給与計算の業務内容とは|誰の仕事?  月間・年間スケジュールと業務のチェックポイント

給与計算の業務内容とは|誰の仕事?  月間・年間スケジュールと業務のチェックポイント

労働基準法に基づき企業は労働の対価として、従業員に賃金を支払う義務があります。給与計算担当者は毎月支払う給与額を算出したり、控除した税金や保険料を納めたりする役割があります。そのため、労働基準法や税法などの専門的な知識への理解が求められるでしょう。

しかし、どの部署が担当しているのか、毎月どのような業務を行っているのかなど、多くの人は給与計算の業務内容を正しく把握できていないかもしれません。

そこで本記事では、給与計算の業務内容を月間・年間スケジュールに沿って紹介します。また、担当者が最低限意識したいポイントについても解説するので、ぜひ参考にしてください。

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    給与計算の業務の基本は2つ

    給与計算は主に以下の2つの業務で構成されています。給与計算担当者が行う業務内容をそれぞれ紹介します。

    1. 従業員に賃金を支払うこと
    2. 税金や保険料を納めること

    1.従業員に賃金を支払うこと

    給与計算の目的は、従業員に支払う賃金の額を算出することです。

    給与は従業員ごとに金額が異なるだけでなく、毎月変動します。基本給や手当などの支給額や、税金や保険料などの控除額の算出から、従業員個々の手取り額の計算や給与明細の発行までが、給与計算担当者の業務です。

    2.税金や保険料を納めること

    給与計算の業務は、従業員に支払う給与額を算出するだけではありません。

    従業員の給与から控除した源泉所得税や社会保険料などを、税務署や日本年金機構、健康保険組合などの関連機関に納めるのも担当者の業務です。これを怠った場合、法令違反などの対象となることもあるため、会社の信用を維持するためにも欠かせない業務といえるでしょう。

    給与計算はミスが許されない業務

    給与計算は「ミスが許されない業務」といえます。会社には、従業員の労働の対償として賃金を支払う義務があります。そのため、毎月従業員に給与を支払わなければなりません。

    もし、給与計算に誤りがあったり、支払いが遅延したりした場合、従業員からの信頼を失うことにつながります。給与は従業員の安定した生活を守るものでもあるため、給与計算のミスは許されません。

    また、税金や保険料を納める際も誤りは許されません。間違った金額のまま納税・納付したことに気づかないままでいると、ペナルティの対象になることも考えられます。従業員だけでなく、社会からの信頼も低下してしまうでしょう。

    給与計算の業務を担当するのに特別な資格は必要ありません。しかし、ミスなく給与計算を行うためには、労務や法律、税務の知識が必要です。給与計算担当者に着任したら、専門知識を養うために「給与計算実務能力検定試験」などの資格取得も検討するとよいでしょう。

    毎月の給与計算業務の内容・スケジュール

    給与計算の業務は毎月のルーティンに沿って行われるのが一般的です。基本的な業務内容とスケジュールを紹介します。

    1. 勤怠を締める
    2. 総労働時間を集計する
    3. 総支給額を計算する
    4. 保険料と税金を計算する
    5. 総支給額から保険料と税金を引く(控除額と手取り額の確定)
    6. 従業員に給料を振り込む
    7. 保険料と税金を納付する
    8. 賃金台帳を更新する

    1.勤怠を締める

    まずは毎月の締め日に合わせて、従業員の出勤時間や休暇、遅刻、早退などの勤務記録を確認します。勤怠情報に誤りがないか、不審な点はないかなどをチェックし、必要に応じて従業員本人や管理者に確認を取りましょう。

    2.総労働時間を集計する

    勤怠情報をもとに、各従業員の総労働時間を集計します。通常の労働時間のほか、残業時間や休日出勤、休暇取得日数などを確認しましょう。

    特に残業や休日出勤などは割増賃金が適用されるため、給与計算の業務においてミスが起こりやすい項目です。間違いがないように正しく集計しなければなりません。

    3.総支給額を計算する

    各従業員の給与条件に基づいて総支給額を計算します。

    基本給や残業手当、通勤手当のほか、家族手当や役職手当など、一部該当者のみに支給する手当も忘れずに計算する必要があります。もし、欠勤や早退などがあった場合も忘れずに支給額から差し引きましょう。

    4.保険料と税金を計算する

    総支給額に基づき、社会保険料や所得税、住民税など、控除する金額を計算します。保険料や税額は従業員一人ひとり異なるため注意が必要です。

    特に昇給などがあった従業員においては、標準報酬月額が変更となり、保険料も変動している可能性があります。条件変更の有無も確認し、正しい金額を計算しなければなりません。

    5.総支給額から保険料と税金を引く(控除額と手取り額の確定)

    総支給額と控除額が計算できたら、総支給額から控除額を差し引き、実際の手取り額(口座に振り込む金額)を確定します。

    6.従業員に給料を振り込む

    給与明細を発行し、従業員に給料(手取り額)を振り込みます。口座に送金する前に、必ずダブルチェックを実施し、計算内容に誤りがないかを必ず確認しましょう。

    7.保険料と税金を納付する

    従業員の給与から控除した保険料や税金は、関連する機関に納めなければなりません。

    社会保険料は、各担当機関から送付される納入通知書に基づき、納付対象月の翌月末日までに納める必要があります。住民税・所得税については、翌月10日までに税務署の窓口や金融機関などで納付します。

    なお、労働保険料は年1回の納付です。毎年6月1日から7月10日までの間に、当年4月〜翌年3月の見込み金額を納付し、差異が生じた際は翌年の納付時に調整します。この手続きを年度更新と呼びます。

    8.賃金台帳を更新する

    企業によってペースが異なる場合もありますが、基本的には毎月賃金台帳を更新します。賃金台帳は従業員の給与情報を正確に記録するためのもので、労働基準法によって作成・保管が義務づけられています。

    労働基準監督署から是正勧告を受けた場合、速やかに提出しなければならないため、こまめな更新が必要です。

    給与計算は誰が担当する業務か?

    給与計算の業務担当者は、会社によって異なります。

    一般的には、人事・総務・経理の3部門が関連することが多いでしょう。

    人事部門では、従業員の基本給や報酬、手当などの情報を管理する役割を担うため、従業員データの管理とあわせて給与計算も行う場合があります。

    また、総務部門が労務業務を担う組織では、勤怠管理や福利厚生業務などとあわせて給与計算も担当することがあります。

    経理部門が給与計算を担当する組織では、予算策定や決算、給与振り込みまで、お金に関する業務全般を担う場合も少なくありません。

    従業員規模の大きい組織においては、給与計算業務を細分化し、上記3部門で分業することもあるようです。

    また、一部業務あるいは給与計算のすべての業務を、専門のアウトソーシングサービスに委託したり、税理士や社労士に依頼したりする企業もあります。

    このように、給与計算業務は組織によって担当部門や範囲が違います。自社では誰が業務を担当しているのか確認したうえで、必要に応じて担当部門や範囲の変更なども検討しましょう。

    給与計算業務の年間スケジュール例

    給与計算の業務は毎月のルーティンと同じように、年間を通しても毎年同じようなスケジュールで業務を進めます。一例を以下の表にまとめました。

    1月・税務署への法定調書提出
    ・市区町村への給与支払報告書提出
    3月・新入社員や配置転換者の給与決定
    4月・新入社員や配置転換社員の給与設定
    ・健康保険や介護保険料率の変更の反映
    ・「給与支払報告に係る給与所得者異動届出書」の提出
    5月・各市区町村から届く一覧をもとに新年度の住民税を通知
    6月・労働保険料の年度更新の手続き開始(概算・確定保険料申告書)
    ・住民税の新年度控除額を登録
    7月・4~6月の給与をもとに算定基礎届の提出
    8月・4月昇給者の随時改定(月額変更届)
    ※給与支払日によっては7月
    9月・厚生年金保険料率の変更(新料率による控除は10月支払い分から)
    10月・7月に算定基礎届を提出した従業員の社会保険料改定
    ・年末調整書類の配布
    11月・年末調整書類の回収
    12月・年末調整と源泉徴収票の発行

    このほか、決算賞与の計算や支給など、不規則で発生する業務もあるでしょう。

    給与計算の業務担当が注意したいチェックポイント

    従業員の生活やステークホルダーからの信用、法令にかかわることから、給与計算はミスなく行わなければなりません。給与計算の業務担当者が特に注意すべきポイントを紹介します。

    • 賃金支払いの5原則ほか基本知識を理解する
    • 割増賃金ほか手当の反映を忘れない
    • 端数処理の法定的ルールを理解する
    • 6月は住民税・社会保険料を確認する
    • 10月は最低賃金を確認する
    • 個人情報を慎重に扱う
    • 事業所所在地別の保険料を確認する

    賃金支払の5原則ほか基本知識を理解する

    労働基準法第24条では「賃金支払の5原則」が定められています。

    賃金支払の5原則
    1.通貨払いの原則
    2.直接払いの原則
    3.全額払いの原則
    4.毎月1回以上払いの原則
    5.一定期日払いの原則

    企業は従業員に対して、通貨で直接、全額を毎月1回以上、一定の期日を定めて支払う必要があります。5原則を満たさない場合は法令違反に該当し、罰則の対象となります。

    給与計算担当者は、賃金支払の5原則を理解するとともに、給与計算における基礎知識を理解しておきましょう。

    割増賃金ほか手当の反映を忘れない

    労働基準法では、法定労働時間は「1日8時間・週40時間」と決められています。法定労働時間を超える残業が発生したら、割増賃金を支払わなければなりません。残業手当にかかる割増率は普通残業が25%、休日出勤手当は35%です。

    さらに、夜間の22時から翌朝5時までの勤務には、深夜手当として別途25%の割増率が適用されます。時間外労働が発生すると、給与計算を間違えやすくなるため注意が必要です。なお、法定労働時間を超える残業が月60時間を超えた場合は、その部分について50%以上の割増率が適用されます。

    また、そのほか通勤手当や家族手当、住宅手当、役職手当など、支給額や支給の有無が従業員ごとに異なる手当を反映するのも忘れないようにしましょう。

    端数処理の法定的ルールを理解する

    割増賃金を計算すると、端数の金額が発生する場合があります。端数は労働基準法に定められたルールに従って適切に処理しなければなりません。

    労働基準法において、以下の場合は「50銭未満の端数を切り捨て、50銭以上1円未満の端数を1円に切り上げる」ことが定められています。

    • 1時間あたりの割増賃金額に円未満の端数が生じた場合
    • 1か月間における割増賃金の総額に1円未満の端数が生じた場合

    適切に処理しないと、法令違反に該当することもあるので注意が必要です。

    6月は住民税・社会保険料を確認する

    6月は住民税・社会保険料の変更に関連する月です。

    住民税は、前年1〜12月までの所得に基づいて計算され、所得割・均等割などによって決定し、当年6月〜翌年5月までに納付します。社会保険料は原則として4〜6月までの3か月間の給与に応じて変動し、9月に保険料が決定します。

    そのため、給与計算の業務担当者は従業員それぞれの住民税や社会保険料を把握・記録し、新しい金額で控除するのを忘れてはいけません。

    10月は最低賃金を確認する

    原則として給与は、雇用形態に関係なく最低賃金以上の金額を支給しなければなりません。

    各都道府県によって最低賃金は異なりますが、毎年10月中に改定されます。給与計算の業務担当者は最低賃金を必ず確認し、必要に応じて賃金額の見直しを行う必要があります。

    個人情報を慎重に扱う

    給与に関する情報は、従業員の個人情報にあたります。給与計算の業務担当者は漏えいや不正利用防止の対策を怠ってはいけません。

    給与明細を誰もが見られる状態で放置していたり、誤送付してしまったりすることのないよう、慎重に取り扱いましょう。適切にセキュリティ対策を実施し、情報管理プロセスの整備をすることが大切です。

    事業所所在地別の保険料を確認する

    事業所が全国に点在している企業もあるでしょう。

    各都道府県によって社会保険料率や最低賃金が異なることもあるため、常に最新情報の入手が重要です。特に最低賃金に関しては、規則を守れないと罰則対象となるため、注意が必要です。

    給与計算業務の正確性を高めるには?

    給与計算の業務は毎月のルーティンに加え、年間を通しても多岐にわたる業務に対応しなければなりません。

    法令違反やステークホルダーからの信用にもかかわることから、ミスなく遂行しなければなりません。ただ計算すればよいだけでなく、法律や税の知識も給与計算担当者に求められます。

    そのため、給与計算の業務は属人的になったり、人手不足により担当者に負荷がかかっていたりすることも少なくありません。このような状態を放置するとミスが頻繁に起こってしまうでしょう。

    給与計算業務の正確性を高めるには、表計算ソフトやアウトソーシングの活用による業務効率化が必要です。

    また、給与計算システムを導入すると、少ない人員でもミスや負担を軽減して業務を遂行できます。給与計算の業務に課題を感じている組織は、現状の見直しとともに効率化の手段も検討してみましょう。

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