年末調整で原本の提出が必要な書類一覧|なぜ必要? 電子化でどうなる? ない場合や保管についても
年末調整で必要な書類の中には、コピーではなく、必ず原本でなければならないものがあります。担当者は原本が必要な書類を把握し、従業員に周知することが大切です。
本記事では、年末調整において原本の提出が必要な書類をまとめて紹介します。電子申請時の対応や、原本がない場合の対処方法も解説するので、参考にしてください。
年末調整で原本の提出が必要な書類一覧
年末調整でコピーではなく原本の提出が必要な書類は、控除の種類や用途により異なり、一覧にすると以下の通りです。
年末調整において原本の提出が必要な書類 | |
---|---|
中途入社 | 前職で発行された本年度の源泉徴収票 |
海外に居住する配偶者または扶養親族の扶養控除 | 親族関係書類 ※扶養親族が日本人の場合、パスポートなどを除く |
民間の各種保険料に対する控除 | 保険料の控除証明書(※) |
国民年金の保険料に対する控除 | 社会保険料控除証明書(※) |
小規模企業共済/個人型年金(iDeCo)に対する控除 | ・掛金払込証明書等(※) ・加入者掛金の払込証明書(※) |
住宅ローン控除 | ・金融機関が発行した住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書(※) ・年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書(※) |
※(※)電子的に受け取っている場合を除く
中途入社
年の途中で入社してきた従業員の年末調整は、前職と自社の給与を合算して手続きをします。
前職の給与を把握するためには、前の会社で発行された源泉徴収票の原本が必要です。
年内に複数回の転職をしている従業員は、各勤務先の源泉徴収票をそれぞれ提出する必要があります。
海外に居住する配偶者または扶養親族の扶養控除
被扶養者が海外に住んでいる場合、年末調整で控除を受けるには、家族関係を示す「親族関係書類」と扶養関係を示す「送金関係書類」の提出が必要です。
国外居住扶養親族が日本人 | 国外居住扶養親族が外国人 |
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・戸籍の附票の写しなど国または地方公共団体が発行した書類 ・国外居住親族のパスポートのコピー | ・外国政府または外国の地方公共団体が発行した書類(海外居住親族の氏名・生年月日・住居や居住の記載があるもの) |
戸籍の附票の写しとは、本籍地の市区町村において戸籍がつくられてから現在に至るまでの住所の履歴が記載された証明書そのものをいいます。「写し」とありますが、コピーという意味ではありませんので注意しましょう。パスポート以外は、原本が必要です。
また「送金関係書類」とは以下の書類を指し、いずれも原本ではなくても、コピーで問題ありません。
- 金融機関が発行した書類またはそのコピー
- クレジットカード発行会社などが発行した書類またはそのコピー
参考:『令和 5 年1月以後に非居住者である 親 族について扶養 控 除等の適用を受 け る 方 へ』国税庁
民間の各種保険料に対する控除
個人が自己判断で加入する生命保険や個人年金保険、介護医療保険や地震保険などの各種保険料控除を適用するためには、保険料の控除証明書の原本が必要です。控除証明書は、従業員が契約している保険会社より発行されます。
ただし、保険会社から電子データとして控除証明書を受け取る場合は、原本の提出は不要です。
国民年金の保険料に対する控除
従業員が入社前に、本人や配偶者・扶養親族の国民年金保険料を支払っていた場合、保険料は全額、年末調整の控除対象です。
控除を適用するには、日本年金機構から送付される『社会保険料(国民年金保険料)控除証明書』を原本で提出してもらう必要があります。
社会保険料(国民年金保険料)控除証明書は、通常10月下旬から11月上旬にかけて随時発行され、従業員の自宅に郵送されます。従業員がマイナポータルを利用すれば、電子データとして受け取ることも可能です。
参考:『令和5年分社会保険料(国民年金保険料)控除証明書の発行について』日本年金機構
小規模企業共済/個人型年金(iDeCo)加入者掛金
従業員がiDeCo(個人型確定拠出年金)の掛け金を支払っている場合は、小規模企業共済等掛金控除が適用されます。
また、従業員が入社前にフリーランスや個人事業主として働いており、本年中に小規模企業共済に加入していた場合も同様です。
年末調整で控除を適用するには、掛け金の額が記載された掛金払込証明書を原本で提出してもらう必要があります。
住宅ローン控除
年末調整で控除を適用するには、借入先の金融機関が発行する『住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書』や、税務署で発行される『年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書』の原本が必要です。
従業員が自宅を購入あるいはリフォームする際に住宅ローンを借りた場合は、住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)が適用されます。
ローンを組んだ1年目は従業員自身が確定申告をしますが、2年目以降は会社側が年末調整で処理します。
年末調整のための『特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書』は、国税庁のホームページでも入手できます。
原本でなくコピーでよい書類の例
年末調整において原本または定められた電子的なデータでないと控除が受けられない書類がある一方で、コピーでもよい書類もあります。具体的には、勤労学生控除や障害者控除に必要な以下の書類です。
控除の種類 | コピーの書類 | 用途・目的 |
---|---|---|
勤労学生控除 | 学生証のコピーまたは在学証明書 | 従業員が学生であることを証明するため |
障害者控除 | 障害者手帳のコピー(障害者手帳申請中の場合は、医師の診断書で代用可能) | 従業員自身または配偶者や扶養親族が障害者であることを証明するため |
年末調整で書類の原本はなぜ必要? コピーはNG?
年末調整に関する書類は、会社の納税地を管轄する税務署に提出します。従業員から受け取った控除証明書や払込証明書などは原則として原本で受け取り、年末調整書類の作成後は会社で保管するのが決まりです。コピーでの提出は認められておらず、原本がないと手続きは進められません。
従業員によっては「紙の控除証明書をスキャンして、データとして提出したい」と申し出てくることもあるかもしれませんが、法令上、控除証明書を電子データとして提出するためには以下の要件を満たす必要があります。
- 証明書に記載すべき事項が記録されている
- 発行者の電子署名およびその電子署名に係る電子証明書が付されている
参照:『年末調整手続の電子化及び年調ソフト等に関するFAQ(令和5年 11 月改訂版)』国税庁
紙の書類をスキャンしたデータは、以上の2の要件を満たさないため、電子データとして受け取ることはできません。
年末調整を電子化すると書類の原本は不要?
2020年より、年末調整における控除証明書等を電子データとして提出することが可能となりました。各保険会社から発行された控除証明書データを活用すれば、原本の提出は不要です。
従業員が紙の証明書類をもとにシステムで申告書を作成・提出する場合のように、一部を電子化するケースでは、原本を提出してもらう必要があります。
また、海外居住親族に関する親族関係書類や送金関係書類などは、電子データでの提出が認められていないため注意が必要です。
参照:『年末調整手続の電子化及び年調ソフト等に関するFAQ(令和5年 11 月改訂版)』国税庁
会社における原本の保管方法
年末調整を電子化しても、手続きの仕方や書類の種類によっては原本の提出が必要となります。
会社で原本を保管する場合は、各書類を従業員ごとにファイルにまとめ、社員番号を記載するといった方法があります。書類の保管方法は会社によって異なるため、自社のルールに従いましょう。
年末調整で書類の原本がない・未提出・間に合わない場合
電子データでの提出が可能なケースを除き、年末調整に必要な書類の原本がない場合は、年末調整で控除を適用できません。多くの場合は再発行が可能なので、従業員から「原本を紛失した」と相談を受けたときは、再発行手続きをするように伝えましょう。
年末調整までにどうしても原本を用意できない場合は、従業員本人が必要書類をそろえて確定申告をする必要があります。
年末調整に関連する書類の保管方法
年末調整に関する書類は、原則として7年間保管する義務があります。保管期間の起算日は、書類の提出期限が属する年の翌年1月10日の翌日です。
なぜ書類を7年間も保管するのかというと、不正行為があった場合の所得税の時効が申告期限の翌日から7年であり、税務署から提出を求められる可能性があるためです。企業は必要な書類をいつでも取り出せるよう、管理体制にも気を配る必要があります。
保管方法は紙とデータで異なり、自社の環境や従業員数にあわせて適切な方法を選ぶことが大切です。
たとえば、紙で保管する場合は、書類の種類や年度ごとに仕分けして、ファイルやフォルダにまとめていくといった方法があります。縦に積み重ねるのではなく、横に並べるようにすると、税務署から提出を求められた際も取り出しやすいでしょう。
データで保管する場合は、書類の種類や年度ごとにフォルダを作成して保管するのがおすすめです。提出要請があったときにすぐに応じられるよう、検索性を確保することが重要です。
年末調整の電子化で、原本を管理する手間を削減
年末調整で従業員から提出してもらう書類には、原本の提出が必要なものもあります。コピーやスキャンしたデータでは手続きを進められない場合もあるため、原本を提出するものについては従業員に周知しておくことが大切です。
年末調整を電子化すれば、各種保険会社や金融機関から発行された控除証明書を電子データとして受け取ることもできます。原本を管理する手間はもちろん、年末調整の手続き自体の簡略化にもつながるため、検討してみましょう。
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