形骸化とは【意味を簡単に】社内の例、古くなった社内制度を改善するには?

形骸化(けいがいか)とは、形だけが残り、本来の意味や役割を果たさなくなったことを指します。たとえば、形だけの人事評価制度、現実に合わないルール、活用されない研修制度など形骸化した仕組みに心当たりはないでしょうか。
人事担当者や経営層にとって、形骸化した制度の見直しは重要な課題の一つです。本記事では、形骸化の意味や具体例を解説し、形骸化を防ぐための改善策を紹介します。
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形骸化(けいがいか)の意味を簡単に解説
形骸化(けいがいか)とは、形や骨組みを残すという意味を持つ言葉です。
一般的には、事柄や行為、ルールなどが本来の役割や目的を失い、実際には機能しなくなることを指します。形だけ残っているものの、本来の機能や意義がなくなっています。
ビジネスシーンでの形骸化の意味と具体例
ビジネスにおける形骸化とは、一度決めたルールや制度が、時が経つにつれて本来の役割や重要性を失い、形式上残っているような状態です。
具体的には以下のような状態を指します。
- 形骸化した人事評価制度→評価の基準が不透明で、昇給や昇進と関連していない。
- 形骸化した会議→ 目的が不明確で、時間だけ取られる定例会
- 形骸化した業務マニュアル→更新されず、実際の業務フローとかけ離れている
形骸化した仕組みは、企業の生産性や従業員のモチベーションに悪影響があるため、本来であれば放置することは望ましくありません。

形骸化の使い方・例文
形骸化は一般的にネガティブな文脈で使われます。
ビジネスシーンでの例文 |
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・この会議は毎週開催されているが、実際には何も決まらず、完全に形骸化している ・従業員のモチベーション向上のために導入した評価制度が、形骸化しており、正しく機能してません ・業務報告が形骸化している |
ビジネスシーンでは「ルール」「制度」「会議」「業務プロセス」などと一緒に使われることが多くあります。
とくに定例会議や1on1ミーティングが形骸化していませんか。見直しを検討するなら以下の資料をぜひお役立てください。

社会・日常生活での例文 |
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・地域の防災マニュアルが形骸化しており、実際の災害時に役立たない ・校則が時代に合わず、形骸化しているため、見直しが求められている ・公共施設の予約ルールが形骸化していて、実際には誰も守っていない |
形骸化と混同しやすい言葉【類語・対義語・関連語】
形骸化には、似た意味を持つ類語や反対の意味を持つ対義語があります。混同しやすい言葉でもあるため、それぞれの意味をまとめて紹介します。
形式化
形式化は、形だけ残った状態を指す言葉です。形骸化と同じような意味合いですが、少しニュアンスが異なります。
形式化は、行為などが正式な形で行われたり、手続きにしたがったりする重要性を伝えるために使用します。
形骸化は、ルールや手続きそのものが、意味や役割を失って形として残っているだけの状態を意味する言葉です。
死文化
死文化とは、役割を果たさなくなり、効力を持たない文章を指します。主に法律や規則に対して使われます。
たとえば「社内の勤怠ルールが死文化している」という使い方です。
文章に関連した内容であれば、死文化は形骸化と同様の意味合いとして解釈できます。
弱体化
弱体化とは、組織の力や機能が衰退していることや勢いが衰えて弱くなることを指す言葉です。
「経営陣のリーダーシップが弱体化している」と表現する場合、影響力がなくなっているという意味です。
組織に関する限定的な意味合いで使われ、形骸化に言い換えられる場合もあります。
官僚化
官僚化とは、組織が硬直化し、柔軟性を失って非効率になることを指す言葉です。
たとえば、プロジェクトチームなどを発足しても、機能しておらず活動できていない状態です。官僚化した社内プロセスは、=承認フローが複雑化し、意思決定が遅いことを指します。
組織に関する限定的な意味合いで使われますが、形骸化と言い換えることも可能です。
有名無実化
有名無実化とは、名前はあっても実質は効果を発揮していないことを意味する言葉です。
たとえば、昔設定したルールが存在としては残っていても、意味や価値を持っていない状態を指します。
「新卒採用の資格要件が有名無実化している」という場合、実質的に適用されていないことになります。
残された枠組みは、有名無実化は名目(名前)、形骸化は形ですが、ほとんど同じ場面で使われると考えてよいでしょう。
形骸化する3つの理由
企業のルールや制度は、なぜ形骸化してしまうのでしょうか。主な理由は以下の3つが挙げられます。
- ルールや制度の目的が終了しているから
- 目的が理解されていないから
- 制度運用が従業員にもたらす影響が小さいから
形骸化の理由を知ることで、具体的な対策が立てやすくなるため、具体的に解説します。
ルールや制度の目的が達成しているから
形骸化する理由の1つめは、制度が本来の目的を遂行したあとも、見直されずに継続されていることです。
ルールや制度を設定した当初は、目的を達成するために運用を始めます。課題が解決したあとも見直されないまま、制度だけが形として残ってしまうのです。
社内の決定例会議 | 当初は情報共有のために必要だったが、今はとくに何もなく、ただの習慣になっている |
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古い勤怠ルール | かつては必要だったが、テレワークが定着し、現在の働き方には合わない |
制度の見直しが行われないと、制度やルールは形態骸化が進んでしまいます。
目的が理解されていないから
形骸化する理由の2つめは、制度やルールの目的が十分に理解されていないことです。
新たな制度が導入された際、上司に言われたまま取り組んだという経験をしたことはありませんか。
研修制度 | 「とりあえず受けろ」と言われた。学ぶ目的がわかっていない |
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業務報告 | 報告が自分の仕事にどんな関係があるのか理解できていない |
従業員が「なぜ必要なのか?」を理解していないと、次第に形骸化していきます。時間が経ち、惰性で取り組むようになってしまうのでしょう。
目的と目標の違いはご存じですか。図で解説した記事は以下よりご確認ください。
制度運用が従業員にもたらす影響が小さいから
形骸化する理由の3つめは、制度が従業員にもたらす影響が小さいという理由です。
たとえば、制度を運用することで従業員が得られるメリットがなく、業務にとって重要でないケースです。
表彰制度 | 賞をいただいても特に評価や昇進に影響はなく、意味を感じない |
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業務マニュアル | 実際の業務と合わず、誰も参考にしなくなっている |
従業員の関心や意欲を集められないような制度だと、やがて形骸化してしまいます。
企業で起こり得る形骸化の例
企業でも、さまざまなシーンで形骸化が起こります。「自分の会社でも起きているかも?」と心当たりがある方もいるのではないでしょうか。6つの具体例を紹介していきます。
- 1on1ミーティングが惰性で実施される
- 面白みのない企画が提出される
- 定例会議で議題がない
- 人事評価や面談の時期になると意欲が低下する
- 企業の福利厚生が機能していない
- 目標設定が目的を見失う
1on1ミーティングが惰性で実施される
1on1ミーティングは、上司と1対1で話す機会です。
本来、コミュニケーションを深める、目標に向けた改善点を話し合う目的があります。
1on1が形骸化してしまうと、とくに話す内容がなく、意味のない雑談だけで終わることもあります。
成長のための議論や目標達成のための意見交換の機会が実施されず、意味のない時間になってしまう可能性もあります。
▼1on1ミーティングが形骸化していると感じるなら以下の資料をぜひお役立てください。

面白みのない企画が提出される
企画案を毎月1人1案提出することを制度化している企業では、提出自体が目的となり、制度が形骸化している場合があります。
本来であれば、熟考された案やトレンドを意識した案が出されることを期待しているでしょう。
企画案の提出が形骸化すると、提出する慣習だけが残り、まったく中身のない案が出されるようになります。
「とにかく期日までに企画案を出してしまおう」というモチベーションになっている従業員もあらわれ、目的や意味が完全に失われています。
定例会議で議題がない
定例会議は、チームや部署などで業務進捗や課題点などを共有しあうために定期的に実施されます。
定例会議が形骸化すると、ただの顔合わせになり、有効な情報共有の場になりません。
また、議題を募るとしても、有意義な議題案が出てこないこともあります。
人事評価や面談の時期になると意欲が低下する
人事評価は仕事への姿勢や成果を評価してもらうための重要な機会です。
人事評価は待遇にも影響するため、本来は全従業員が緊張感を持って臨むはずです。
また、人事面談も組織の悩みや仕事に関する意見など、日頃話せない点をじっくり伝えられる貴重な場です。
人事制度が形骸化すると、義務だと感じながら実施するため、意味をなしません。
事務的な対応になってしまうことで、さらに重要性を感じられなくなるなど悪循環が生まれます。
企業の福利厚生が機能していない
企業では、独自の福利厚生として、ノー残業デーや全社休業日などを設けていることも少なくありません。福利厚生の制度が形骸化すると、本来仕事をしなくていいはずが、残業していたり出勤していたりしてしまう傾向にあります。
福利厚生は、 従業員の働きやすさを向上させ、企業の魅力を高めるために導入されます。特別休暇やスキルアップ補助手当などを設けている企業も少なくありません。
福利厚生が形骸化すると、制度があるだけで、実際には活用されていない状態です。たとえば、「ノー残業デー」が形骸化し、本来残業してはいけない日に実際は残業しているということになります。
目的を見失った目標設定・目標管理
個人と企業の成長を促進し、明確な方向性を示すために目標を設定、管理している企業も多いでしょう。
しかしMBOやOKRなどの運用が形骸化すると、目標を立てることや達成することだけに注力する社員もあらわれます。
目標ではなく本来の「目的」がおろそかになってしまうと、具体的なアクションがともなわず、企業も本人も成長が止まってしまいます。
社内の「形骸化」を防ぐ方法・対策
企業での形骸化を防ぐには、目的を明確にし、定期的な見直しや周知をすることが重要です。
以下の具体的な対策を実施することで、形骸化を防ぎ、ルールや制度を実効性のあるものにしていきましょう。
- 目的を明確にする
- 定期的にアナウンスする
- 定期的に見直しをする
- 会議や面談の役割を考える
目的を明確にする
形骸化を防ぐために、ルールや制度の「目的」を明確にします。 形骸化の原因の一つは、目的が見失われ、軽視されるからです。意識的に目的や進捗を振り返る機会を設けましょう。
目標の振り返りには目標管理機能が充実したタレントマネジメントシステムの活用がおすすめです。進捗をグラフで可視化することで、本人のモチベーションアップにもつながります。
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▼目標管理に課題があるなら以下のシートもご活用ください。

定期的にアナウンスする
形骸化を防ぐために、ルールや制度の定着にも力を入れましょう。導入するだけでは浸透しないことがほとんどです。
従業員が目的を理解し、継続的に意識する仕組みをつくることが重要です。常に目的を確認できる環境や機会があれば、従業員も忘れずにいられます。
たとえば福利厚生は、活用状況を毎月社内で共有し、利用促進をはかるのも一案です。
とくに重要な社内制度やルールを運用する際は、繰り返しアナウンスしましょう。従業員からのフィードバックを積極的に求め、双方向のコミュニケーションを促進するとさらに効果的です。
定期的に見直しをする
形骸化を防ぐためには、ルールや制度そのものを、タイミングを決めて定期的に見直す必要があります。
変化の激しい現代において、古い常識にとらわれると、形骸化が進んでしまいます。
従業員の意見を取り入れ、現場に即した制度・ルールに改善しましょう。必要に応じて廃止を決断する勇気も必要です。
会議や面談の役割を考える
会議や面談が形骸化しないために、本質に立ち返って「本当に必要なのか?」を考えましょう。会議の数や頻度が多すぎる場合は、減らす決断も必要です。
会議の目的が意見交換なのか、課題解決なのかはっきりさせ、有意義な時間になるようにしましょう。
参加者に「会議で得たもの」を発表してもらうなど、定期的に評価する方法もあります。
まとめ
形骸化は、本来の役割や目的を失った状態になることを意味します。
企業においても、当初は力を注いで立てた社内制度やルールが、今では効力を持たず形骸化してしまった例もあるのではないでしょうか。
形骸化した制度やルールを放置すると、従業員のモチベーション低下や業務の非効率化につながります。
形骸化を防ぐためには、目的を明確にし定期的に見直す仕組みづくりが重要です。本記事を参考に「形骸化しない仕組みづくり」を進め、実効性のある制度運用を目指しましょう。
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