労災保険料率とは【計算方法や支払い手続き】いつ誰がいくら負担する?

労災保険料率とは【計算方法や支払い手続き】いつ誰がいくら負担する?

労災保険料率は、労災保険料の計算に用いられる割合のことです。労災保険料率は業種によって異なり、労働災害(労災)が起こるリスクに応じて設定されています。

労災保険は業務時間中や通勤中のケガや病気を補償する制度であり、保険料は事業主が全額負担します。企業は、自社が該当する業種の保険料率について理解しておかなければなりません。

本記事では、2024年時点で最新の業種別労災保険料率を紹介します。保険料の計算方法や支払い手続きについても解説しているので、参考にしてください。

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    労災保険料率とは

    労災保険料率とは、労災保険料を計算する際に用いる割合のことです。

    従業員を1人でも雇用している企業は、労災保険に加入する義務があります。また、健康保険料や雇用保険料などは労使双方が保険料を負担し合いますが、労災保険に限っては保険料を使用者が全額負担します。

    労災保険料率は業種によって異なるため、自社が納めるべき労災保険料を算出するためには、該当する業種の保険料率を確認しなければなりません。

    労災保険・労災保険料とは

    そもそも労災保険とは、業務中や通勤中のできごとに起因するケガや病気などに対し、従業員に十分な補償を提供するための制度です。

    労災保険には、労働災害による傷病の治療費を支給する「療養(補償)等給付」や、療養のために働けない期間の経済的不安をフォローする「休業(補償)等給付」など、さまざまな給付金があります。

    労災保険料とは、労災保険の適用を受けるために納める保険料です。

    労災保険は労働災害による疾病に対して必要な給付を行うことを目的としており、仕事が原因のケガや病気をフォローする制度です。そのため保険料は、事業主が全額負担する仕組みを採用しています。

    また、労災保険の目的や性質を踏まえて、労災保険料率は、労働災害の危険度が高い業種ほど高く設定されています。

    労災保険料と労働保険料の違いは?

    労災保険と労働保険は混同されやすいですが「労働保険」は労災保険と雇用保険を合わせた総称です。

    労災保険料は「労災保険」の保険料、労働保険料は「労災保険料」と雇用保険料を合算した金額を指します。

    令和6年度の労災保険料率【業種別一覧表】

    労災保険料率は「製造業」「運輸業」などの事業の種類別に区分され、さらにそこから食料品製造業・めっき業・交通運輸事業…というように、業種別に細かく分けられ設定されています。同じ事業種別でも、具体的な事業内容が違えば保険料率はまったく異なるので注意が必要です。

    今回は、令和6年に改定された労災保険料率のうち、一部を抜粋して紹介します。

    (単位:1/1,000)

    事業の種類の分類業種番号事業の種類 
    林業02又は03林業52
    鉱業21金属鉱業や非金属鉱業(石灰石鉱業またはドロマイト鉱業を除く。)又は石炭鉱業88
    24原油または天然ガス鉱業2.5
    建設事業32道路新設事業11
    33舗装工事業9
    製造業41食料品製造業5.5
    42繊維工業または繊維製品製造業4
    49その他の窯業または土石製品製造業23
    57電気機械器具製造業3
    59船舶製造又は修理業23
    運輸業71交通運輸事業4
    電気、ガス、水道又は熱供給の事業81電気やガス、水道、熱供給の事業3
    その他の事業97通信業や放送業、新聞業、出版業2.5
    98卸売業・小売業や飲食店、宿泊業3
    99金融業や保険業、不動産業2.5

    出典:『労災保険率(令和6年4月1日施行)』厚生労働省

    労災保険料率は、業務の危険度が高い業種ほど高く設定されています。

    たとえば、鉱業のうち「金属鉱業、非金属鉱業(石灰石鉱業又はドロマイト鉱業を除く。)又は石炭鉱業」の料率は8.8%(88/1,000)、「林業」は5.2%(52/1,000)です。その他の業種と比べて、業務中に疾病を負うリスクが高いと判断されているため、料率が高く設定されています。

    一方で「通信業」は0.25%(2.5/1,000)、「卸売業」や「小売業」は0.3%(3/1,000)と、リスクの低い業種は低い保険料率が適用されています。

    同じ製造業でもリスクに応じて料率に差があります。たとえば「電気機械器具製造業」は0.3%(3/1,000)、「食料品製造業」は0.55%(5.5/1,000)と比較的低く「その他の窯業又は土石製品製造業」と「船舶製造又は修理業」は2.3%(23/1,000)と、事業の分類が同じでも保険料率が異なります。

    労災保険料率は3年ごとに改定

    労災保険料率は、3年に一度のペースで見直されています。見直しでは、業種全体での労働災害の発生状況や重篤度により、それぞれの保険料率が決定されます。

    定期的な見直しがなされているのは、労災保険料率が業種ごとの保険給付実績などの実態に基づいて算定されているためです。

    直近では2024年(令和6年)に改定されており、次回は2027年(令和9年)に見直される予定です。労災保険料を計算する際は、常に最新の保険料率を参照するよう注意しましょう。

    労災保険料率は、業種ごとの労働災害の発生状況や重篤度に基づいて、原則として3年に一度のペースで見直されています。定期的な見直しでは、各業種の保険給付実績などの実態が反映されています。

    直近では2024年(令和6年)4月1日に改定が行われ、次回の見直しは2027年(令和9年)の予定です。労災保険料を計算する際は、常に最新の保険料率を参照するように注意しましょう。

    参照:『労災保険料算出に用いる労災保険率の改定等を行います』厚生労働省

    労災保険料はいくら? 計算方法

    労災保険料の計算式は、以下の通りです。

    賃金総額×労災保険料率

    賃金総額とは、従業員全員に支払われた賃金の合計額を指し、各従業員個別ではなく、全従業員に支払った賃金の合計額を用いて算出します。

    賃金総額に含まれる給与項目は「給与」や「給料」など名称に関係なく、労働の対価として支払われたものすべてを含み、税金や社会保険料などの控除前の金額です。

    労災保険料を計算する際は、自社の業種に該当する保険料率を一覧表から選んで使用します。

    労災保険料率の単位は「1/1,000」で記載されており、たとえば一覧表に「5」と記載されている場合は、賃金総額に5/1,000を乗じて計算します。

    計算例

    労災保険料の計算例として、以下の条件における保険料を計算してみましょう。

    • 業種:食料品製造業
    • 従業員数:25人
    • 平均給与:450万円

    2024年(令和6年改定)の労災保険率表より、食料品製造業の保険料率は「0.55%(5.5/1,000)」です。従業員数が25人、平均給与が450万円であるため、賃金総額は以下のように計算します。

    450万円×25人=1億1,250万円

    つまり、例に挙げた食料品製造会社が支払う、労災保険料率は以下の通りです。

    1億1,250万円×5.5/1,000=61万8,750円

    参照:『労災保険率表(令和6年4月1日施行)』厚生労働省

    賃金総額に含まれるもの・含まれないもの

    従業員に支給するお金の中には、賃金総額に含まれる項目と含まれない項目があり、判別が難しいと感じることもあるかもしれません。それぞれの代表的な手当や報酬を紹介しますので、参考にしてください。

    賃金総額に含まれる手当・報酬賃金総額に含まれない手当・報酬
    基本賃金
    賞与(ボーナス)
    定期券・回数券
    通勤手当
    超過勤務手当
    深夜手当
    扶養手当
    技能手当
    住宅手当
    前払い退職金 など
    役員報酬
    出張旅費
    傷病手当金
    退職金
    結婚祝金
    死亡慰労金
    解雇予告手当 など

    参照:『労働保険対象賃金の範囲』厚生労働省

    労災保険料の支払い|いつ誰がどこで支払う?

    労災保険料は、4月1日から3月31日までの1年間分を事業主が納付します。

    労災保険料の納付手続きは、今年度の概算保険料を申告・納付し、年度が終了して保険料が確定したあとに精算するという仕組みです。

    そのため事業主は、今年度の概算保険料と前年度の差額分の申告・納付を同時に行う必要があります。毎年の納付手続きを「年度更新」といい、期間は例年6月1日から7月10日までです。

    納付は都道府県労働局や労働基準監督署のほか、金融機関での口座振替や電子申請での納付もできます。口座振替納付の取り扱い金融機関は、以下の通りです。

    労災保険料の口座振替に対応する金融機関
    全国の銀行(ゆうちょ銀行を含む)
    信用金庫
    労働金庫
    信用組合
    農業協同組合(JAバンク)
    漁業協同組合(JFマリンバンク)
    商工組合中央金庫

    ※一部金融機関では取り扱いがない場合があります

    参照:『労働保険料等の口座振替納付』厚生労働省

    労災保険料は原則として一括納付ですが、継続事業であって、以下のいずれかのケースに当てはまる場合は、年3回の分割納付(延納)も可能です。

    • 概算保険料が40万円以上(労災保険のみ成立して加入している場合は20万円以上)
    • 労働保険事務組合に労働保険事務を委託している

    なお、期間が6か月を超える一括有期事業の場合は、概算保険料額の条件が75万円以上となります(事務組合への委託は継続事業と同様)。

    参照:『労働保険料の申告・納付』厚生労働省

    労災保険料率に関しての注意点

    同じ事業所内で複数の事業を手がけている場合、労災保険料の計算には、原則として主な業態に基づく1つの保険料率を適用します。

    一方で複数の事業所があり、それぞれ異なる事業を運営している場合は、各事業所ごとに該当する業種の保険料率を適用して計算します。

    たとえば、不動産事業を営む一方で飲食店経営にも手を広げている企業は、事業所ごとに従業員の賃金を集計し、該当する保険料率を使用します。

    また、保険料率が改定された年は、古い保険料率を誤って使用し、納付しないように注意が必要です。前年から据え置きの場合もありますが、労災保険料率は3年ごとに見直されるため、年度更新の際は、必ず最新の保険料率を確認しましょう。

    労災保険料率は3年ごとに確認を

    労災保険料率とは、労災保険料を計算する際に用いる割合です。労災保険料率は業種ごとに異なり、業務の危険度が高く、労働災害が起きる可能性が高いほど、高く設定されます。

    労災保険料の計算式は「賃金総額×労災保険料率」ですが、賃金総額に含まれる報酬と含まれない報酬が決まっているため、計算には注意が必要です。

    労災保険料率は3年ごとに改定されており、次回は2027年(令和9年)の予定です。誤った保険料率を使用すると、労災保険料を正しく計算・納付できません。労災保険料を計算する際は、自社が当てはまる業種の保険料率を確認しましょう。