手書きによる出勤簿【違法?】書き方・テンプレートや作成方法、脱却のメリットを紹介

出勤簿とは、労働者の出退勤情報を記録した帳簿のことです。法律で作成・保管が義務づけられているため、企業は出勤簿の記載内容や作成方法を理解しておく必要があります。近年は社会全体で勤怠管理の電子化が進められていますが、なかには昔ながらのやり方で、手書きの出勤簿を作成している企業もあるでしょう。しかし、手書きの出勤簿を作成する場合は、いくつか注意したいポイントがあります。
本記事では、手書きの出勤簿の作成方法や注意点などを解説します。アナログからデジタルへ移行するメリットも紹介しているので、ぜひ参考にしてください。


出勤簿とは法定三帳簿の一つ
出勤簿とは、労働者の出退勤時間や残業・休日出勤などの情報が記録された書類のことです。
出勤簿は労働者名簿や賃金台帳と同じ「法定三帳簿」の一つであり、労働基準法により作成・保存が義務づけられています。
法定三帳簿はいずれも労働基準法を遵守するうえで重要な役割を果たすものです。それぞれの違いや記載内容を把握しておくことが大切です。
法定三帳簿 | 記載内容 |
---|---|
出勤簿 | 従業員の出退勤情報 |
労働者名簿 | 従業員の氏名や生年月日などの情報 |
賃金台帳 | 従業員の賃金計算の基礎となる情報(賃金計算期間や労働時間数など)と賃金額 |
出勤簿の保存期間
出勤簿の保存期間は、原則として5年です。以前は保存期間は3年と定められていましたが、2020年の法改正により期間が延長されました。
ただし、現在は経過措置期間として、保存期間を3年としても問題ないとされています。しかし、経過措置期間はいずれ終了するので、それまでに対応できるよう準備する必要があります。
手書きの出勤簿は違法?
手書きの出勤簿は違法ではありません。しかし、厚生労働省のガイドラインでは企業に対して労働時間の客観的な記録を求めています。
(2)始業・終業時刻の確認及び記録の原則的な方法使用者が始業・終業時刻を確認し、記録する方法としては、原則として次のいずれかの方法によること。ア 使用者が、自ら現認することにより確認し、適正に記録すること。イ タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録すること。
引用:『労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン』厚生労働省
以上のように、ガイドラインではタイムカードやICカード、パソコンの使用時間の記録などを用いた管理を推奨しています。
一方、手書きの出勤簿は、従業員が情報を自由に書き換えることが可能であり、客観的な記録に該当しないおそれがあるでしょう。
手書きの出勤簿自体は禁止されていませんが、運用方法には十分に注意する必要があります。
客観的な記録が困難な場合には、従業員の自己申告による記録も認められています。そのため、客観的ではない方法で労働時間を記録していたとしても、すぐさま違法になるわけではありません。

手書きによる出勤簿の書き方・テンプレート
手書き用の出勤簿に決まった様式はなく、記載項目を守ってさえいれば問題ありません。様式がないとかえって書きづらいという場合は、インターネットの検索エンジンで「出勤簿 テンプレート」と検索すると、無料で使えるテンプレートを配布しているWebサイトが見つかります。
また、厚生労働省は出勤簿の書き方の例を公表しています。
参考:『労働者を雇用したら帳簿などを整えましょう』厚生労働省
出勤簿の記載項目
出勤簿に決まった様式はありませんが、以下の記載項目は必須です。
- 氏名
- 出勤日
- 出勤日ごとの始業・終業時間
- 休憩時間
- 残業時間 など
また、従業員の勤怠情報を適切に管理するため、以下の項目を記載することをおすすめします。
- 有給休暇の取得日
- 産休・育休の取得期間
- 休日労働を行った日付・時刻・時間数
- 深夜労働を行った日付・時刻・時間数
出勤簿の作成方法・形式
出勤簿の作り方は、主に「手書き」「エクセル」「勤怠管理システム」の3種類があります。それぞれの作成方法におけるメリット・デメリットや、向いている企業の特徴を解説します。
手書き
紙を用意して、項目ごとの情報を手書きで記入していく出勤簿です。紙と筆記用具さえあれば始められ、パソコンが苦手な方でも容易に作業ができます。
手書きの出勤簿の魅力は手軽さにあり、従業員が比較的少ない企業におすすめです。
ただし、従業員一人ひとりの勤怠情報を記録する必要があるため、企業の規模が大きくなるとかえって手間がかかってしまいます。会社が成長して従業員数が増えてきたら、別の方法への移行を検討するとよいでしょう。
また、手書きの管理ではヒューマンエラーが発生しやすく、改ざんが容易というデメリットもあります。従業員の自己申告に依存するため、不正が起こりやすい点に注意が必要です。
エクセル
出勤簿は、エクセルを用いて作成することも可能です。出勤簿に必要な項目をつくり、関数を設定すれば、出退勤時間を入力するだけで労働時間を自動で計算できます。
エクセルの出勤簿は、手計算と比べて、計算ミスが生じにくくなる点がメリットです。
また、パソコンにエクセルがインストールされているなら、特別なシステムを導入する必要もありません。エクセル用のテンプレートを公開しているWebサイトもあり、一から作成する手間も省けます。
従業員数が多く、複数の支社があるような企業には、手書きよりもエクセルの出勤簿が向いています。
ただし、出退勤の情報は手で入力する必要があるため、入力ミスには注意が必要です。
また、出退勤の情報が従業員の自己申告に基づく場合は、不正行為を防ぎきれないという問題もあります。法改正にともなう仕様変更にも対応しなければならず、気づかない間に法令違反になるリスクもないとは言い切れません。
勤怠管理システム
勤怠管理システムなら従業員の出退勤の情報が自動で集計されるため、労務担当者の負担を大幅に減らせます。集計・計算もシステムが自動で行ってくれるので、入力ミスや計算ミスが起こるリスクを軽減することが可能です。
ICカードや生体認証による打刻に対応しているシステムもあり、不正打刻を防止しやすいというメリットもあります。クラウド型のシステムであれば、アップデートにより法改正にも自動対応できます。
このように勤怠管理システムには、手書きやエクセルの出勤簿にはないメリットがあります。手書きによる出勤簿の作成をはじめ、勤怠管理に課題を感じている企業は検討してみましょう。

ただし勤怠管理システムは、ほかの方法と比べて、導入コストが発生します。また、選定から契約に至るまで、ある程度の検討期間を要するため、本格的に稼働するまで時間がかかります。スムーズに導入するには、要件の洗い出しとスケジューリングが必要でしょう。
手書きの出勤簿を使用する際のポイント
手書きの出勤簿を使用し続けるのであれば、適切に管理するためのポイントを理解しておくことが大切です。以下の3つのポイントに注意しましょう。
- 客観的に記録できているか確認する
- 労働時間の実態調査を行う
- 従業員に記入ルールを周知する
以上を怠ると、労務管理の不備や法的リスクを招く可能性も否定できません。労働時間管理の精度を高め、トラブルを未然に防ぐためにも、それぞれ詳しく解説します。
客観的に記録できているか確認する
手書きの出勤簿に客観性を持たせる必要があります。厚生労働省が案内しているように、企業は従業員の勤怠情報を客観的に記録しなければなりません。
しかし、手書きの出勤簿は、従業員の自己申告に基づく内容になりやすいです。自己申告は改ざんが容易であるため、鉛筆を禁止してボールペンのみ許可するといった対策が必要です。
従業員が労働時間の定義や申告方法について共通の認識を持てるよう、担当者として理解を促すことも大切です。
労働時間の実態調査を行う
手書きで記録された出勤簿が正しいか、労働時間の実態は必ず調査しましょう。
自己申告制を採用していても、会社がある建物への入退館記録やパソコンの使用時間などを通じて、客観性のある情報を調べられます。
自己申告による労働時間と、客観的なデータに基づく労働時間に相違がないことを確認することが重要です。
たとえば、申告した労働時間が9時から18時までであるにもかかわらず、パソコンからログアウトしたのが22時だった場合は、実際の労働時間に4時間の開きがあります。企業は実態調査を実施し、必要に応じて労働時間を訂正しなければなりません。
自己申告による情報と、入退館記録やパソコンの使用時間などの記録をいつでも突き合わせられるよう、チェック体制を整備することが大切です。
従業員に記入ルールを周知する
手書きの出勤簿を適正に運用していくためには、従業員に記入ルールを徹底させる必要があります。記入項目や禁止事項、記入ミスがあったときの対応などについてルールを設け、従業員に周知しましょう。
めんどくさい手書きの出勤簿から脱却するには?
手書きの出勤簿は手軽に作成しやすいものの、ミスや不正を防ぎにくいというデメリットがあります。少人数であれば管理も容易ですが、従業員数が増えると担当者の業務負担も増してしまいます。
また、出勤時間や退勤時間を毎日手書きで記入するのは、めんどくさいと感じる従業員が多いものです。従業員と管理担当者、双方の負担を減らすためにも、勤怠管理システムの導入を検討してはいかがでしょうか。
勤怠管理システムで現場の負担を軽減
勤怠管理システムを導入すると、次のようなメリットが期待できます。
- 法改正にも対応しやすく、法令遵守につながる
- 業務を効率化でき、現場の負担が減る
- 個別のアカウント発行やICカード、GPSなどにより不正打刻を防止できる
- 給与計算システムとの連携により、計算を自動化できる
- 入力ミスや計算ミスなどのヒューマンエラーを削減できる
勤怠管理システムによりトラブルを防止できるとともに、業務の自動化・効率化が進み、現場の負担軽減が実現します。
便利な勤怠管理システムで、めんどくさい手書きの出勤簿からの脱却を目指しましょう。
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