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雇用保険料率は令和7年(2025)に引き上げられる? 変更のタイミングと引き下げの理由を解説

2023年雇用保険料率引き上げのタイミングは? 引き上げの理由や事業別保険料率など紹介

雇用保険料率は、雇用保険料の金額を決めるために適用される「料率(パーセンテージ)」のことです。雇用保険料率は一定ではなく、ここ数年は2023年4月に引き上げられたあと、2年間同率が維持されていましたが、2025年に引き下げられました。

本記事では、最新の雇用保険料率を紹介するとともに、保険料変更のタイミング、給与の締め日との関係、引き上げ・引き下げの理由を解説します。

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目次アイコン目次

    雇用保険料率は令和7年(2025)は引き上げなし、引き下げられた

    雇用保険料率は、令和7年(2025年)4月より前年度から引き下げられています。2017年度以来続いていた据え置き、または引き上げの措置が8年ぶりに見直されました。

    新型コロナウイルスの影響による雇用情勢の悪化を受け、財源確保のために引き上げられていた雇用保険料率ですが、景気回復の兆しを踏まえ、引き下げが実施されています。

    給与計算の担当者は、正確な給与計算のため、最新の雇用保険料率を正確に把握しておかなければなりません。

    雇用保険料率は過去、4月や10月に改定されている

    雇用保険料率は、毎年のように変更されるものではありません。現状維持の年もあれば引き上げられたり、引き下げられたりする年もあり、直近は引き上げが続いていました。

    2022年4月には、事業主負担分の雇用保険料率が0.5/1,000ずつ増加しています。同年10月には、再び事業主負担の割合が引き上げられ、従業員の負担割合も上昇しています。

    雇用保険料の引き上げは2023年4月1日にも実施され、2024年4月以降も同率で運用されるなど、ここ数年は高めで推移していました。

    参考:『令和4年度雇用保険料率のご案内』厚生労働省
    参考:『令和5年度雇用保険料率のご案内』厚生労働省

    【事業別】雇用保険料率の引き上げ・引き下げの推移

    雇用保険料率は業種によって幅を持たせて設定されており、一般事業と農林水産・清酒製造の事業、建設の事業の3つに分かれています。3業種の雇用保険料率の推移は以下のとおりです。(※2025年4月時点)

    1.一般事業が負担する雇用保険料率の推移

    労働者負担事業主負担合算した保険料率
    失業等給付・育児休業給付の保険料率雇用保険二事業の保険料率
    2022年10月1日~2023年3月31日5/1,0005/1,0003.5/1,00013.5/1,000
    2023年4月1日~2025年3月31日6/1.0006/1,0003.5/100015.5/1,000
    2025年4月1日〜5.5/1,0005.5/1,0003.5/1,00014.5/1,000

    参考:『令和6年度の雇用保険料率について』厚生労働省
    参考:『令和7(2025)年度 雇用保険料率のご案内』厚生労働省

    2022年度から2023年度にかけて、0.1%引き上げられた労働者負担率と事業主負担率(失業等給付・育児休業給付)が、2025年に0.05%引き下げられています。

    2.農林水産・清酒製造の事業が負担する雇用保険料率の推移

    労働者負担事業主負担合算した保険料率
    失業等給付・育児休業給付の保険料率雇用保険二事業の保険料率
    2022年10月1日~2023年3月31日6/1,0006/1,0003.5/1,00015.5/1,000
    2023年4月1日~2025年3月31日7/1,0007/1,0003.5/1,00017.5/1,000
    2025年4月1日〜6.5/1,0006.5/1,0003.5/1,00016.5/1,000

    一般事業と同じく、労働者負担率と事業主負担率(失業等給付・育児休業給付)が、一度引き上げられた保険料率が、2025年に0.05%引き下げられています。

    3.建設の事業が負担する雇用保険料率の推移

    労働者負担事業主負担合算した保険料率
    失業等給付・育児休業給付の保険料率雇用保険二事業の保険料率
    2022年10月1日~2023年3月31日6/1,0006/1,0004.5/1,00016.5/1,000
    2023年4月1日~2025年3月31日7/1,0007/1,0004.5/1,00018.5/1,000
    2025年4月1日〜6.5/1,0006.5/1,0004.5/1,00017.5/1,000

    建設業も同様に、労働者負担率と事業主負担率(失業等給付・育児休業給付)が、2022年度から2023年度にかけて引き上げられた保険料率が、2025年に0.05%引き下げられています。雇用保険二事業の保険料率における事業主負担は、今回も変更がありません。

    建設事業はほかの業種区分に比べて、雇用環境が不安定なため、保険料率がもっとも高く設定されています。

    雇用保険料率の改定による注意点

    雇用保険料率の改定で注意したいのは、令和6年度(2024年)には保険料率の変更がなかったため、多くの企業では給与システムに手を加える必要がなかったということです。なかには改定対応への意識が薄れている担当者もいるかもしれません。

    2025年度は、会社負担分・従業員負担分がそれぞれ0.05%引き下げられたため、システム上の設定変更が必要です。設定が遅れると、給与計算ミスや法令違反につながるおそれもあるため、十分に注意が必要です。

    また、今回引き下げ対象となるのは失業等給付および育児休業給付にかかる保険料率です。雇用保険二事業(雇用安定事業・能力開発事業)の料率は据え置きとなっています。

    細かな内訳まで理解し、システムへの反映や社内説明資料に反映させることが重要です。

    雇用保険料率の変更タイミングは給与の締め日によって変わる

    雇用保険料率が改定された場合、新しい保険料率が適用され始めるのは「4月1日以降に支払い義務が確定した賃金」からです。

    新しい保険料率を適用するか否かは、給与の締め日が4月1日より前か後かで対応が異なります。4月支払い分に対して適用される雇用保険料率は、以下のとおりです。

    締め日・支払い日適用される雇用保険料率
    当月締め・当月払い新しい保険料率
    月末締め・翌月払い従来の保険料率

    たとえば「4月20日締め4月末払い」の給与は、4月1日以降に締め日が設定されているため、新しい保険料率を用います。

    一方「3月31日締め4月20日払い」の給与は、支払いの確定タイミングが3月中なので、計算に使用するのは以前の保険料率です。

    給与計算をシステムで利用している場合は、正しい保険料率を変更のタイミングで、確実に反映させましょう。

    雇用保険料率の引き上げ・引き下げの理由

    雇用保険制度は「雇用の安定」と「就職の促進」を目的に設けられた制度です。雇用保険の保険料は失業給付だけでなく、育児休業給付金や雇用調整助成金など、さまざまな給付金・助成金の財源にも使われています。そのため、申請が増えると財源が不足し、保険料率の引き上げにつながることがあります。

    引き上げが続いていた理由

    ここ数年、雇用保険料率の引き上げが続いていた背景には、次の2つの要因が考えられます。

    1. 雇用調整助成金の申請増加
    2. 失業手当の申請増加

    2020年以降は、新型コロナウイルス感染症の影響で休業する企業が相次ぎ、政府は助成金の要件を緩和した特例措置を実施しました。

    その結果、雇用調整助成金や緊急雇用安定助成金の支給決定件数は、2022年6月時点で約659万件に達しています。

    参考:『雇用調整助成金のコロナ特例について』厚生労働省

    また、コロナ禍による失業者の増加により、雇用保険の基本手当(失業手当)受給者数も急増しました。 2020年度は、前年比22.8%増という大幅な増加が記録されています。

    参考:『雇用保険制度の現状について』厚生労働省

    以上2つの理由により、雇用保険財源が悪化し、雇用保険料率の引き上げに至ったようです。

    2025年に引き下げられた理由

    2025年の雇用保険料率引き下げは、主に雇用保険財政の改善が背景にあります。新型コロナウイルス感染症の影響で一時的に悪化していた財政状況は、景気の回復にともない持ち直しつつあります。保険料率を引き下げても制度を維持できる見通しが立ったため、改定が実施されたのでしょう。

    また、近年続く賃上げや物価高騰による家計・企業への負担増も考慮されている可能性もあります。労働者や事業主双方の負担を少しでも軽減し、経済活動を後押しする狙いも、今回の引き下げには含まれていると考えられています。

    雇用保険料率の改定による影響の範囲

    雇用保険料率が上昇すると、従業員と企業の双方に影響があります。毎月支払う保険料が増え、従業員は手取り収入が減少、企業は人件費の負担が増加するでしょう。

    負担が重くなると、企業側は正社員の採用を控え、パートやアルバイト、フリーランスへ切り替える可能性があります。結果として、雇用保険に加入する労働者が減り、保険財源の確保がさらに難しくなるかもしれません。

    財源が不足すれば、再び保険料率が引き上げられる悪循環が考えられます。

    近年は最低賃金の引き上げや賃上げの動きが進んでいますが、雇用保険料率が高止まりしていると、賃金の上昇分が手取りに十分反映されないことも問題です。労働者にとっては待遇の改善が実感できないため、いつまでも生活不安は解消されません。

    2025年度は雇用保険料率が引き下げられ、1人あたり数100円~数1000円程度負担が軽減されます。経済状況によっては再び料率が見直される可能性もあるため、今後も注意深く動向を見守る必要があります。

    まとめ|雇用保険料の変更タイミングを確認し、保険料を正しく計算

    令和7年(2025年)4月から、雇用保険料率は労働者・事業主双方の負担が引き下げられました。数年続いていた料率引き上げの流れが少しでも緩和されたことは、労働者にとっても企業にとっても朗報といえます。

    ただし、2024年度には変更がなかったため、担当者によっては改定対応への意識が薄れている可能性もあります。2025年度は、給与計算システムへの設定変更が必要なため、改定内容と変更タイミングを正確に把握し、確実に反映させましょう。

    また、今回の引き下げ対象は「失業等給付および育児休業給付」の保険料率であり、雇用保険二事業の料率には変更がない点にも注意が必要です。

    雇用保険料率の動向は、今後も景気や雇用情勢に応じて見直される可能性があります。制度改正に適切に対応できるよう、最新情報を定期的に確認し、社内体制を整えていくことが重要です。

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