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賃金台帳の保存期間とは? 経過措置や違反時の罰則を解説

賃金台帳の保存期間について|経過措置や違反時の罰則を解説

賃金台帳とは、従業員への給与支払いに関する重要事項が記された書類です。作成義務だけではなく保存義務があり、企業は正しい保存方法を把握する必要があります。

本記事では、賃金台帳の保存について、正しい方法や期間などを詳しく解説します。保存のやり方に不安がある担当者は、ぜひ参考にしてください。


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    賃金台帳の基本について

    まずは賃金台帳の概要をご紹介します。

    賃金台帳とは従業員の賃金や労働時間が記載された書類

    賃金台帳とは、従業員の賃金や労働時間など、給与計算に必要な情報が記載されたものです。

    原則として従業員ごとに作成する必要があり、正規雇用やパート・アルバイトなどの雇用形態にかかわらず、すべての人が対象です。企業は賃金台帳の基本を理解し、正しい作成方法と保存方法を遵守しなければなりません。

    賃金台帳に記載すべき項目

    賃金台帳には、必須の記載項目がいくつかあります。記載すべき項目は、以下の通りです。ただし、日々雇い入れられる者については、賃金計算期間を記入する必要はありません。

    • 従業員の氏名・性別
    • 基本給・手当の種類と金額
    • 賃金額
    • 賃金計算期間
    • 労働日数
    • 労働時間
    • 時間外労働や休日労働、深夜労働の労働時間
    • 控除の項目や金額(労使協定で定められている場合)

    なお、労働日数や労働時間には、有給休暇を取得した日も含まれるため注意しましょう。

    また、時間外労働や休日労働、深夜労働にはそれぞれに設定された割増賃金を支払う必要があるため、明確に区別することが大切です。

    賃金台帳の保存は義務?

    賃金台帳は作成して終わりではなく、適切に保管する必要があります。

    賃金台帳の作成と保存は企業の義務

    賃金台帳の作成と保存は、労働基準法第108条と109条に定められた企業の義務です。

    (賃金台帳)
    第百八条 使用者は、各事業場ごとに賃金台帳を調製し、賃金計算の基礎となる事項及び賃金の額その他厚生労働省令で定める事項を賃金支払の都度遅滞なく記入しなければならない。

    (記録の保存)
    第百九条 使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を五年間保存しなければならない。

    引用:『労働基準法』e-Gov法令検索

    企業は、従業員を1人でも雇用している場合、賃金台帳を作成して保存する義務があります。なお、保存した賃金台帳は、雇用保険の申請や各種助成金の利用時、労働基準監督署の調査が行われる際などに必要です。

    賃金台帳と給与明細は異なる書類

    賃金台帳とよく似ている書類に、給与明細があります。どちらも賃金の算定に関連する内容が記されていますが、それぞれ異なる書類です。

    基本的に、賃金台帳は企業が「給与計算の根拠」を記録・保存するために作成するものなのに対し、給与明細は「給与計算の結果」を従業員に通知するためのものです。

    また、賃金台帳は労働基準法を法的根拠とするのに対し、給与明細は所得税法を法的根拠としています。賃金台帳は法律によって保存義務が定められていますが、給与明細にはありません。

    賃金台帳の保存期間は何年?

    賃金台帳には法的な保存義務があるとわかったところで、具体的な保存期間について解説します。

    5年間の保存が義務づけられている

    賃金台帳の法的な保存期間は、5年間です。注意したいのは、期間の数え方です。通常、賃金台帳の保存期間は「最後に記入した日」を起算日として数えるように決められています。

    ただし「実際の賃金の支払い日」が「最後に記入した日」より遅い場合には、支払い日を起算日としなければなりません。保存する期限を確定させる際は、記入日と支払い日の関係に注意しましょう。

    なお、賃金台帳が源泉徴収簿を兼ねる場合は、7年間保管します。源泉徴収簿の保存期間が7年と定められているためです。

    保存期間は労基法の改正で変更になった

    賃金台帳の保存期間はもともと3年間と定められていたため、保存期間を調べると「保存期間は3年」と紹介されている場合もあるでしょう。

    しかし、2020年4月1日に施行された改正労働基準法によって、保存期間は5年間に延長されています。従来の保存期間と混同して賃金台帳を破棄しないよう、注意が必要です。

    賃金台帳の保存期間延長には経過措置が認められている

    賃金台帳の保存期間は法改正により延長されていますが、経過措置が認められています。

    当分の間3年間で問題ない

    労働基準法第143条には、第109条で「5年間」と記載されているものは当分の間「3年間」とすると記載されています。

    第百四十三条 第百九条の規定の適用については、当分の間、同条中「五年間」とあるのは、「三年間」とする。

    引用:『労働基準法』e-Gov法令検索

    第109条には、賃金台帳の保存期間について定められています。

    (記録の保存)
    第百九条 使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を五年間保存しなければならない。

    引用:『労働基準法』e-Gov法令検索

    このように、企業の事務的負担を軽減するため、法的にも当分の間は保存期間が3年間でも問題ないとされています。

    経過措置はいつまで?

    賃金台帳の保存期間における経過措置に、明確な期間は設けられていません。2023年11月時点でも国からの発表はなく、経過措置が継続されています。

    ただし、これは制度改正にともなう企業の負担を軽減するための措置です。十分な期間が経過したと判断された場合は経過措置がなくなる可能性が高いため、常に最新の情報をチェックしましょう。

    また、経過措置期間は、企業が新たな制度に対応するための準備期間でもあります。いつ経過措置が終了してもよいように、必要な環境整備を進めましょう。

    賃金台帳以外の「法定三帳簿」の保存期間

    賃金台帳は、法定三帳簿の一つです。

    1. 賃金台帳
    2. 労働者名簿
    3. 出勤簿

    3つの書類は法的に作成・保存が義務づけられているため、それぞれの概要や保存期間を的確に把握しておきましょう。

    労働者名簿の保存期間

    労働者名簿とは、企業が雇用する従業員の氏名や生年月日、履歴などを記載した帳簿です。事業所ごとに作成する必要があり、情報に変更がある場合は都度、更新しなければなりません。

    労働者名簿の保存期間は、賃金台帳と同様に5年間です。ただし、同じく経過措置が認められており、当分の間は3年間で問題ないとされています。

    なお、保存期間の起算日は、労働者が退職した日や解雇された日、または死亡した日です。

    出勤簿の保存期間

    出勤簿とは、従業員の労働日数や出退勤時間などを記録した帳簿です。

    出勤簿の保存期間は、賃金台帳や労働者名簿と同様に5年間と定められています。同じく経過措置が認められており、当分の間は3年間で問題ありません。

    なお、保存期間の起算日は、出勤簿が最後に記載された日です。ただし、記載日より賃金支払い期日のほうが遅い場合は、支払い期日を起算日とします。

    賃金台帳の保存期間を守らなかった場合の罰則

    賃金台帳の保存は、労働基準法によって定められた企業の義務です。法律に定められたルールを守らなかった場合は、罰則が科せられる恐れがあります。

    賃金台帳に関する違反行為には30万円以下の罰金が科せられる

    賃金台帳に関する違反行為は労働基準法違反とみなされ、30万円以下の罰金が科せられる可能性があります。

    たとえば、以下のような場合は罰則対象となる恐れがあるでしょう。

    • 必須項目が記載されていない
    • 定められた保存期間が来る前に廃棄している

    現在の法定保存期間は、あくまで経過措置として「3年」のまま据え置きとなっています。今後、経過措置が終了し、3年のままだと誤認して賃金台帳を破棄してしまうと、労働基準法違反とみなされてしまいます。

    賃金台帳の違反にはまず是正勧告が出される

    賃金台帳に関する法令違反が見つかっても、すぐさま罰則が科せられることはほとんどありません。基本的に、まずは労働基準監督署より是正勧告が出されます。是正勧告に従って賃金台帳を改善し、問題を解決したうえで再度提出すれば、多くの場合は処罰されることはないでしょう。

    ただし、是正勧告に従わないと、罰金が科せられる恐れがあります。事態が明るみに出ると、企業イメージの低下にもつながりかねません。法令遵守を徹底するとともに、万が一違反してしまった場合は速やかに改善策を講じるよう心掛けましょう。

    賃金台帳を保存する方法

    賃金台帳は作成だけでなく保存についても法的な定めが設けられており、企業には正しいルールをきちんと把握することが求められます。法律を遵守するためには、どのような方法で保存すればよいのでしょうか。

    賃金台帳に明確な保存ルールはない

    じつは賃金台帳の保存方法については明確なルールはありません。記入方法は手書きでもプリントアウトでもよく、紙で保存しても、電子データで保存しても問題ありません。それぞれの企業が、自社でやりやすい方法を選択できます。

    ただし、賃金台帳は事業所ごとに作成・保存する必要があります。本社で各事業所のデータをまとめて保存していたとしても、各事業所でもそれぞれ保存しなければなりません。

    賃金台帳は電子データの保存も可能

    賃金台帳は電子データで保存することも可能であり、その場合は所定の条件を満たす必要があります。

    • パソコンなどの画面上に表示し、プリントアウトできる状態にする
    • 労働基準監督署の求めに応じて、すぐに提出できる状態にする
    • 故意または過失によるデータの消去・書き換えができないようにする
    • 長期間保存できるようにする

    ルールに沿って保存するために、すべての事業所において画面上にデータを表示し、すぐに印刷できる体制を整えましょう。

    賃金台帳の保存期間は5年だが、経過措置が適用される

    賃金台帳は、法律によって作成・保存が定められた法定三帳簿の一つです。

    法改正により保存期間が「5年間」に延長されましたが、当面の間は経過措置として「3年間」のままで問題ないとされています。経過措置の終了や起算日などに注意しつつ、法令を遵守して保存しましょう。

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