所得税と住民税の7つの違いを解説!それぞれの計算方法・計算例も紹介

所得税と住民税の7つの違いを解説!それぞれの計算方法・計算例も紹介

所得税と住民税は、日常生活に密接にかかわる重要な税金です。どちらも収入に応じて課される税金ですが、税率や控除額、計算方法など多くの点で異なります。違いを把握していないと、思わぬ負担や損失を招く可能性があるでしょう。

本記事では、所得税と住民税の基本的な7つの違いを解説します。計算方法や具体的な計算例も詳しく紹介するので、納税額を正確に把握するための参考にしてください。

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    所得税とは国に支払う、収入に応じた税金

    所得税は、日本で働く人々にとって基本的な税金の一つです。個人の年間所得に基づいて課され、国の財源として重要な役割を果たしています。所得税の計算方法や、控除制度は複雑で、正確に理解することが求められるでしょう。

    所得税は、1年間(1月1日~12月31日)のすべての所得をもとに計算されます。

    所得には給与や事業収入、利子などが含まれますが、必要経費や控除額を差し引いた「課税所得」に対して課税されます。累進課税制度を採用しており、所得が高いほど高い税率が適用される仕組みです。

    また、2037年までは復興特別所得税もあわせて納める必要があります。特別税は東日本大震災からの復興を目的として導入されており、通常の所得税額に2.1%が上乗せされます。

    住民税とは住んでいる地域に支払う、収入に応じた税金

    住民税は、居住する地域に対して納める地方税です。

    道府県民税(都民税)と市町村民税(特別区民税)の2つで構成されており、地域社会の行政サービスを支える重要な財源です。教育や福祉、ごみ処理などの公共サービスの維持・運営に使われています。

    住民税は地域社会への「会費」のような役割を果たしているともいえるでしょう。

    住民税には「所得割」と「均等割」の2種類があります。所得割は前年の所得に基づいて計算される一方、均等割は所得額に関係なく定額で課されます。合算した金額を住民税として納付する仕組みです。

    住民税はその年の1月1日時点で居住している自治体に対して納め、引っ越しをした場合でも、前年の所得を基準に計算されます。

    住民税の特徴は、税務当局が納税者に対して税額を直接決定し、通知する課税方式である点や、納付が翌年度から始まる点です。

    手続きや申告の仕組みを理解することで、自分がどれだけの負担をする必要があるのかを把握しやすくなります。

    所得税と住民税の7つの違い

    所得税と住民税は、どちらも私たちの収入に基づいて課される税金ですが、仕組みや計算方法には多くの違いがあります。

    以下では、所得税と住民税の比較表で全体像を示したうえで、違いを7つのポイントに沿って解説します。

    項目所得税住民税
    税金の種類国税地方税(道府県民税、市町村民税)
    対象所得その年の所得前年の所得
    税率累進課税制度(5%〜45%)一律10%(道府県民税4%+市町村民税6%)
    所得控除・税額控除基礎控除額58万円(令和7年、8年の時限措置で95万円)、扶養控除など金額が異なる基礎控除額43万円、扶養控除など金額が異なる
    均等割の有無なしあり
    年収の壁年収160万円以下で非課税年収110万円以下(自治体により差ありで非課税
    納付方法・時期源泉徴収後に年末調整や確定申告で精算翌年6月から翌々年5月まで毎月給与から差し引かれる

    違いについて以下の項目ごとに詳しく確認していきます。

    税金の種類

    所得税は国が課す「国税」であり、徴収や管理は国税庁や税務署が行います。国税は、国全体の行政運営に必要な財源を確保するために課される税金です。

    所得税や法人税、消費税などが含まれます。所得税の場合、納付された税金は国の一般会計に組み込まれ、防衛費や公共インフラの整備、教育や医療など幅広い分野に使用されます。

    一方で住民税は地方自治体(都道府県や市区町村)が課す「地方税」です。地域住民が受ける行政サービスの財源として活用されます。たとえば、上下水道の整備やごみ収集、消防・警察活動や地域の福祉サービスなどが挙げられます。

    対象所得

    課税対象となる所得の期間にも違いがあります。

    所得税はその年(1月1日から12月31日)の所得に対して課されます。その年に得た収入を基準として計算し、納付する仕組みです。給与所得者の場合は毎月の給与から源泉徴収され、年末調整や確定申告で最終的な額を調整します。

    一方で住民税は前年の所得を基準として翌年に課され、「翌年度課税」と呼ぶ仕組みです。今年得た収入による住民税は、翌年6月から支払いが始まります。転職や退職などで収入が大きく変動した場合、影響が住民税には翌年反映される点に注意が必要です。

    税率

    所得税は累進課税制度を採用しており、所得額が増えるほど高い税率が適用されます。課税所得195万円以下では5%ですが、40,000,001円以上では、45%と変動が大きいようです。高所得者ほど多くの負担をすることになります。

    一方で住民税は一律10%の比例税率です。10%は道府県民税4%と市町村民税6%で構成されています。ただし一部地域では特例的な加算がある場合もあります。住民税には「均等割」という定額部分もあり、所得税とは異なる特徴です。

    所得控除・税額控除

    所得税と住民税はどちらも控除制度を持っていますが、内容や金額に違いがあります。「基礎控除」は所得税で58万円(令和7年、8年の時限措置で95万円)、住民税では43万円と差があります。

    「扶養控除」や「配偶者控除」も、異なる基準で設定されているため一律ではありません。「所得控除後の課税所得」が等しくなっても、支払う税額にはズレが生じる場合があります。

    また「住宅ローン控除」など一部の控除項目では、適用される条件や控除額が所得税と住民税で異なることがありますので、注意が必要です。正確な控除内容を把握しておくと、税額計算の際の思わぬミスを防げるでしょう。

    均等割の有無

    住民税には「均等割」と呼ばれる定額制の仕組みがあります。地域社会全体で行政サービスを支えるため、所得の多寡にかかわらず一律で負担するのが特徴です。

    多くの自治体では均等割として約5,000円が課されており、内訳は市町村民税3,000円+道府県民税1,000円+森林環境税1,000円となっています。

    所得が一定以下の場合は非課税となることもあるため注意が必要です。

    所得税には定額部分はなく、すべて累進課税方式で計算されます。所得税は収入が多いほど税負担が増えますが、住民税には基礎的な負担が設定されている点が大きな違いといえるでしょう。

    年収の壁

    所得税と住民税では、非課税となる基準にも違いがあります。年収160万円以下の場合、所得税は発生しませんが、住民税の非課税ラインは年収110万円以下です。

    所得税がかからなくても、わずかに超えると住民税だけは発生する場合があります。基準の違いは扶養控除や配偶者控除にも影響します。

    配偶者が年収123万円以下なら扶養控除を受けられますが、年収が110万円を超えると住民税が発生する点も要注意です。

    非課税かどうかはわずかな収入差で変わるため、制度の違いを理解し、手取り額や控除への影響を事前に確認しておくと安心です。

    納付方法・時期

    納付方法についても、所得税と住民税では違いがあります。

    所得税は給与から毎月源泉徴収されたあと、年末調整や確定申告で最終的に精算します。納付は一括だけでなく、場合によっては分割も可能です。自営業者などは確定申告終了後に納付書で支払うのが一般的となっています。

    一方で住民税は「特別徴収」として翌年6月から翌々年5月まで毎月給与から天引きされるのが主流です。

    自営業者やフリーランスの場合は「普通徴収」と呼ばれ、自分で納付書を使い、年4回に分割して支払います。納付のタイミングや方法が異なるので早めの情報収集が大切です。

    【計算例】所得税の計算方法

    所得税は、課税所得に税率をかけたあと、控除額を差し引いて計算します。基本の計算式は以下のとおりです。

    所得税額=課税所得×税率−控除額

    計算式に基づき、課税所得の金額に応じて異なる税率が適用されます。

    計算例1:課税所得150万円の場合

    課税所得が150万円の場合、速算表によると税率は5%で控除額は0円です。所得税額は、以下のように計算されます。

    150万円×0.05=7万5,000円

    課税所得150万円の人が支払うべき所得税額は7万5,000円となります。

    計算例2:課税所得276万円の場合

    課税所得が276万円の場合、速算表によると195万円までは5%、195万円を超え330万円以下の部分には10%の税率が適用されます。控除額は9万7,500円であり、計算は以下のとおりです。

    276万円×0.10−9万7,500円=17万8,500円

    参照:『所得税の税率』国税庁

    【計算例】住民税の計算方法

    住民税は「所得割」と「均等割」を合算した金額で構成されています。所得割は課税所得に基づいて計算される部分で、均等割は一定額が一律で課される部分です。住民税の計算方法を具体例を交えながら解説します。

    住民税額の基本の計算式は以下のとおりです。

    住民税額=所得割+均等割

    所得割は課税所得金額に税率10%(道府県民税4%+市区町村民税6%)を掛けて計算します。均等割は定額で、多くの自治体では5,000円(道府県民税1,000円+市区町村民税3,000円+森林環境税1,000円)です。

    計算例1: 年収350万円の場合

    次の条件で住民税を計算してみます。

    • 年収:350万円
    • 基礎控除:43万円
    • 社会保険料控除:50万円
    • 扶養親族:なし
    • 税額控除:なし

    1.総所得金額を算出するために、給与所得控除を差し引きます。給与所得控除は年収350万円の場合、117万円です。

    350万円−117万円=233万円

    2.課税所得金額を算出するために、基礎控除や社会保険料控除を差し引きます。

    233万円−43万円−50万円=140万円

    3.所得割を計算するには、課税所得金額140万円に10%の税率をかけます。

    140万円×0.1=14万円

    4.住民税額の合計を算出するには、所得割に均等割5,000円を加えます。

    14万円+5,000円=14万5,000円

    計算例2:年収500万円の場合

    続いて、年収500万円の条件で住民税を計算してみましょう。

    • 年収:500万円
    • 基礎控除:43万円
    • 社会保険料控除:75万円
    • 扶養親族:なし
    • 税額控除:なし

    1.総所得金額を計算するために、給与所得控除を差し引きます。年収500万円の場合、給与所得控除は144万円です。

    500万円−144万円=356万円

    2.課税所得金額を計算するために、基礎控除や社会保険料控除を差し引きます。

    356万円−43万円−75万円=238万円

    3.所得割は、課税所得金額238万円に10%の税率をかけます。

    238万円×0.1=23万8,000円

    4.所得割に均等割5,000円を加えて、住民税額の合計を算出します。

    23万8,000円+5,000円=24万3,000円

    まとめ

    所得税と住民税は、どちらも収入に基づいて課される税金という点では同じですが、納税の方法や納める相手、対象となる所得などが異なります。

    国税である所得税は、その年の所得にかかり、毎月の給与から概算で天引きされ、年末調整や確定申告で精算します。税率は所得が増えるほど上がる累進課税です。

    一方で地方税である住民税は、基本的に前年の所得をもとに計算され、多くの会社員は翌年6月から給与天引きで支払います。税率は原則として一律10%で、加えて定額の均等割があります。

    所得税と住民税の違いをおさえておくと、給与から引かれるタイミングのズレも理解でき、見通しが立てやすくなるでしょう。