給与計算を社労士に依頼するメリット、デメリットとは? 相場や注意点についても解説
給与計算に関する業務は、労働や社会保険の専門家である社会保険労務士(以下、社労士)に依頼できます。
本記事では、給与計算を社労士に依頼するメリットやデメリット、依頼時の注意点を詳しく解説します。さらに、社労士以外に給与計算を依頼する方法やクラウドサービスを導入するメリットなどもご紹介するので、参考にしてください。
社労士とは
社労士とは、社会保険労務士法に基づいた国家資格者で、労働法や社会保険に精通した専門家です。就業規則や社会保険の手続きに関する書類の作成、提出などの代行を、独占業務として行います。
社労士が担当する業務は、次の通りです。
1.申請書等の作成
引用:『社会保険労務士の適正な業務の確保について』大阪労働局・大阪府社会保険労務士会
2.提出代行
3.事務代理
4.紛争解決手続代理業務(特定社会保険労務士に限る)
5.帳簿類の作成
社会保険労務士でない者は、営利を目的として上記の業務を禁じられています。
社労士に給与計算を依頼する理由
社労士に企業の給与計算業務を依頼するのには、次の2つの理由があります。
社会保険や労務管理に関する専門家のため
社労士は、社会保険法令や労働関連法令に基づいて書類作成をしたり、経営に必要な社会保険や労務管理に関する指導・助言をしたりする専門家です。
給与計算は、厚生年金保険料や介護保険料などの計算方法やルールに対する理解が必要とされる業務です。社労士に委託することで、担当者の業務負担軽減につながります。
社会保険関係法令は改正されるため
給与計算業務を請け負うために必要な資格はありません。しかし、社会保険制度や労働関連の法規は、毎年のように改正されます。給与計算の担当者は、常に改正された制度や法規に関する情報収集をしながら、業務に反映させていかなければなりません。
社労士に依頼すると、法改正に対応した業務を請け負ってもらえるだけでなく、制度の内容をわかりやすく教えてもらえる機会を得られるしょう。
社労士に依頼できる給与計算の種類
社労士に依頼できる給与計算の種類は、主に次の3つです。
毎月の給与計算
毎月の給与計算業務を社労士に依頼できます。
給与を計算するためには、残業代や雇用保険料、健康保険料、所得税などの細かな計算が必要です。雇用形態が多岐にわたる場合は計算がさらに複雑になり、雇用する従業員の数が多ければ多いほど相当な手間と時間がかかります。
給与計算を社労士に依頼すると、従業員は給与計算業務以外のコア業務に注力できるため、企業利益の増大が期待できるでしょう。
賞与計算
夏期・冬期賞与など、従業員の賞与に関する計算も社労士に依頼できます。
賞与を計算するためにも、雇用保険料や健康保険料、厚生年金保険料、所得税などの細かな計算が必要です。毎月の給与計算とは異なり、社会保険料や所得税の計算方法が複雑で、金額も給与より高額となるケースが多いため、担当者の負担もさらに大きくなりがちです。
社労士に依頼すると、社会保険加入者の場合に作成・提出が必要な賞与支払届の手続きも、まとめて対応してもらえるでしょう。
社労士に依頼する相場
社労士に給与計算業務のみを依頼する場合と、その他の業務も含めて依頼する場合では、料金の相場が大きく変動します。
給与計算業務の費用の計算方法 |
---|
基本料金+単価×従業員数 |
給与計算業務の費用の相場
従業員数 | 月額 |
---|---|
基本料金 | 1〜3万円+従業員一人あたり500〜1,000円 |
5〜9人 | +5,000円 |
10〜19人 | +1万円〜3万円 |
20〜29人 | +2万円〜4万5,000円 |
30〜49人 | +4万円〜7万円 |
50人以上 | +5万円〜8万円 |
その他の業務の費用の相場
就業規則の作成や見直し | 新規作成:20万円程度既存内容の見直し:3〜5万円 |
各種保険の手続き | 労働保険年度更新:5万円社会保険算定基礎届:8万円(人数に応じて変動)社会保険・労働保険の資格取得手続き:1〜2万円 |
助成金の申請 | 助成額の15〜20% |
労務関連のコンサルティング業務 | 相談料:30分5,000円程度具体的な指導:5〜10万円 |
顧問契約を締結した企業に対しては、費用が割引されるケースがあります。
社労士に給与計算を依頼するメリット
社労士に給与計算を依頼するメリットは、次の4つです。
労力が削減でき、メイン業務に集中できる
社労士に給与計算を依頼すると、担当者はほかの利益貢献度の高い業務に注力できます。
給与計算をする際は、タイムカードの集計をはじめ残業代や休日手当の計算、さらに法令改正への対応など、さまざまな業務が生じるものです。外注することで、売り上げに直結する業務に時間を割けるため、生産性の向上や業務効率化につながるでしょう。
コスト削減につながる
社労士に給与計算を依頼すると費用がかかりますが、結果としてコスト削減につながるケースもあります。
自社で給与計算をする場合、担当者の人件費はもちろん、給与ソフトの維持・管理コストがかかります。さらに、改正されることが多い労働関連法規に対応する研修や教育も必要です。自社で対応すると年間を通して大きなコストが発生するため、社労士への依頼を検討してみましょう。
給与計算以外の業務も依頼できる
社労士は、労働法や社会保険に精通した専門家であるため、給与計算以外にも社会保険や労働保険の手続きなどの業務を依頼できます。
給与計算業務の依頼先として税理士もありますが、税理士は社会保険・労働保険の手続きに対応できません。就業規則の作成や助成金申請、労働トラブルの相談なども、社労士業務にあたります。
法改正に対応できる
社会保険制度や労働関連法規は、頻繁に改正が行われています。担当者は、日々更新される内容を意識し、常に情報をアップデートしなければなりません。また、情報収集ができたとしても、内容を理解するためには膨大な知識が必要です。
社労士に給与計算を依頼すると、最新の法規や制度に対応してもらえます。また、社労士から制度の内容をわかりやすく説明してもらえるというメリットもあります。
社労士に給与計算を依頼するデメリット
社労士に給与計算業務を依頼する際は、次の3つのデメリットも理解しておきましょう。
情報漏えいのリスクが生じる
給与計算業務をアウトソーシングすることで、外部に情報が漏えいするリスクが高まります。また、依頼先のセキュリティ対策が万全でないと、サーバー攻撃を受ける恐れがあり、自社のシステムが被害を受けるケースも考えられるでしょう。
情報漏えいによって、企業に次のようなリスクが生じます。
- 個人情報の悪用
- 民事上の損害賠償責任の発生
- 不正アクセスによりサーバーや情報システムの内部へ侵入される
- 取引先や顧客、従業員からの信頼を損なう
リスクを軽減させるためにも、依頼先のセキュリティ対策について事前に調べましょう。
給与・社会保険・税制などの知識を保有する人が育たない
社労士に給与計算を依頼すると、社内にノウハウや知識が蓄積せず、自社の人材が育たないリスクが生じます。給与に関する労務事項や社会保険、税制に関する知識を保有する人材がいなくなってしまうと、従業員の給与に関するデータ分析ができず、人事戦略や組織管理に影響を与える恐れもあるでしょう。
ミスの発生や、従業員の業務負担が残る可能性がある
給与計算業務では、年間を通してさまざまな業務が発生するものです。社労士に依頼する業務範囲があいまいだと、やりとりに時間と手間がかかる恐れがあります。
利用するシステムとの連携が円滑にできずに、かえって従業員の作業負担を増やしてしまうケースも考えられます。また、業務が連携できていないと、計算ミスや支払いの遅延などが生じ、結果として従業員の業務負担が残ってしまうかもしれません。
社労士に依頼するときの注意点
社労士に給与計算を依頼する際には、いくつか注意すべきポイントがあります。
依頼する範囲を明確にする
社労士に給与計算業務を依頼する際は、どこまでの業務を依頼するかを明確にすることが重要です。従業員の業務負担を少しでも減らすためにも、導入の段階で業務範囲や業務フローなどを設定するよう徹底しましょう。
情報漏洩のリスクを排除できる体制を確認する
情報漏洩のリスクを最小限に抑えるためには、依頼先のセキュリティ体制を確認することが重要です。個人情報流出事故を防ぐシステムや、誤送信対策システムを導入しているかを確認してください。
委託先がデータの取り扱いに関する指針を示す『セキュリティ認証』を取得しているかどうかも、情報漏洩を防ぐための大切なポイントです。プライバシーマークやISMS認証などのセキュリティに関する認証を取得しているか、事前に確認しましょう。
社労士以外で給与計算を効率化する方法
社労士への依頼以外で給与計算業務を効率化する方法は、次の3つです。
税理士に依頼する
税理士は、税務署対応や企業へのコンサルティングを行う専門家です。税務書類の作成や、税務に関する指導・助言などの業務を担います。従業員が少人数である場合は、社労士よりも低価格で依頼できるケースもあります。
税理士によっては、税務業務を依頼する延長で給与計算も依頼することが可能です。給与計算以外に、毎月の給与計算に必要なタイムカードの集計や残業代、住民税の計算代行も依頼できます。
アウトソーシング会社に依頼する
企業規模が大きい場合は、社労士や税理士ではなくアウトソーシング会社に依頼するのも一つの方法です。アウトソーシング会社とは、給与計算や年末調整などの事務作業を代行する業者を指します。
社労士や税理士などの士業事務所を母体とするものや、銀行系が主体のもの、システム会社が主体のものなどがあります。企業規模や利用したいサービスにあわせて選びましょう。
クラウドサービスを導入する
クラウド型の給与計算システムは、毎月発生する給与計算業務を効率化できるツールです。なかには従業員の勤怠情報と紐づけて給与計算を行えるサービスも展開されています。
クラウド型の給与計算システムには、サービスごとに得意分野があります。
- 専門特化型:給与計算のみ対応可能
- 連携型:導入済みの既存システムと連携できる
- 総合型:人事労務、勤怠管理、経費精算まで幅広く網羅し、機能を部分導入できる
導入することで煩雑な計算業務や手続きを自動化できるため、業務のスピードアップと正確性の向上につながるでしょう。
クラウドサービスに依頼するメリット
給与計算業務をクラウドサービスに依頼するメリットは、次の2つです。
初期費用が抑えられる
クラウドサービスは、オンプレミス型サービスとは異なりサーバーやネットワーク機器などを調達する必要がないため、導入時の初期費用を抑えられます。
人数ごとに課金される料金システムのツールを選べば、無駄なコストが発生せず、毎月のランニングコスト削減にも貢献するでしょう。
法改正への移行がスムーズになる
クラウド型の給与計算システムには、法改正の際に自動で更新されるものが多くあります。システムによっては、税率や保険料率が変更された場合も自動的に適用されるため、従来通りの操作で計算できます。
ベンダー側が変更内容を自動アップデートするため、コンプライアンス違反が起きる心配もありません。
給与計算の効率アップにクラウドの活用も
給与計算の業務負担は、従業員の人数によって大きく変動するものです。社労士に依頼すれば給与計算の業務負担を軽減できるだけでなく、労務関連の業務も外注できるため、従業員は本来のコア業務に専念できるでしょう。
社労士や税理士、アウトソーシング企業など給与計算業務を依頼できる委託先は複数ありますが、初期費用や毎月のランニングコストを少しでも抑えたい企業には、クラウドサービスの利用がおすすめです。
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