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就業規則の不利益変更できるのか|従業員から同意が得られない場合の対処法も解説

就業規則の不利益変更できるのか|従業員から同意が得られない場合の対処法も解説

従業員の不利益となるような就業規則の変更は、法律上禁止されています。ただし、例外的に変更することも可能です。本記事では、就業規則の不利益変更をする条件や変更する際のポイントについて解説します。最後まで読むと、就業規則の不利益変更ができる可能性を高めるため、参考にしてください。

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    就業規則の不利益変更とは

    就業規則の不利益変更とは、従業員にとって不利益な内容に就業規則を変更することです。具体的には、賃金の引き下げや手当のカット、福利厚生の削減などが挙げられます。

    就業規則の不利益変更は、労働契約法第9条により原として禁止されています。しかし、変更に合理性や相当性があれば認められる場合もあります。

    なお、就業規則の変更自体は、従業員の過半数代表者の意見を聞くことで可能です。

    就業規則の不利益変更ができる条件

    就業規則の不利益変更ができる条件は次の2つのうち、いずれかを満たした場合です。

    • 変更に合理性がある
    • 就業規則を周知している

    それぞれ解説します。

    変更に合理性がある

    合理性のある変更とは、企業視点で、就業規則の変更性の重要度が高く、かつ従業員が大きな不利益を被らない変更です。就業規則の変更の合理性がある場合は、従業員の不利益があっても変更できます。従業員の不利益が大きい場合は、協議のうえ、慎重に決める必要があります。

    就業規則を周知している

    変更の合理性があっても、変更後の就業規則を周知していなければ認められません。周知方法は、全従業員が閲覧できる場所への掲示や書面での通知などが挙げられます。周知しない場合は、労働基準法第106条により、就業規則の効力はなくなりますので漏れなく実施しましょう。

    就業規則の不利益変更を実施する際のポイント

    就業規則の不利益変更を実施する際のポイントは次の4つです。

    • 労働組合に十分な説明を尽くす
    • 複数回にわたって話し合う
    • 変更後の就業規則を周知する
    • 不利益の度合いを最小限に抑える

    それぞれ解説します。

    労働組合に十分な説明を尽くす

    労働組合がある場合には、労働組合に十分な説明を尽くすことが必要です。労働者側の意見を聞き入れて、就業規則の変更内容を見直すことも検討しましょう。

    複数回にわたって話し合う

    一度で合意が得られなくても、複数回にわたり粘り強く交渉することで、納得してもらえるかもしれません。労使交渉が十分に行われているかが、就業規則の不利益変更の合理性を争ううえでのポイントです。

    就業規則を変更しなかった場合のデメリットを明示することで、従業員からの合意を得やすくなる可能性があります。たとえば、経営難の企業の場合、賃金が下がるよう就業規則を変更したとしましょう。これに合意が得られなければ、会社は赤字が続いてしまい、最悪倒産する可能性があります。

    就業規則の不利益変更を行う経緯やその後どうなるかを議論に持ち出すことで、従業員に納得してもらいましょう。

    変更後の就業規則を周知する

    従業員に対する変更後の就業規則の周知は、労働条件の不利益変更要件の1つです。ここでいう周知とは、従業員に対し、変更内容を知りうる状態にしておくことを意味します。周知する際は、労働基準法第106条に則りましょう。労働基準法第106条には、次の旨が記されています。

    「常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること、書面を交付することその他の厚生労働省令で定める方法によつて、労働者に周知させなければならない。」変更後の就業規則は、掲示板や書面の交付などで通知しましょう。

    不利益の度合いを最小限に抑える

    従業員にとって受ける不利益が少ない場合、変更内容の合理性が認められる可能性は高まります。理由は、従業員のデメリットが少ないためです。特に、賃金や退職金など従業員の利益に直結する項目を変更するなら、不利益の度合いを最小限に抑えましょう。

    就業規則を不利益変更する流れ

    就業規則の不利益を変更する流れは次の通りです。

    1. 就業規則の変更案を作成する
    2. 就業規則変更届を作成する
    3. 意見書を作成する
    4. 労働基準監督署長へ提出する
    5. 従業員へ周知する

    それぞれ解説します。

    1.就業規則の変更案を作成する

    就業規則が適用される範囲を決めることが重要です。誰が不利益を被るのかも明確にしましょう。たとえば、対象者は正社員のみで、アルバイトやパートには適用されないなどです。

    また、法律に触れる内容に変更しても効力を発揮しないため、正当と認められる範囲で就業規則の変更案を作成しましょう。法律に触れていないか心配の場合は、法務担当者へ確認すると安心でしょう。

    2.就業規則変更届を作成する

    就業規則の変更を届け出るために、就業規則変更届を作成する必要があります。就業規則変更届には決められた様式がないため、作成しやすいものを用意するとよいでしょう。テンプレートが必要な方は、以下のリンクからフォーマットをダウンロードできます。

    参照:『様式集 (必要な様式をダウンロードしてご使用下さい。)』東京労働局

    3.意見書を作成する

    意見書とは、労働者の過半数で組織する労働組合や従業員の過半数を代表する者から、意見聴取したことを証明する書類です。労働基準法第90条により、就業規則を変更する場合は、意見の聴取および意見書の作成が義務付けられています。意見書には、最低でも項目を記入してもらいましょう。

    • 就業規則に対する意見
    • 従業員の過半数を代表するものの職名及び名前
    • 従業員の過半数を代表するものの選出方法

    また、以下のリンクからフォーマットをダウンロードできます。意見書の作成に不安のある方は参考にしてみましょう。

    参照:『様式集 (必要な様式をダウンロードしてご使用下さい。)』東京労働局

    4.労働基準監督署長へ提出する

    労働基準監督署長へ提出する書類は次の3つです。

    • 就業規則変更届
    • 意見書
    • 変更後の就業規則

    提出が完了すれば、労働基準監督署長が適法性を審査します。

    5.従業員へ周知する

    従業員へ変更後の就業規則を忘れずに周知しましょう。おすすめの方法は、従業員がいつでもパソコンやタブレットで閲覧できる体制を構築することです。

    従業員が就業規則の変更に同意しない場合

    従業員が就業規則の変更に同意しない場合、主に次の2つのケースが考えられます。

    • 特定の従業員が変更に同意しない
    • 従業員代表者や労働組合が同意しない

    ケースごとの対処法を解説します。

    特定の従業員が変更に同意しない場合

    大半の従業員が同意しても、個々の従業員が同意しないことは十分に考えられます。

    しかし、就業規則の変更手続き自体は、従業員から個別の同意を得なくても可能です。同意を得なくとも、不利益変更に合理性があれば、変更後の就業規則が適用されます。また、新たに入社する従業員にも変更後の就業規則が適用されます。

    従業員代表者や労働組合が同意しない場合

    就業規則の変更手続きでは、従業員代表者や労働組合からの意見書が必要です。同意の意見がなくても変更できますが、従業員代表者からの同意が得られない場合、変更が不合理であると判断される可能性が高くなります。

    従業員の同意がないまま就業規則を変更した場合

    従業員の同意なしで就業規則を変更した場合、発生する罰則やトラブルについて説明します。

    法律上の罰則はない

    個々の従業員や労働組合からの同意、就業規則の変更における合理性がないまま労働条件を変更したとしても罰則はありません。ただし、この場合は変更が認められず、以前の就業規則のままになる可能性が高まります。

    つまり、不利益が大きく対象者からの合意が得られない状態で就業規則を変更しても、時間だけが無駄になります。貴重な時間をかけて就業規則を変更するなら、対象者と話し合い、合意を得た方がよいでしょう。

    労使トラブルが発生する可能性が高まる

    従業員の同意がない状態で就業規則を変更すると、変更前と変更後の切り替えがうまく行かずトラブルに発展する場合があります。不利益の度合いが大きいほど、労使トラブルにつながる可能性が高まるでしょう。

    従業員の生産性の低下を招く可能性がある

    表向きは同意しているものの、内心では不満を抱いている従業員がいる場合、結果的に生産性の低下を招きかねません。最悪の場合、辞めてしまう可能性もあるでしょう。

    まとめ

    就業規則の変更に合理性があり、変更後の就業規則が周知されていれば、不利益な変更が可能です。合理性とは、就業規則を変更する必要があり、かつ従業員が被る不利益が少ないことを指します。合理性が認められると、従業員に不利益であっても変更が認められるため、本記事を参考に就業規則の変更手続きを進めましょう。

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