人事給与システムとは何か? 対応機能と比較ポイント、自治体向けツールも解説

人事給与システムとは、人事情報と給与情報を一元管理し、関連業務を効率化できる統合型ツールです。
手作業による人事管理や給与計算では、ミスが起きやすく、担当者の負担も大きくなりがちです。効率化や法改正への対応を目的に、人事給与システムの導入を検討している企業もいるのではないでしょうか。
本記事では、人事給与システムの基本機能や人事システムとの違い、導入時に比較したいポイントをわかりやすく解説します。
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目次

人事給与システムとは何かを解説
人事給与システムとは、人事情報と給与情報を一元管理し、人事・給与に関する業務を効率化するシステムです。勤怠実績や社会保険の情報、扶養状況などと連携し、給与計算や帳票の作成を自動化できます。
人事給与システムは、単体のクラウドサービスとして提供されるほか、ERP(基幹業務システム)の一機能として導入されることもあります。
人事システムとの違い
人事システム(人事管理システム)は、採用・評価・育成・研修・福利厚生など、人材マネジメント全般を支援するシステムです。人材のパフォーマンスやキャリア形成の管理・分析にも活用され、人材情報の基盤として機能することが多くあります。
一方で人事給与システムは、人事システムのなかでも、人事情報に加えて給与計算や社会保険といった給与関連の実務までを統合管理できるシステムです。どちらかというと、実務オペレーションの自動化・効率化に重点が置かれています。
とくに、給与計算を今よりも正確に行いたい企業にとっては、人事給与システムの導入が一つの選択肢となるでしょう。
自治体向けの人事給与システムとは
自治体向けの人事給与システムの多くは、人事と給与を一体管理できる仕組みで、自治体業務に広く導入されています。国家公務員の制度をベースに、会計年度任用職員や任期付職員など自治体特有の制度に対応できるよう設計されています。
制度改正や人事委員会勧告への対応が早い点も特徴です。採用から退職までの人事データ、手当や昇給の処理、住民税データの取込、電子決裁連携など、自治体の業務フローに即した機能を備えています。
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- 人事領域で30年以上の実績
- 官公庁・自治体・独立行政法人で導入多数あり
- 有償利用ユーザー数600,000人以上
人事給与の業務範囲・システムでカバーできること
人事給与システムは、人事管理と給与管理の2つの領域をカバーし、日々の実務を支えるとともに、人事運営もサポートしています。
人事管理の主な役割と対象業務 | 給与管理の主な役割と対象業務 |
---|---|
・採用情報の登録と管理 ・異動・昇進・休職・復職などの履歴管理 ・人事評価や研修履歴の記録 ・社員名簿や組織図の自動更新 ・マイナンバーや扶養情報などの法定情報管理 | ・勤怠データとの連携による給与計算 ・時間外手当や各種手当の自動算出 ・健康保険・厚生年金・雇用保険などの保険料計算 ・所得税・住民税の控除額の算出 ・給与明細の電子発行、給与振込データの作成 ・年末調整や賞与計算、退職金計算への対応 |
人事給与システムは、本来は日々の人事・給与業務の効率化を主目的としたシステムですが、蓄積された人材データを活用すれば、人件費の分析や人事施策の改善といった領域にも活用が可能です。人材戦略を支える情報インフラとしての活用が進んでいます。
▼給与計算を基本から確認するには、以下の記事もご確認ください。
人事給与システムの機能・できること
人事給与システムは、人事・給与の実務を効率的に処理するためのツールです。ここでは、システムで対応できる主な機能と、具体的にどのような業務に使えるのかを紹介します。
機能区分 | 主な対応業務例 |
---|---|
人事情報管理の機能 | ・従業員情報の登録・更新 ・異動・昇格・休職履歴の管理 ・評価・研修履歴の記録 ・組織図や社員名簿の自動生成 |
給与管理の機能 | ・基本給・手当・控除の自動計算 ・税金・社会保険料の自動控除 ・給与明細の電子発行、振込データの作成 ・年末調整、賞与・退職金の計算 |
勤怠・労務・採用管理の機能 | ・勤怠データ集計、残業・有休の管理 ・社会保険・雇用保険の資格取得・喪失処理 ・健康診断記録、36協定チェック ・応募者情報・選考ステータスの管理 |
人事情報管理の機能
人事給与システムでは、従業員の基本情報や職歴、異動・昇格履歴などの人事情報を一元管理できます。情報のデータベース化により、組織再編や人材配置の判断の効率化が可能です。
また、スキルや資格、評価履歴の管理にも対応しており、育成計画や昇格検討など、戦略的人事に役立てられます。人材情報を把握しやすくすることは、人事給与システムの大きな強みの一つです。
給与管理の機能
人事給与システムの中核である給与管理機能では、基本給や手当、各種控除の自動計算から、所得税・社会保険料の処理、給与明細の発行までを完結できます。
年末調整や住民税の対応、社会保険料の算定など、複雑な法定業務にも対応が可能です。給与履歴の管理や改定シミュレーション機能も備えている場合が多く、人件費の予測や見直しに役立ちます。
勤怠管理・労務管理・採用管理
人事給与システムは、勤怠・労務・採用といった周辺領域もカバーしている場合があります。
勤怠管理では、出退勤時刻や残業時間、有給休暇の取得状況を記録し、給与計算に反映。労働時間の適正管理や、36協定の遵守状況の確認にも役立ちます。
労務管理では、社会保険や雇用保険の手続き、健康診断の記録管理などを通じて、保険料控除など給与関連の情報も反映が可能です。
採用管理では、採用計画の立案から選考過程の管理、内定者フォローまでをカバーし、入社後の人事情報へのスムーズな連携を支援します。
人事給与システムの比較ポイント・選び方
ここまで、人事給与システムの基本機能や対応できる業務について整理してきました。では、実際に導入を検討する際、どのような観点で比較・選定すればよいのでしょうか。
人事給与システムの選定は、自社の課題や体制を踏まえ、複数の視点から慎重に比較・検討していく必要があります。
- 必要な機能が過不足なくそろっているか
- 導入コストと解決すべき課題のバランスが取れているか
- 導入後のサポート体制が自社に合っているか
- 従業員が迷わず使える操作性があるか
- ほかの人事システムと連携できるか
- クラウド・オンプレミスなど提供形態が合っているか
比較1.必要な機能が過不足なくそろっている
人事給与システムは、機能が多ければよいというものではありません。自社の業務に必要な機能が、過不足なくそろっていることが重要です。
たとえば、給与計算の自動化や社会保険手続きの電子化などの基本機能に加えて、独自の給与体系や手当制度にも対応できるかを確認しましょう。
反対に、不要な機能が多すぎると操作が煩雑になり、運用コストがかさむ要因になります。現状の業務フローを整理したうえで、本当に必要な機能を見極めることがポイントです。
比較2.予算と課題解決のバランスが見合っている
人事給与システムの導入目的は、主に業務の効率化や法令対応への適応ですが、結果としてコストの削減につながることもあります。そのため、機能面だけでなく、費用面でも自社にとって適切かどうかを見極める必要があります。
初期費用や月額利用料に加え、保守・カスタマイズ・トレーニングなど、運用にかかる総コストを把握することが大切です。
とくに中堅~大手企業では、従業員数の増加に備えて、将来的な拡張性も考慮に入れましょう。
比較3.自社の運用に適したサポートが受けられる
人事給与システムは、導入して終わりではなく、導入後の運用も含めて考える必要があります。スムーズに使い続けるためには、スムーズな運用を支えるサポート体制の充実度も確認しましょう。
具体的には、導入時の支援や日常的な問い合わせ対応、法改正時の迅速なアップデートも重要な比較ポイントです。
とくに給与計算は毎月発生する重要な業務です。トラブルが起きた際にすぐに相談できる環境にあるかどうかも、システム選定における判断材料となるでしょう。
比較4.従業員が迷いなく使える
操作性の高さも、人事給与システム選びでは欠かせません。使いづらいシステムでは、管理部門だけでなく現場の従業員にも負担がかかります。
画面設計のわかりやすさや操作手順のシンプルさ、マニュアルやヘルプ機能の有無などを確認しましょう。
とくに、給与明細の確認など、従業員が日常的に使用する機能については、直感的に使えることが求められます。
比較5.ほかの人事システムと連携できる
人事給与システム単体で業務が完結する場合は少なく、ほかの人事関連システムと連携してこそ業務全体の効率化につながります。
とくに勤怠管理システムや会計システムなど、すでに導入済みのツールとスムーズに連携できるかは、選定時にしっかり確認したいポイントです。
連携性が高ければ、データの転記作業や入力ミスを防げるほか、部署間の連携もスムーズになります。業務全体の正確性・スピード向上に大きく貢献するでしょう。
連携を考えたい主な人事システムは以下のとおりです。
タレントマネジメントシステム | 従業員のスキルや評価情報を一元管理し、人材育成や配置に活用 |
勤怠管理システム | 従業員の出退勤時間を正確に記録し、客観的な労働時間の管理を実現 |
労務管理システム | 社会保険や労働保険の手続きを電子化。法令遵守を徹底 |
採用管理システム | 採用活動のプロセスを一元管理 |
なお、「One人事」のように、給与・労務・勤怠・タレントマネジメントを1つのデータベースで一元管理できるシステムであれば、連携の手間そのものを減らせます。システム連携の有無だけでなく、一元化によるシンプルな運用も選定基準の1つとして考えてみましょう。

比較6.クラウド・オンプレミス・パッケージ、適切な提供形態を選ぶ
クラウド型は初期費用を抑えられ、場所を問わず利用が可能です。保守・アップデートはベンダー側で実施されるため、負担が少ないでしょう。
オンプレミス型は自社サーバー上で運用する形態です。カスタマイズ性が高く、セキュリティ要件が厳しい企業に向いています。
パッケージ型は標準機能がそろっており、導入期間が短いのが特徴です。自社の運用と大きく異ならない仕様であれば効率化が実現します。
導入規模や将来の拡張性も含めて、どの形態が自社にとって最適かを比較検討しましょう。
公務員の規定に準拠したパッケージを提供One人事[Public人事給与]
One人事[Public人事給与]は、国家公務員・地方公務員の給与体系に準拠した人事給与パッケージです。人事院勧告や法改正による制度変更にも保守費用内で対応し、ランニングコストを抑えます。
豊富な導入実績に基づく多彩な機能を標準搭載。柔軟なアドオン機能開発によって、DX化も支援します。公的機関特有の制度や機能への対応も可能です。
また、自由度の高い検索・抽出機能により、パッケージ内のデータを活用できます。カスタマイズせずに柔軟な運用が可能なため、追加開発のコストを抑えられるでしょう。

- 人事領域で30年以上の実績
- 官公庁・自治体・独立行政法人で導入多数あり
- 有償利用ユーザー数600,000人以上
民間企業向けにはクラウド対応の人事労務システムも
民間企業向けにはクラウド型の人事労務システム「One人事」があり、労務・勤怠・給与・タレントマネジメントを包括的にカバーしています。
たとえば、戦略的な人材マネジメントを実現するOne人事[タレントマネジメント]、給与計算の正確性を助けるOne人事[給与]など、効率化したい業務範囲からシステム導入が可能です。
分散しがちな人材情報を集約し、転記ミスや最新データの紛失など労務リスクを軽減することで、経営者や担当者が「本来やりたい業務」に集中できるよう環境を整えます。
初期費用や気になる操作性については、当サイトより、お気軽にご相談ください。
当サイトでは、人事労務の効率化に役立つ資料を無料でダウンロードしていただけます。人事労務をシンプルにしたい企業の担当者は、お気軽にお申し込みください。

人事給与システムを導入する際の確認事項・注意点
比較・検討の段階を終え、実際に人事給与システムを導入する際は、事前に確認しておきたい注意点があります。次の3点は、導入時にとくに注意したいポイントです。
- 法改正への対応状況
- システムの拡張性と保守体制
- 導入スケジュールと事前準備の計画性
それぞれの項目について、順に確認していきましょう。
法改正への対応
人事給与システムの導入にあたっては、法改正への対応力を確認しましょう。人事・労務関連の制度は毎年のように見直しがあり、給与計算や社会保険処理にも直接影響を与えます。
とくにクラウド型の人事給与システムは、自動アップデートによって最新の法令に対応できるものが多く、設定ミスを防ぐうえで確認が必要です。制度改正を前提とした柔軟性があれば、導入後も安心して運用できるはずです。
拡張性・保守
導入時点で必要な機能だけでなく、人事給与システムを中長期的にどのように活用していくかも見据える必要があります。組織再編や従業員数の増加など、将来の変化に対応できる拡張性があるかどうかを確認しましょう。
また、毎月の給与計算はミスが許されない業務です。問題発生時に迅速に対応してもらえるサポート体制や保守の範囲も、導入前に必ずチェックしておくように注意が必要です。
導入スケジュール
人事給与システムの導入には、一般的に6〜8か月程度の期間がかかります。製品選定から始まり、要件定義、設計、データ移行、並行稼働を経て本稼働へと進みます。
この間、現行システムからのデータ整備や、従業員説明会の実施など、人事給与システムにかかわる現場部門との連携が不可欠です。とくに拠点数が多い企業では、段階的に展開するなど、計画的に進めることでトラブルを未然に防げます。
人事給与システムを導入するメリット
人事給与システムの導入によって、日々の業務負担を減らしながら、正確性と効率の両立が可能になります。導入によって期待できる4つのメリットを整理しましょう。
- エラー対策
- コストの見直し
- 人事評価・人材育成への反映
- 業務効率化
エラー対策
人事給与システムを導入することで、給与計算や勤怠管理における人的ミスを削減できます。
とくに、残業代の計算や手当の反映など、手作業ではミスが生じやすい工程を自動化できるため、従業員とのトラブル防止にもつながります。複雑な給与体系や勤務形態にも柔軟に対応できるサービスも多く、正確で一貫性のある処理をすることが可能です。
コストの見直し
人事給与システムによって給与計算や社会保険手続きの業務負担が軽減され、人事担当者の作業時間を大幅に短縮できます。
また、ペーパーレス化による経費削減や、データの一元管理によるシステム運用コストの低減も可能です。
人事評価・人材育成への反映
人事給与システムのなかには、従業員の基本情報や異動履歴、給与・勤怠データなどを一元的に管理できるものもあります。オペレーションデータをもとに、人材育成に活用できる基盤が整う点もメリットの1つです。
たとえば、客観的な情報をもとに、配置の透明性を高めたり、育成方針の検討に役立てたりすることができます。多機能な人事給与システムであれば、戦略的な人材活用にも役立てられるでしょう。
業務効率化
勤怠・給与から社会保険、年末調整まで、幅広い業務を一元化できるのが人事給与システムのメリットです。リアルタイムでの情報管理やWeb明細の配信によって、業務スピードの向上と情報の精度向上が同時に実現できます。
さらに、法改正への自動対応機能により、コンプライアンス対応の負担も軽減されるでしょう。空いた時間を、人材戦略や従業員支援といった付加価値の高い業務に充てることが可能です。
まとめ|人事給与システムの活用で効率化を実現
人事給与システムは、日々の人事・給与業務を効率化するだけでなく、人材情報を一元的に活用できる基盤となる場合があります。
手作業で対応していた煩雑な業務から人事部門を解放し、戦略的な人材マネジメントに注力できる環境を整えることも可能です。
自社に合った人事給与システムを選ぶことは、業務効率の向上だけでなく、これからの組織づくりを支える一歩となるでしょう。