介護休業中も社会保険料は支払い義務があるのか|企業がとるべき対応や注意点を解説
高齢化が進む日本では、家族の介護のために休職や離職をするケースがますます増えると考えられます。働く人の「仕事」と「介護」の両立を助ける制度として設けられたのが「介護休業」です。本記事では、介護休業の概要を解説し、休業中の賃金や社会保険料の支払いについてご紹介します。介護休業中の社会保険料の支払いや、企業がとるべき対応を知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
介護休業とは? 制度の概要を解説
「介護休業」は「育児介護休業法」の改正で1995年に導入された「要介護状態」にある対象家族を介護するために労働者が休業できる制度です。要介護状態とは具体的に、負傷、疾病または身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたって常時介護を必要とする状態を指します。介護休業の概要をご紹介します。
介護休業の取得は家族1人につき3回まで
介護休業を取得できるのは、対象家族1人につき3回、通算93日までとされています。ただし通算なのですべて連続して取得する必要はなく、分割して取得もできます。
従業員が介護休業を取得するための条件
従業員が介護休業を取得する際に必要な条件について解説します。
介護休業取得における3つのポイント
介護休業は、要介護の家族を介護する従業員であれば、正規雇用やパートなどの雇用形態に関係なく取得できます。(日々雇用は除く)また、介護休業を取得するには「家族が要介護の状態であること」「従業員が取得条件を満たしていること」「要介護の家族との続柄が対象範囲であること」の3つのポイントを満たす必要があります。
従業員側の取得条件としては「介護休業を実施する予定日から93日の経過後、6か月以内に労働契約期間が満了すると明らかでないこと」が挙げられます。対象家族については、配偶者(事実婚を含む)と父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫とされている点にも注意する必要があるでしょう。
社内規定に関係なく取得できる
介護休業は国の制度です。そのため、社内規定に関係なく取得できます。社内規定がある場合でも、育児・介護休業法の定めより従業員に不利な定めは無効となります。
介護休業を取得できない従業員
介護休業の対象外である従業員の条件は下記の通りです。
- 日雇労働者
- 申出日から93日以内に雇用期間が終了
- 労使協定による対象外
介護休業と介護休暇との違い
介護休業と似ている言葉に「介護休暇」がありますが、介護休業は介護のために「長期的」な休みが必要なとき、介護休暇は介護によって「短期的」な休みが必要な場合に備える制度です。介護休業と介護休暇の違いは、下記の通りです。
介護休業 | 介護休暇 | |
---|---|---|
取得可能日数 | 対象家族1人につき通算93日まで取得可能 | 対象家族1人につき1年度で通算5日まで取得可能※対象家族が2人以上の場合は10日 |
対象者 | ・申し出日から93日以内に雇用が終了しない・要介護状態の対象家族を介護している | ・要介護状態の対象家族を介護している |
申請方法 | 開始日の2週間前までに会社に書面申請する | 当日の申請も可能(会社によって例外あり) |
また、どちらの場合も、給与の支払いは会社の判断に委ねられています。
介護休業中の社会保険料は免除される?
介護休業中の社会保険料について解説します。
介護休業中の社会保険料は免除されない
育児休業中は社会保険料が原則免除されるため、介護休業中も免除されると思われがちです。しかし、介護休業の場合、社会保険料は免除されません。介護休業中に給与が支給されない場合でも、社会保険料(健康保険料、厚生年金保険料、介護保険料)は支払う必要があります。また、会社も支払い続ける必要がある点に注意しましょう。この場合、給与から源泉徴収できないため、従業員負担分は復帰時に精算するケースが多いです。
雇用保険料は支払う必要なし
雇用保険料に関しては、介護休業中に賃金の支払いがなければ支払わなくてよいとされています。雇用保険料は「賃金×保険料率」で計算されるため、賃金が発生しないのであれば「0」と算出されるためです。
介護休業中に利用できる「介護休業給付金」について
介護休業中は、賃金の67%の給付金を受け取れる「介護休業給付金」が利用できます。介護休業給付金の申請は事業主を介して行います。ただし、介護休業中に就労した日数が10日を超えると、その期間は給付金が支給されません。
介護休業給付を受給できる条件
介護休業給付を受け取るには、「介護休業の開始前の2年間に雇用保険に12か月以上加入していること」という条件を満たす必要があります。
介護休業や休業中の社会保険料に関する注意点
介護休業を含め、休業中の社会保険料に関する注意点をご紹介します。
「要介護認定」を受けていなくても対象となる可能性がある
育児・介護休業法に定める「要介護状態」とは、負傷、疾病または身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態を指します。
そのため、対象の家族が「要介護認定」を受けていない場合でも、介護休業の対象となり得ます。ただし、常時介護を必要とする状態については判断基準が定められており、この基準にしたがって判断されます。
介護休業中の支払い方法や返済方法を決めておく
介護休業中は、無給であっても社会保険料の支払いは続きます。そのため、支払い方法についてあらかじめ決めておく必要があるでしょう。
たとえば「従業員が毎月支払う」「会社が立て替えて、復帰後に精算する」「休業中は会社が全額負担する」といったやり方があり、この中から自社に合った方法を選ぶとよいです。また、立替からの精算の場合は、税金や雇用保険料が課せられないというメリットがあります。
まとめ
介護休業は、要介護の家族を介護するために労働者が休みを取得できる制度です。介護休業の取得は家族1人につき3回、通算93日までとされており、家族が要介護の状態、従業員が取得条件を満たしている、要介護の家族との続柄が対象範囲である、といった3つのポイントを満たす必要があります。条件がいくつかあるため、あらかじめ確認しておくとよいでしょう。
また、介護休業中は無給の場合が多いですが、社会保険料は免除されません。そのため、支払い方法などを決めておくことが重要です。標準報酬月額の関係によって保険料を再計算するケースにも注意が必要でしょう。
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