給与計算ミスが発覚したときのお詫びの仕方|メールの文例や対応手順、防止策も解説
給与計算ミスが発覚した場合、企業は従業員に対して誠実に謝罪し、適切に対応する必要があります。しかし「どのように謝罪すべきか」「再発防止策をどう講じるべきか」と悩む担当者もいるでしょう。
本記事は、給与計算ミスが発覚した際のお詫びの仕方や対応手順を解説し、防止策についても紹介します。人事担当者の方は、ぜひお役立てください。
給与計算をミスしてしまったときの対応手順
給与計算にミスが発覚したら、適切な順序に沿ってすみやかに対応する必要があります。具体的な手順を解説します。
1.すぐにお詫びをする
給与計算のミスを発見したら、すぐに行動に移りましょう。該当する従業員に個別に連絡を取り、素直にお詫びします。明確に伝え、責任を認める姿勢を示すことが重要です。
報告・お詫びの例 |
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「計算ミスがありました」 |
次に、ミスの具体的な内容を説明します。わかりやすく伝えるのがポイントです。
報告・お詫びの例 |
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「残業手当の計算に誤りがあり、本来より少ない支給金額になってしまいました」 |
さらに、今後の対応について明確なスケジュールを提示します。具体的な日程を示すことで従業員の不安を軽減できます。
報告・お詫びの例 |
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「来週中に修正した給与明細を発行し、不足分は今月末までに追加支給します」 |
昇給の更新もれの給与計算ミスにより、多数の従業員に影響がおよぶ場合は、全体向けのメール通知や正式文書の配布が適しています。全体通知でも、お詫び・ミスの内容・今後の対応を必ず記載することが重要です。
従業員からの質問や懸念に丁寧に対応する姿勢を示し、必要に応じて面談の機会を設けることも検討するとよいでしょう。
2.給与を再計算する
給与を再計算します。まずは、あとの確認や改善策の検討に役立てるため、誤った情報を保存します。給与ソフトのバックアップ機能も有効活用しましょう。
給与の再計算をする際は、計算過程を詳細に記録することが重要です。これにより、支給前の最終チェックが容易になります。
給与だけでなく、所得税や保険料も再計算する必要があります。給与の変更が、控除項目に影響を与える可能性があるためです。時期により、追加費用が発生する恐れがあるため、迅速に対応しましょう。
3.給与の過不足を調整する
再計算した内容をもとに、給与の過不足を調整します。給与が不足していた場合と、過払いだった場合、それぞれのケースについて以下で解説します。
給与が不足していた場合
給与が不足していた場合、すみやかに不足分を追加で支給します。源泉所得税や雇用保険料も再計算し、正確な金額を支払わなければなりません。労働基準法第24条に基づいて、原則として当月内の調整が必要です。
従業員の同意がある場合に限り、翌月の給与に不足分を上乗せして支給することも可能です。ただし、翌月に対処する方法は法的リスクがあるため、可能な限り避けるべきでしょう。
給与が過払いだった場合
給与が過払いだった場合、従業員に状況を丁寧に説明し、同意を得たうえで過払い分を即時返還してもらいます。過払いの場合も源泉所得税や社会保険料を再計算し、適切に調整します。
不足していた場合と同様、原則として当月内での調整が必要です。ただし、翌月になってしまったときは、労使協定で定めがあり、かつ従業員の同意が得られた場合に限り、給与から過払い分を差し引くことができます。
4.ミスの原因を特定し、今後の対策を検討する
給与計算のミスを修正したあとは、再発を防ぐために原因を分析し、対策を立てます。給与計算のルールを明確にし、社内で統一した手順を確立することから始めましょう。たとえば、ダブルチェック体制を導入することで、人為的ミスを減らすことができます。
また、最新の法令に基づいて給与計算業務を遂行するために、法律の変更に注意を払うことも大切です。給与計算システム(ソフト)を導入すると、法改正への対応や複雑な計算に対してより正確に対処できるでしょう。
5.給与明細を再発行し、修正箇所と対策を説明する
給与計算にミスがないように何度も確認したうえで、誤りのない正しい給与明細を再発行します。対象の従業員には、できれば直接手渡しし、修正箇所と再発防止策を口頭で説明しましょう。
ミスが広範囲にわたるときは、メールなど書面を添えて送付します。
給与計算ミスによるお詫びメールの文例と注意点
給与計算ミスが発生した従業員へのお詫びメールは、次の例を参考にして作成してみましょう。
<未払い・不足の場合>
未払い・不足の場合 | |
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件名 | 給与計算ミスに関するお詫びと対応策について |
導入 | ○○さんお疲れ様です。○○部の○○です。 |
誤りの事実 | この度、5月3日(祝日)の休日労働手当の計算に誤りがあり、本来支払うべき手当が不足しておりました。 |
お詫び | ご迷惑とご心配をおかけし、大変申し訳ございません。謹んでお詫び申し上げますとともに、下記の対応をさせていただく所存です。 |
対応 | 今月末日までに正しい給与明細を発行し、未払いの金額分をすみやかにお支払いいたします。 |
改善策 | また、今後の再発防止に向けて以下の対策に取り組んでまいります。 給与計算プロセスの徹底的な見直し複数人によるチェック体制の強化適切な給与計算システムの導入担当者への継続的な教育と定期的な研修の実施 ご不明な点やご質問がございましたら、いつでもご連絡ください。 |
結び | 今後このようなミスが発生しないよう、細心の注意を払って業務に取り組んでまいります。 重ねて深くお詫び申し上げますとともに、引き続きご理解を賜りますようお願い申し上げます。 |
上記のほかにも、ミスの内容には以下のような文例が挙げられます。
- 9月15日に取得した年次有給休暇を誤って欠勤として処理してしまい、給与が不足する結果となりました。
- 3月20日の残業時間に適用すべき割増率を誤って計算したため、過剰な給与を支払ったことがわかりました。
また、過払いの場合は以下のような文例がよいでしょう。
今月末日までに過払い金額を算出し、ご返金いただきたい金額を明示いたします。返金方法については、次回給与からの控除、銀行振込、現金書留などの選択肢がございます。ご希望があれば、お知らせください。 |
今後の対応も含めて、すぐにお詫びをする
給与計算のミスが発覚した際は、迅速な対応が不可欠です。正確な給与明細の再作成や過不足分の調整をする前に、従業員に対してすみやかにお詫びを伝えましょう。
単に謝罪するだけでなく、ミスの具体的な内容と今後の対応について、わかりやすく説明することが大切です。また、再発防止に向けた会社の取り組みについても言及すると、従業員に安心感を与えることができます。
対象従業員が多い場合
給与計算ミスの対象従業員が多い場合、個別に直接謝罪するのは難しいでしょう。しかし、形式的な内容のメールで済ませるのは適切ではありません。
多数の従業員にお詫びのメールをする際は、心からの謝罪の言葉に加え、ミス発生の原因や修正済み給与明細の発行予定日、今後の再発防止策などを明確に伝えることが重要です。
情報を丁寧に説明することで、会社の誠意と責任ある対応姿勢を示すことができます。各従業員が状況を理解し、会社の対応に納得できるよう、誠実な対応を心がけましょう。
給与計算ミスが起きやすい原因
給与計算のミスが発生する原因にはどのようなものがあるのでしょうか。給与計算ミスが起きやすい3つの原因を取り上げて解説します。
- 固定給をよく変更する
- 給与計算を手動で行っている
- 従業員によって働き方が異なる
固定給をよく変更する
給与計算ミスの主な原因の一つは、固定給の度重なる変更です。年に一度給与の見直しをする会社も多くありますが、異動や家族構成の変化などにより、臨時で変更されることもあります。
固定給の変更にともない、社会保険料などの控除額も調整が必要です。予定外のタイミングで行う保険料の変更は対応がもれやすく、ミスにつながりやすいため、注意が必要です。
給与計算を手動で行っている
手作業による給与計算は、給与計算システムを利用する場合に比べて時間がかかり、ミスも起こりやすくなります。
たとえば、勤怠データを手動で入力していたり、給与明細を手書きで作成していたりする場合です。給与計算システムならこれらの作業を正確に処理できますが、手作業では間違える可能性がどうしても高くなります。
従業員によって働き方が異なる
労働形態の変化も、給与計算を複雑にする要因です。固定的な勤務体制であれば、従業員の勤怠管理は比較的シンプルです。
しかし、近年はフレックスタイム制やリモートワークの普及により、柔軟な働き方が浸透してきました。従業員一人ひとりの勤務時間が異なるなど、勤怠管理が複雑化しており、勤怠管理システムがなければ、労働時間の適切な管理は難しいでしょう。
勤怠管理の複雑さが給与計算にも影響し、ミスが生じやすくなっているといえます。
給与計算ミスによって生じるリスク
給与計算ミスが続くと、さまざまなリスクが生じる可能性があります。主なリスクを3つ取り上げて解説します。
- 正しい納税額を算出できない
- 労働基準監督署からの是正勧告や罰則を受ける
- 遅延損害金が発生する恐れがある
正しい納税額を算出できない
給与計算を間違えると正しい納税額を算出できず、税金や社会保険料の支払いに影響が出る可能性があります。正しい金額を納めないと、罰金や延滞金が発生したり、企業の評判が下がったりする恐れがあるため、注意が必要です。
また、従業員との間でトラブルに発展するケースもあります。
労働基準監督署からの是正勧告や罰則を受ける
給与計算の間違いが続くと、労働基準監督署からの是正勧告や労基法などにより、罰則を受けることがあります。
たとえば給与を少なく計算してしまった場合、賃金未払いとみなされるかもしれません。未払いの問題を放置すると、企業は罰則を受ける恐れがあります。
また、監視が強化されたり、税務調査が多くなったりすることで、業務負担が増えるかもしれません。
遅延損害金が発生する恐れがある
給与計算のミスを間違いを放置すると、遅延損害金が発生します。
遅延損害金は、残業代などの未払いに対する損害賠償金です。会社が従業員に支払うべき金額を適切な時期に支払わなかった場合に発生し、未払い賃金に対して追加で請求できます。
請求が可能な理由は、未払いの賃金が法律上「債務不履行」とみなされるためです。債務不履行とは、会社が従業員に対して負っている金銭的な義務を果たしていないという状況です。
債務不履行の場合、法律では、債権者(=従業員)が債務者(=会社)に対して一定の利率で利息を請求できると定められています。
注意したい点は、請求権は在職中でも退職後でも行使できることです。会社は適切に給与を管理し、未払い賃金や遅延損害金の発生を防ぐことが重要です。
給与計算ミスを防ぐための対策例
給与計算ミスを防ぐための対策例を3つ取り上げて解説します。
- 間違えやすい項目のチェックリストを作成する
- 給与計算業務のルールを見直す
- 給与計算アウトソーシングやシステムを導入する
間違えやすい項目のチェックリストを作成する
給与計算のミスを防ぐ方法として、チェックリストの活用が挙げられます。間違えやすい項目をリスト化し、社会保険料の改定時期や従業員の異動時など、特に注意が必要なタイミングも明記しておきましょう。
チェックリストは、業務の抜けもれを防ぎ、ミスのリスクを大幅に減らすだけでなく、新しい担当者への業務引き継ぎにも役立ちます。定期的に内容を見直し、必要に応じて更新することも重要です。
給与計算業務のルールを見直す
給与計算の正確性を高めるには、業務全体のルールを見直すことが重要です。
まずはスケジュールを再検討しましょう。締め日から支給日まで十分な時間を確保することで、給与計算ミスのリスクを減らせます。締め日から支給日までは、20日程度の期間を設けるのが理想です。
給与計算のルール自体を整理することも重要です。複雑な手当や基準は誤解を招きやすいため、可能な限りシンプルにするとよいでしょう。
給与計算アウトソーシングやシステムを導入する
給与計算の正確性と効率を高めるには、最新のテクノロジーやサービスの活用が有用です。
勤怠管理システムや給与計算ソフトを導入することで、手作業によるミスを減らし、業務を自動化できます。また、給与計算業務全体をアウトソーシングする方法もあります。専門業者に委託することで、社内の負担を軽減できます。
給与計算のミス防止にはシステムの導入検討を(まとめ)
給与計算システムは、手作業による入力ミスや集計ミスを防ぎ、複雑な計算処理の自動化に役立ちます。特に、時間外労働や休日出勤の割増賃金などの計算は、煩雑になりやすいです。
属人化されやすい給与計算業務において、一定の業務水準を保つ仕組みを構築できるとともに、時間と労力の削減につながります。
業務効率化が進むことで、担当者の負担が軽減され、よりコア業務に集中できるというメリットも生まれるでしょう。
また、給与計算システムを活用すると、法改正や税率変更にも手間なく対応が可能です。法令遵守を徹底できるため、労務リスクも減らせます。
まとめ
給与計算ミスが発生したら、すぐに適切な対応をとることが重要です。
ミスを発見したら、迅速に該当する従業員に連絡を取り、誠実に謝罪します。謝罪の際は、ミスの具体的な内容と今後の対応について丁寧に説明し、従業員の不安を軽減することが大切です。
同時に、給与の再計算や過不足の調整、正確な給与明細の再発行など、具体的な改善措置を進めます。
給与計算ミスのお詫びにおいて大切なことは、次のミス発生を防ぐ体制づくりです。チェックリストの作成やルール見直しとともに、給与計算システムの活用も一案です。
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