変動など

    社会保険の定時決定は年に一度、全被保険者を対象に一斉に行われる見直しです。一方、随時改定は年間を通じて条件を満たした個人に対して行われます。

    定時決定は4〜6月の給与をもとに9月から適用されますが、随時改定は固定給変動後の3か月間をもとに4か月目から適用されます。

    また、随時改定には2等級以上の変動などの条件がありますが、定時決定には等級変動の条件はありません。

    定時決定と随時改定が重なると優先されるのは?

    社会保険の定時決定と随時改定は、同時期に重なることがあります。定時決定は4月から6月の給与を基準としますが、随時改定は4〜6月に限らず発生するものです。

    定時決定と随時改定のタイミングが重なり、重複する場合は、随時改定が優先されます。

    よって、定時決定で新たに算出された標準報酬月額が適用される前に、随時改定によって社会保険料が変更される可能性があります。

    社会保険料の定時決定の流れ

    社会保険の定時決定の流れとして、算定基礎届の提出について解説します。

    1. 標準報酬月額を算出する
    2. 算定基礎届を書く
    3. 算定基礎届を提出する

    1.標準報酬月額を算出する

    まず、4月から6月の平均給与を等級表に当てはめて「標準報酬月額」を算出します。

    健康保険は50段階(協会けんぽの場合)、厚生年金保険は32段階の等級があります。等級表には総額と折半後の金額が記載され、40歳以上65歳未満の加入者向けの介護保険料率も含まれています。

    詳細は各健康保険組合や協会けんぽのWebサイトでご確認いただけます。

    参考:『令和5年度保険料額表(令和5年3月分から)』全国健康保険組合

    2.算定基礎届を書く

    次に、定時決定を申請する「算定基礎届」を書きます。算定基礎届の作成は、正確な社会保険料算定の基礎となる重要な手続きといえます。

    最初に用紙に印字されている情報を確認しましょう。5月19日時点の被保険者情報が記載されているはずです。5月19日以降に加入した従業員については、空欄に直接追記する必要があります。

    記入の際は、4月から6月までの各月の支払基礎日数、通貨支給額と現物支給額を区別してし、合計も忘れずに記載します。

    続いて、3か月分の報酬総計額を計算して記入します。

    最後に、報酬総計額を3で割った平均額を記載しましょう。すべての項目を記入したら、記入もれや計算ミスがないか再度確認することが大切です。

    3.算定基礎届を提出する

    算定基礎届(定時決定)は、毎年7月1日から10日までの期間に提出します。

    基本的に「被保険者報酬月額算定基礎届」を提出しますが、該当者がいれば被保険者報酬月額変更届も必要です。

    提出先は、管轄の年金事務所または事務センターです。提出方法は複数あり、郵送や持参、電子媒体(CD・DVD)、電子申請から選択できます。

    社会保険料の定時決定がもれたらどうなる?

    社会保険の定時決定手続きがもれて、算定基礎届の提出期限を過ぎても、あとから提出はできます。

    しかし、長期間未提出の状態が続くと、年金事務所から催告を受け、応じなかったときは6か月以下の懲役刑や50万円以下の罰金が科される可能性があります。

    また、年金事務所による立入調査が行われることもあります。万が一提出を忘れていた場合は、すみやかに対応することが重要です。

    社会保険料の定時決定に関する注意点

    社会保険の定時決定には、ケースによって注意するポイントがあります。主な注意点を4つ取り上げて解説します。

    • 休業手当を支給した場合
    • 4〜6月が繁忙期の場合
    • ​​給与を翌月払いとしている場合
    • 給与を翌月払いとしている場合

    休業手当を支給した場合

    通勤手当や住宅手当など固定的な報酬といえるものは、名称にかかわらず算定基礎届(定時決定)の対象です。ただし、休業手当については7月1日時点の状況によって扱いが異なります。

    7月1日時点で休業が終了している休業手当を含まない月のみで計算
    (すべての月で休業手当が支払われていた場合は、従来の標準報酬月額が適用)
    7月1日時点で休業が継続している通常の給与月と休業手当を含む月を合わせて平均額を算出

    休業手当により標準報酬月額が大きく変動するときは、算定基礎届(定時決定)ではなく月額変更届の提出が必要です。

    また、休業終了後に通常の給与支払いに戻り、再び標準報酬月額に大きな変動が生じる場合も、あらためて月額変更届を提出しなければなりません。

    4〜6月が繁忙期の場合

    算定基礎届(定時決定)に関する2つめの重要な注意点は、4月から6月が繁忙期となるケースです。

    標準報酬月額は4〜6月の平均が基準となるため、繁忙期と重なると残業手当などにより高くなる傾向があります。

    4〜6月が繁忙期と重なる場合、4〜6月をもとにした標準報酬月額と、年間の平均額から計算した標準報酬月額の2つのうちどちらか適切な方を、状況に応じて選ぶことができます。

    給与を翌月払いとしている場合

    給与が翌月払いの場合、算定基礎届(定時決定)における支払基礎日数の記載に注意が必要です。支払基礎日数とは、報酬の計算基礎となる日数を指します。

    たとえば、5月分の給与を6月に支払う会社では、6月の支払い日数は実際の6月の日数(30日)ではなく、5月の日数をもとに計算します。

    つまり、6月の支払基礎日数は31日です。正確な算定基礎届を作成するためには、実際の支払い月ではなく、給与の計算対象となる月の日数を正しく把握し記載することが重要です。

    2等級以上の変動は随時改定を優先

    標準報酬月額が2等級以上変更されるなど、標準報酬月額に大きな変動がある場合、社会保険の定時決定ではなく、随時決定の対象です。

    昇給や降給など、給与体系に大きな変更があった従業員に適用されるため、違いを理解し、適切な書類を使用しましょう。

    まとめ

    社会保険料の定時決定は、毎年実施される重要な手続きです。

    定時決定の手続きでは、4月から6月の給与をもとに新しい標準報酬月額を算出し、9月から翌年8月まで適用します。7月1日時点で社会保険に加入している全従業員が対象となり、随時改定とは異なり一斉に実施されます。

    定時決定の算定基礎届は、7月1日から10日までの期間に提出する必要があります。

    また、休業手当の扱いや繁忙期の影響、給与の翌月払いなど、特殊なケースにも注意しなければなりません。社会保険料の定時決定について理解し、手続きを適切に進めましょう。

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