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雇用保険料の端数の処理方法をケース別に紹介|注意点や法令上の特例についても解説

雇用保険料は給与額によって端数が生じます。企業がまとめて納付する必要があるため、1円以下の数字が生じると困惑するでしょう。そこで本記事では、雇用保険料の端数の処理方法を解説します。法令上の特例や注意点についても解説するので、参考にしてください。

※本記事の内容は作成日現在のものであり、法令の改正等により、紹介内容が変更されている場合がございます。

雇用保険料の端数の処理方法をケース別に紹介|注意点や法令上の特例についても解説
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    雇用保険制度の概要

    雇用保険とは雇用に関する強制保険制度のことです。以下の条件を満たす人は雇用保険への加入義務があります。

    • 31日以上の雇用が見込まれている
    • 1週間で20時間以上働いている
    • 昼間部学生ではない

    アルバイトや正社員にかかわらず、雇用保険への加入義務があります。

    雇用保険の目的とは?

    雇用保険制度は、労働者が失業した場合などに必要な給付を実施して、労働者の生活や雇用の安定と再就職を援助する制度です。

    代表的な制度は以下の通りです。

    • 基本手当(失業手当)
    • 雇用調整助成金
    • 傷病手当
    • 技能習得手当 など

    雇用保険に加入する事業主や従業員は、さまざまなリスクに対して支援を受けられます。

    雇用保険料の納付について

    雇用保険料は従業員と企業が双方で負担します。従業員からは毎月給与から天引きするかたちで徴収して、企業がまとめて納付します。そのため、企業は正しい雇用保険料を計算しておく必要があるでしょう。

    雇用保険料の計算方法をおさらい

    雇用保険料の計算式や保険料率について解説します。計算方法がわからない人はぜひ参考にしてください。

    雇用保険料の計算式

    雇用保険料は以下の計算式で計算します。

    雇用保険料=毎月の賃金総額×雇用保険料率

    基本給だけでなく、各種手当や賞与なども計算対象です。ただし、出張旅費や宿泊費などイレギュラー的に支給されたものは含まれません。社会保険料や税金を差し引く前の金額で計算します。

    自社の事業の保険料率を適用する

    雇用保険の計算で用いる雇用保険料率は、事業の種類により異なります。令和5年度の事業別雇用保険率の違いは以下の通りです。

    労働者負担事業主負担合計の
    保険料率
    事業主の
    負担
    失業等給付・
    育児休業給付
    の保険料率
    雇用保険
    二事業の
    保険料率
    一般6/1,0009,5/1,0006/1,0003.5/1,00015.5/1,000
    農林水産・
    清酒製造
    7/1,00010,5/1,0007/1,0003.5/1,00017.5/1,000
    建設7/1,00011,5/1,0007/1,0004.5/1,00018.5/1,000

    参照:『雇用保険料率について』厚生労働省

    労働者と企業が費用を出し合って保険料を納付しています。

    なぜ雇用保険料の計算で端数が生じるのか?

    雇用保険料で端数が生じることは珍しくありません。理由としては、雇用保険料の算出に用いる賃金総額がキリのよい数字とは限らないため端数が発生します。

    たとえば、一般事業において賃金総額が231,000円と235,700円の場合、以下の計算結果が求められます。

    賃金総額が231,000円の場合
     毎月の賃金総額×雇用保険料率
    =231,000×15.5/1,000
    =3,580.5(円)
    賃金総額が235,700円の場合
     毎月の賃金総額×雇用保険料率
    =235,700×15.5/1,000
    =3,653.35(円)

    給与が30万円などであれば端数が発生しませんが、さまざまな手当などが含まれるため半端な金額が算出されるでしょう。

    雇用保険料の端数に関する考え方

    雇用保険料の端数に関する考え方は以下の2つです。

    • 端数の取り扱いに関する法律
    • 慣習に応じた処理

    端数の取り扱いに関する法律

    雇用保険料の端数に関しては、原則的に「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律」にのっとって処理します。1円未満の金額の計算単位は「銭」および「厘」として、銭は円の100分の1を、厘は銭の10分の1として計算します。

    端数処理をまとめると以下の通りです。

    50銭未満の端数がある場合切り捨て
    50銭以上1円未満の端数がある場合1円として計算

    端数の扱いは法律で定められているため、確認を行いましょう。

    参照:『通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律』e-Gov法令検索

    慣習に応じた処理も可能

    「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律」の第3条には「特約がある場合には、この限りでない」と記載されています。慣習として続けてきて従業員と事業主がともに納得している場合は、企業の慣習に応じて処理しても問題ありません。

    つまり「1円未満は切り捨てる」という慣習があれば、継続しても問題ないということです。

    雇用保険における端数の具体的な処理方法

    雇用保険における端数の具体的な処理方法は保険料の徴収方法によって異なります。

    従業員の負担額を源泉控除で徴収する場合

    従業員の負担額を源泉控除で徴収する場合は「企業が従業員に賃金を弁済する」と考えて、賃金支払いの時点で端数を処理します。

    たとえば、賃金が235,700円の場合は以下の通りです。

    従業員負担分 235,700×0.006
    =1,414.2(円)
    企業負担分 235,700−1,414.2
    =234,285.8(円)
    ⇒企業負担分を切り上げると 234,286円(円)

    つまり従業員負担分は

    235,700−234,286=1,414(円)

    と計算できます。

    従業員の負担額を現金で徴収する場合

    現金で徴収する場合は、従業員が弁済側になると考えます。賃金が23万5,700円の場合の計算結果は以下の通りです。

    従業員負担分
     235,700×0.006
    =1,414.2(円)

    この計算結果をそのまま端数処理すればよいため、結果は1,414円です。

    雇用保険料の計算で注意したいポイント

    雇用保険料の計算で注意したいポイントは以下の3つ挙げられます。

    • 常に最新の雇用保険料率を適用する
    • ヒューマンエラーに気をつける
    • 企業として明確なルールを定める

    順番に解説します。

    常に最新の雇用保険料率を適用する

    雇用保険料率は毎年見直されているため、最新の保険料率の適用が大切です。例年は4月1日から変更されますが、2022年のように年度の途中で変更になる場合もあるため注意が必要です。

    また、新しい雇用保険料率は、改定後最初に到来する締日より支給される給与から適用される点にも注意しましょう。

    ヒューマンエラーに気をつける

    雇用保険料の計算は、1円未満の細かな金額を扱うためヒューマンエラーが発生しやすいです。特に上記のような雇用保険料の改定が絡むとミスが起こりやすいため注意しましょう。

    ヒューマンエラー防止のために以下の対策が挙げられます。

    • 複数人でのチェック
    • ミスが起こらない環境を整える
    • 給与システムの導入

    万が一計算ミスがあった場合は、誠心誠意謝罪して速やかに正しい金額を計算しましょう。

    企業として明確なルールを定める

    雇用保険の端数は、企業の慣習に応じた処理が認められています。

    しかし、企業によって処理方法が違うと、転職組の従業員に混乱をもたらす恐れがあります。そのため、従業員にきちんと説明できるよう、企業として明確なルールの選定が大切です。

    まとめ

    雇用保険はさまざまなリスクに備えられます。万が一のときに生活を守ってくれるため、企業にも従業員にも大きなメリットがあります。制度を詳しく理解しておけば、正しく運用できるでしょう。

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