予実管理とは? 目的や手順、分析のコツを徹底解説

予実管理とは、企業の予算と実績を管理することです。
- 「予算を立てても、実績と差が大きくて分析に時間がかかる」
- 「予実管理をやってるけど、作業が属人化していて効率が悪い」
予実管理は、企業の成長に欠かせない業務です。しかし「予算と実績のズレが大きい」 「データ管理が煩雑」 「経営層への報告が大変」 といった課題に直面している方も少なくないでしょう。
本記事では予実管理の基本から、経営目標達成に向けて役立てる手順、分析のコツまで徹底的に解説します。予実管理の精度を上げ、業務負担を軽減するためにお役立てください。

予実管理とは企業の成長に欠かせない予算・実績の管理手法
予実管理とは「予算実績管理」の略称で、予算と実績を比較して分析することです。
予実とは、予算と実績を意味します。経営目標を立てるだけで途中経過をチェックしなければ、目標に向かって進んでいるのか、それとも改善すべき点があるのかを把握できません。
予実管理では、1週間・1か月などあらかじめ設定した期間ごとに、予算と実績を管理します。予算には目標とする売上や人件費、諸経費などを設定しておき、実績を集計したうえで予算比を分析します。
予実管理の重要性と活用シーン
予実管理で集めたデータは、経営目標の達成度を確認するだけでなく、来期の予算設定にも活用できるでしょう。
また、予実管理はすべての部署や部門で実施する必要があります。予算と実績に差異がある場合は、問題や課題を洗い出して対策を検討します。
予実管理で蓄積されたデータは、自社の経営状況の推移や、強みと弱みの分析にも役立つでしょう。
予実管理と予算管理の違い
予実管理と似た言葉に「予算管理」があります。
予算管理とは、年度ごとに策定する企業の予算計画のことです。過去の売上や市場動向に基づいて予算計画を立て、期末の実績が出たタイミングで計画と実績を比較・分析します。
予実管理と予算管理は、どちらも「目標達成のために予算と実績を比較・分析すること」が目的であるものの、取り組むサイクルが異なります。
予実管理 | 1週間・1か月ごとなど短期間のサイクル |
予算管理 | 3か月ごとなど中期的なサイクル |
つまり予実管理は、予算管理を確実に行うために必要なプロセスです。
予実管理はなぜ必要? 3つの理由と経営に与える影響
もし予実管理が適切に行われなかったら、経営はどうなるのでしょうか。以下のようなリスクが考えられます。
- 経営の見通しが甘くなり、資金繰りが悪化する
- 目標と現実のギャップが生まれる
- 判断が遅れる
つまり、予実管理が必要な理由は以下の3つが挙げられます。
- 経営上の課題やリスクを早期発見できる
- 数値目標の設定や見直しをしやすくなる
- 健全な経営状況を証明しやすくなる
経営上の課題やリスクを早期発見できる
予実管理によって集計したデータから、経営活動における課題を迅速に洗い出せます。経営の現状や問題、今後起こり得る経営リスクなどを把握できることが、予実管理が必要とされる理由です。
予実管理で得られる正確なデータや分析結果に基づき、迅速な経営判断を下せるでしょう。

数値目標の設定や見直しをしやすくなる
予実管理によって集計されたデータは、問題や課題の洗い出しだけでなく、過去のデータをもとに来期の予算計画を立てるのにも役立ちます。現状に合わせて適切な予算を設定できれば、部門や部署ごとに数値目標の設定や見直しがしやすくなります。
予実管理を通じて現状を把握し、合理的な判断を行うことが、安定した経営にもつながるでしょう。
健全な経営状況を証明しやすくなる
予実管理によって集計されたデータは、企業が健全な経営を行っている証明にもなります。
とくに新規事業の提案や金融機関への融資申請を行う際に果たす役割は重要です。
予実管理をもとに出した根拠を提示して交渉やプレゼンテーションを進められるため、社内外からの信頼を得やすくなるでしょう。
予実管理の具体的な手順・流れ
予実管理を実践するうえで知っておきたい具体的な手順を詳しく解説します。
- 予算目標を設定する
- 予算を決める
- KPI(中間目標)と実施スケジュールを決定する
- 月次決算を実施する
- 課題や問題点への対策を実行する
1.予算目標を設定する
予実管理の目的は、実績を予算目標に近づけることです。そのため、予実管理はまず予算目標の設定から始めます。
予算目標を設定する際は、企業の成長を見据えながらも、現実的に達成可能な目標設定です。
実現が難しすぎる目標では、比較や分析を行う意味がありません。
あくまでも、「経営目標や経営戦略に基づいて着実に努力を積み重ねれば達成できる目標」を意識しましょう。
2.予算を決める
予算目標が決まったら、次は過去の実績を参考にしながら予算を設定します。
繁忙期や閑散期がある業種の場合は、時期による差を踏まえて現実的な予算を検討しなければなりません。自社の人材リソースや状況に合わせた予算を決めましょう。
3.KPI(中間目標)と実施スケジュールを決定する
予算目標と予算の設定が完了したら、予算目標を実現するための具体的な行動指針となる「KPI(中間目標)」と、いつまでに目標を達成するかスケジュールを定めます。
企業全体の目標だけに着目すると、部署やチームごとの詳細な予算管理や課題が把握できなくなります。
そのため、企業全体の予算目標をもとに、各部門やチームの予算目標に落とし込むことが大切です。
KPIの設定は、目標達成の進捗が可視化され、目標達成に向けた軌道修正を実現できるでしょう。
4.月次決算を実施する
予算目標や予算の設定、そしてKPI(中間目標)と実施スケジュールが決まったら、月次決算を行います。
月ごとに決算を行うことで、予算と実績の乖離が発見しやすくなり、予実管理の制度が向上します。
月次決算では、「売上」「売上原価」「販管費」「営業外損益」といった区分ごとに、予算と実績を比較・分析します。
保険料や減価償却費のように年間を通して計上する費用は、月ごとに配分して計算しましょう。
また、月次決算の内容はできる限り多くの従業員に共有し、経過や進捗状況に加え、今後の努力目標も把握させることが重要です。
5.課題や問題点への対策を実行する
月次決算の結果がまとまったら、設定した予算と実績の比較を行います。
目標の営業利益と実際の利益に差が生じている場合は、その原因を分析し、速やかに対策を立てて軌道修正をしましょう。
分析の際は、売上額ではなく、販管費を差し引いた営業利益に着目することが大切です。
どれだけ売上が上がっていても、多額の経費がかかっていれば、赤字になってしまいます。実際の予実差を確認するように意識しましょう。
予実管理を成功させるポイント
予実管理を成功させるポイントを5つ紹介します。
- 企業の実情に合わせて適切な予算を設定する
- 短期的・定期的に課題を発見・改善する
- PDCAサイクルを使う
- 予実管理表を使用する
- 細かな数字を追いかけすぎない
企業の実情に合わせて適切な予算を設定する
予実管理を行う際には、適切な予算設定が必要です。
予算目標は、高くても低すぎても適切ではありません。
無理な目標や簡単すぎる目標では、従業員のモチベーションや生産性が低下してしまいます。
適度な高さの達成可能な予算を設定すれば、従業員は高い意識を持って目標達成に向けて業務に取り組めるようになるでしょう。その結果、企業全体の成長も見込めます。
短期的・定期的に課題を発見・改善する
予算目標と実績の差異が小さいうちに軌道修正を行う方が、対応は容易です。
一方で、早期発見ができずに差異が大きくなれば、改善に時間がかかるおそれがあります。
課題が小さいうちに発見できるよう、こまめな現状分析がおすすめです。
予実管理は月次で行われるケースが多いものの、可能な限り週ごとに実施するのが望ましいといえます。
また、予実管理を定期的に行うタイミングを決めておくことも大切です。
PDCAサイクルを使う
予算目標と実績の差異を把握できたら、その差異を極力少なくするためにPDCAサイクルを実践してます。
PDCAサイクルの構成は、「Plan(計画)」「Do(実行)」「Check(評価)」「Action(改善)」の4段階です。具体的には、設定した予算を実現させるために行動し、達成できているかを比較・分析した結果をもとに、明らかになった課題をフィードバックして改善策を実施します。
PDCAサイクルを繰り返すことで、精度の高い予算設定が可能となり、自社の課題を早期に発見できるでしょう。
予実管理表を使用する
予実管理表を作成すると、予算や実施スケジュールが可視化でき、効率的に予実管理を実践できます。
エクセルのように使い慣れたツールを活用すれば、比較的簡単に運用できるでしょう。ただし、予実管理表を作成するためには、明確な予算の設定や適切な予算値が必要です。
細かな数字を追いかけすぎない
予実管理を実践していると、予算と実績の差異がどうしても気になりがちです。しかし、細かな数字ばかりに気を取られると、注力すべき業務がおろそかになるおそれがあります。
予実管理の目的は、現状を把握して経営改善に向けたプランを立て、実行することです。
予算と実績の比較はあくまでも手段に過ぎないので、差異の分析ばかりを重視してしまわないように気をつけましょう。
予実管理表の作成方法は3つ|効率化するには?
予実管理を適切に実践するためには、予実管理表の作成が必要不可欠です。
予実管理表は、次の3つの方法で作成できます。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
エクセル | コストがかからず、自由度が高い | シートが増えると管理が煩雑に |
SFA | 生産性向上・業務効率化 | 入力コスト、社内への定着工数 |
予算管理システム | 予実管理専用、多機能 | 導入コスト |
エクセルで作成する
エクセルは、多くの企業で導入されているツールであり、コストをかけずに運用できることがメリットです。自由度も高く、自社に合った予実管理表を作成できます。ただし、管理していくうちにチェックすべきシートが増え、数式も複雑になって管理しにくくなってしまいます。
SFA(セールス・フォース・オートメーション)を活用する
SFAとは「Sales Force Automation」の略語で、営業支援システムのことです。顧客情報や案件ごとの進捗状況など、営業活動に関連する情報をデータとして蓄積・共有することで、生産性向上や業務効率化をはかれます。ただし、顧客情報や商談記録などのデータを入力するための入力コストがかかり、システムが社内に浸透するまでに時間がかかる点が大きな課題です。
予算管理システムで作成する
予算管理システムとは、予算と実績を管理する専用システムです。予算計画からデータの集約・分析、業績予測、レポート作成などの機能を兼ね備えており、予実管理を効率よく行えます。担当者の業務負担軽減も期待できます。
まとめ|適切に予実管理を実施して企業の課題を解決
予実管理の目的は、単なるデータの集計や分析ではなく、予算目標と実績に差異があるかを確認して軌道修正を行うことです。適切に予実管理を行えば、着実に予算目標へ近づき、企業の抱える課題も発見しやすくなります。
ツールやシステムの活用は、予実管理を効率的に進められます。本記事で紹介したPDCAサイクルを回りながら、企業の課題を早期解決していきましょう。
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