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給与計算の端数処理の方法は? 3つの注意点についてもわかりやすく解説

給与計算の端数処理の方法は? 3つの注意点についてもわかりやすく解説

従業員の給与を計算していると、小数点以下の端数が生じることがあります。1円未満の金額は支給できないため、切り捨ててよいのか、それとも切り上げたほうがよいのか、迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、給与計算の端数処理の方法について詳しく解説します。給与計算の端数処理が行われる3つのケースも紹介するので、ぜひ参考にしてください。

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    給与計算の端数処理の方法

    まずは、給与計算における端数処理の考え方について解説します。

    労働時間は1分単位で計算する

    従業員の労働時間は、原則として1分単位で記録・計算する必要があります。たとえば、労働時間を5分単位で管理し、5分未満は切り捨てるといった方法は労働基準法違反です。また、1時間1分の時間外労働が発生した場合に、「1分くらいなら」と1時間にまるめて計算するのも違反行為に該当します。

    通常の労働時間はもちろん、割増賃金が支給される時間も例外ではありません。従業員が労働した時間に対しては、時間外労働や休日労働についても、1分単位で正確に記録する必要があります。

    しかし、1分単位で計算すると、給与計算の結果に1円未満の端数が生じてしまう場合も多いでしょう。では、給与計算における端数はどのように処理すればよいのでしょうか?

    端数の切り捨て処理は原則できない

    労働基準法第24条では、「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を、毎月1回以上、一定期日を定めて支払わなければならない」と定められています。

    (賃金の支払)第二十四条 賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。

    引用:『労働基準法』e-Gov法令検索

    労働基準法第24条における「全額」とは、労働に対する対価の総額です。たとえ1円未満の金額であっても、労働の対価はすべて従業員に支給する必要があります。そのため、給与計算における端数の切り捨ては原則的に認められていません。

    一方で、端数の切り上げは労働者にとって有利となるため、問題ないとされています。たとえば、労働時間が1時間59分だった場合に、切り上げて2時間分の給与を支払うのは問題ありません。

    ただし、これはあくまで原則とする考え方であり、次に紹介するケースではそれぞれ処理方法が異なります。

    参照:『労働基準法第24条(賃金の支払)について』厚生労働省

    給与計算の端数処理が行われるケースとは?

    給与計算における端数処理は、主に以下のようなケースで行われます。

    • 割増賃金の計算時
    • 1か月分の賃金の計算時
    • 1か月分の労働時間の計算時

    割増賃金の計算時

    割増賃金とは、通常の給与に一定割合を上乗せして支給する賃金です。

    通常、割増賃金は従業員が時間外労働・深夜労働・休日労働を行ったときに発生します。時間外労働とは、法定労働時間である「1日8時間・週40時間以内」を超過した分の労働です。また、深夜労働とは、22時~翌5時までの労働を指します。そして、休日労働とは、あらかじめ定められた法定休日に労働することです。

    時間外労働・深夜労働・休日労働における割増率は、それぞれ以下のように異なります。

    割増率
    時間外労働25%以上(月60時間超の部分は50%以上)
    深夜労働25%以上
    休日労働35%以上

    また、割増率は重複するため、たとえば休日労働に深夜労働が含まれる場合は、計60%以上の割増率の適用が必要です。このように割増賃金の計算は複雑で、給与計算の中でも特に端数が発生しやすいとされています。

    割増賃金を適用する労働時間については、時給換算した賃金に割増率を乗じて給与を計算します。

    やはり、割増賃金の場合も基本的には給与を全額支給する必要がありますが、50銭未満の金額は切り捨てることが可能です。給与計算の端数処理は「従業員に不利にならない方法を選ぶ」という考え方が基本ですが、この場合は50銭以上であれば切り上げて処理するため、従業員が常に不利とはなりません。

    具体的な計算方法としては、以下の2つのパターンが考えられます。

    1. 1時間あたりの割増賃金額を計算し、端数を処理してから1か月の総額を計算
    2. 1か月あたりの割増賃金の総額を計算してから、端数を処理

    具体例として、時給換算で1,770円の従業員が月7時間の時間外労働を行ったケースを考えてみましょう。1と2のパターンにあてはめると、それぞれ以下のように算出できます。

    1.1時間あたりの割増賃金額を計算し、端数を処理してから1か月の総額を計算
    1,770円×1.25(割増率)=2,212.5円=2,213円(端数切り上げ)
    1か月あたりの割増賃金=2,213円×7時間=15,491円
    2.1か月あたりの割増賃金の総額を計算してから、端数を処理
    1か月あたりの割増賃金=1,770円×1.25×7時間=15,487.5=15,488円(端数切り上げ)

    1か月分の賃金の計算時

    通常支給される給与や割増賃金を含め、1か月の合計賃金に端数が生じた場合は、どの部分を端数とみなすかどうかで処理方法が異なります。

    100円未満の端数が生じたときは、50円未満を切り捨て、50円以上は切り上げることが可能です。たとえば、合計賃金が338,950円だった場合は、50円を切り上げて339,000円として処理します。

    100円未満の端数合計賃金端数処理計算の結果
    338,950円50円切り上げ339,000円

    また、1,000円未満の端数が生じた場合は、次の月に繰り越すことが可能です。たとえば、合計賃金が338,950円だった場合は、950円を次月に繰り越し、当月は338,000円を支給します。特に、給与を手渡しで支給している企業では、1,000円未満を繰り越すことで小銭の発生を防げるメリットがあるでしょう。

    1,000円未満の端数
    (翌月に繰越可)
    合計賃金端数処理計算の結果
    338,950円950円を次月に繰り越し(当月)338,000円

    ただし、端数を処理する場合は、従業員に対してきちんと説明することが大切です。説明をしないまま端数を処理した金額を支給してしまうと、「計算が合わない」とトラブルに発展しかねません。

    また、端数処理については就業規則に明記し、ルールに沿って処理する必要があります。「この月は金額が細かいから端数を処理しよう」というように、端数処理をそのときの状況や気分では決められません。

    1か月の労働時間の計算時

    ここまでは賃金の端数に関する処理方法を解説してきました。給与計算の端数処理において、1か月の合計労働時間の端数を処理することで、給与計算を簡便にするという方法もあります。

    1か月の労働時間は、1時間未満を端数として30分未満は切り捨て、30分以上は切り上げて計算することが可能です。

    ただし、端数を処理できるのは、時間外労働や深夜労働、休日労働における労働時間のみです。「従業員が遅刻・早退した分を賃金から控除する」といったケースを除き、労働時間に端数が生じても、従業員への給与額が変わることはありません。

    労働時間の端数を処理するのは、基本的に残業手当や深夜手当、休日手当など、割増賃金に関する部分のみと覚えておきましょう。

    たとえば、次のようなケースでは、1時間未満の部分を端数として処理できます。

    • 1か月の時間外労働:4時間33分→5時間
    • 1か月の深夜労働:6時間45分→7時間
    • 1か月の休日労働:3時間20分→3時間

    なお、労働時間の端数処理が可能なのは、1か月分の労働時間の合計のみです。たとえば、1日の時間外労働が1時間10分だったからといって、10分を切り捨てて1時間とすることはできません。

    給与計算の端数処理をする際の3つの注意点

    続いて、給与計算の端数処理における注意点を、3つのケースでそれぞれ解説します。

    • 労働していない時間の端数処理
    • 割増賃金の端数処理
    • 企業の独自ルールの設定時

    1.労働していない時間の端数処理

    労働基準法第24条では「賃金はその全額を従業員に支払わなければならない」というように定められていますが、賃金はあくまでも労働の対価として支払われるものです。

    そのため、従業員が遅刻・早退などで労働していない部分については、賃金を支払う義務はありません。これを「ノーワーク・ノーペイの原則」といい、民法第624条に以下のように定められています。

    (報酬の支払時期)第六百二十四条 労働者は、その約した労働を終わった後でなければ、報酬を請求することができない。

    引用:『民法』e-Gov法令検索

    つまり、従業員が体調不良や私用などで40分間遅刻した場合、企業は不就労時間(40分)の給与を差し引くことが可能です。

    ただし、40分間を繰り上げて、1時間分の給与を差し引くことは労働基準法違反です。また、会社都合の休業や自宅待機など、会社側に全面的な責任がある場合には、ノーワーク・ノーペイの原則は適用されません。

    2.割増賃金の端数処理

    割増賃金は、「1時間あたりの賃金×割増率」で計算します。月給制の場合は1時間あたりの時間給に換算する必要があるため、1円未満の端数が生じるケースもあるでしょう。

    その場合は、50銭未満の端数を切り捨て、50銭以上は1円に切り上げることが可能です。たとえば、時給換算1,625.5円の従業員は、小数点以下を切り上げて1,626円として計算します。

    3.企業の独自ルール設定時

    給与計算の端数処理は、法律の範囲内であれば、企業が独自にルールを設定できます。

    ただし、独自のルールを設ける場合は、従業員と認識の相違が生じないよう注意しましょう。たとえば、遅刻に対するペナルティや端数処理のルールなどは就業規則に明記し、広く周知することが大切です。

    給与計算の端数処理も簡単にするなら、人事労務管理システムの導入も

    従業員の給与計算には、割増賃金や端数処理など複雑な計算も多いものです。給与計算をより効率的に、より正確にするなら、人事労務管理システムを導入しましょう。

    人事労務管理システムの特徴

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    給与計算の端数は、法律に基づいて適切に処理しましょう

    原則的に、従業員の労働時間は1分単位で管理し、賃金の全額を支払う必要があります。ただし、給与計算の際に生じた端数や1か月の労働時間の端数は、法律の範囲内で処理することが可能です。

    端数を処理する場合は、就業規則にきちんと明記し、従業員と認識のズレが起きないよう注意しましょう。また、複雑な給与計算業務を効率化するなら、人事労務管理システムの導入もおすすめです。

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