フレックスタイム制のコアタイムとは? なぜ必要? 意味や導入のメリット・デメリット、注意点を解説
フレックスタイム制において重要な概念が「コアタイム」です。コアタイムとは、フレックスタイム制で必ず出勤していなければいけない時間帯です。
本記事では、コアタイムの必要性や意味を詳しく解説し、導入によるメリットとデメリット、さらに注意したいポイントを紹介します。
コアタイムとは?
コアタイムとは、フレックスタイム制で設定する、従業員が必ず勤務していなければならない時間帯のことです。会社によっては、曜日ごとに異なるコアタイムを設定している場合もあります。
たとえば、全社朝礼が行われる月曜日は10時から15時、火曜日から金曜日は11時から16時というような設定です。
一方で、コアタイムを設けず、完全な自由出勤のスーパーフレックスタイム制も存在します。スーパーフレックスでは、従業員は自分の都合にあわせて出勤時間を決めることができますが、労働時間の管理が重要になります。
そもそもフレックスタイム制とは?
フレックスタイム制は、従業員が1日の勤務開始時刻と終了時刻を自分で選択できる柔軟な勤務体系です。会社側は一定期間内の総労働時間を設定し、従業員はその時間内で各日の勤務時間を自由に割り振ることが可能です。
フレックスタイム制では、それぞれの事情にあわせて出勤・退勤時間を調整できるため、ワークライフバランスを実現しやすいのが大きなメリットです。
多様な働き方を推進する勤務形態の一つといえるでしょう。
コアタイムとフレキシブルタイムの関係性
フレックスタイム制では、勤務時間が柔軟に設定できるフレキシブルタイムと、必ず勤務しなければならないコアタイムが組み合わされています。
基本的に、フレキシブルタイムの時間内に出勤が必要なコアタイムが含まれる設定です。
コアタイムとフレキシブルタイムの理想的なバランス
フレックスタイム制では、コアタイムとフレキシブルタイムが適切なバランス配分になっていることが重要です。
たとえば、1日の所定労働時間が8時間の場合、コアタイムが10時から15時(休憩1時間を含む)で、フレキシブルタイムが8時から10時、15時から21時といった設定が考えられます。
フレックスタイム制の理想的な設定とは?(例) | |
---|---|
コアタイム | 10時から15時(休憩1時間を含む) |
フレキシブルタイム | 8時から10時、15時から21時 |
コアタイムは休憩時間を除いて4時間くらいに設定し、フレキシブルタイムを多めにとるとよいでしょう。厚生労働省の見解でも、コアタイムが極端に長い場合、実質的なフレキシブルタイムの採用にはならないとされています。
また、深夜(22時から翌5時)や法定休日の勤務には割増賃金が発生するため、フレキシブルタイムの設定にも注意が必要です。
参考:『フレックスタイム制 のわかりやすい解説 & 導入の手引き』厚生労働省
フレックスタイム制にコアタイムを設定する目的・必要性
フレックスタイム制にコアタイムを設ける目的・必要性として、会議や打ち合わせを円滑に進めることが挙げられます。
フレックスタイム制の採用による柔軟な勤務体系では、従業員が出勤・退勤時間を自由に決められるため、全員が同じ時間帯に勤務しているとは限りません。
そのため、全従業員の出席が必要な会議やミーティングを開催することが難しくなり、十分な時間も確保しづらいという問題が生じます。
コアタイムを設定することで、全従業員が一堂に会する時間を確実につくることが可能です。また、従業員間のコミュニケーションの活性化といった効果も期待できます。
コアタイムにおける遅刻・早退・半休の扱い
フレックス制では、総労働時間で見るのが基本です。そのため、コアタイムの遅刻・早退・半休があっても、1か月の総労働時間を満たしていれば減給の対象にはなりません。
ただし、コアタイムに頻繁に遅刻や早退が発生すると、コアタイムの意義が薄れ、職場内の規律が乱れる可能性があります。そのため、就業規則において、コアタイムの遅刻や早退に対する処分を定めるとよいでしょう。
コアタイムの遅刻・早退の有無を、人事評価に反映させるなどの仕組みを導入するのも一案です。
また、半休を利用してコアタイムに欠勤しても問題はありませんが、コアタイムは従業員が一堂に会することを目的としています。そのため、フレキシブルタイムで半休を取るのが望ましいとされています。
コアタイムを設定するメリット
フレックスタイム制においてコアタイムを設定するメリットを解説します。
- 時間の管理がしやすくなる
- コミュニケーション不足を解消できる
- 人材を採用しやすくなる
時間の管理がしやすくなる
コアタイムを基準に出退勤時間を決められるのは、時間管理を容易にするメリットがあります。
フレックスタイム制では、設定された清算期間内に総労働時間(所定労働時間)を達成しなければいけません。しかし、スケジュール管理が苦手な従業員にとっては、時間の管理が難しく感じることもあるでしょう。
会社としても、コアタイムの時間帯に全従業員の出勤が確認できるため、コアタイムがない場合と比べて勤怠管理がしやすくなります。
コミュニケーション不足を解消できる
コアタイムを導入すると、その時間帯に全従業員が勤務しているため、社内外を問わずスムーズに連絡が取れ、会議のスケジューリングがしやすくなります。
従業員ごとに出退勤時間が異なるフレックスタイム制では、コミュニケーションに遅延が生じることが課題とされています。
コアタイムにより、社内のコミュニケーション不足が解消されるため、職場の雰囲気が改善されるでしょう。
人材を採用しやすくなる
フレックスタイム制とコアタイムを組み合わせることで、従業員は自分の状況に合わせた働き方を選択できるようになります。
子育てや介護などの事情を抱えている人も、コアタイムに出勤できる状況なら応募に踏み切りやすくなるでしょう。現在の深刻な人手不足の中で、多様な人材を確保しやすくなるのは企業にとって大きなメリットです。
さらに、フレックスタイム制の導入は、従業員のワークライフバランス実現に配慮がある企業だと評価され、前向きなイメージを与えやすくなります。
コアタイムを設定するデメリット
一方、コアタイムを設定することのデメリットもあります。本記事では3つを取り上げて解説します。
- 会議の予定が集中する
- 取引先との連絡に支障が出る可能性がある
- コアタイムが長すぎると自由度が下がる
会議の予定が集中する
全従業員が確実に出勤している時間帯であるため、会議のスケジュールがコアタイムに集中する傾向にあります。その結果、スケジュール管理が困難になったり、複数の会議が同時進行することで出席できない従業員が出たりするなどのデメリットが生じます。
また、限られた時間内で会議を終了させなければならないため、十分な議論ができない可能性もあります。
取引先との連絡に支障が出る可能性がある
フレックスタイム制を採用していない取引先もいるため、コアタイム以外の時間帯に担当者が不在だと、即時の対応ができない場合があります。
迅速に対応できないと、取引先とのトラブルやクレームに発展する事態も否定できません。結果的に、取引先に不便や迷惑をかけてしまい、ビジネス上の関係性に悪影響を及ぼす可能性もあります。
コアタイムが長すぎると自由度が下がる
コアタイムを必要以上に長く設定してしまうと、フレックスタイム制の最大の利点である従業員の裁量で勤務時間を決められるというメリットが薄れてしまいます。
コアタイムの時間帯が長くなればなるほど、従業員の働き方の自由度は制限され、モチベーションや生産性の低下を招きます。
フレックスタイム制の本来の目的を達成するためには、コアタイムとフレキシブルタイムの適切なバランスを保つことが重要です。
コアタイムを設定するための要件
フレックスタイム制にコアタイムを設定するには、いくつかの要件が必要です。主な要件について解説します。
- 就業規則に明記する
- 労使協定を締結する
- 労使協定で定める6項目
就業規則に明記する
コアタイムを設定するためには、就業規則にフレックスタイム制とコアタイムの詳細を明記する必要があります。
たとえば、フレックスタイム制を採用することや始業時間と終業時間の決定は、社員本人に委ねられること、コアタイム・フレキシブルタイムの設定内容などを記載します。
ルールを就業規則に明記することで、従業員はフレックスタイム制の運用方法を理解することができ、会社側も制度を適切に運用することが可能です。
労使協定を締結する
コアタイムを設定するには、労働基準法に基づいて労使協定を締結する必要があります。
労使協定では、フレックスタイム制の適用範囲、コアタイムとフレキシブルタイムの時間帯、清算期間、清算期間における総労働時間などを定めます。
コアタイムの具体的な時間帯は、部署や個人ごと、日ごとなど、会社と従業員代表が協議して自由に設定でき、必要に応じて分割することも可能です。
労使協定で定める6項目
コアタイムを設定するには、労使協定を結び、その内容を就業規則に記載することが求められます。労使協定では、次の6つの事項について取り決めます。
1.対象となる従業員の範囲
労使協定では、対象となる従業員の範囲を明確にします。対象者は、個人・部署・グループなどの単位で指定しても、全従業員としても問題ありません。
部署やグループごとに制度を適用する場合は、該当する部署・グループ名を明記しておきましょう。
2.清算期間
清算期間とは、従業員が勤務すべき時間を設定する期間のことです。通常は給与計算にあわせて1か月に設定されています。2019年の法改正により、最大で3か月までの期間が延長されました。
3.清算期間の起算日
労使協定では、清算期間の起算日も明確に定める必要があります。たとえば「毎月1日」や「毎月15日」のように、具体的な日付を指定することが求められます。
4.清算期間の総労働時間
清算期間の総労働時間は、法律で定められた労働時間の範囲内で設定しなければなりません。清算期間内の法定労働時間は、以下の式を用いて計算します。
40時間×清算期間の暦日数÷7=清算期間の法定労働時間 |
5.1日の標準労働時間
労使協定では、標準的な1日の労働時間についても定めます。標準労働時間は、従業員が年次有給休暇を取得した場合に、1日分の賃金計算をする際の基準となります。
6.コアタイムとフレキシブルタイム
コアタイムとフレキシブルタイムの具体的な時間帯も定めておきます。2つの時間帯は従業員の働き方に大きな影響を与える重要な要素であるため、慎重に検討しなければなりません。
コアタイムを設定する際の注意点
コアタイムを設定する際の注意点を3つ取り上げて解説します。
- 従業員にとって都合のよい時間に設定する
- 遅刻や早退などの対応を決めておく
- 長すぎないようにする
従業員にとって都合のよい時間に設定する
コアタイムを設定する際は、従業員の多くが働きやすいと感じる時間帯を選ぶことが重要です。
コアタイムの開始時間が早朝すぎたり、終了時間が夕方の遅い時間だったりすると、柔軟に働くことが難しいでしょう。コアタイムは従業員のニーズを考慮し、無理のない時間帯に設定する必要があります。
また、曜日や時期によってコアタイムを変更する設定も可能です。従業員にとって都合のよいコアタイムを設定することで、フレックスタイム制の本来の目的である「柔軟な働き方」の実現に近づくでしょう。
遅刻や早退などの対応を決めておく
フレックスタイム制にコアタイムを導入すると、時間管理があいまいになってしまう可能性があります。そのため、制度の運用を開始する前に、遅刻・早退の定義や対応について会社と従業員の間で十分に話し合い、明確に取り決めておくことが必要です。
長すぎないようにする
コアタイムの設定において、時間の長さは重要な要素です。
コアタイムが1日7時間のように長すぎると、通常の勤務時間とほとんど変わらなくなってしまいます。一方、あまりにも短いコアタイム、たとえば1日1時間では自由度は高まりますが、会議やミーティングの調整が困難になるでしょう。
コアタイムは従業員の柔軟な働き方を実現しつつ、業務に支障をきたさない程度の適切な長さに設定することが理想的といえます。
まとめ
コアタイムとは、フレックスタイム制において従業員が必ず勤務しなければならない時間帯です。
コアタイムを導入することで、時間管理がしやすくなり、コミュニケーション不足の解消や多様な人材の採用が期待できます。しかし、会議の予定が集中したり、取引先との連絡に支障が出たり、自由度が低下するデメリットもあります。
コアタイムの設定には、就業規則への明記や労使協定の締結が必要です。従業員にとって都合のよい時間帯を設定し、遅刻や早退の対応を決めておきましょう。
フレックスタイム制においてはコアタイムを上手に組み合わせることで、ワークライフバランスと生産性向上の両立が実現します。自社の業務内容や環境に合わせて、最適なコアタイムを設定しましょう。
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