賞与から住民税は引かれない?ボーナスにかかる税金・社会保険料控除について解説

賞与から住民税は引かれない?ボーナスにかかる税金・社会保険料控除について解説

賞与支給時の控除は、人事・給与担当としてまず「何が賞与から引かれるのか」を整理しておく必要があります。賞与は手取りが大きく動くため、「住民税は引かれるのか」「どの税金が差し引かれているのか」といった疑問を持つ方もいるからです。

住民税は原則として賞与からは控除しません。住民税は前年所得をもとに年税額が確定しており、通常は毎月の給与から分割して特別徴収するため、賞与の控除項目とは分けて考えます。

本記事では、賞与から控除される所得税と社会保険料の種類に加え、住民税の扱いで混同しやすい点、控除の計算方法まで整理して解説します。

賞与計算をミスなく「One人事」資料を無料ダウンロード

目次アイコン目次
[表示]

    【結論】賞与(ボーナス)から住民税は引かれない

    賞与(ボーナス)を受け取る際、手取り額が想像よりも少なく感じることがあります。賞与からさまざまな控除が行われるためですが、住民税は含まれていません。結論から申し上げると、賞与からは住民税は引かれないのです。

    住民税は毎月の給与から天引きされる

    住民税は前年の所得金額をもとに計算された道府県民税(都民税)と市町村民税(特別区民税)を合わせた税金です。住民税は「特別徴収」という制度により、毎年6月から翌年5月までの毎月の給与から天引きされる仕組みになっています。

    会社は従業員に代わって、住民税を毎月の給与から徴収し、自治体に納付する義務があります。特別徴収制度は毎月の給与からのみ徴収する制度であるため、賞与からは住民税が引かれることはありません。

    賞与は住民税以外の控除が複数ある

    賞与から住民税が引かれないからといって、全額がそのまま従業員の手元に残るわけではありません。賞与からは住民税以外にも、所得税や健康保険料、厚生年金保険料や雇用保険料などの社会保険料が控除されます。控除額は賞与の額や個人の状況によって異なるため、手取り額は支給額より少なくなります。

    賞与(ボーナス)から控除する税金・保険料

    賞与(ボーナス)を支給する際、住民税は控除されませんが、ほかの税金や社会保険料は控除対象となります。控除によって、従業員の手元に残る金額は支給額より少なくなります。

    賞与から控除される主な項目は、次の2つです。

    • 所得税(源泉徴収)
    • 社会保険料(健康保険料/介護保険料/厚生年金保険料/雇用保険料)

    住民税が引かれていないのに賞与の手取りが減っている場合、ほとんどは所得税または社会保険料が原因です。それぞれの控除の仕組みを解説していきます。

    所得税

    賞与からは毎月の給与と同様に所得税が源泉徴収されます。賞与に対する所得税の計算方法は、以下のとおりです。

    源泉所得税=(賞与支給額-社会保険料)× 源泉徴収税率

    源泉徴収税率は、次の3つの要素で決まります。

    • 賞与支給月の前月の給与(社会保険料等控除後)
    • 扶養親族などの数
    • 「扶養控除等申告書」の提出有無(甲欄/乙欄)

    国税庁が公表している「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」を参照し、「扶養控除等申告書」が提出されているなら甲欄、提出されていないなら乙欄を使用します。

    参考:『賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表(令和 7 年分)』国税庁

    賞与から所得税を計算する手順

    1. 賞与支給月の前月の給与額から社会保険料を引いて基準額を算出する
    2. 基準額と扶養人数を算出率表に当てはめて源泉徴収税率を決める
    3. (賞与支給額-社会保険料)×源泉徴収税率で所得税額を計算する

    なお、賞与が前月の給与の10倍を超える場合は計算方法が異なり、算出率表ではなく月額表で計算します。

    具体的には、以下の計算で求めた基準額を「給与所得の源泉徴収税額表(月額表)」を使用して決定します。

    (賞与支給額ー社会保険料)÷ 6 +(前月の給与額ー社会保険料)

    参照:『給与所得の源泉徴収税額表(令和 7 年分)』国税庁

    健康保険料

    賞与から控除される健康保険料は、標準賞与額と健康保険料率を用いて計算します。標準賞与額とは、賞与支給額の1,000円未満を切り捨てた金額です。

    賞与から控除される健康保険料=標準賞与額×健康保険料率÷2

    健康保険料率は事業所が所在する都道府県や加入している健康保険組合によって異なります。協会けんぽに加入している場合、東京都では2025年度(令和7年度)の健康保険料率は9.91%となっています。

    参照:『令和7年3月分(4月納付分)から健康保険・厚生年金保険の保険料額表』全国健康保険協会

    また、標準賞与額には上限があり、健康保険(介護保険も同様)は、年度(4月1日から翌3月31日)の累計で573万円が上限です。

    仮に6月と12月に300万円ずつの賞与をもらった場合、標準賞与額の年度累計額は600万円となり上限を超えます。6月の標準賞与額は300万円、12月の標準賞与額は273万円(573万円-300万円)として計算する必要があります。

    介護保険料

    40歳以上65歳未満の従業員は、健康保険料に加えて介護保険料も控除されます。賞与から控除される介護保険料の計算方法は健康保険料と同様です。

    賞与から控除される介護保険料=標準賞与額×介護保険料率÷2

    協会けんぽの介護保険料率は全国一律で、2025年度(令和7年度)は1.59%です。年度や加入する健康保険組合によって異なるため、毎年確認が必要です。

    介護保険料の標準賞与額の上限も健康保険料と同じく、年度累計573万円です。 

    標準賞与額が300万円の場合、介護保険料率1.59%とすると、介護保険料は次のように計算し、23,850円となります。

    300万円×1.59%×1/2=23,850円

    厚生年金保険料

    厚生年金保険料も賞与から控除される項目です。ほかと同様に標準賞与額を使い次の式で算出します。

    賞与から控除される厚生年金保険料=標準賞与額×厚生年金保険料率÷2

    厚生年金保険料率は2017年9月以降、18.3%で固定されています。

    厚生年金保険料の標準賞与額の上限は1か月あたり150万円です。標準賞与額が50万円の場合、厚生年金保険料は「50万円×18.3%÷2=45,750円」となります。


    一方、標準賞与額の上限は健康保険と違い、1か月あたり150万円です。同月に複数回支給があれば合算しなければなりません。たとえば、標準賞与額が50万円の場合、厚生年金保険料は次のように計算し、45,750円となります。

    50万円×18.3%÷2=45,750円

    雇用保険料

    雇用保険料は、健康保険や厚生年金と違い、標準賞与額ではなく賞与の総支給額をもとに控除されます。

    賞与から控除される雇用保険料=賞与額×雇用保険料率

    雇用保険料率は業種・年度によって変わります。たとえば2025年度(令和7年度)の「一般の事業」の労働者負担は5.5/1,000(0.55%)です。

    参照:『令和7(2025)年度 雇用保険料率のご案内』厚生労働省

    賞与額が50万円の場合、雇用保険料は次のように計算し、2,750円となります。

    50万円×5.5÷1,000=2,750円

    【計算例】賞与(ボーナス)の手取り額の計算方法

    賞与(ボーナス)を受け取る際、手元に残る金額はいくらになるのか気になるところです。

    賞与の手取り額は、次の計算式で算出します。

    賞与支給額-(社会保険料+所得税)

    賞与からは住民税は控除されませんが、所得税や社会保険料が差し引かれた結果、同じ賞与支給額でも、手取り額には差が生まれることも少なくありません。

    一般的に賞与の手取り額は、支給額の約7~8割程度になるといわれています。つまり60万円の賞与であれば、社会保険料と所得税で約12万円が控除され、手取り額は約48万円前後が目安です。

    賞与から控除される金額は、次の要素によって変動します。

    • 年齢(介護保険の有無)
    • 扶養家族の有無
    • 勤務地(健康保険料)
    • 加入している健康保険の種類
    • 前月の給与額
    • 業種(雇用保険料)

    扶養家族が多いほど所得税率が低くなるため、手取り額が増える傾向にあります。

    イメージがつきやすいよう、具体的な数値を置いて、賞与の手取り額の算出方法を見ていきましょう。

    独身のAさん(賞与:60万円)の場合

    • 独身のAさん(35歳・扶養なし)
    • 賞与60万円
    • 前月の給与29万円 ※社会保険料等控除後
    • 2025年度
    • 東京都/協会けんぽ(健康保険料率9.91%)
    • 一般の事業(雇用保険料0.55%)

    参照:『臨時号 2025年度の健康保険料率及び介護保険料率について』全国健康保険協会

    社会保険料の計算例

    標準賞与額60万円(1,000円未満切り捨て)
    健康保険料600,000円 ×9.91%÷2=29,730円 
    ※保険料は労使折半
    厚生年金保険料600,000円 ×18.3%÷2=54,900円 
    ※保険料は労使折半
    雇用保険料600,000円 × 0.55% = 3,300円
    合計29,730円+54,900円+3,300円=87,930円

    社会保険料を差し引いたあとの賞与額は、60万円-87,930円=512,070円です。

    所得税の計算例

    国税庁の算出率表から税率を決定6.126%※前月の給与29万円、扶養0人
    所得税512,070円 × 6.126%=31,369円
    ※1円未満切り捨て

    参照:『給与所得の源泉徴収税額表(令和 7 年分)』国税庁

    賞与の手取り額

    600,000円-(87,930円+31,369)= 480,701円

    配偶者と子ども1人を扶養しているBさん(賞与:80万円)の場合

    • 配偶者と子ども1人を扶養するBさん(42歳、扶養2人)
    • 賞与80万円
    • 前月の給与32万円 ※社会保険料等控除後
    • 2025年度
    • 東京都/協会けんぽ(健康保険料率9.91%、介護保険料1.59%)
    • 一般の事業(雇用保険料0.55%)

    参照:『臨時号 2025年度の健康保険料率及び介護保険料率について』全国健康保険協会
    参照:『協会けんぽの介護保険料率について』全国健康保険協会

    社会保険料の計算例

    標準賞与額80万円(1,000円未満切り捨て)
    健康保険料800,000円 × 9.91%÷2= 39,640円
    介護保険料800,000円  ×1.59%÷2= 6,360円
    厚生年金保険料800,000円 ×18.3%÷2= 73,200円
    雇用保険料800,000円 × 0.55%=4,400円
    合計39,640円+6,360円+73,200円+4,400円=123,600円

    社会保険料を差し引いたあとの賞与額は80万円-123,600円=676,400円です。

    国税庁の算出率表から税率を決定6.126%※前月の給与32万円、扶養2人
    所得税676,400円×6.126%=41,436円
    ※1円未満切り捨て

    賞与の手取り額

    80万円-(123,600円+41,436円)=634,964円

    賞与(ボーナス)にかかる税金に関する注意点

    賞与(ボーナス)にかかる税金の計算は通常、前月の給与を基準にしますが、例外もあります。

    賞与の所得税計算において、注意が必要なのは次の2つです。

    • 前月給与の支払いがない、または前月の社会保険料等控除後の給与額が0円以下となる場合
    • 賞与(社会保険料等控除後)の金額が、前月給与(社会保険料等控除後)の10倍を超える場合

    例外にあてはまると、国税庁の算出率表ではなく、「給与所得の源泉徴収税額表(月額表)」を使うなど計算手順が変わります。

    前月に給与の支払いがなかった場合は、一度毎月の支払額を標準化してから計算する必要があります。

    1. 賞与から社会保険料を差し引き、賞与の対象期間(通常は6か月)で割り算
    2. 1の金額を月額表に当てはめて税額を求める
    3. 2の税額に賞与の対象期間(通常は6か月)を掛け算する

    賞与の査定期間が6か月を超える場合は、倍数が変わり、「6」を「12」に置き換えて、計算しましょう。

    賞与の金額が前月の給与の10倍を超える場合は、基準額の設定方法が特例となります。賞与が大きい場合は、前月給与をそのまま基準にすると支給額に対して税率があわなくなるためです。

    1. 賞与から社会保険料を差し引き、賞与の対象期間(通常は6か月)で割り算
    2. 1に前月の給与から社会保険料を差し引いた金額を足し算
    3. 2に月額表あてはめて税額を求める
    4. 3から前月給与分の源泉徴収税額を差し引く
    5. 4の金額に賞与の対象期間(通常は6か月)を掛け算する

    賞与(ボーナス)にかかる社会保険料に関する注意点

    賞与(ボーナス)にかかる社会保険料の取り扱いは、支給回数や従業員の状況によって変わりやすくなっているため注意が必要です。次の3つのケースでは、通常とは異なる対応が必要です。

    • 年4回以上支給する場合
    • 退職予定者への支給
    • 産前産後休業中/育児休業中の従業員への支給

    年4回以上支給する場合

    社会保険制度において、「賞与」として扱えるのは原則として年3回以下の支給です。年4回以上支給する場合は、賞与ではなく「賞与にかかる報酬」として扱い、標準報酬月額の算定に含めます。 

    毎年7月に行う算定基礎手続きの際に、前1年間に支払われた賞与額の12分の1を月額賃金に加算して標準報酬月額を決定します。

    退職予定者への支給

    退職者の社会保険料は、退職日が月末以外の場合、賞与支給月が資格喪失月に該当するため、賞与から社会保険料は控除しません。退職日が月末の場合に限り、賞与から社会保険料を控除すると理解しておきましょう。

    産前産後休業中/育児休業中の従業員への支給

    産前産後休業中・育児休業等期間中は、事業主が申出手続きを行うことで、健康保険・厚生年金保険の保険料(本人負担分・会社負担分)が免除されます。 

    なお育児休業等については、賞与にかかる保険料も、賞与を支払った月の末日を含む連続1か月超の育児休業等を取得している場合に免除されます。

    一方で、賞与の所得税(源泉徴収)や雇用保険料は、社会保険料の免除とは別のルールで控除されるため、支給額がそのまま手取り額になるわけではありません。

    賞与(ボーナス)にかかる税金・社会保険料の納付方法

    賞与(ボーナス)を支給したら、控除した所得税と社会保険料を、期限を守って適切に納付しなければなりません。

    納付方法は、通常の給与から控除する場合と一部異なる点があるため確実におさえておきましょう。

    所得税は毎月の給与から控除する所得税と合算して納付し、社会保険料は賞与支払届の提出後に送付される納付書に基づいて納付します。

    所得税(源泉所得税)の納付手順は以下のとおりです。

    • 賞与から源泉徴収した所得税を計算
    • 同月の給与から源泉徴収した所得税と合算
    • 合算した所得税を翌月10日までに「源泉所得税の納付書」を使用して納付

    社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)の納付手順は以下のとおりです。

    • 賞与支給日から5日以内に「被保険者賞与支払届」を提出
    • 届出後、翌月中旬に通知書が届く
    • 通知書に記載された金額を到着月の末日までに納付

    まとめ

    賞与から住民税は控除されません。住民税は前年所得をもとに自治体が決定し、給与所得者は原則として毎月の給与から特別徴収されます。一方で賞与からは、所得税と各種社会保険料が控除されます。

    賞与は従業員にとってモチベーションに影響する重要な報酬です。

    担当者は、控除の内訳と計算の考え方を把握し、従業員からの質問にも回答できるようにしておきましょう。あわせて、賞与支給後の税金・社会保険料の納付手続きも、期限内に確実に対応することが大切です。