差引支給額とは? 総支給額との違いや計算方法、マイナス控除も解説
差引支給額とは、従業員の給与から保険料や税金を差し引いた金額のことです。企業で給与計算を行う際は、必ず理解しておくべき基本知識です。
本記事では、給与計算における差引支給額について解説します。総支給額との違いや計算方法、マイナス控除についても紹介しますので、給与計算担当者はぜひ参考にしてください。
差引支給額とは
差引支給額とは、従業員に支給する実際の金額です。従業員の給与は、基本給や各種手当などで構成される総支給額から、社会保険料や税金などを控除します。
差引支給額の計算式は以下のとおりです。
総支給額-控除金額=差引支給額 |
この控除後の金額を、実際に支給する「差引支給額」といいます。差引支給額は「手取り」とも呼ばれます。
総支給額とは
総支給額とは、従業員の基本給や諸手当、残業手当などを合計した金額です。総支給額は「額面の給与」と呼ばれることもあります。従業員が欠勤や遅刻早退をした際は、マイナス(控除)する規定を設けている企業もあり、その場合は総支給額から差し引きます。
総支給額の計算式は以下のとおりです。
基本給+手当額-欠勤控除=総支給額 |
このように、総支給額と差引支給額は、社会保険料や税金など、控除されるべき金額が差し引かれる前か後かという点に違いがあります。
差引支給額における控除の内訳
差引支給額を計算する際は、総支給額から控除すべき金額をマイナスします。具体的に控除する内容を解説します。
- 所得税
- 住民税
- 労働保険料
- 社会保険料
所得税
所得税とは、納税者の1年間の所得によって算出される国税です。給与所得者の場合は、毎月の給与から徴収されるかたちで納税を行います。所得税を算出する手順は、まずは課税所得額を計算したうえで、課税所得額に所得税率を乗じます。
計算式 | |
---|---|
課税所得額 | 総支給額-必要経費-各種所得控除額=課税所得額 |
所得税額 | 課税所得額×所得税率=所得税額(控除前)課税所得額×所得税率-一定の控除額=所得税額(控除後)※2037年までは復興特別所得税(2.1%)も加算 |
課税所得に対する所得税率は所得金額によって異なります。また、一定の税額控除も反映させることで最終的な所得税が求められます。具体的には以下の表を参考に計算しましょう。
課税所得額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000~1,949,000円まで | 5% | 0円 |
1,950,000~3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000~6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000~8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000~17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000~39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円 以上 | 45% | 4,796,000円 |
住民税
住民税とは、納税者が居住する都道府県や市町村に納める地方税です。住民税は所得割と均等割で構成されます。住民税を計算する際は、所得割額の計算を正しく行う必要がある点に注意しましょう。具体的な計算式は以下を参考にしてください。
計算式 | |
---|---|
住民税 | 所得割額+均等割額(5,000円)=住民税額 |
所得割額 | 課税所得金額×税率(10%)-税額控除額=所得割額 |
労働保険料
労働保険は労災保険と雇用保険で構成されています。労災保険料は、従業員に支払う賃金総額に労災保険料率を乗じて算出します。労災保険料は、企業側が全額負担し、雇用保険料は企業と従業員がそれぞれの負担割合に応じて負担します。
計算式 | |
---|---|
労災保険 | 総支給額×労災保険料率=労災保険料 |
雇用保険 | 総支給額×雇用保険料率=雇用保険料 ※雇用保険料率は年によって変更される場合がある |
差引支給額に関連して、労災保険料は企業側の全額負担であるため、給与明細には記載されません。
社会保険料
社会保険とは、健康保険と厚生年金保険、介護保険で構成されています。健康保険料率は加入する保険団体や都道府県によって異なる点が特徴です。保険料は会社と従業員が半分ずつ折半によって支払います。社会保険料の計算は、以下の計算式を用います。
標準月額報酬×各種社会保険料率÷2=社会保険料 |
社会保険料は、年齢によって対象が異なる点にも注意しなければなりません。
参照:『70歳以上の方が厚生年金保険に加入するとき(高齢任意加入)の手続き』日本年金機構
参照:『介護保険制度について(40歳になられた方へ)』厚生労働省
差引支給額を計算する際の注意点
差引支給額を算出する際は、正しい計算が求められます。特に企業の担当者が注意すべき点について解説します。
- 正しく計算する
- 各種手当の計算に注意する
- ミスによって追徴課税になる場合もある
- 個人情報の取り扱いに注意する
- 給与計算システムやツールを活用する
正しく計算する
給与計算は、所得税や住民税だけでなく、従業員の生活にもかかわります。そのため、企業の担当者はミスを防ぎ、正しく計算しなければなりません。ミスを防ぐためには、システムを活用したり、チェック体制を強化したりしましょう。
各種手当の計算に注意する
差引支給額の算出は、各種手当を差し引くことで可能となります。特に残業手当は、割増率などを理解し、正しく計算しなければなりません。時間外労働においては、深夜手当や休日出勤なども割増率を適用させます。企業の担当者は、従業員の給与計算の際に、割増の対象になる労働が、いつ、どれくらいあるのかを正しく把握することが大切です。
ミスによって追徴課税になる場合もある
給与計算のミスなどにより、従業員から追加徴収しなければなりません。また、多く徴収してしまっていた場合は速やかに返金する必要があります。このように、給与計算のミスにより、さまざまな悪い影響が引き起こされるため、従業員とのトラブルにも発展しかねません。
個人情報の取り扱いに注意する
差引支給額の計算においては、従業員の給与額など個人情報の扱いに注意する必要があります。万が一、個人情報が漏えいしてしまった際は罰則対象になったり、従業員から損害賠償請求をされたりする原因にもなります。企業側は、従業員の給与明細や各計算の際に用いる資料などを厳重に管理しなければなりません。
給与計算システムやツールを活用する
差引支給額を含めた給与計算には、煩雑な作業が伴います。ミスが許されない業務でもあり、担当者への負担も重いといえます。そのため、給与計算の業務負担を軽減したり、ミスを防止するためには、給与計算システムやツールの活用が必須ともいえます。手作業で給与計算をしている企業は、まずはシステムやツールの導入を検討しましょう。
マイナス控除への対応
マイナス控除とは、給与に対する控除額がマイナスになることを意味する言葉です。控除は差引きする意味を持つため、控除額がマイナスになるということは、従業員にとって支給される給与が多くなります。
マイナス控除の原因は、以下の点が挙げられます。
- 年末調整における還付金
- 扶養親族の変更
- 本来の控除金額より多く差引き
- 給与計算のミス
特に、企業側のミスによってマイナス控除が起こってしまった場合は、対象従業員へ謝罪し、速やかに対応しょう。
まとめ
差引支給額とは、総支給額から各種控除を行った実際の支給額のことで、手取り金額とも呼ばれます。差引支給額を含めた給与計算は、従業員の納税や生活にもかかわる重要な業務です。給与計算担当者は、ミスを防ぐため、システムによって計算を自動化したり、チェック体制を強化したりするなどして、正しい計算を徹底しましょう。
給与計算を効率化|One人事[給与]
複雑な給与計算は、システムで自動化や効率化するのがおすすめです。
One人事[給与]は、ミスができない給与計算をWeb上で完結させるクラウドサービスです。
- 毎月の給与計算でミスを防ぎたい
- 勤怠データと一括管理したい
- 残業手当の割増率を正しく計算したい
給与計算における担当者の悩みの解決を支援します。勤怠管理システムOne人事[勤怠]と連携すると、勤怠データの取り込みがスムーズになり集計が自動化できます。
One人事[給与]の初期費用や気になる使い心地については、当サイトより、お気軽にご相談ください。専門スタッフが、貴社の課題を丁寧にお聞きしたうえでご案内いたします。
当サイトでは、年末調整の電子手続きをはじめ労務管理の効率化のヒントが詰まったお役立ち資料を、無料でダウンロードいただけます。ぜひお気軽にお申し込みください。
「One人事」とは? |
---|
人事労務をワンストップで支えるクラウドサービス。分散する人材情報を集約し、転記ミスや最新データの紛失など労務リスクを軽減することで、経営者や担当者が「本来やりたい業務」に集中できるようにサポートいたします。 |