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社会保険料の勘定科目は何を選ぶ? 仕訳の方法や会計処理の注意点を解説

社会保険料の勘定科目は何を選ぶ? 社会保険料の仕訳の方法や会計処理の注意点を解

健康保険や厚生年金保険などの社会保険は、企業と従業員がそれぞれ保険料を負担します。また、企業の経理担当者は、それぞれの保険料を適切な勘定科目で計上しなければなりません。社会保険料の会計処理では、どのような勘定科目を使用するのでしょうか。本記事では、社会保険料の勘定科目や仕訳の方法について詳しく解説します。

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    社会保険は、さまざまなリスクに備える国の保障制度

    本題に入る前に、まずは日本の社会保険制度について解説しましょう。社会保険とは、病気や怪我、失業や老後などのリスクに備える公的保険制度です。社会保険に加入している人や企業は、一定条件を満たしたうえで手続きを行うことで、給付金や支援などの各種サポートを受けられます。なお、日本の社会保険制度は任意加入ではなく、一定条件を満たしたすべての事業主と従業員に加入義務が発生するため注意が必要です。

    社会保険の種類

    社会保険は、健康保険・介護保険・厚生年金保険・雇用保険・労災保険の5種類に分けられます。雇用保険と労災保険の2つを「労働保険」として区別する場合もありますが、本記事では社会保険の一種として紹介します。

    病気やけがに備える「健康保険」

    健康保険は、普段の生活における病気やけがによる療養や、休業にともなう収入減をサポートする制度です。病気やけがだけでなく、加入者やその家族が出産したときや、死亡したときに受け取れる給付金もあります。

    参照:『制度の目的』全国健康保険協会

    要介護者・要支援者を支える「介護保険」

    介護保険とは、老齢や疾病、事故などにより介護や支援が必要になった人をサポートする制度です。要介護・要支援の認定を受けると、日常生活を送るためのさまざまなサポートを受けられます。なお、介護保険料の徴収は、40歳以上の従業員が対象です。

    参照:『介護保険制度の概要』厚生労働省

    老後や障がいなどのリスクに備える「厚生年金保険」

    厚生年金保険は、老齢や障がい、死亡に対して年金が支払われる制度です。厚生年金保険の適用事業所で働く人は、全国民を対象とした国民年金と、厚生年金の2種類の年金制度に加入します。また、年金は加入者本人だけでなく、遺族に対しても支給されます。

    参照:『厚生年金保険』日本年金機構
    参照:『公的年金制度の種類と加入する制度』日本年金機構

    再就職や雇用継続を支援する「雇用保険」

    雇用保険は、企業で働く人の雇用継続や、働く意欲がある人の就労・生活をサポートする制度です。失業中の求職者が受け取れる失業給付や、事業活動の縮小を余儀なくされた事業者が受け取れる雇用調整助成金など、さまざまな給付金・助成金が設けられています。

    参照:『雇用保険制度』厚生労働省

    業務中・通勤中の事故に備える「労災保険料」

    労災保険とは、業務中や通勤中の事故に起因するけがや病気を補償する制度です。けがや病気が労災として認められれば、必要に応じた給付金が支給されるとともに、社会復帰に向けたサポートを受けることもできます。また、労災によって加入者が死亡した場合は、遺族に年金や一時金が支払われます。

    参照:『労災補償』厚生労働省

    社会保険料の負担割合

    社会保険料は従業員と事業主がそれぞれ負担しますが、負担割合は保険の種類によって異なります。

    【企業側】社会保険料の負担割合

    健康保険と介護保険、厚生年金保険は、いずれも従業員と事業主が「5:5」の割合で負担します。雇用保険の負担割合は業種ごとに異なり、2024年4月1日から2025年3月31日までの保険料率は以下の通りです。

    事業の種類企業負担分
    一般の事業9.5/1,000
    農林水産・清酒製造の事業10.5/1,000
    建設の事業11.5/1,000

    出典:『令和6年度の雇用保険料率について』厚生労働省

    なお、労災保険は企業側が保険料の全額を負担します。

    【従業員側】社会保険料の負担割合

    健康保険と介護保険、厚生年金保険は、企業と「5:5」の割合で負担します。雇用保険の負担割合は業種により異なり、2023年4月1日から2024年3月31日までの適用分は以下の通りです。

    事業の種類従業員負担分
    一般の事業6/1,000
    農林水産・清酒製造の事業7/1,000
    建設の事業7/1,000

    出典:『令和6年度の雇用保険料率について』厚生労働省

    なお、労災保険は全額企業側が負担するため、従業員の負担分はありません。

    社会保険料の勘定科目は「法定福利費」または「預り金」

    社会保険料は労使双方が負担するものなので、企業の負担分と従業員の負担分を分けて考える必要があります。納める社会保険料のうち、企業の負担分は「法定福利費」、従業員の負担分は「法定福利費」または「預り金」の勘定科目で計上しましょう。

    社会保険料の仕訳方法

    次に、企業負担分・従業員負担分それぞれの社会保険料の仕訳方法を解説します。

    企業負担分の仕訳

    社会保険料の企業負担分は、法定福利費として計上します。この時点では支払いを終えていないので、貸方には「未払費用」と記入しましょう。具体的には、以下のように仕訳します。

    借方貸方
    法定福利費400,000円未払費用400,000円

    なお、労働保険料(雇用保険料+労災保険料)は1年分をまとめて納付するため、そのほかの社会保険料とは別に仕訳もできます。

    借方貸方
    法定福利費340,000円未払費用340,000円
    法定福利費(労働保険料)60,000円未払費用(労働保険料)60,000円

    従業員負担分の仕訳

    社会保険料の従業員負担分は、法定福利費として計上する方法と、預り金として計上する方法があります。

    法定福利費として計上する方法

    従業員に給与を支給する際に、社会保険料を法定福利費として計上します。

    借方貸方
    給与450,000円現金420,000円
    法定福利費30,000円

    なお、実際に年金事務所に納付する際は、会社負担分と合算した金額を法定福利費として計上しましょう。

    借方貸方
    法定福利費60,000円現金60,000円

    預り金として計上する方法

    給与を支給する際に、社会保険料を預り金として計上します。

    借方貸方
    給与450,000円現金420,000円
    預り金30,000円

    実際に年金事務所に納付する際は、預り金と、会社負担分の法定福利費をそれぞれ計上しましょう。

    借方貸方
    預り金30,000円現金60,000円
    法定福利費30,000円

    社会保険料の会計処理における注意点

    社会保険料の会計処理では、以下の2点に注意することが大切です。

    • 自社の会計処理の方法に従う
    • 保険の種類ごとに納付タイミングが異なる

    それぞれのポイントについて、以下で詳しく解説します。

    自社の会計処理の方法に従う

    会計処理の方法には、費用が発生したタイミングで計上する「発生主義」と、実際に費用を支払ったタイミングで計上する「現金主義」という2種類の考え方があります。発生主義の場合は、費用が発生した締め日。現金主義の場合は、実際に社会保険料を納付したタイミングで計上します。費用は発生主義で計上するのが原則ですが、企業によっては現金主義で処理しているケースもあるため、あらかじめ自社のルールを確認しておきましょう。

    保険の種類ごとに納付タイミングが異なる

    雇用保険と労災保険をまとめて「労働保険」と呼ぶことがあります。社会保険料の納付は毎月行いますが、労働保険料の納付は年1回です。ただし、雇用保険は従業員の負担分もあり、毎月給与から天引きされます。自社が発生主義で処理しているか、現金主義で処理しているかによって、適切なタイミングで計上することが大切です。

    【Q&A】社会保険料の勘定科目に関するよくある質問

    最後に、社会保険料の勘定科目に関するよくある質問にお答えします。

    社会保険ごとに内訳を記載したほうがよい?

    社会保険料の勘定科目は、まとめて「法定福利費」や「預り金」として計上されます。どの保険料にいくらかかったのかを把握しやすくしたい場合は、補助科目を活用するとよいでしょう。補助科目とは、勘定科目だけではなく、その内訳を詳しく管理したいときに設定する科目です。たとえば、以下のように記入します。

    借方貸方補助科目
    給与450,000円現金420,000円
    預り金30,000円社会保険料(健康保険料)

    子ども・子育て拠出金は社会保険料として計上できる?

    子ども・子育て拠出金とは、政府の子育て支援政策にあてられる税金です。子ども・子育て拠出金は社会保険料ではなく税金ですが、厚生年金保険料と一緒に納めるため、そのほかの社会保険料とともに法定福利費として計上しましょう。

    社会保険料の会計処理は、適切な勘定科目と選択へ

    社会保険料の勘定科目は「法定福利費」または「預り金」です。納付する保険料のうち、企業が負担する分は法定福利費、従業員が負担する分は法定福利費または預り金として計上します。ただし、計上するタイミングは会社の会計ルールによって異なるため、あらかじめ確認しておくと安心です。

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