住民税とは? いつから・いくら納めるのか、税率や計算方法もわかりやすく解説
住民税とは、自分が居住する地域に納付する地方税です。納めるべき住民税額は、所得や地域によって異なります。企業の場合、従業員に支給する給与から天引きを行い、各地域に納付します。
本記事では、個人が納める住民税の概要を解説します。計算方法や納税するタイミング、非課税になるケースも紹介しますので、参考にしてください。
住民税とは
住民税とは、その年の1月1日に居住する地域に納める地方税のことで、都道府県民税と区市町村民税があります。
住民税の仕組みとして、前年の所得から住民税額が決まった後に、納税者に通知が行われます。通知を受けた納税者は、居住地の区市町村に納税を行います。その後、区市町村が、所属する都道府県に、一定割合の金額を支払うという仕組みです。
住民税の税率
住民税の税率には、所得割と均等割があります。所得割は、地方税法で決められた税率を指します。所得割は、 前年における所得をもとに算出されます。所得割は一律で10%です。ただし、政令指定都市の場合は市民税が8%、道府県民税が2%としています。
住民税の種類 | 税率 |
---|---|
市町村民税 | 6%(政令指定都市は8%) |
道府県民税 | 4%(政令指定都市は2%) |
一方の均等割とは、一定の所得がある人が均等に納めるもので、以下のように定額として定められています。均等割は、所得金額によって納税額は変わらず、一定であることが特徴です。
住民税の種類 | 税額 |
---|---|
市町村民税 | 3,000円 |
道府県民税 | 1,000円 |
森林環境税 | 1,000円 |
上記のように、均等割には森林環境税があります。これは、2024年度から新たに追加された税種類で、納税者が各市町村に納付し、国へと支払われます。その税収の全額が、国によって森林環境譲与税として都道府県・市町村へ支払われます。
参照:『総務省|地方税制度|森林環境税及び森林環境譲与税』総務省
住民税の計算方法
住民税額はどのように算出されるのでしょうか。具体的な計算方法を解説します。
- 総所得金額を算出する
- 所得控除を確認する
- 課税所得額を算出する
- 所得割の課税額を計算する
- 税額控除金額を差し引く
- 均等割を加算する
総所得金額を算出する
総所得金額とは、合計所得金額から損失の繰り越し控除を差し引いて算出します。
総所得金額=合計所得金額ー損失の繰越控除
合計所得金額とは、1月1日から12月31日までの収入から経費や控除額などを差し引いた金額です。企業からの給与所得のみの人は、源泉徴収票における「給与所得控除後の金額」欄で確認できます。
所得控除を確認する
住民税を計算する場合、一定の所得控除をおこなえます。住民税の所得控除種類は以下の通りです。
- 雑損控除
- 医療費控除
- 社会保険料控除
- 小規模企業共済等掛金控除
- 生命保険料控除
- 地震保険料控除
- 障害者控除
- 寡婦控除
- ひとり親控除
- 勤労学生控除
- 配偶者控除
- 配偶者特別控除
- 扶養控除
- 基礎控除
参照:『個人市民税・県民税の所得控除の種類:静岡市公式ホームページ』静岡市
課税所得額を算出する
住民税を算出するために、課税所得額を計算します。計算式は以下の通りです。
課税所得額=総所得金額ー所得控除額の合計
所得割を計算する
所得割を計算します。所得割の税率は、合計10%となっています。
税額控除前の所得割額=課税所得額×標準税率(10%)
税額控除額を計算する
所得割の課税額から、当てはまる税額控除を差し引きます。
税額控除後の所得割額=税額控除前の所得割額ー税額控除の額
税額控除には、以下のような種類があります。
- 配当控除
- 住宅借入金等特別税額控除
- 寄附金税額控除
- 外国税額控除
- 配当割額・株式等譲渡所得割額の控除
- 調整控除
均等割の加算
最後に、控除後の所得割額を算出したら、均等割額を足します。
住民税額=税額控除後の所得割額+均等割額
均等割額として納める金額は変わりませんが、2024年度から新たに「森林環境税」という国税が追加されましたので、把握しておきましょう。
住民税の納税額を確認する方法
住民税の納税額を把握するためには、自分で計算する以外に、住民税決定通知書を確認する方法もあります。住民税決定通知書は、個人が自分で払う普通徴収の場合は個人宛てに届き、企業が代わりに納める特別徴収の場合は企業宛てに送付されます。住民税決定通知書は例年5月から6月頃に届くという点も把握しておきましょう。
住民税はいつからどのように納めるのか
住民税は、いつからどのように納税すればよいのでしょうか。住民税を納税するタイミングにはいくつかあります。具体的な納税のタイミングを紹介します。
普通徴収で納税する場合
普通徴収とは、住民税の納税者が個人で直接納める方法です。住民税決定通知書が個人事業主や自営業、年金受給者宛に送付されるため、個人が納税額を確認したうえで納税します。納税は、金融機関や役所の窓口、コンビニエンスストアなどで行います。
特別徴収で納税する場合
特別徴収とは、一般的に、従業員(納税者)の代わりに企業が納税額を徴収して納税する方法です。住民税決定通知書が企業宛てに送付されます。特別徴収は、企業が代わりに納税してくれるため、簡単かつ確実に住民税を納付できる方法といえます。
退職して納税が必要になった場合
住民税を特別徴収で納めていた人が、企業を退職した場合は、以下の方法で納税を行います。
- 再就職先による特別徴収で納付
- 退職した企業が天引きする特別徴収で納付
- 再就職などの予定がない場合は普通徴収に切り替えて納付
いずれの場合も、納付漏れのないよう、注意しましょう。
その他の場合
海外に滞在する場合であっても、日本に居住すると見做される場合は、住民税を納付しなければなりません。納税する必要がある場合は、例年5月から6月頃に住民税決定通知書が送付されるため、忘れずに納税しましょう。一般的には、1月1日をまたいで1年以上海外に滞在している(日本に住所がない)場合は、住民税決定通知書は届かず、納税の必要はありません。
また、公的年金の受給者で住民税の納税が必要な場合は、特別徴収として年金から引き落としによる納税を行います。年金の所得額によって住民税の納税有無は異なるため、住民税納税決定通知書が届くかどうかを確認しましょう。
住民税が非課税になるケース
住民税は、状況によって非課税になる場合もあります。どのような場合に非課税になるのかをご紹介します。
所得割が非課税になるケース
住民税は、所得割が非課税になるケースがあります。具体的には、以下の状況が非課税扱いに該当します。
同一生計配偶者または扶養親族がいる場合 | 35万円 ×(本人・同一生計配偶者・扶養親族の合計人数)+ 42万円以下 |
同一生計配偶者または扶養親族がいない場合 | 45万円以下 |
所得割と均等割が非課税になるケース
住民税は、非課税だけでなく均等割も非課税になることがあります。具体的には、以下の状況が該当します。
- 生活保護法による生活扶助を受けている
- 障害者・未成年者・寡婦またはひとり親に該当し、前年の合計所得金額が135万円以下
- 前年の合計所得金額が区市町村で定められている金額以下
住民税の均等割と所得割のどちらも非課税になるための要件は異なりますので、居住地域の要件を確認しましょう。
住民税に関する注意点
住民税の納税について、注意すべき点をご紹介します。
確定申告を行う場合は住民税の申告が不要
所得税の確定申告を行う場合、住民税の申告は不要です。これは、所得税で申告した内容が税務署から各自治体に伝わるため、その情報をもとに、住民税の計算が行われる仕組みのためです。そのため、確定申告によって所得税を申告すると、住民税も申告したこととして扱われます。
ふるさと納税で住民税の控除ができる
住民税の控除のために、ふるさと納税を活用する方法があります。ふるさと納税とは、任意の自治体に「ふるさと納税」を行うことで、寄付金のうち2,000円を超える部分において、控除上限額内で所得税と住民税から全額控除される仕組みの制度です。ワンストップ特例を利用する場合は、住民税のみ控除扱いとなります。
参照:『総務省|ふるさと納税のしくみ|ふるさと納税の概要』総務省
住民税の滞納や納税遅延に注意する
住民税を滞納したり納税が遅れたりした場合は、一般的に督促状が届き、延滞金が追加される可能性があります。期限内に納付しなければなりませんが、万が一遅れてしまった場合に督促状が届いたら、速やかに納付しましょう。滞納状態が続くと、電話連絡や財産の差し押さえに発展する恐れもあります。どうしても納付できない状況の場合は、あらかじめ区市町村に相談するなどしましょう。
まとめ
住民税は、個人が居住する地域に納める地方税のことです。会社員の場合、基本的には会社が代わりに支払う特別徴収で納付するのが一般的です。企業の担当者は、住民税の仕組みや計算方法などを正しく理解し、納付漏れなどのないよう、徹底しましょう。