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内製化とは? 意味とメリット・デメリット、成功・失敗を分けるポイント

内製化とは? 意味とメリット・デメリット、成功・失敗を分けるポイント

内製化とは、外部に委託していた業務やプロセスを、自社内で処理するように切り替えることを意味します。業務の効率化やコスト削減が求められる中で、内製化は検討すべき戦略となっています。

しかし、内製化は課題も多く失敗例も存在するため、慎重に検討しなければなりません。

本記事では、内製化の意味や目的とメリット・デメリット、成功と失敗を分ける判断のポイントを解説します。システムの内製化に向けたヒントとしてお役立てください。

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    内製化の意味とは

    内製化の意味とは、外部に委託していた非コア業務や、システム開発・運用の業務を、自社のリソースだけで行うことです。

    デジタルマーケティングや製品の設計・開発など、さまざまな分野で取り組まれるケースが増えています。

    内製化により、自社の競争力が強化できるとともに、コスト削減やセキュリティリスク低減が実現できます。

    言い換えられる言葉

    内製化の意味から考えると、文中で次の言葉に言い換えられます。

    • 外部委託をやめる
    • 自社生産・自社開発・自社運用に切り替える
    • 脱外注
    • インハウス化
    • 社内リソース活用
    • 社内業務へ移行

    社内外に依頼していた業務の一部または全部を、社内に移行するという意味合いがあります。

    内製化が注目されている理由

    内製化が注目されるようになった背景として、2018年9月に経済産業省が発表した『DXレポート』があります。

    DXレポートでは、日本企業が直面している「2025年の崖問題」が提起されました。2025年の崖とは、老朽化したITシステム(レガシーシステム)を使用し続けると、将来的に大きな経営リスクが生じてしまうことを指摘した概念です。

    DXレポートによると、企業がデジタル技術を活用して競争力を維持し続けるためには、システムや業務の内製化が重要であるとされています。外部に依存している状況では、急速に変化する市場環境に対応しきれず、企業の競争力が低下するリスクが高まります。

    参考:『DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~』経済産業省

    内製化の目的

    内製化には、大きく分けると以下2つの目的があります。

    • 業務の効率化
    • 経費の削減

    内製化を進めるには主目的を理解し、価値創造につなげることが大切です

    業務の効率化

    内製化の目的として、業務効率化が挙げられます。

    外部委託では依頼内容の調整や変更に時間がかかり、業務が遅延する場合も多くあります。

    内製化によって企画立案や実行などの業務が社内で処理できるようになれば、迅速な意思決定が可能となり、業務のスピードアップが実現します。

    内製化を進めることで、外部とのやり取りが不要になり、社内で迅速に問題解決ができるようになるため、トラブルへの対応もスムーズに進むでしょう。

    経費の削減

    経費の削減も内製化の大きな目的の一つです。

    外部委託・アウトソーシングには費用がかかり、特にシステム開発やDXなど専門性が高い業務では、委託先に支払うコストが大きくなります。

    内製化を進めれば、外注費を削減し、長期的にかかる金銭的コストを抑えられるでしょう。

    内製化のメリット

    内製化のメリットは、主に以下5つが挙げられます。

    • スピーディーに対応できる
    • コストを削減できる
    • 業務ノウハウを蓄積できる
    • 臨機応変に対処できる
    • セキュリティ性が向上する

    以上のメリットを理解すると、内製化を戦略的に効率よく進められるため、詳しく解説します。

    スピーディーに対応できる

    内製化のメリットは、業務を迅速に進められる点です。

    外部委託では、業務の修正や変更が必要な場合、委託先との連携や契約内容の調整が生じるため、時間がかかることも少なくありません。委託先の状況によっては、対応が遅れるリスクもあります。

    内製化を進めると、すべての業務が社内で完結するため、変更や修正を素早く実行できます。業務の状況や優先度に応じた対応が可能となり、よりスピーディーで柔軟な業務遂行が期待できます。

    コストを削減できる

    内製化は、コストを削減する手段の一つです。外部委託にはどうしても費用がかかり、内製化を進めれば外注費を削減でき、長期的には企業全体の経費を抑えられます。

    また、社内の業務プロセスを最適化し、無駄な経費の発生を防ぐことで、さらなるコスト削減も期待できます。

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    業務ノウハウを蓄積できる

    内製化を進めることで、業務に関する知識やノウハウを社内に蓄積できるというメリットがあります。

    外部委託では、専門知識や技術を持つ業者に業務を任せるため、企業内部にノウハウが十分に蓄積されにくい傾向があります。外部委託を長期間続けると、業務プロセスやシステムがブラックボックス化し、全体を把握しづらくなるリスクも否めません。

    内製化をすれば、自社の従業員が直接業務に関与するため、過程で得られる知識や経験が組織内に蓄積されていきます。

    業務プロセスの透明性が高まり、長期的に見ると従業員の業務理解が深まるため、実践的なノウハウを継続的に活用できる体制が整います。

    臨機応変に対処できる

    内製化のメリットには、緊急事態への対処も挙げられます。

    外部委託の場合、トラブルや予期せぬ自体が発生した際、委託先との調整が必要で、解決まで時間を要します。

    一方、内製化されていれば、必要な対応をすぐに実行できます。急なスケジュール変更や緊急の修正作業も、組織内で優先順位を判断し、柔軟に人員を配置することで素早く対処できます。

    市場の変化や新たなビジネスチャンスに対しても、自社での意思決定のみで臨機応変に対応を変えられるでしょう。

    セキュリティ性が向上する

    内製化のメリットとして、情報セキュリティの強化も挙げられます。

    外部委託では、業務遂行上必要となる機密情報や顧客データを委託先と共有せざるを得ません。情報漏えいのリスクが生まれ、委託先のセキュリティ対策が自社の基準に満たない場合、リスクはさらに高まります。

    特に複数の委託先がかかわると、各社のセキュリティレベルの違いや管理体制の差異が、新たな脆弱性を生む可能性があります。

    内製化を進めれば、すべての情報管理を自社の管理下に置くことが可能です。データへのアクセス権限を社内で一元管理し、セキュリティ基準を自社の規定に沿って設定できます。

    内製化のデメリット

    内製化には課題やデメリットもあり、以下5つが挙げられます。

    • 人材育成が難しい
    • 初期コストがかかる
    • コスト意識が薄れる
    • 業務の質が落ちるおそれがある

    内製化のデメリットを理解しておくと、より適切な意思決定ができるため、詳しく解説します。

    人材育成が難しい

    内製化における課題の一つは、専門人材の育成と確保の難しさです。

    特に高度な技術やスキルが必要な業務を内製化する場合、人材育成には多大な時間と労力がかかります。

    長年外部委託に依存してきた企業では、そもそも社内に指導する人材が不在であることが多く、育成の土台づくりから始めなければなりません。

    既存の社員を一から教育したり、即戦力を採用する必要があるでしょう。習得したスキルを継続的に向上させる研修の実施も求められます。

    内製化は、すぐに実現できない取り組みであり、人材育成が内製化を遅らせる要因となる場合があります。

    初期コストがかかる

    内製化を進める際は、導入にかかる初期投資と継続コストも課題です。

    まず、設備や新たなツールを導入したうえで、インフラを整備しなければなりません。サーバーやソフトウェアの導入が必要な場合もあります。導入後も、保守・運用・アップデートなど継続的なコストが発生します。

    また、人材への投資コストも重要です。専門性の高い人材の採用には、相応の人件費が必要であり、既存従業員の教育にも予算が求められます。

    特に、社内にノウハウが不足している分野では、追加の支出も考慮して予算を多めに見積もっておきましょう。

    コスト意識が薄れる

    内製化を進めると、コスト意識が薄れていくリスクがあります。

    外部委託の場合、費用が明確に外注費として計上されるため、企業はコストを常に意識せざるを得ません。

    しかし、内製化によって業務が社内で完結するようになると、個々の人件費や設備費、運用費などが見えにくくなり、全体のコスト管理が難しくなります。

    業務にかかる正確なコストが把握しにくいと、知らぬ間に無駄な支出が発生する可能性があるため注意が必要です。

    業務の質が落ちるおそれがある

    内製化には、業務の質が低下するリスクも発生します。

    外部委託では専門業者が業務を担当するため、一定水準の品質が確保されている場合が多いのに対し、内製化すると品質が保障されません。

    特に専門的な分野では、技術や知識、ノウハウが不足しているため、品質が劣るおそれがあります。

    また、社内の担当者が十分なスキルや経験を持っていない場合、時間がかかり、非効率になってしまうでしょう。

    内製化の失敗と成功を分けるポイント

    内製化に取り組んだ結果には失敗例も多数あります。

    たとえば、社内のリソースやスキルの不足が原因で期待する成果が得られなかったり、プロジェクトが停止したりするケースです。

    内製化の成功と失敗を分けるポイントは、どこにあるのでしょうか。

    内製化に取り組む際のポイントは、以下の5つが挙げられます。

    • コストを試算する
    • 内製化を目的にしない
    • 内製化の対象を明確にする
    • 担当者を決める
    • 人材育成に力を入れる

    内製化のポイントを理解し、失敗を回避して成功につなげるため、内製化の5つのポイントを解説します。

    コストを試算する

    内製化を進める際は、事前にコストを綿密に試算しておくことがポイントです。各業務や状況に応じて、導入に必要な費用を具体的に見積もりましょう。

    たとえば、業務に必要な機器やソフトウェアの導入費用に加えて、システムの保守管理や運用にかかるランニングコストも長期的に試算する必要があります。

    コストを総合的に検討し、内製化が外部委託と比べて、どの程度の期間で費用対効果があらわれるかをシミュレーションしておくことが、成功につながります。

    内製化を目的にしない

    内製化を進める際には、内製化そのものを目的にしない意識が大切です。

    内製化は、企業の目標達成に向けた手段に過ぎません。

    業務効率の向上やコスト削減、あるいは社内へのノウハウの蓄積など具体的な目標を明確にしたうえで、達成手段として内製化を選択しましょう。

    業務効率の向上やコスト削減、社内ノウハウの蓄積など、具体的な目標を明確に設定したうえで、達成の手段として内製化を選択しましょう。

    内製化自体を目的にしてしまうと、本来必要のない業務まで内製化してしまい、かえって企業のリソースが無駄に消費され、失敗につながります。

    内製化の対象を明確にする

    内製化を成功させるには、まず対象とする業務を明確にします。

    すべての業務が内製化に適しているわけではないため、業務フロー全体の中で、どの工程を内製化すべきかを慎重に検討したうえで進めましょう。

    たとえば、自社のコア業務や機密性の高い業務、今後成長が期待される事業分野で内製化すると効果が期待できます。

    一方で、コストパフォーマンスが見込めない業務については、無理に内製化する必要はありません。非コア業務は外部委託をする方が効率的な場合も多く、資源の無駄を防ぐためにも、内製化の対象の選定は慎重に検討しましょう。

    担当者を決める

    内製化を統括する担当者を決めることも重要です。担当者は全体の進行管理に対する責任を負い、計画がスムーズに進むように調整しなければなりません。

    内製化を進める際は、各部署の情報を取りまとめたうえで検討しないと、正しい判断ができない可能性があります。担当者には、関係者との連携をはかり、コミュニケーションの橋渡し役として機能してもらいましょう。

    人材育成に力を入れる

    内製化を成功させるには、人材育成に力を入れることが大切です。必要な専門スキルや知識を持つ人材を確保し、社内での育成体制を整えられるかを見極めましょう。

    専門的なスキルや知識を持つ人材が不足している場合は、既存の従業員を対象にした研修やトレーニングを実施する必要があります。新たに専門スキルを持った人材を採用することも選択肢の一つです。

    人材育成を通じて、内製化に必要なスキルを社内で補完し、運用体制を確立することが、成功につながるポイントです。

    内製化は綿密な計画を(まとめ)

    内製化は、コスト削減や業務効率化、ノウハウの蓄積など、多くのメリットをもたらします。成功させるためには、自社の現状を正確に分析し、綿密な計画を立てることが重要です。

    一度にすべてを内製化するのではなく、段階的な導入をおすすめします。外部リソースとのバランスを考慮しながら、柔軟に計画を見直し、リスクを最小限に抑えながら、確実に成果を上げていきましょう。

    内製化を自社の成長に活かすために、長期的な視点を持って取り組むことが大切です。