就業規則の閲覧は自由! 就業規則は全従業員に周知が不可欠
従業員から就業規則の閲覧を求められた場合、見せていいのか迷う人事担当者もいるのではないでしょうか。
就業規則は全従業員が閲覧できます。全従業員に周知していない就業規則は無効になるため、作成や変更の際はもちろん、随時閲覧ができる状況にしておかなければなりません。本記事では、就業規則の閲覧方法や周知義務などを解説します。就業規則のルールから知りたいという方は、ぜひ参考にしてみてください。
就業規則について
そもそも「就業規則」とはどのようなものなのでしょうか。就業規則の概要や目的を紹介します。
就業規則の概要
就業規則は、従業員の給与や労働時間などの労働条件、従業員が遵守するべき社内ルールといったものを規則としてまとめたものです。10人以上の従業員を雇用している企業は、労働基準法第89条の規定により、就業規則の作成と所轄の労働基準監督署長への届出が義務となっています。
就業規則の変更時も同様に、所轄の労働基準監督署長への届出が必要です。必ず記載しなければならない事項は、「労働時間関係」と「賃金関係」、「退職関係」で、社内でルールを定める場合に記載が必要な事項は、「退職手当関係」や「臨時の賃金・最低賃金額関係」、「費用負担関係」などです。厚生労働省が「モデル就業規則」を公開しているため、規程例や解説を参考にするとよいでしょう。
参照:『モデル就業規則について』 厚生労働省
参照:『モデル就業規則(R4.11版)』 厚生労働省
就業規則の目的
就業規則の目的は、主に次の4点です。
社内秩序の保持
さまざまな従業員が働く企業では、一人ひとりがルールを守って秩序を保持しなければいけません。そのため、就業規則を作成し、誰でもいつでも閲覧できる状態にしておく必要があります。
労使トラブルの防止
従業員とのトラブル防止も目的の一つです。自社の規則を示し、罰則を定めておくことで、不正行為などの抑止につながります。また、ハラスメントに対応するガイドラインの策定も必須です。
企業利益の保守
規則を守らないことで業務効率の低下やさまざまなトラブルを招き、企業利益が損なわれるおそれがあります。企業利益を守るためにも、就業規則は欠かせないものだといえるでしょう。
企業責任の履行
企業には、利益追求だけでなく、社会的責任(CSR)を果たす役割があります。環境や人権といった社会的問題への対応を進めていくには、就業規則に明示しておくことが重要です。
就業規則の周知義務
就業規則の周知義務は、労働基準法第106条に定められています。就業規則の作成や変更時には、全従業員に周知する必要があります。一部の従業員だけに教えたり、口頭のみで説明したりするのは、「周知」に当たりません。周知する方法として、各事業所への掲示や書面での交付、データ化してパソコン上で常時閲覧できるようにすることなどが一般的です。
周知義務に違反すると、是正勧告や指導、労働基準法120条1項により30万円以下の罰金が科せられる可能性があります。また、企業の信頼度や価値が低下するおそれもあるため、必ず遵守するよう心がけましょう。
就業規則の閲覧希望への対応方法
就業規則の閲覧を求められた場合、効率や自社の規模に合わせ、すべての従業員が見られる状況にすることが重要です。就業規則の周知方法は、労働基準法第106条1項・労働基準法施行規則第52条の2により、下記のように定められています。
一 | 常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、または備え付けること。 |
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二 | 書面を労働者に交付すること。 |
三 | 磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること。 |
それぞれの項目について解説します。
誰もが見える場所に掲示
就業規則を冊子などでまとめているなら、従業員が手に取って自由に見られる場所に掲示しましょう。自由に閲覧できる場所であれば、事務所や作業所だけでなく、休憩室などに掲示しても構いません。本社以外に支所や工場がある場合は、事業場ごとに誰もが見える場所に備えておくとよいです。
全従業員に交付
書面で交付する場合、入社時や就業規則変更時に就業規則のコピーを配布すると効率的です。ただし、就業規則の持ち出しを禁止していたり、従業員が多かったりするケースでは、掲示や共有で周知する方法がよいでしょう。また、管理の徹底もあわせて周知することが重要です。
社内システムで共有
就業規則は、パソコン上のデジタルデータで周知することも可能です。全従業員がアクセスできる社内システムの共有フォルダに格納する、社内イントラネットに掲載する、などの方法がおすすめです。大事なのは全従業員が閲覧できることです。そのため、共有できていればどのような方法でも問題ありませんが、情報漏えいには注意する必要があります。
就業規則閲覧の注意点
就業規則の閲覧は、取り扱いに注意しながら行うことが重要です。就業規則閲覧の際に注意すべき点を4つ取り上げて解説します。
従業員なら誰でも閲覧できるようにする
就業規則は、雇用形態にかかわらず全従業員が閲覧できるようにしておかなければいけません。たとえば、契約社員が正社員の就業規則を見られない状態は、不合理な待遇差の確認機会を奪うと考えられるため、周知義務違反になります。
また、全従業員が待遇に関係なく、すべての就業規則を閲覧できるようにしておくことも重要です。閲覧には、経営者や上司の許可などは必要ありません。もし閲覧に許可制を取っている場合、労働基準法に抵触するおそれがあります。
退職した従業員からの求めには注意
就業規則の周知義務は、在職中の従業員にのみ適用されます。よって、退職した従業員からの閲覧要望には応える必要がありません。就業規則の規定をめぐって係争となっている場合は、裁判所の指示に従い、該当部分の開示を行います。また、在職中に就業規則が周知されていなかった場合は、労働基準監督署から、保存している範囲の就業規則の閲覧許可または説明を行うことになっています。
経営陣は閲覧を拒否すべきではない
企業の中には就業規則を経営者が保管し、従業員の閲覧を拒否するケースがあります。このような場合、従業員が労働基準監督署に閲覧請求を行うことになり、結果として閲覧させなくてはいけない状況になります。無駄に拒んでも従業員からの信頼を失うだけなので、法を遵守した就業規則を全従業員に周知することを心がけましょう。
就業規則を紛失したケース
就業規則を紛失することはまれですが、万が一紛失した場合は労働基準監督署に対して閲覧申請を行います。なくした経緯や閲覧希望の理由について説明し、必要書類を提出すれば閲覧ができます。ただし、就業規則の紛失は企業の信頼を失墜させるため、注意が必要です。データのバックアップをとっておく、原本は大切に保管しておくなど、徹底した管理が求められるでしょう。また、就業規則を紛失した際の対応についても定めておくとよいです。
就業規則変更の重要性
就業規則は、随時法律を遵守した変更を行うことが重要です。労働法に関する法は定期的に改正されています。多くの場合、法改正の適用・運用は4月1日から施行されるため、年に一度、3月に厚生労働省東京労働局の「法改正のご案内」を確認するとよいでしょう。
また、最低賃金法は毎年秋に改定されています。最低賃金を下回っていないか必ずチェックし、もし下回っている場合は就業規則の変更を行う必要があります。
参考:『令和4年度地域別最低賃金額改定の目安について』 厚生労働省
まとめ
10人以上の従業員を雇用している企業は、就業規則の作成と労働基準監督署への届出が義務化されています。社内秩序の保持や労使トラブルの防止などが就業規則作成の目的であり、労働時間関係や賃金関係、退職関係などを明確に示すことが重要です。
また、就業規則は、すべての従業員に周知し、いつでも閲覧できる状態にしておく必要があります。誰もが見える場所への掲示や全従業員への配布、社内システムでの共有で対応するとよいでしょう。
注意点としては、退職者からの閲覧希望には応じる必要がない、閲覧を拒否してはいけないなどが挙げられ、法改正に沿った内容への変更も大切です。
就業規則の閲覧に関して、しっかり把握しておくことをおすすめします。
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