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年末調整の間違いを訂正する方法|やり直しできる? 必要な場合や再計算

年末調整で間違いを訂正する仕方とは? やり直しが必要なケースや再計算方法を解説

年末調整は1月31日までなら訂正できます。2月1日以降に訂正が必要である場合、確定申告が必要です。本記事では、訂正の頻度が高い4つの事例やミスを防ぐポイントなどを解説します。年末調整をスムーズに行いたいと考えている方は参考にしてください。

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    年末調整と提出期限

    年末調整の留意点や提出期限などを解説します。

    年末調整と所得税

    年末調整は、給与所得者の所得税を正確に納税するため、毎年11月頃から1月末に行われます。年末調整の際に提出する書類は主に次の3種類です。

    • 配偶者特別控除申請書
    • 給与所得者の保険料控除申告書
    • 給与所得者の扶養控除等申告書

    配偶者特別控除申告書とは、配偶者に48万円を超える所得がある場合に、所得金額に応じて控除を適用するための書類です。配偶者や納税者本人の所得により、控除額が異なります。配偶者特別控除は、夫婦同士での適用はできません。

    保険料控除申告書とは、生命保険や社会保険料といった、保険料の控除を受けるために必要な書類です。扶養控除等申告書とは、扶養控除をはじめとする諸控除を受けるために必要な書類です。

    年末調整の間違いは放置しないこと

    年末調整書類を間違えたまま組織の年末調整が完了すると、源泉所得税を納付しなかったとみなされるおそれがあります。結果、組織に対し不納付加算税や延滞税といった税金などのペナルティが科される可能性もあります。

    最悪、所得税法第240条により、10年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金、またはその両方が科せられるでしょう。焦って手続きしないためにも、年末調整は、期日に猶予をもたせて対応することが大切です。

    参照元:『所得税法』e-Gov法令検索

    年末調整は1月31日が提出期限

    組織が年末調整の内容を修正できるのは1月31日までです。組織は源泉所得税の納付をするため、源泉所得税の納付額も修正が必要です。

    提出期限の遅れにより源泉所得税を納付しなかったと見なされた場合は、罰則を科せられる可能性もあるため注意しましょう。

    年末調整の訂正が求められる4つのケース

    年末調整の修正が求められるケースは次の4つです。

    • 扶養家族の人数変更
    • 従業員・配偶者の年収の変更
    • 保険料控除・住宅ローン控除の記入漏れ
    • 年末調整後の保険加入

    それぞれ解説します。

    扶養家族の人数変更

    出産や再婚などにより扶養家族の人数が変わると、修正が発生します。前提として、年末調整はその年の最後の給与を支払う際に行われることが基本です。たとえば、12月25日が給与の支払い日だとします。

    12月25日から年末までの間に、出産や再婚などにより扶養家族の人数が変わることは十分に考えられます。そのため、給与の支払日から年末までに子どもが産まれた場合は「23歳未満の扶養親族」に該当する可能性があるため「所得金額調整控除」の訂正が必要となることもあります。

    再婚相手に16歳以上の子供がおり、なおかつ扶養する場合も、扶養控除の適用のため訂正が必要です。

    従業員・配偶者の年収の変更

    従業員や配偶者の年収の変更が生じるケースで考えられるのは次の2つです。

    • 配偶者控除の関係上、年末調整書類記載時の見込み額と比べて配偶者の収入が103万円を超えた
    • 従業員本人の見込額が12月給与や賞与の額を合算した確定額と大きく異なった

    年末調整後に年収に変更が生じた場合は、源泉徴収票が従業員に交付されるまでに再調整する必要があります。

    保険料控除・住宅ローン控除の記入漏れ

    保険料控除や住宅ローン控除の記入漏れなどで修正が生じるケースで考えられるのは次の3つです。

    • 紛失した控除証明書が出てきた
    • 控除証明書の提出が遅れた
    • 住宅ローン控除の提出を忘れた

    なお、住宅ローン控除については、1年目は確定申告で対応する必要があるため年末調整は不要です。

    年末調整後の保険加入

    年末調整後に保険を切り替えて、なおかつ保険料を支払った場合も再調整が必要です。

    また、年末調整の前に保険に加入して、必要書類の準備が年末調整までに間に合わないケースもあります。たとえば、10月に生命保険の切り替えを行ったとしましょう。生命保険料の控除証明書は、毎年10月から翌年の1月までに発行されます。

    場合によっては、年末調整までに、控除証明書の発行が間に合いません。この場合は、保険会社に連絡して、保険料控除証明書に変わる書類を発行してもらう必要があります。

    時期別の訂正方法

    年末調整の修正方法は、次の時期に応じて異なります。

    • 源泉徴収票発行前(1月31日以前)
    • 源泉徴収票発行後(2月1日以降)

    それぞれ解説します。

    源泉徴収票発行前(1月31日以前)

    源泉徴収票の発行前であれば、修正は社内で完結できます。

    計算や記入ミスなどは、二重線を引き、上から訂正印を押して正しい内容を書きましょう。再度、ミスを発生させないためにも、正しい情報を従業員から再聴取することが大切です。

    源泉徴収票発行後(2月1日以降)

    源泉徴収票の発行後は、社内での修正はできないため、従業員が確定申告を行う必要があります。また、税務署に提出した書類の修正も必要です。

    年末調整の訂正手順

    年末調整の修正手順を、次のケースごとに解説します。

    • 扶養家族・親族が変更になる場合
    • 保険料・住宅ローン控除を訂正する場合
    • 従業員・配偶者の年収が変更する場合

    年末調整の修正時期は限られているため、スムーズに手続きするためにも、修正手順をおさえておきましょう。

    扶養家族・親族が変更になる場合

    扶養家族や親族が変更になる場合は「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を訂正します。該当箇所に二重線を引き、上下どちらかに訂正内容を記入します。もしくは、修正内容を扶養控除申告書の「異動事由」の欄に書き込むことでも修正可能です。

    また、添付書類の確認が必要になることもあるため、従業員にその旨を伝えて協力してもらいましょう。なお、令和5年時点で、紙ベースの「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」への押印は不要とされています。押印の有無は、社内ルールにのっとり対応しましょう。

    保険料・住宅ローン控除を訂正する場合

    保険料や住宅ローン控除を修正する場合は「給与所得者の保険料控除申告書」を正します。

    年末調整後に保険料を支払った場合は添付書類を確認して訂正する必要があります。金額の記入ミスは、二重線を引いて、正しい金額を記入しましょう。押印は義務ではないため、社内ルールにのっとります。

    なお、保険料や住宅ローン控除の申告期限は翌年の3月半ばのため、確定申告でも対応可能です。

    従業員・配偶者の年収が変更する場合

    配偶者控除は、納税者本人の合計所得金額と控除対象配偶者の年齢により異なります。とくに、従業員本人の年収と境目の配偶者は注意が必要です。配偶者特別控除の金額は、約5万円幅の合計所得金額ごとにテーブルが設定されているためです。

    年末調整の再計算・精算の3ステップ

    年末調整の再計算および清算は次の3ステップで行います。

    1. 過不足額のチェック
    2. 再計算
    3. 差額の清算

    それぞれ解説します。

    1.過不足額のチェック

    まずは、12月分の給与や賞与で「すでに精算した源泉徴収税額との過不足額」を調べます。

    2.再計算

    年末調整を再計算 して「本来の源泉徴収税額との過不足額」を算出します。

    3.差額の精算

    明細書を作成し、現金または振り込みにて不足分または余剰分を精算・調整します。そのあと、年末調整の差額を還付または追徴し、給与や賞与などで支給します。

    税務署からの追加徴収

    追加徴収とは、税金が正しく納められていない場合に取られる処置です。

    納税額が不足していたり、そもそも納税されていなかったりする場合は、税務署から通知が届きます。追加徴収はペナルティがあるため、納めるべき額に税率がかけられます。

    また、一口に追加徴収といっても、種類はさまざまです。次の表に追加徴収の種類をまとめたので参考にしてください。

    追加徴収の種類内容
    過少申告加算税申告した納税額が納めるべき額よりも少なかった場合の処置。
    税率は10〜15%
    無申告加算税期限内に確定申告しなかった場合の処置。
    税率は5~20%
    不納付加算税源泉所得税を期限内に納めなかった場合の処置。
    税率は5〜10%
    重加算税不正事実がある場合の処置。書類の改ざんなどが挙げられる。
    税率は35〜40%
    延滞税納期期限が過ぎても正しく納付されない場合の処置。
    税率は年7.3〜14.6%

    年末調整の書類不備を防ぐ3ポイント

    年末調整の書類不備を防ぐためのポイントは次の3つです。

    • 従業員に早めに年末調整書類を渡す
    • 書類のチェックは複数人で行う
    • システムを導入する

    それぞれ解説します。

    1.従業員に早めに年末調整書類を渡す

    年末が繁忙期の業種もあります。忙しい時期と年末調整のタイミングが被らないようにも、早めに書類の準備をしましょう。

    従業員からの提出物はチェックも行うため、猶予を持たせて早めに締め切りを設けることが大切です。早めに対応することで、万が一、修正が必要になったとしても焦らずに対応できます。

    2.書類のチェックは複数人で行う

    年末調整は改正の頻度が高いため、ミスを見逃してしまう可能性が高い手続きです。

    ダブルチェックをはじめとした、計算・記載ミスを見つける体制をつくることが大切です。チェックリストを作ったうえで、ダブルチェックを取り入れれば、ミスの見逃しがを防ぎやすくなります。

    3.システムを導入する

    年末調整業務は作業工数も多いため、年末調整システムの導入が進んでいます。システムでは、書類状況も管理できるため、ミスの発生リスクが低いです。

    電子化で年末調整の再申告がスムーズに

    年度末・年始といった繁忙期の年末調整の訂正は負担が高いです。

    電子申請には、訂正依頼をメールで送付し、従業員はWebで再提出するなどシステムが整っています。システムを導入したり、電子手続きを行ったりすることで、年末調整にかかる負担を減らせるでしょう。

    まとめ

    年末調整の修正方法は、扶養家族の人数変更や配偶者の年収変更などにより異なります。修正は、1月31日までであれば社内で完結できます。

    ただし、2月1日をすぎると、社内での修正でなく、個人が行う確定申告が必要です。修正が生じないようにも、ダブルチェックや年末調整システムなどの導入を検討しましょう。

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