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補助金の不正受給は犯罪|問われる罪や捜査から起訴などを詳細に解説

補助金は、企業や個人が経済的な支援を受けるための制度です。さまざまな恩恵が受けられて大変便利ですが、残念ながら不正に手を染めて補助金を得ている企業が存在するのも事実といえます。補助金を不正に受け取るのは当然ながら犯罪であり、罪状によってさまざまな刑罰が科される可能性があります。自社で補助金や助成金の申請を担当する人は、意図しない不正に関与しないように、基礎的な知識を押さえておくといいでしょう。

本記事では、補助金の不正受給が規定されている法律の内容や刑事責任、民事・行政におけるペナルティ、起訴までの流れ、不正受給を回避するためのポイントなどを徹底的に解説します。自社で補助金を申請する前に知っておきたい知識をまとめているため、ぜひお役立てください。

※本記事の内容は作成日現在のものであり、法令の改正等により、紹介内容が変更されている場合がございます。

補助金の不正受給は犯罪|問われる罪や捜査から起訴などを詳細に解説
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    そもそも補助金とは

    そもそも補助金とは、国や自治体が取り決めた政策を進めるために、事業者に資金の一部を給付したり、利子を貸しつけたりする給付制度です。補助金の特徴の一つは、銀行から借りる融資とは性質が異なり、返済が不要なことです。受給には審査を通過しなければなりません。

    補助金の審査について

    補助金は、採択の前後で厳しい審査が入ります。補助金の審査プロセスは大きく分けて2段階あります。

    1. 採択前審査

    補助金は、貴重な税金を財源として多額の資金を投入し、行政の目的を達成するという側面があります。そこで事業主が申請したあとに、厳しく審査されます。たとえ申請数が定数よりも少なくても、行政の目的を達成できる見込みがある事業内容でなければ、不採択になる可能性も十分にあります。

    2. 採択後審査

    補助金制度においては採択前審査の終了後も、事業内容の進捗状況などを報告する書類を厳しくチェックされます。無駄な経費の使い方や採択前に申請した内容と相違があるかなどを細かく確認されるのです。

    原則として補助金は、申請者に「あと払い」で支給されるため、事業者が一時的に費用を全額負担する必要があります。また、政策ごとに募集が行われ、使い道が限定されており、『補助金適正化法』という法律が定められています。

    補助金適正化法とは

    補助金適正化法とは、補助金の不正申請や不正使用を防ぐ法律です。補助金の適正な交付を促進するため、1955年に制定されました。正式名称は「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」といいます。補助金適正化法により、補助金の申請から交付までの過程で、適正な手続きがとられるようになりました。施行されたのはとても古いですが、時代に合わせて法改正が行われています。

    補助金適正化法の目的

    補助金適正化法の目的は、補助金の交付手続きの透明性や公正性を高め、不正行為を防止したうえで適正な資金を配分することです。具体的には、補助金を受け取る事業者に対して、

    • 事前の説明
    • 事前の情報提供
    • 交付金の用途の確認
    • 経理管理の徹底

    ​​などが求められます。不正があれば、交付金の返還や減額の措置が取られることもあるでしょう。不正使用や不正受給が明らかになったときの罰則も設けられており、取り締まりが年々強化されています。そのため補助金を受け取る事業者は、適正な手続きや財務管理を徹底しなければなりません。政府や自治体も、補助金の適正な交付を促進するため、正しく情報を公開したうえで審査の透明性を担保し、監査を強化しています。

    参照:『昭和三十年法律第百七十九号 補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律』e-gov 法令検索

    ※本記事は2023年5月現在の情報です。最新情報は、政府・自治体の発表やホームページなどをご確認ください。。

    補助金適正化法の不正受給に関するポイント

    補助金適正化法を理解するうえで押さえておきたいポイントは5つあります。それぞれのポイントを詳しくご紹介します。

    不正に申請・取得することは禁止

    税金や国債などの貴重な財源でまかなわれている補助金を、不正に申請して取得することは犯罪行為です。補助金適正化法の第1条には、不正な申請や使用を防ぐことが目的であると明確に示されています。不正受給に関与した場合、厳しい罰則も設けられています。たとえば、虚偽の報告書を提出するなどして不正に補助金を受給すると、詐欺罪や偽計業務妨害罪で起訴される可能性が高いです。

    本来であれば補助金は、公正かつ効率的に使用されるべきものです。不正が発覚したら、たとえ交付の決定後であっても取り消しになるでしょう。また、本来の給付額に加えて返還までの加算金も請求され流ことになります。過去には、逮捕または起訴された事例もありました。不正行為が世間的に報じられると、企業は社会的に大きく評判を落とすことになるため、細心の注意を払う必要があるでしょう。

    虚偽申請も不正受給と同様に罪に問われる

    補助金に関して虚偽の申請をすると、不正受給と同じく犯罪行為と見なされ、罰則の対象となります。補助金を受給するためには、自社の事業について正確な情報を提供しなければなりません。たとえば、発注書や納品書の日付を改ざんしたり、経費を水増ししたりすると、詐欺罪などに問われる可能性があります。また、虚偽の申請であることを知りながら交付した自治体なども罰則の対象です。

    本来の目的から外れた使用は禁止

    補助金適正化法の第十一条により、補助金には、その使用目的が明確に定められています。本来の使用目的から外れた使用は固く禁じています。そのため万一、補助金の受給後に使用目的が変更されたら、できるだけ早めに報告しましょう。

    申請内容と実際の使い道が異なることが発覚したら、決定の一部または全部が取り消され、返還しなければなりません。また補助金は、申請した用途に対して適正か否かが判断されたうえで交付されます。そのため、目的物を保存しなければならないという義務も課せられています。

    内容変更、期間延長については報告

    補助金の使用目的や実施計画に変更が生じたら、速やかに報告して承認を受けましょう。万一、然るべきタイミングで報告がないと、不正使用とみなされてしまう恐れがありますがあるため注意します。変更内容申請書が用意されているものは、定められた方法で記載して申請してください。

    また、計画期間が延長される場合も報告の義務があります。内容変更や期間延長が生じたら、その都度、補助金の管轄省庁などに報告して、不正受給とならないよう注意しましょう。

    各省庁に事業の状況を報告

    補助金適正化法では、各省庁の長に対して、事業の遂行状況や補助金の使用状況、不正使用の有無などを報告することが求められています。補助金を受け取った事業者は、事業が完了したら、補助事業等実績報告書をはじめ、各省庁の長が定めている書類の提出をもって状況を報告しなければなりません。

    補助金などの交付決定にかかる国の会計年度が終了した場合も、同様の手続きが必要です。報告内容が条件に見合っていないと判断されると、内容を是正するよう求められるケースもあります。

    補助金の不正受給の刑事責任

    補助金受給の条件を満たしていないと理解したうえで補助金を受給した企業には、刑事責任が生じます。そこで補助金の不正受給の刑事責任について詳しくご紹介します。

    補助金の不正受給は詐欺罪などに該当

    補助金の条件を満たしていると見せかけて補助金を受給すると、詐欺罪(刑法246条)に該当するケースがあります。詐欺罪は、10年以下の懲役が科せられる可能性があり、罰金刑がなく懲役刑のみとなる重い罪です。

    また補助金適正化法には、不正受給に関する処罰規定(補助金不正受交付罪―同法29条)があり、5年以下の懲役または100万円以下の罰金もしくは両方が併科されます。詐欺罪は不正受給に関与した人に適用されるのに対し、補助金不正受交付罪は法人などの事業者にも適用されて罰金刑などが科される可能性があるため、注意しましょう。どちらの罪に問われるかは裁判所の判断に委ねられますが、最高裁では罰則の重い詐欺罪を適用できるとしています。

    詐欺罪の要件

    補助金を不正に受給することで詐欺罪に当てはまる要件は、次の5つです。

    • 人をだます
    • 欺罔(ぎもう)行為により相手を錯誤に陥らせる
    • 財物の処分行為
    • 財物の移転
    • 財産的損害

    詐欺罪には、人をだますという特徴があります。欺罔行為が認められると、詐欺罪の実行に着手したとみなされ、たとえ補助金を受給していなくても詐欺未遂罪に問われる可能性もあるのです。

    補助金の不正受給の具体例

    補助金を不正に受給することで詐欺罪に問われる恐れがある行為は、次の通りです。

    • 受給条件にかかわる事業内容や実績を書類上で偽造
    • 架空の経費や水増しした経費を計上
    • 請求書の日付を書き換え

    たとえば、事業計画書に虚偽の内容を記載し、補助金を不正に受け取っていますケースです。必要経費を過大に見積もり、事業計画の実施期間を延長して補助金を受け取ると、詐欺罪に問われる可能性があります。また、同じ事業について複数の補助金を不正に受け取ったり、未実施事業について補助金を申請したりしても、犯罪行為となる恐れがあります。

    コンサルタントへの依頼にも注意

    補助金不正受給の摘発事例のなかには、コンサルタントに補助金を受給するようにすすめられたケースも少なくありません。コンサルタントに補助金関連の手続きなどを一任した場合であっても、経営者が共謀による詐欺罪に問われる可能性は高いといえます。

    補助金の申請は経営者の最終判断によるものであるため、不正であると認識していなかったという弁解は通用しません。受給資格がない補助金申請をしたのであれば帳簿や請求書などに不審な操作があったはずなので、不正受給の疑いは拭えないでしょう。コンサルタントの提案を鵜呑みにせず、何が正しいかをみずから判断する力が必要です。

    不正受給の民事・行政ペナルティ

    補助金の不正受給は刑事責任の問題だけでなく、民事や行政によるペナルティが科されることもあります。

    補助金の返還と加算金・延滞金の納付義務

    補助金の不正受給が発覚すれば、補助金の返還だけでは済まされません。万が一、補助金を不正に受給した場合は、不正受給した日から返還する日までの日数に応じて年10.95%の加算金・延滞金の納付が科されるケースがあります(補助金適正化法19条)。緊急経済対策として支給される補助金の場合は、不正受給に対するペナルティが重く科されるため注意が必要です。

    交付が停止され公共事業から除外

    補助金を不正に受給した事業者は、補助事業を遂行する能力がないとみなされてしまうため、補助金の交付が停止されます。同種の補助事業を行っている場合はほかの補助金の交付も停止され、一定期間、補助金の交付や公共事業から除外されてしまうケースもあるのです。

    事業者名や不正受給の事実が公表

    不正受給が発覚した場合、事業者名と不正受給の内容、処分の内容が官庁のホームページに公表されます。これは補助金の不正受給を未然に防止するための措置であり、社会的制裁としても機能します。取引先や取引銀行の目に触れると、社会的信用を大きく失ってしまうでしょう。金融機関からの融資を受けられなくなるケースもあります。

    不正受給の捜査から起訴までの流れ

    補助金の不正受給が発覚し、万一詐欺罪に問われたら、起訴まではどのように進むのでしょうか。刑事事件の流れを順を追って詳しく解説します。

    1.告発

    補助金の不正受給があると疑われる場合、その事実が所轄の警察署や市区町村役場、監査機関などに告発されることがあります。従業員の内部告発によって発覚するケースも少なくありません。告発者が具体的な証拠や情報を提供することで、捜査が進みます。不正の内容が悪質と判断された場合は、管轄省庁などにより刑事事件化されるのが一般的な流れです。

    2.逮捕

    補助金の不正受給に関する書類や帳簿類は、役所によって確保されているケースがほとんどです。捜査では、不正受給の認識があったのか、そして主犯格が誰なのかが焦点となります。また、不正受給が確定する前でも捜査上必要である場合には、捜査機関が不正受給の被疑者を逮捕する場合があります。関係者が口裏合わせにより証拠隠滅をする可能性があること、重い刑罰をおそれて逃亡する可能性が高いことから、不正受給の詐欺事案では逮捕されるケースが多いと覚えておきましょう。

    3.勾留

    助成金の不正受給が原因で詐欺罪の被疑者として逮捕された場合、検察官は高い確率で裁判所に対して勾留請求を行います。裁判所が身柄を拘束する必要があると判断した場合は、逮捕期間の3日間を含めて最長23日間勾留されます。勾留期間中は警察署内の留置施設に収容され、取り調べを受けなければなりません。

    4.起訴

    検察官は、勾留期限までに刑事裁判によって刑罰を科す必要があるかを判断します。補助金の不正受給は悪質な事案が多いことから、刑事裁判へと発展するケースが一般的です。捜査が進んで裁判所に起訴状が提出されたら、公判が開かれます。逮捕・勾留されていた場合は、裁判が終わるまで勾留されるケースが多くあります。

    裁判では、検察側が補助金の不正受給の事実やその犯罪性、事業者の罪状、刑事責任などを主張し、弁護側はこれに反論して弁護を行うことになるでしょう。裁判官は、検察側と弁護側の主張を聴き、判決を下すのです。裁判終了後、不正に受給した補助金の返還などを命じられる場合もあります。

    不正受給にならないための3つの注意点

    補助金を不正受給するつもりがなくても、結果として不正受給してしまったというケースも少なくありません。補助金に関する誤った認識があると、不正受給認定や刑事告訴などのさまざまなリスクがともなうので注意が必要です。そこで、補助金の不正受給を防止するために覚えておきたい3つの注意点をご紹介します。

    従業員数

    補助金制度は、在籍する従業員数によって補助率が変わることがあります。従業員とは、企業と雇用契約を結んで業務に従事する人を指し、正社員・パート・アルバイト・契約社員なども数に含まれます。ただし、以下の働き方の場合は従業員としてカウントしないため注意が必要です。

    • 転籍出向した社員
    • 派遣社員
    • 業務委託
    • 役員
    • 個人事業主

    補助金制度の対象者にするため事業実施期間に従業員数の増減を行うなど、従業員数の操作は不正受給の対象です。また、故意ではなく認識違いやミスによって正しい従業員数を把握できていなかった場合も不正受給の対象となります。

    従業員数のカウントミスを防ぐ方法は、募集開始日に要件を満たしているかの確認をかねて従業員名簿を作成することです。また、交付決定後に従業員数の増加によって定義から外れた場合は、補助率が変わるケースがあるので注意してください。

    金額

    補助金の申請時には、書類に金額を記入する箇所が多くあります。それらの記入ミスや確認ミスによって、誤った情報で申請してしまうケースも少なくありません。金額の記載ミスなど申請条件の誤認は、補助金の上限額や補助率の違いに直結します。社内でダブルチェックを行うなどして、ミスを防ぐように細心の注意を払いましょう。

    故意に金額を誤魔化して偽りの書類を作成し申請した場合は、悪質な不正受給とみなされてしまいます。万が一、手続きに不安がある場合は、認定支援機関に申請代行を依頼することをおすすめします。

    要件

    補助金制度の要件を満たしているかどうかは、とても重要なポイントです。たとえば「ものづくり・商業・サービス補助金」では、次の5つの要件が存在します。

    • 通常枠
    • 回復型賃上げ・雇用拡大枠
    • デジタル枠
    • グリーン枠
    • グローバル市場開拓枠

    事業で提供するサービスの種類や従業員規模によって、補助上限金額や補助率は大きく異なります。公募要領を確認して、自社に当てはまる要件で申請することが大切です。

    不正受給の対処法

    補助金の不正受給は犯罪であり、重い処罰が科せられる可能性があります。意図せず不正受給をしていた場合も処罰の対象となりますので、適切に対処することが重要です。そこで補助金の不正受給が発覚した場合の対処法を解説します。

    刑事手続きに対応する

    補助金の不正受給が発覚すると、詐欺罪などに問われ刑事裁判に発展するケースが多くあります。不正に受給した補助金を返還すれば問題ないとお考えの方も少なくないようですが、返還したとしても刑事責任がなくなるわけではありません。なるべく早いタイミングで弁護士のサポートを受けて、告発や刑事処分を回避するための対応をしましょう。

    補助金不正受給による詐欺罪は、告発されると逮捕や勾留をされる可能性が極めて高く、起訴されるケースが多く見られます。ただし、次のような対処は減刑の事情となり得ます。

    • 補助金を自主返還する
    • 警察の捜査に進んで協力する
    • 具体的な再発防止策を講じている

    上記のような善後策を告発や起訴の前に行えば、有利な条件で処分が決定されるかもしれません。

    コンプライアンス態勢の再構築

    補助金の不正受給は、弁護士などのアドバイスを受けることで回避できる可能性が高まります。弁護士に相談をすれば、悪質なコンサルタントに騙されるリスクも軽減できるはずです。一度補助金の不正受給をしてしまうと、取引先からの信用を失います。信用の回復は非常に困難なので、顧問弁護士を設置するなどしてコンプライアンス体制を整備することをおすすめします。

    また、補助金の申請方法や用途に関する規定の整備、定期的な監査、不正受給に関する教育や研修の実施などによっても、補助金の不正受給を未然に防止できるでしょう。

    補助金不正受給しないためには正しい知識をつけることが重要

    本記事、補助金の不正受給に関して詳しくご紹介しました。補助金の不正受給は詐欺罪に該当し、刑事罰のほかにも民事・行政ペナルティが科せられる可能性があります。不正な受給を防ぐために、従業員数や金額などの申請要件に注意しましょう。もし不正受給が発覚した場合には、刑事手続きに対応するとともに、コンプライアンス体制を整備して信用の回復をはかることをおすすめします。

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