給与計算における基礎日数とは? 基本から賃金形態別の数え方、使用場面、注意点まで解説

給与計算における基礎日数とは? 基本から賃金形態別の数え方、使用場面、注意点まで解説

賃金支払基礎日数とは、簡単にまとめると従業員に給与を支給する日数です。賃金支払基礎日数は社会保険料の計算や失業保険の手続きで必要であるため、正確な日数を数えることが重要です。

本記事では、給与計算における支払基礎日数のカウント方法や、気をつけたいポイントなどを解説します。賃金支払基礎日数の数え方に不安のある人は参考にしてください。


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    賃金支払基礎日数の賃金形態別の数え方

    賃金支払基礎日数とは、賃金や報酬を計算する際に対象となる労働日数です。

    さまざまな働き方の従業員を雇用している場合は、それぞれの賃金形態を明確に把握しておきましょう。なぜなら、完全月給制や日給月給制、時給・日給制といった賃金形態によって、数え方が大きく異なるためです。

    完全月給制・週給制

    完全月給制とは、1か月ごとに一定の賃金が支払われる給与形態です。従業員が欠勤した場合も減額されず、あらかじめ決められた賃金が支払われます。

    一方で週給制とは、1週間ごとに一定の賃金が支払われる給与形態です。時給制や日給制で働いた賃金が1週間ごとに支払われる「週払い」とは異なり、1週間あたりの賃金額があらかじめ決められているため、考え方としては月給制に近いといえるでしょう。

    完全月給制や週給制では、仕事の休日も含め、30日や31日などの暦日数をそのまま賃金支払基礎日数とします。たとえば、4月21日から5月20日までの期間であれば、賃金支払基礎日数は30日です。

    日給月給制

    日給月給制とは、1か月ごとに一定の賃金が支払われる給与形態です。日給月給制は完全月給制とは異なり、欠勤すると欠勤日数分の賃金が減額されます。ただし、有給休暇のように、賃金が発生する休日を付与されるケースも多いでしょう。

    日給月給制では、企業が就業規則によって定めた日数から欠勤日数を差し引き、賃金支払基礎日数とするケースが一般的です。同じ月給制であっても、完全月給制と日給月給制では賃金支払基礎日数の考え方が異なるため注意しましょう。

    時給制・日給制

    時給制とは、1時間あたりの賃金が定められており、実際に働いた時間に応じた賃金が支払われる賃金形態です。一方、日給制とは、1日あたりの賃金が定められており、実際に働いた日数に応じて賃金が支払われる賃金形態を指します。

    時給制や日給制では、出勤した日数をそのまま賃金支払基礎日数として算定します。なお、有給休暇は賃金が発生するため、忘れずに加算しましょう。

    また、時給制や日給制は、標準報酬月額を算定する際に注意が必要です。詳しくは後述しますが、標準報酬月額の算定に用いる月の賃金支払基礎日数が17日未満の場合は、15日以上17日未満の月を基準とします。

    月給制の場合、月の労働日数が17日を下回るケースはそれほど多くないでしょう。しかし、時給制や日給制で働く人のなかにはパート・アルバイトも多いため、賃金支払基礎日数が基準に満たない場合も十分あります。

    賃金支払基礎日数を使用する場面

    賃金支払基礎日数は、主に以下の2つの場面で利用されます。

    • 基本手当(失業保険)の受給資格を確認する
    • 社会保険料の計算に使用する「標準報酬月額」を決める

    1.基本手当(失業保険)の受給資格を確認する

    基本手当(失業保険)の受給資格の一つに、「離職日以前の2年間に、被保険者期間が12か月以上あること」があります。被保険者期間とは、賃金支払基礎日数が11日以上ある月です。

    そのため、基本手当(失業保険)の受給手続きでは、申請者の賃金支払基礎日数に関する情報が必要とされます。

    なお、2020年8月の法改正によって、賃金支払基礎日数が11日未満であっても、労働時間が80時間以上ある月は被保険者期間に含まれることになりました。今後もルールが変更される可能性があるため、常に最新の情報をチェックしましょう。

    2.社会保険料の計算に使用する「標準報酬月額」を決める

    標準報酬月額とは、従業員の給与を等級ごとに区分したものです。厚生年金保険や健康保険などの社会保険料の算定に用いられます。

    ただし、該当月の賃金支払基礎日数が17日未満であった際は、標準報酬月額の計算に利用できません。その場合は、原則として条件を満たす2か月間の報酬から、標準報酬月額を計算します。

    賃金支払基礎日数が不足している場合

    雇用保険の失業手当を受給するためには、原則として離職日以前の2年間に12か月以上の被保険者期間が必要です。ただし、そうすると休職期間が1年以上ある従業員は条件を満たせなくなってしまいます。そこで病気やケガなどにより30日以上賃金の支払いを受けられなかった期間を、最長4年間までさかのぼって受給資格の判断期間に加えます。

    また、標準報酬月額の定時決定では、4〜6月までの3か月間の報酬で算出され、賃金支払基礎日数が17日に満たない月がある場合は、残りの月の賃金から算出します。もしも3か月間とも日数が不足しているなら、従前の標準報酬月額を用います。

    給与計算における賃金支払基礎日数の6つの注意点

    賃金支払基礎日数は賃金形態によって数え方が異なるだけでなく、独自の対応が必要となる状況も存在するため注意が必要です。数え間違いを起こしやすい6つのケースについて、注意点を解説します。

    1.土日の扱い

    土日の扱いは、働き方が日単位か、月単位かによって異なります。

    たとえば、時給制や日給制など1日単位で給与を計算する働き方の場合は、土日に働いた分は加算し、働かない分は含みません。一方、月単位の場合は、暦日数がそのまま賃金支払基礎日数となるため、労働の有無に関係なく土日の日数も加算します。

    2.特別休暇・有給休暇の扱い

    賃金が支払われる特別休暇や有給休暇などは、賃金支払基礎日数として数えましょう。

    賃金支払基礎日数に含まれるのは、労働した日ではなく、賃金の支払いが発生した日です。特別休暇や有給休暇は休暇ではあるものの、賃金の支払いは発生するため、日数に含めて計算します。

    特別休暇や有給休暇は、「休暇なので賃金支払基礎には含まれない」と思われがちです。賃金支払基礎日数を通常よりも少なくカウントしてしまわないよう、忘れずに計算に含めましょう。

    3.休職・産休の扱い

    休職・産休についても、基本的な考え方は変わりません。賃金が発生している場合は賃金支払基礎日数に含み、発生していない場合は含まずに算定します。

    労働者の権利である産休の期間中に、賃金を支給するか否かは、企業の裁量に任されています。産休中に通常の賃金の何割か、あるいは全額を支給する企業もありますが、数はそれほど多くないでしょう。産休中の給与に関する取り決めは、就業規則に明記されているはずなので、自社の規則にしたがって処理することが大切です。

    また、一般的に従業員が休職する理由は業務外での事故・病気が多いため、賃金の支払いは発生しない場合が多いでしょう。賃金の支払いがないということは、その期間は賃金支払基礎日数には含まれません。

    このように「会社を休んでいる」という事実は同じでも、賃金が支払われているか否かで、賃金支払基礎日数における扱いは大きく異なります。

    4.雇用保険での取り扱い

    賃金支払基礎日数は、雇用保険における基本手当の支給要件に大きくかかわります。

    雇用保険における基本手当は、労働者が失業した場合、または雇用継続が困難な場合に支給される『失業等給付』の一つです。具体的には、求職中の失業者の安定した生活や求職活動をサポートするため、雇用保険の被保険者だった人に支給される給付金を指します。ハローワークの手続きによって支給が決定し、いわゆる失業手当や失業保険と呼ばれるものです。

    失業手当(失業保険)を受給するためには、原則として離職した日からさかのぼった2年間のうち、賃金支払基礎日数が11日以上の月が12か月以上あることが必要です。そのため、シフト制で週1~2日の場合や、休職期間が長かった場合などは賃金支払対象の日数が不足してしまい、受給要件を満たせないケースもあるでしょう。

    ただし、2020年8月の雇用保険法の改正により、離職した日から1か月ごとに区切った期間に賃金支払基礎日数が11日を超えなくても、労働時間が80時間以上であれば被保険者期間に通算されるようにルールが変更されました。たとえば、1日8時間労働で月10日勤務した場合、1か月あたりの労働時間が80時間となるため、被保険者期間に加算できます。

    5.欠勤控除が適用される際の扱い

    欠勤控除とは、従業員が欠勤したとき、本来支給するはずの給与から欠勤分を差し引くことです。従業員の給与計算において欠勤控除が適用される際は、週給制と月給制の計算方法が変化します。

    通常は、完全月給制や週給制の場合は暦日数=賃金支払基礎日数ですが、欠勤控除が適用されると、所定労働日数から欠勤日数を差し引いて賃金支払基礎日数を算出します。たとえば、所定労働日数が22日で欠勤日数が6日であった場合、賃金支払基礎日数は16日です。

    計算時に利用する日数は、暦日数ではなく所定労働日数です。欠勤控除の適用時に暦日数から欠勤日数を差し引くと、計算結果が異なってしまうため注意しましょう。

    6.パートタイマー従業員の扱い

    パートやアルバイトといったパートタイマー従業員は、時給制・日給制の扱いと同じく、実際の出勤日数を賃金支払基礎日数として数えます。

    ただし、標準報酬月額を算定する際は注意が必要です。パートタイマー従業員は正社員や派遣社員と比べて所定労働日数が少ない傾向があるため、計算の方法がやや異なります。

    定時決定において、4~6月に賃金支払基礎日数が17日以上の月があれば、通常通り該当する月の報酬平均を計算しましょう。一方で4~6月のいずれにも賃金支払基礎日数が17日以上の月がない場合は、賃金支払基礎日数が15〜16日の月の平均報酬を計算します。

    4~6月のいずれにも賃金支払基礎日数が15日以上の月がないなら、従前の標準報酬月額を用います。

    賃金支払基礎日数の数え方を理解し、正しい日数を算定しましょう

    賃金支払基礎日数は、失業手当の受給要件の確認や、社会保険料の計算に用いられます。賃金支払基礎日数の数え方において、もっとも重要なポイントは「賃金が支払われているか否か」です。従業員が会社を休んでいても、賃金が支払われていれば日数に含まれ、反対に支払われていなければ日数には含まれません。

    従業員の働き方や就業規則にあわせて、正しい日数を算定しましょう。

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